このろくでもない、すばらしき世界

3.11以降の原発に関する膨大な情報をストックしています。ご活用ください(左のカテゴリから入ると記事一覧形式になり見やすいです)

全体表示

[ リスト ]

特別寄稿 『福島第一原発事故 7つの謎』
 事故から3年経ってなお次々に浮かび上がる謎
「1号機の冷却機能喪失は、なぜ見過ごされたのか?」 【前編】

現代ビジネス 2015/1/11 01:11
NHKスペシャル『メルトダウン』取材班

http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20150111-00041681-biz_gendai-nb

■失われた最初のチャンス

全電源喪失から1時間が経った午後4時41分。暗闇に包まれた1、2号機の中央制御室に大きな変化が起きた。 運転員の一人が声をあげる。

 「水位計が見えました」

消えていた1号機の原子炉水位計が見えるようになったのだ。津波の海水をかぶったバッテリーの一部が一時的に復活したようだった。原子炉水位は、燃料の先端から2メートル50センチ上の位置にあることを示していた。津波が来る前、水位は、燃料の先端から4メートル40センチの位置にあった。1時間に1メートル90センチも低くなったことになる。水位は、その後も刻一刻と下がっていた。運転員は、水位計の脇の盤面に、手書きで時間と水位を記録していった。そして、ホットラインを通じて免震棟へと報告した。午後4時56分、水位は燃料先端から1メートル90センチの位置まで下がった。そして、午後5時すぎ、水位計は再び見えなくなってしまった。水位計が見えていたおよそ15分間に、水位は60センチも下がったことになる。これは、ICが動いていない可能性があることを示す重要な情報だった。免震棟では、発電班の副班長が刻々と下がる原子炉水位の報告を受けていた。この情報は、すぐに技術班に伝えられ、このまま原子炉水位が低下するといつ燃料の先端に到達するか計算された。その予測は、このまま水位が低下すると、1時間後の午後6時15分には、燃料の先端に到達するというものだった。午後5時15分、免震棟と本店を結ぶテレビ会議で、マイクをとった技術班の担当者の声が響いた。「1号機水位低下、現在のまま低下していくとTAF(燃料先端)まで1時間!」1号機の原子炉水位が燃料の先端まで到達するのに、あと1時間の猶予しかない。衝撃的な予測だった。ICが動いているかどうかを見極めなければならない重要な警告だった。吉田調書では、政府事故調の調査官がこの時の経緯を取り上げ、「TAFまで1時間」という発言をどう受け止めたのか吉田に尋ねている。これに対して、吉田の答えは、意外にも「聞いていない」だった。それどころか、こう証言している。「今の水位の話も、誰がそんな計算したのか知らないけれども、本部の中で発話していないと思いますよ」調査官が、当時の情報班のメモを示しながら説明した段階で、ようやく吉田は「発話しているんでしょうね」という認識を示すが、「今、おっしゃった情報班の話は、私のそのときの記憶から欠落している。何で欠落しているのか、本店といろいろやっていた際に発話されているのか。逆に言うと、こんなことは班長がもっと強く言うべきですね」と述べている。ICの機能停止に気がつく最初のチャンスであった重要な警告は、なぜ吉田の記憶から欠落したのか。取材班が入手した情報班のメモに、その手がかりが記されていた。メモには「TAFまで1時間!」という発言の後に、間断なく様々な担当者がマイクで発言する様子が記されていた。 「事務本館入室禁止!」

 「海側バス乗り場まで、海水が来ているため、応援にいけない」

「4号機裏、軽油タンク火災の疑い。煙が5メートルほど昇っている」「東京から高圧電源車が来るが、何時間ぐらいかかるか確認してください」 巨大地震と巨大津波の被害が、原発の至る所で勃発していた。免震棟には、対応すべきことが次から次に押し寄せていたのだ。免震棟には、1号機から6号機まで、確認すべきことや問い合わせのコールが交錯していた。取材に対し、中央制御室との連絡役を務めていた発電班の副班長は、こう答えている。「重要な情報が集まってくる。それを現場の指揮者の所長にしっかり把握してもらわなければならないということで、マイクの空きを各班が待つような状態だった。あれだけ大きなことが一度に起きると、みんなで共有することが非常に厳しかった」さらに免震棟が行わなければならないことは、原子炉の対応だけではなかった。地震発生から、構内にいる社員と協力企業のすべての作業員の安否確認にも手間がかかっていた。この日は6350人もの人が働いていた。吉田らは、協力企業から入ってくる安否の情報を気にしながら、原子炉の初動対応にもあたっていた。メモには、「発電所から帰ろうとしている車、時速10キロで流れている」という発言もあった。原子炉の冷却作業に携わる可能性のない社員や作業員、5000人あまりはバスやマイカーで原発を後にした。構内は、2キロにわたって車が数珠つなぎになっていたのである。1号機の水位低下の情報は、洪水のように押し寄せる他の報告の中に埋もれてしまった。入り乱れる情報の中で、活かされることなく、共有されることなく、免震棟の幹部の頭の中からいつの間にか消え去ってしまった。ICが動いていないことに気がつく最初のチャンスは、こうして失われてしまったのだ。

