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その4)
やがて夕暮れとなり空に満月が昇り始めた。
花嫁の一行は大広間に通された。
そこには殆どの兵士が集まっているのか
すでに宴の酒盛りや食べ物が運び込まれていた。
花嫁は前方の首領の座と思える席の真ん前に
二人の召使のような女が連れていき
用意された金色の椅子に座らされた。
お供として大広間に入ったトムの他、3人の仲間は
荷台から酒壷を下ろし、それを一つ一つ抱えて
兵士達に振舞った。
「村自慢の地酒でござりまする是非ご賞味あれ」
そういって酒を振舞うと
兵士達は大声で笑い一挙に飲み干していった。
次々と、「もう一杯だ」というものが続出した。
「どんどん飲め。。」そう思いながら、一行は
宴会の酒盛り役に徹していた。
大広間を回りながら、
どこに牢獄があるのかを探っていた。
そうしているうちに、牢獄の衛士と思われるものが
酒と食べ物をとりにきて、来た方へ戻っていった。
風悟空はそれを見逃さなかった。
「牢獄はあの方角だ。。。」心でつぶやいた。
宴会は盛り上がり兵士の中には相当酔い始めているものもいる。
風悟空は、他の兵士に酒を盛っている海悟空にちかづき
こっそりと牢獄の方角を伝えた。
広間の山賊度もを泥酔させ、牢獄に向かって捕虜を
救い出す。。。これが彼らの作戦だ。
場所がわかれば、後は時がくるまで酒を盛り続ける。。
彼らは首領の方を伺った。
首領はまじまじと花嫁をながめ、至極満足な様子で
酒を飲んでいる。
荷台の酒壷が一つ、また一つと空になり荷台の横に積まれていく。
荷台の上から物がなくなっていった方が武器は取りやすい。
30個以上あった壷があと4個ほどになっている。
「相当量の酒を山賊達は飲んでいる。」
ピーターも壷の数を数えながらいつ行動に移せるのかを
伺っていた。
広間の中央には少し小高い舞台のような場があって
聞きなれぬ音に合わせてそこで珍しい西方の国の踊りを舞っている。
誰もピーターを見ているものもいないようだ。
「今だ!」
彼は誰も気づかないように、密かに宴会場を離れ
もと来た正門を目指した。もし誰かに会えばすぐに兵士に酒を勧め
られるよう左脇に酒壷をかかえコップを右手に持ちながら進んだ。
うまいことに兵士は完全に油断して広間に集まっているようだ。
やがて一番外の城壁の影がみえてきた。
番兵は城の外を眺めている。
シーンとした夜空には満月が輝いていた。
番兵に気づかれないよう、正門の真横に身を低くして隠れた。
そこは月影になっていて番兵からはよく見えない。
正門の内側には、太い鉄の棒が横に架けれている。
この棒を横に動かして、はずせば門は開く。
城の外の台地は何もなく真っ暗な荒地が広がっている。
その台地からすこし下った傾斜した谷にはキジ国の親衛隊が300騎
すでに待機して息を潜めていた。
その先頭には四天王の剣を背中に帯した隊長の雄姿があった。
城の番兵が見えない台地の石の影には偵察の隊士が正門の
動きをじっと見つめていた。
正門の上の櫓には番兵が一人、別の櫓にはもう一人。。
城内の警戒している様子はない。。
その時、静かに正門が開き、隙間を残したまま動きが止まった。
正門の施錠がはずされた。
その事を櫓の上の番兵も気づいてはいない。
偵察隊が谷間に駆け下りてユージンに報告した。
「正門が開きました。遠くからは開錠されているようには
見えませぬが、まちがいなく開門の状態にあります。」
「そうかピーターがやった。」心でユージンは思った。
隊長の側にいた3人の部隊長にそれを伝えると
しずかに全隊を台地へと進めた。
2つの部隊は台地の下の廻道で馬からおりて待機。
最後の部隊は城の後ろ側に馬にのったまま静かに移動を始めた。
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