−今回は先生にマンガ原作の第一人者として、元気がない今の少年マンガに対するご意見をうかがいたいのですが。
「今の子供はあまり外に出ないだろ。いくら書き手が波瀾万丈な物語をつくってもさ、分からないんじゃねえかな。新しい熱血感動モノを読者にぶつけるよりも、人間同士の付き合いを呼び戻すほうが先決だよ。もちろん、俺も機会があったら書きたいとは思うがね」
−人間同士の付き合いという点でいうと、「ワル」では¨連帯¨よりも¨裏切り¨に比重を置いてますよね。
氷室洋二はなぜモテル?
「いずれこういう人間が出てきてもおかしくない、という前提で人物造形をしたんだよ。彼(主人公の氷室洋二)みたいに幼いころ悲惨な経験をして成長すれば¨女を見れば犯す¨¨男を見れば殺す¨、そうなっちゃうわけだ」
−氷室は女を手込めにしても、その女に惚れられるのが不思議に思うんです。 「男と女の出会いは半分レイプだっていうだろ。最初は¨警察に訴えてやる¨と思っても¨どこか憎めない¨なんて気持ちが芽生えりゃ、そこが新しい愛の出発点になるわけだ。女を口説くときゃ命懸けでだな、極端なことを言えば刑務所に行く覚悟で臨んだほうがいいんじゃねえかな」
−・・・。最後に、先生から読者に向けてエールをいただければと思います。 「古本屋だな。古本屋へ足を運べば、ずっと昔の¨赤胴鈴之助¨から¨イガグリくん¨まで、どんなヒーローにも会うことができるだろう。もちろん、¨マンガ家たちよ奮起せよ!¨というのも一方にはあるがね。マンガの面白み、醍醐味は失われたんじゃなくて、忘れられてる部分も大きいはずだよ。忘れてるものは思い出せばいい。そう考えりゃ、まだ希望はあるよ」
真樹氏には、我々が持参したガクランに腕を通してもらい、氏が愛用しているビワの木刀を片手に、読者に対して現在形の¨ワル¨を強烈にアピールしてもらった。心して受け止めよ!
●昭和45年から週刊少年マガジンで連載された『ワル』(原作・真樹日佐夫、画・影丸譲也、全13巻)。父親による壮絶な剣道修行と兄によって殺されかけた経験がトラウマとなり、極度の人間不信に陥った主人公・氷室洋二が繰り広げるピカレスク劇画。以来、約30年間現在に渡って続編が描かれており、近々最終章の連載開始が予定されている。
劇画界のドン、故・梶原一騎氏の実弟にして自らもヒットマンガの原作者としての名が高い真樹日佐夫氏。かつて我々が熱く読み込んだ少年マンガはいったいどこへ消えてしまったのか?今の少年マンガの体たらくに、真樹氏はどのような考えを持っているのだろうか?現在のしなびた少年マンガシーンを叱咤激励してもらうべく、我々スタッフは東京・六本木に位置する夜の真樹道場へと足を運んだ。
プロフィール●まきひさお/昭和15年6月16日生まれ。早稲田大学中退。劇画作家。故・梶原一騎氏の実弟。昭和43年に『凶器』で第33回オール読物新人賞を受賞、昭和52年に映画『カラテ大戦争』にて主演するなど、幅広く活躍。極真会館総本部師範代を経て、現在は世界空手道連盟・真樹道場主席師範を務めている。代表作品は『ワル』、『風雪プロレス30年』、『格闘技セカイオー』など。
[コミック★フィギュア王/平成11年12月25日発行]発行所:株式会社グリーンアロー出版社
発売元:株式会社ワールドフォトプレス
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