■ブタの鼻からの蒸気

午後4時44分、ICが動いていないことに気がつく次のチャンスが訪れた。1、2号機の中央制御室の当直長に、ホットラインを通じて免震棟から報告が届いた。 「ブタの鼻から蒸気が出ている? 了解!」

当直長が、そう復唱した。ブタの鼻とは、1号機の原子炉建屋の西側の壁、高さ20メートルのところにある2つの排気管のことだった。ICが動くと、ICから発生した蒸気を外に排出する役割をもっていた。実は、当直長は、電源が失われ、ICが動いているかどうかわからなくなった後、免震棟に、ブタの鼻から蒸気が出ているか確認してほしいと依頼していた。運転員の先輩から、ICが作動すると、ブタの鼻から白い蒸気が勢いよく出るという話を伝え聞いていたからである。1号機の西側の壁は、中央制御室のある建屋からは見えにくい位置にあったが、1号機の北西にある免震棟からは、よく見える位置にあった。依頼を受けて、免震棟にいた発電班の社員が、免震棟の駐車場に出て、1号機の原子炉建屋のブタの鼻から蒸気が出ているのを確認した。ブタの鼻から蒸気が出ているということは、ICが動いていることを意味した。免震棟は、ICが動いていると受け止めた。しかし、ブタの鼻を見に行った発電班の社員の報告は、「蒸気がもやもやと出ている」というものだった。もやもやという蒸気の状態が、何を意味するのか。この時、福島第一原発の所員たちは、正確に判断できたのだろうか。 その疑問の鍵を解く記述が吉田調書の中に記されている。

実は、吉田は、1971年に福島第一原発1号機が稼働してからICが実際に動いたのは、今回が初めてだと証言している。そのうえで、ICが動いた時にどういう挙動を示すかということに、「十分な知見がない」と打ち明けている。この時、福島第一原発にいる誰一人として、実際にICが動いたところを見た者はいなかったのである。1号機は運転開始直後を除いて40年間、ICのような非常用の冷却装置を使う事故は起きていなかった。さらに、ICを試験的に動かすことも、運転開始前の試運転の期間に行われた程度で、その後、行われていなかった。ICは40年間一度も動いていなかったのである。ICが動くと、実際は、どのような蒸気が噴き出すのか。アメリカには、福島第一原発と同じころに作られ、ICを備えた原発が今も稼働している。アメリカ東海岸にあるニューヨーク州のナイン・マイル・ポイント原子力発電所もその一つだ。この原発では、福島第一原発とは異なり、定期的にICの起動試験を行っていた。ICが正常に作動するかどうかを確認するためだった。ナイン・マイル・ポイント原発の幹部グレッグ・ピットは、運転員なら誰でも、ICが動いた時の蒸気の状態を知っていると説明した。ピットは、「大量の水蒸気が出て、うるさいどころか轟音がする。心の準備ができていないと、びっくりするほどだ」と証言した。2010年の起動試験の時に撮影された写真には、もやもやどころか、原子炉建屋全体を覆い尽くすほどの大量の蒸気が出ている様子が写っていた。では、もやもやとした蒸気は、何を意味するのか。取材に対し、ピットは「もやもやとした蒸気は、ICが停止してから2~3時間の間に出る蒸気の状態だ」と明言した。もやもやとした蒸気とは、ICが止まっていることを意味していたのだ。1号機の当直長の経験もあり、福島第一原発を古くから知る発電班の副班長は、こう振り返っている。「過去、私も、ICが実際に動いている状態を見た経験はありませんから、多少なりとも蒸気が出ていたので、もしかすると動いているかもしれないと考えてしまった。止まっているという確信を誰もあげていなかったし、所長クラスに、しっかり判断できる材料を誰も進んで言えなかったということだと思います」ブタの鼻から出ていたもやもやとした蒸気こそ、ICが止まっていることに気がつく大きなチャンスだった。しかしチャンスはまたも失われてしまったのだ。(「後編」に続く)


よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

いまならもらえる!ウィスパーうすさら
薄いしモレを防ぐ尿ケアパッド
話題の新製品を10,000名様にプレゼント
ふるさと納税サイト『さとふる』
実質2000円で特産品がお手元に
11/30までキャンペーン実施中!
いまならもらえる!ウィスパーWガード
薄いしモレを防ぐパンティライナー
話題の新製品を10,000名様にプレゼント

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事