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7月14日。「ボンタさんの感想」
水場をとおり過ぎてゆく人たち。
ぁ、水場が「駅」なんだ。
行為のひとつひとつが分解されて、ものの本質が視覚でわかる。
ふつうの速さでは見えないものが見えて、
ことばを超えて聞こえないものまで聞こえる。
じっと観ていると、感覚が濃く鋭くなっていく。
誰かが流れる水に触れて水音が一瞬止むと ドキ とする。
水の音とサティの音楽と劇のテンポが こころの隙間を埋めてくれる感覚で、
『小町風伝』もそうだったけど、わたしには とても心地よい、収まりのよい劇だ。
こんなこと言っていいのか分らんけど、
はじめから おわりまで
すさまじくエロティックで、男も女も皆うつくしいのであった。
少女が登場するところから ずぅっと。
夫婦の誘ったり誘われたりの さじ加減。
服の裾から脚に触れる夫の指先。
布団に見立てた布を敷き、セックスの準備をする妻の貌。
きわめて遅い動きから見えるセックスの表情や身体は濃密で、
分解された行為のなかで、いちばん本当で 現実を見せられているようだ。
こんなふうに 身体を触ったり触られたり、繋がったりしているのが実感として分かる。
男が水道の後ろに立って、女が水場に入り 水を身体に受ける。
水道の位置から、蛇口がほとんどペニスにしか見えず、
わたしが あの女なら間違いなく蛇口に口をつけて水を飲んだろうと思う。
しかし、
いちばん目を奪われたのは旅の男二人だ。
喉が渇いて水を飲みたいだけの欲求で二人は同時に
蛇口に唇を寄せ水を飲む。図らずもキスする二人。
エロティックで、何度 生唾を飲み込んだか知れない。
観た後で、周りの動きの速さに戸惑うくらいの時差ができている。
降る雨の音しか聞こえない真夜中、確かめるみたいに自分の身体に触れてみる。
歪んだ窓を開けて湿った夜の空気を入れる。
煙草に火をつける仕草も遅くなって、アイリッシュウィスキーも とろん とした味になる。
夜明け頃に もういちど劇を観て、珈琲を淹れる。意識せずとも、遅い動作で淹れられる。
心が 何かに引っ張られ、何かに影響を受けて安らぐとき、
日常の動作だけでなく、煙草や珈琲や 口にするものの味まで変わってしまうことがある。
いままで、安心感が欲しいときは 古典と古い随筆や思想を読むことと、
恋人に慰めてもらうことを求めてきたけれど、
この劇に、救済を求めるのも いいんじゃないかと。
DVD 「太田省吾の世界」 Disc1
水の駅/The Water Station
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