|
(画像はイメージ)
午後の太陽。ビル影に重なるように眩しく輝いてた。 時々。俯き加減で歩きながら空の太陽。
眩しさをこらへ見上げた。 自分。此の頃は睡眠不足が当たり前だった。
日頃の不摂生な夜更かしで サッキ目覚めたばかりの躯。
ナンとなくケダルク疲れきっていた。
ボロいアパートで 躯を休ませもしないで。
街に出てきたことを後悔していました。 魚町(トトマチ)入口の機械仕掛けの信号灯。
赤が青に輝いたので歩きだした。
当時。世話になっていた深夜倶楽部。店内改装で営業を暫く休むことになった。 だから。バブルが弾ける前の稼ぎ時には珍しく。平日休日の最初の日だった。
横断歩道の向こう側で俯いて佇んでいたのが アイツだと気づいた。 ゼブラの横断舗道を渡らずに。此のまま引き返そうかと想った。
アイツの顔が急に上向いた。視線が此方にと。
昔の見慣れた眼の表情じゃぁなかった。
少し変わったような気がした。
だから自分。気づかれたと。 だけど。知らんフリして渡るしかなかった。
タブン。お互いにそぉすると想った。
横断歩道の真ん中あたりだった。
アイツが素知らぬ顔してすれ違い其のまま行こうとした。
咄嗟にアイツの腕をとってしまった。
「元気にしてたんかぁ。」 ツイ想わずがなでした。 アイツ。チラリとも此方を見ようともしなかった。後悔し掴んだ腕を放した。 何事もなかったかのように背中を見せ。歩いてゆく。
再び歩き始めると。知らない人の蔑んだうすら笑いとすれ違った。 背後で信号が変わり同時に何台もの車が動きだす気配を感じた。
突然。後ろの方で急ブレーキの音とクラクションが喚きだした。 直ぐに車の運転手だろう。誰かを怒鳴りつける声がした。
振り返りもしなかった。 道路の向こう側。舗道を遠のくアイツの後姿なんか視たくもなかったから。
気晴らしと眠気覚ましに珈琲でも啜ろうと。馴染みの喫茶店に入りかけたら肩を掴まれた。 肩越しに振り返る。ショルダーバックが顔面メッがけて振り下ろされようと。
咄嗟に背中を丸めた。肩甲骨に バックの角が減り込んだ。
「あんた!ナンで手ぇお放すんよっ!」 「オッ前ぇ・・・・・」
背中の痛さで声が続かなかった。
「放すんやったらナンで摑まえるんよぉ!アホォォ!」 茶店の自動扉の前で。ナンにも応えづに。痛みを堪える為にツッ立っていました。 目の前で両開きの硝子の扉が。開いては閉じてを繰り返してた。
何回目かの開け閉めのあと。茶店のマスターが出てきた。
自分の肩越しに後ろのアイツに声をかけた。 「オッ!〇〇チャン久しぶりやなぁ。元気にしてましたんかぁ。」 「ゲンキになんかしとらん!」
「ォッ!元気やがな。コナイナとこでナンやから入って茶ぁでもシバカンかいなぁ。」
アイツが背中を押したので暗い店の中に入った。
照明落とした暗さに慣れるまで。ふたりとも口を利かなかった。
「ホレ。ブルマン。店の奢りや。気ぃよぉ飲んだってかぁ。」 「スミマセンやわぁ○○さんぅ。ゴメンねぇ。」
アイツ少し落ち着いたのか以前のもの言いでした。 「えぇがな。アンタ。随分見ぃひん間(マ)ぁにエライ別嬪ハンにぃなったなぁ。」 確かに綺麗になっていた。あの時。別れる前は若さ任せの可愛いさだった。 今。目の前でカップの珈琲啜ってるアイツ。大人の女になっていた。
「どぉなん?」 「ドッどぉって?」
「シッカリ生きてましたんかぁ。」
「マッまぁ・・・・」 「アンタぁ。未だ足ぉ洗ってないんかぁ?」 「ぁッあぁ。未だ首までドップリ浸かってる。」
「居るん?」 「ナンがや?」
「誰かとイッショに居るん。」
「アホカ!ワイ独りぃや。」
それから暫くふたりとも何も喋らなかった。 時々。アイツと自分の珈琲啜る音と。皿にカップを戻す音がしてた。 最近封切られた伊太利亜映画のサラウンド盤。静かに流れてた。
上目づかいにアイツを視ると。アイツもカップの縁越しにコッチを観てた。
お前へはナンでソナイになぁ。ット胸の中で。 今まで幾度となく想い知った後悔の念が。また湧いてきた。
「ぁんたぁ。ナンでウチのことぉ訊かへんのぉ。」 「ナニぉ訊くんや?」
再び静かさが傍に着た。啜る珈琲が苦かった。 ワイ。息苦しさを憶え始めていた。
「あんたぁ。変わらへんわぁ。」 「ナッなんがやねん?」
「鈍感ぅ・・・・」 アイツがあの時。最後に部屋から出て逝く時に言い放った言葉でした。 自分。此処が勝負時やと想いましたから言いました。
「ホンナラ変わってた方が良かったんかっ!」 「ェッ!」
