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書庫【 踊り妓 】

以前、「踊り子」ってお題で書いてます。其れを下地にしまして、色々遣り残してますので、新しく文章に致しました。
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踊り妓 終わり

  


見舞いにぃ行かなかったのは、逃げたかったはずじゃぁなかった。
唯ぁ自分、アイツの顔を視るのが 恐くて辛かった。
タブン、アイツも同じでぇ、来て欲しくなかったと想う。

自分ぅ、今は兎も角 此れから先もぅ
其の事をぉ 悔やまんと想うねん。

知らせを聞いたときぃ、ヤッパシかぁ!
って、けど!ぅ、ナンデや!ナンで今なんや!!
何回も、何回もぅ! ナンデや、なんでやぁ!

・ ・ ・ ・ ナンでやぁ!

あの日以来、ギョウサンぅ酒ぇ 飲みました。
でもなぁ、酩酊はなぁ、訪れては暮れませんでしたぁ〜!
暗さな気持ちがぁ、真っ暗さな心にぃ!
幾ら救いを求めてもなぁ、あかんもんやねん。



その年の秋にぃ F わぁ手術した。
でもぉ、そのまま帰ってこなかった。
二度目の手術と、ママに葬式の後で聞いた。


「あのこぉ、F なぁ童貞やったんやってぇ、知ってたんかぁ?あんたぁ 」
「うん、うすうすなぁ。 そやさかいにぃ、みさこはんに頼んだんかぁ! 」
「そうやぁ、他の誰に頼める?あの娘(こ)しかおらんかったんやでぇ 」
「ぅん。 おおきにやったなぁ、ママぁ 」
「うん、もぉええかぁ! 今日わぁ、あんたに聴いてもらうでぇ、ええかぁ? 」
「 ぇ! ・ ・ ・ ・ 聞かんとぉ あかんかぁ? 」
「うちぃかてなぁ、誰かにぃ聞いてもらわんかったら、気ぃオカシュウなるなぁ! 」

墓石の天辺にぃ柄杓で、バケツの水ぅ掛けながら
ママぁが振り返り様にぃ、ワイにぃ水っ! 掛けた。

「冷たいなぁ ママぁ 」

っと、喋った口調。 自分でもぅ、驚くほどの静かな語り口ぃやった。

「なぁ、冷たいなぁ。 コッチの(石の)中の方がぁモットやろなぁ 」
「ぁあ、そうやろなぁ 」
「あんたぁ チョットわぁ大人にぃ為ったみたいやなぁ! 」
「知るかっ! 」

ママぁ、隣のぅ墓の石灯篭にぃ腰ぃ降ろして、煙草ぉ銜えた。
自分、ジッポで火ぃ 点けてあげた。

「あん時ぃなぁ ・ ・ ・ ・ 」

尖がらせた唇から、紫煙吹いて喋り始めました。



あの日、みさこはんがぁ
舞台が終わって劇場の裏口から出たら、Fが待っていた。
そんな事は初めてやったから、みさこはん驚いた。
驚くぅみさこはん連れて、Fぅ 二人でオデン屋で晩飯ぃ。
それからぁ、ママぁの処(ボギィー)。

二人とも、よぉ笑っていたって!

っで、アパートに帰ったら、いつもなら別々にぃ 風呂入って寝る。
自分、想像してたけど、二人ぃ一度もぉ、同衾した事ぉなかったそうやぁ!
だけどぅ其の日わぁ Fがぁ 一緒や言うて誘った。


「そうかぁ、あいつなぁ なんかぁ吹っ切れたみたいにぃ、明るくなったもんなぁ! 」
「うん、ふたりともなぁ、救われたんやでぇ 」
「えぇ! 二人ともって、なにやねん? 」
「あんなぁ、あの日なぁ お風呂でなぁ ・ ・ ・ ・ 」


風呂場で、初めて視る Fの手術痕。
どないにぃ見てもぅ 傷わぁ傷。

みさこはん、Fの身体洗おうとしたら、Fが先にぃみさこはん洗い出した。

「此処さきに洗って 」

みさこはん、左の乳房の下ぁ 指ぃ差して言った。
舞台化粧ぉのぅ ドォーラン流れたら 傷ぅ出てきた。
鋭い切っ先のぅ、匕首かなんかのぅ、刃傷痕ぅ!

心中沙汰の、死に損ないの傷!ッ



「そうかぁ、しらんかったわぁ! 」

自分、墓場からの帰りの車の運転手。

「そう言えばなぁ、みさこはん。 長崎の話しぃ、途中でやめた事あったなぁ 」
「Fなぁ、生きたいゆうてたねんでぇ!」
「 ! ・ ・ ・ ・ ・ 」
「みさこがなぁ生きれ、生きなぁだめ! っとぉ、って言うねん!ゆうってたわぁ! 」

雨も降らんのに、フロントガラスが見難いわぁ!

