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盛夏の雪

イメージ 1

  

夏の昼下がりに降る雪。
真昼の闇に飛び交う蛍のようだった。
 
あの日観た光景。乱舞な無数の蛍虫。
小さく光る尾っぽぉ。眩しき夏の太陽で焦がし。白さで光らせてた。
 
 
「そやから何遍も言うとるやろッ!視たんや、雪が降っとるんやッ!」
 
あいつ。胸の真ん中真っ赤にさせ、言ってました・・・・。たぶん言ってた。
口が動くたびに何か。聴こえ難い何かを言うたびに、胸からブクブク っと。
蟹にみたいに赤い泡、吹いとった。
 
「なんやッ! なんがやッ! なんがやッ!」
 
あいつ。幾ら聞いても返事せんかった。

人の躯が何かの抜け殻なら、毛布もつより頼りなかった。
っと、知りました。
 

落ちるかと。低さな感じの太陽に焦がされ。
陽炎が立ち昇る黒い舗装道路の向こう側。
焼ける道の中央白線隠し地面スレスレに浮かんでいました。
 
幻視かな逃げ水蜃気楼。浮かんでた。
 
近寄れば逃げて消え逝く朧な水面。青い空映していました。
焦げる道の真ん中に。空を映す池が掘られてるのかと。
 
 
サッキまで、あいつが跨り駆ってた単車。遥か向こう側でパイプ鍍金ハンドル
酷くひん曲がって青い池の真ん中で、半分沈んで横倒しになっていた。
単車の燃料タンク破れ目から流れ出た、薄赤いワイン色の燃料。
道路の熱さで揮発させられ、揺らぐ陽炎のように、空気メラメラさせていました。
 
自分。発火するのは時間の問題だなぁ っと。
 

自分たち。あの日が仲間とつるんで走る、最後の日に為るはずだった。
 
 
或る日。あいつが仲間に告白した。
 
「おれ、所帯もつかもしれんで。」 ット。
「お前、夕べなにしたんや?」
「ドッカ悪いんかぁ?」

「冗談 チャウねん。」

突然、仲間から取り囲まれた。

「ボケ、イッチョ前にぃナニ言うねんッ!」 ボコッ!
「冗談チャウぅ〜? ホナなんやッ!」 ボッコンッ!
「誰が悲しむ思うとんか、ボケッ!」 グッ!
「浣腸ぉ〜!」
「ギャッ!」 ケツ渋ッう〜!
「もぉ一回やッ、指浣腸したれッ!」
「ヨッシャ、動けんように押さえとけや。」

「もぉぅえぇ!ソンくらいでえぇやろもッ!」

あいつ、いつもに似合わん、チョット恥ずかしそうな顔やった。
首まで真っ赤にさせ、物凄く嬉しそうだった。
おれら、ただ嬉しかった。 仲間の一人が女と所帯。
いつでも訪ねて行けれる。
 
そんな家が出来るからと想うたからやった。
 

「最後の独身オダブツ卒業ハシリやなぁ!」
「お祝いやでぇ・・・・・キッツイなぁ!」
「ケツに乗せるんかぁ?」
「ぉ〜!ホンマや乗せたれや。おれらも嫁ハン拝みたいがなッ!」
 
 
 
「あいつぅ、来よるんかぁ?」
「女ぁ、恥ずかしいぃ為ってんとチャウかぁ?」

「ぁッ!来よるッ。」
 

ケツ(後ろ)に乗っかってる女サングラスしてた。
長い髪ぉポニーテールに結んでた。
あいつ得意げに道幅イッパイに。
スラロームしながら近寄ってきた。
 

「夏に見る雪はぁ秋に見る桜の散るが如く ッテかぁ?」
「勿体無いなぁ。アイツになぁ・・・・ッチ!」
「クッソゥ!えぇ娘(コ)ぅ見つけヨッタなぁ!」

女がケツから降りてメット脱いだら。あいつに判らんように、みんなは呻いた。

「お前の女。夏の雪やでぇ。」
「ウチがですかぁ?」

メット脱いだら。みんながヒヤ化しモって想像した以上の。上玉やった。

「ぅん。意味なぁ滅多と居らん。別嬪ちゅうねん。」
「ぅちぃ。恥ずかしかぁ!」
「故郷ぃ(クニぃ)何処ね?」

「九州ぅの○○ですぅ。」
 
駅裏の紡績工場で働いてるって。言ってました。
 
 
 
道路の側溝の向こう側。藪の中まで吹っ飛ばされた女が後から見つかった。
対向車線のスポーツセダン。センターライン跨いであいにつぶつかった。
停まりもしないで逃げた。

直ぐに仲間が追いかけて現場まで連れ戻した。
運転していた若者。顔つきが判らん位に。ボ゙コボコにされていた。
 

「こんガキ、謝らんのやで!」 泣きながらやった。
「こんガキ、道に寝かせろッ!ワイが轢き殺したるッ!」

自分。何も言わんと若者の躯ぁ。
髪の毛掴んで道路の真ん中まで。
引き摺るようにして。持って行った。
 

「お前。ホンマに謝らんかったら殺すでッ!コラッ。」
 

鼻血と鼻水塗れの腫れぼったい横顔に。唾飛ばしモって囁いた。
コッチに顔向け殴りつけた。 何回怒突いたかは憶えていません。

「どやっ!謝る気ぃに為ったんかッ!」 今度は怒鳴った。

口が動いたような気がしたので、胸倉から手ぇ離したら。
地面に落ちた後頭部から鈍い音がした。
 
遠くで。パトと救急車の緊急サイレンの音が鳴ってるのが聴こえた。
次第に音が近寄ってくる。
 

「お前ら。もぅえぇさかいにドッカに行かんか。」
「ナンデや? 居るがな。」
「あんなんしたんや。コッチかてただで済まんのやで!」

道路に転がってる若者。顎で指しながらやった。
 

女は頚椎の捻挫と軽い擦り傷打撲で済んだ。数日入院した。
此の女とは此れが最初で最後の出会いだった。
女の国元から。事故の連絡を受け。心配した親御さんがやってきた。
女が病院から退院すると。そのまゝ国元まで連れ帰ってしまった。
 

おれら。事故の現場を後にしようとしたら単車が燃えた。
道路の脇まで流れ出してたガソリンに引火した。
横風で流れる黒煙突っ切って事故現場から離れた。
 
最初の角を曲がるとき。パトと救急車と擦れ違った。
後を追って振り返ると。燃え上がった黒煙。晴れた空高く昇っていました。
 
 
 
夏は。想いでなんかじゃぁない。悔いを連れて遣ってきます。
 
 
幻が。暑さななか。
 
夏の雪。降らせました。
 
 
  
 
 
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