「ワイが変わってしまってた方ぉがな。よかったんか!ナァ?」
「・・・・・いぃやぁ。」
「ワイ。イッパイ後悔しましたがな。イッパイ!」 自分。チョット怒鳴り気味でした。店の奥からマスターの咳払が聴こえてきた。 静かさが再び。もぉぅコンナ状況は堪えて欲しかった。
「ウチぃなぁ。結婚してたんやでぇ。」 「知ってる。」 ケドなぁ・・・・・
シテタンヤデ ってどぉゆうことやねん? ット心で。 マサカァ っとも想いました此の時。
ナンかを訊きたかったけど訊けんかった。 ドンナ風に訊けばよかったんだろぉと。今でも想うことがあります。
「何処に行くつもりやったん?」 「ドコニって?」
「サッキ歩いてたやんかぁ。」
「久しぶりに映画ぁ観よかぁ想ぉてたわ。」
「そぉなん・・・・・そぉぅ。」
ぎこちなさの天使が辺りに居座ってるわぁ! 誰かぁドナイかしてくれんかぁ・・・・・・ツクヅクやった。
「ぁんなぁ。」 一緒にぃっと言いかけたけど。アイツが急に立ち上がった。 「チョット電話してくる。」 店の入り口辺りの公衆電話まで歩いて行く後姿。 あの時のアイツの後姿とダブって見えた。
モットも。着ている物が昔と違って上等やった。
仏蘭西映画の秘書役の女優が着るような。タイトなスーツ姿やった。
右肩から提げた茶色のバック。
ブランドなど無関心な自分が観ても。ケッコウな代物だと。
「えぇケツぅしてるなぁ○○チャンぅ!」 いつの間にか近寄ってきてたマスター。 銀盆抱くようにして。ツクヅクとした頷きやった。
「エッ!」 釣られて目が遠のくアイツの尻に。 前屈みで銀盆に。アイツと自分の空のカップを載せながら。 ワイの耳元に囁くように言ってきた。
「チィフ。逃がしたらアカンでぇ。アナいな娘(コ)ぉ滅多とおらんさかいな。」 「ソッそんなんとチャイますわぁ!」
「茶ぁ。冷めてもぉたやろ。淹れかえたろ。」
「もぉぅえぇですわ。出ますさかいにぃ。」
「ナンや。もぉ帰るんかいな。モット居ったらえぇがな。ナッ。」
アイツを見ると受話器を肩に載せ。コッチを観ながら話していた。 開いた手帳にナニやら書きこんでいた。
「そぉや!チョット待っとり。帰ったらアカンで。ナッ帰ったら!」 黒色の前掛けを外しながらでした。 ッデ。店の奥に向かって言いました。
「ぉい。チョット出るさかいな!」 「出るってアンタッ!何処いきますの?」
「チョットやチョット!」
店を飛び出したマスター。飾り窓の外を横切りながら走って行った。 「もぉぅあん人ぉ。ドナイしましたんやろねぇ?」 新しいく淹れなおした珈琲を持ってきた奥さんが。 「女将さんぅ。スミマセン。」 「ぃいんよぉ。なぁんも気にせんといてぇ。」
「○○ちゃんぅ。綺麗になりはったなぁ!」
「アッうん。そぉですなぁ。」
「そぉですなぁッテ。アンタ他人事みたにぃ言わんときんかぁ。」
女将さん。モット何かを言いたそうだったけど。アイツが席に戻ってきた。 「新しゅに淹れてくれたわ。飲もか。」 「すみませんぅ。御馳走になりますぅ。」
「エェんよぉ。ゆっくりしてってなぁ。」
「何処に電話したん。って訊かへんの?」 「関係ないわ。」
「ふぅ・・・・・んぅ。」
また暫く互いに黙りこんで珈琲ぉ啜っていました。
店の自動扉が完全に開く間もなく。マスターが息を切らせて戻ってきた。
「ジッ時間がないさかいな。此れもって早ぉ行ってき!」
少し離れたところに在る。映画館の入場切符が二枚。目の前に突き出された。 マスター息が切れかけてるせいか。切符の端が微妙に震えていた。
「大将ょぉ・・・・・・ナンでぇ?」 「伊太利亜の刑事ちゅう映画が。リバイバル上映されてるんや。次の上映がもぉすぐ始まるんや。」
奥から出てきた女将さん。旦那がナニをしようとしたのか悟ったから言いました。
「アンタら。サッサト往ってきぃ!」 「早ぉ行こぉ。」 アイツが眼ぉ伏せ。立ち上がりながら言いました。 「ソッそやな。遠慮したら失礼やもんな。」 「おぃ。切符をもっていかんかいなぁ ァホ!」
「アッ。ドッどぉもすんません。頂きますわ。オォキニッ!」
アイツ。店を出がけに振り返り。腰を深く折った。 慌てて自分も同じようにしました。
日差しも傾き晩かったけど。外は眩しさがイッパイに満ちていました。 其れよりも自分。モット心が眩しさでイッパイに為っていました。
ツヅキマス
|

>
- Yahoo!サービス
>
- Yahoo!ブログ
>
- 練習用





