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高知地裁で信号無視無罪の女性  警察官の言葉許せず裁判 「警察が違反と言ったら違反」
2013.06.07 朝刊 
 
 高知地裁で春先、小さな交通違反事件の判決があった。被告は高知市内の女性(33)。2011年4月、赤信号を無視したとして道路交通法違反の「青切符」を切られ、その後起訴されながら、「違反はしてません」と訴え、ついに無罪を勝ち取った。比較的軽微な交通違反を対象とする青切符の発付は、県内で年間約5万件に上り、99%は反則金を納付する。違反を認めず刑事裁判となり、しかも無罪となるケースは極めてまれだ。「やってないものはやってません」と言い続けた女性は日々、何を考えていたのだろう。判決から約4カ月が過ぎ、女性は語ってくれた。(上原英介)
 「被告人は無罪」
 今年2月14日午後。高知地裁の203号法廷に、裁判官の少し甲高い声が響いた。
 「泣き寝入りせず、裁判してよかった」
 女性は判決の瞬間を今も忘れない。「青切符」を切られた日のことも忘れられない。
 11年4月、晴れた月曜日だった。
 高知市の運送会社に勤務する女性は、いつものように軽貨物車のハンドルを握り、事務機器を配達していた。
 午前11時前。
 同市小石木町の県道を走り、国道56号(土佐道路)との交差点へ向かう。バックミラーにパトカーが映った。女性によると、交差点の停止線の手前で信号が青から黄に。「急に止まったら危ない」と黄信号で停止線を越え、右折した。
 道交法施行令は「安全に停止することができない場合」、黄信号でも進行できると定めている。
 その直後だった。
 サイレンを鳴らし、パトカーが追って来た。停車すると、警察官は「赤で停止線を越えた。信号無視。僕らは見た」と言う。女性は「黄色でしたよ」と反論したが、青切符を切られた。
 納得できず、納付期限を過ぎても9千円の反則金を支払わなかった。督促は3回。それでも「違反はしてません」と応じない。
 書類送検され、高知地検に呼び出された。検察官は「ゴネてもいかん。たかが9千円」。略式裁判で罰金刑を受けるよう迫った。
      ■
 裁判になったらお金もかかる。労力もかかる―。「泣き寝入りして払った方が楽かも」と思ったこともある。眠れない夜が続き、胃けいれんや腸けいれんなどで体調を崩した。
 その一方、警察官に言われた言葉を何度も思い出した。あの午後、自宅から高知南署への電話。青切符を切った警察官はこう告げたという。
 「文句あるんやったら、反則金払わんかったらいい。裁判してもあんたは負ける」「違反してなくても、警察が『違反した』と言えば違反したことになる」
      ■
 刑事裁判は、昨年夏に始まった。証言台に立つと、頭の中は真っ白。経験したことのない緊張だった。裁判官に本籍や住所などを聞かれても即答できず、3回も言い直した。
 「(裁判に持ち込むとは)何ていうことをしたのか。来ん方がよかった」
 それでも「違反はしてません」との主張は曲げなかった。弁護人は「うそをつく人間は話の内容が変遷する。彼女の話は、いつ聞いてもぶれなかった」と振り返る。
 裁判所は昨年11月、被告側、検察側の立ち会いの下、異例の実況見分を実施した。裁判官が現場でパトカーに乗り、当時の状況を再現。その結果、「パトカーから交差点の停止線は見えない」との判断に傾く。
 判決の日。
 裁判官は判決理由の朗読で「警察官の供述は臆測が含まれている」と述べ、最後にこう付け加えた。
 「自分の主張を曲げずに、よく頑張られたと思います。あなたは無罪です」
 違反していないとの確信があっても、警察官に違反と言われ、青切符を切られたら、諦めや面倒くささから、多くの人は反則金を払うのではないか。そんな中、女性はこだわり続けた。
 判決後、検察側は控訴せず、無罪は確定した。
 女性は時々、「警察が『違反した』と言えば違反」という言葉を思い出す。
 「誰でも間違いはある。でも一言謝ってくれたら…。無理でしょうけどね」
 彼女は今も同じ職場で、プロとしてハンドルを握っている。

  【写真説明】
問題の交差点。停止線の位置やパトカーとの距離から違反認定はほぼ不可能、と判決(高知市小石木町)
高知新聞社

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