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環境ドキュメンタリー映画『第4の革命』監督、カール−A・フェヒナー「5%の人が変われば、社会は変わる」
週プレNEWS 1月30日(月)13時48分配信
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120130-00000304-playboyz-soci
昨年6月のドイツの脱原発宣言に影響を与えたといわれるドキュメンタリー映画『第4の革命』が日本で公開されている。世界に先駆けドイツが再生可能エネルギーを導入できた理由は? 来日したフェヒナー監督から、日本への緊急メッセージ。
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21世紀型のエネルギーとして最近盛んに語られるようになった再生可能エネルギー。その明るい未来を語る映画『第4の革命 エネルギー・デモクラシー』が、全国で順次公開中だ。
カール−A・フェヒナー監督はマリ共和国、ブラジル、インド、デンマーク、北米など世界中をロケして、新興国にも先進国にももたらしている新たなエネルギーの恩恵を描く。すべてのエネルギーを再生可能エネルギーで賄(まかな)う社会をつくりたい。地元ドイツで平和運動も続けてきたフェヒナー監督の野望は大きい。
■小規模分散型のエネルギーの普及を
――映画の中でマリ共和国ザンバラという町の産科医院の屋根の上にソーラーパネルが一基だけつけられます。すると医院に初めて電気が流れるというシーンが感動的でした。電気は買うだけでなく、自分でつくることができるんですね。
「あのクリニックは薬の保存のために冷蔵庫を使っていますが、そのために電気が不可欠でした。電気が初めて流れたとき、30人以上の女性がいたのですが、皆さん儀式のようにスイッチをつけたり消したりして、大変なにぎわいでした。そして、町の人々はとても貧しく世界に大きく後れを取っていると感じています」
――同じシーンに“世界人口のうち20億人は電気のないまま暮らしている”というテロップが流れますね?
「伝えたかったのは、こんな事実を承認してはいけない、あってはならないということ。そのためにも小規模分散型のエネルギーを世界的に普及させていく必要がありますね。個人規模・市町村レベルのコミュニティが発電をしていくようになれば、化石燃料に依存しないエネルギーのインフラ再構築が可能です」
――映画では100%のエネルギーシフトも可能だと?
「ドイツでは2020年までに再生可能エネルギーを20%にしようという目標が、もう昨年の段階で達成できました。家庭や小規模事業者の電力を全量買い取る政府の『固定価格買取制度』が効果を挙げているのです。世界各国が歩調を合わせていけば、2040年には再生可能エネルギーで100%のエネルギーを賄うことも可能だと信じています。再生可能エネルギーは騒音も毒物も出さずにCO2が削減できます。この革命には正義があります。正義からは平和が生まれ、平和は愛の一部になる。だからこの革命は魅力的でセクシーなものです」
――またエネルギーシフトは市場を変えると訴えています。どのような変化があるのでしょうか?
「ドイツの風力発電を例に取ると、新しい雇用が30万人ほど増えているんです。地域分散型の産業は雇用を生み出しますし、市民参加型の変革は自分たちも世界の変化の一部を担っているという充実感や社会的正義感を持つことになる。困っているのは売り上げの落ちる大手石油会社くらいですかね? 社会的正義のほうが重要ですよ」
――再生可能エネルギーについては結局コストが高くて損をする、という指摘もありますが?
「それはデタラメです。スタンフォード大学は、世界中のエネルギーを再生可能エネルギーに転換するのが得策かどうか、100人の経済学者にただしました。結果的に100%になれば、かかるコストより得られる利益がはるかに大きいとわかりました。もしも世界に380万基の風力発電機が設置されれば全体の半分、40%の太陽光とその他を含め、エネルギーの転換は可能です」
■ドイツを変えた12万人規模のデモ
――3・11フクシマ原発事故からわずか3ヵ月でドイツ政府は2022年までの全原発の停止を決定しました。なぜこうした迅速な決定を下せたのでしょうか?
「いやいや、反原発運動にも30年間の歴史があったからです。私も核廃棄物の輸送に反対するデモに参加して、これまでに5回警察の暴行を受けています。この30年の間にドイツ人の大半は原発がイヤだと感じるようになった。フクシマの事故にショックを受け、3月末バーデン=ヴュルテンベルク州の地方選挙で緑の党所属の州知事が誕生したことが大きかったし、もともとは物理学者だったメルケル首相も原発推進の立場を一変させました」
――日本の脱原発運動は争う相手が官民一体の原子力業界であり、半ば独占企業と化した電力会社です。彼らはまるで飽くなき利益追求をもくろむ怪物に見えたりもします。ドイツはどうですか?
「ドイツも一緒ですよ! 大会社はどれもモンスターです。だからモンスターを恐れないことに慣れなくてはいけない。中身は人間。人間が集まっての企業ですから。こちらが出せる武器は“数字”です。デモの参加人数は社会への影響力を持ちます。昨年4月、北ドイツで2ヵ所の原発をつなぐ120kmを“人間の鎖”で結ぼうという大型デモがあり、12万人が参加し、私も家族と参加しました。いい写真が撮れるからマスコミもやって来る。政治家も世論に喚起されていきます」
――事故を起こした当事国でありながら、日本政府はまだ脱原発の方向にはかじを取ろうとしていません。
「ドイツの場合は第二次世界大戦の後に、新しいドイツを立ち上げようという熱意が生まれ現在に続きます。こんな考え方があるんです。社会の中で5%の人が変わりたいと思い、実行すれば、変化は訪れるという考えです」
――たった5%ですか?
「そう。もちろん私の考えじゃなく、科学的な統計に基づいた学説です。5%の人々が社会のリーダーとなり、ある方向に向かっていけば国全体が変わっていくのです。日本の人口では600万人になりますかね。残りの人々はリーダーについていけばいい(笑)。震災の犠牲者やフクシマの被害者のためにも、日本はこの新しいエネルギーシフトを積極的に受け入れて、世界に良きお手本を示してほしいですね」
(取材・文/長谷川博一、撮影/山本尚明)
■カール−A・フェヒナー
1953年、ドイツ生まれ。ジャーナリスト、映画監督、プロデューサー。83年、フリーランサー及び平和活動家としてさまざまなデモに参加し、湾岸戦争の取材なども行なう。91年から持続可能性(サステナビリティ)をテーマにテレビ番組やドキュメンタリーを制作。
『第4の革命 エネルギー・デモクラシー』
風力発電のみですべての電気を賄うデンマークのエネルギー自治区や、電気のなかったマリ共和国の町にソーラーパネルを設置する様子など、小規模分散型の再生可能エネルギーの実現性を描く。東京の「K’s cinema」、横浜の「Brillia SHORTSHORTS THEATER」などで公開中。【http://www.4revo.org/】
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