「あぁ、そうそう! みさこがぁこれ、あんたらに渡してって 」
「なになん? 」
「あんたらにわなぁ、感謝してもしきれん言うてたでぇ 」
「そうかぁ、そいでぇなになん? 」
「これ、なんやろなぁ? 」

小さな平たい紙包みが三つ。 ママの手のひらに載ってる。

「開けたらぁ 」
「チョット車停めてみぃ 」
「えぇさかいにぃ開けてみぃ 」
「じゃぁ、うちのん開けるわぁ 」
「なんやぁ、それならもっと早くに開けたらええねん 」
「そやけどなぁ、みんなぁでぇ・・・・!! 」

突然ママの嗚咽! 車を道路脇にぃ停めた。

「どないしたんやぁ!もぉ!ッ 」

ママぁの、震えながら差し出す手のひらから、わいの名前の包みをとった。
開くと、小さなぁ花びらが 自分の太腿にぃ 落ちた。
あの日、劇場で渡した花束の、押し花!

 上手にできてた!

包み紙の裏に、細かい文字ぃが書いてた。
所々に、タブン、涙の跡ぅがあった。
途中まで読めたけど、後わぁ見えませんでしたぁ。

もぉ!堪らんかった!
ママぁと二人で、泣いて泣いて泣いてぇ!

泣き喚きましたぁ〜!



  お終い。


  

水の中の 出来事 。

    


目覚めた時ぃ 直ぐにぃ

昨夜ボギィーママぁに、強引にぃ約束させられた
今日の夕方にぃ観に行く 「踊り」 のコトが、頭に浮かんだ。
出来ることなら、此の侭ぁ、明日の朝まで寝続けていたかった。 
布団の中で、悶々ッと為って、愚図愚図ぅっとしていた。
布団、頭から被って、ワザとな一人寝たフリぃやった。

寝起きの耳が、微かなぁ、アパートの狭い階段を、駆け上がってくる音ぅ拾った。
足音は、運動靴。 毎日ぃ今頃のぅ時間になると聴こえるぅ
聞々慣れたぁ、ゴム底のぅ靴の音 っと、古い木ぃが軋む音ぅ でした。
二階の廊下ぉぅ、軽やかにぃ走ってきていた。

近づいた足音ぅが止んだら、自分の部屋の小さな玄関から音が。
薄いベニヤ作りの 開きの扉の、金属の郵便受け蓋が、内側に開く音。
続いて、夕刊新聞紙が、土間に落ちる音。
っで、扉の横の呼び鈴(ブザー)ボタンが、乱暴に二回叩かれる音。
二回鳴ったブザーの音が消える間にぃ、足音、遠のいて行った。

「チッ! 」 舌打ちして、起きました。



チャリンコ(自転車)で夕方頃ぅ、ママぁの店にぃ着いたらぁ、Fが居った。
今ぁ 起きたぁみたいな、ツンツンって跳ねた髪の毛してる。
開店前のぅ、店の掃除のぉ お手伝いしてたぁ。
自分は、店の妓が入れてくれた、珈琲啜っりながら
持ってきた夕刊広げて、読んでる振りぃしてた。
時々ぃ腕時計、盗み見しながらやった。

おっちゃんが、未だやったから。

やっぱしぃ、酒の上の約束わぁ、アンガイぃ守れんもんなぁ!
って、想っていたら、店の白い扉が開け放たれた向こうから、聞こえてきた。
店の前の裏路地の向こうの、通りにぃ、トラックが急停止する音が。

路地に、ジィーゼルエンジンの音が響いて、重たいドアが閉まる音。
大声で、ナニやら礼ぉぅ、怒鳴ってるようなぁ ・ ・ ・ ・ !
直ぐに、乱暴に地面蹴る靴音。 走ってくる靴音。
おっちゃん、安全靴踏み鳴らして、走って来はった。

大きな風呂敷包みぃ 抱えてっ!


「わぁ〜! マッまにおうたかぁ? 」

黄色いヘルメット、カウンタァ〜に置きながら息整えてる。

「なにぃ、急いでるんねぇ! 」 今はまだ、化粧ッけのマッタクない、能面顔のママ。
「なにぃ、言うてるやぁ〜ママ!っ、みさちゃんの踊り観るんやでぇ!
  間に合わんかったら、あかんやろぉ! 」

「!ッ、ふぅ〜ん そうかぁ、でぇそれえなんやねんなぁ? 」
「これかぁ、これなぁ ・ ・ ・ ! 」


喋りながらぁ、大事そうにぃ風呂敷包みのぉ、結び目ぇ解いたぁ。
広げたら、見るからに仕立ての良さそうな、上等なぁ礼服がぁ! ・ ・ ・ 出てきた!!
真更なぁ、ピカピカにぃ磨きこんだ、革靴もぉ!
踝のところにぃ、アルファベットの崩し文字がぁ刺繍された、靴下もぉ!
襟がキッチリ立ってる、真っ白なぁワイシャツぅ〜!


「此れにぃ着替えるさかいになぁ 」 

腰のぅ安全帯ベルトぉぅ緩めて、ニッカズボン脱ぎ始める!

「あんたぁ、ウチかてぇ女なんやでぇ〜! 」

笑いながらママぁ、目配せぇ こっちに飛ばした。


走りましたわぁ! 近くの貸衣装屋さんまでぇ!
行くって、ママがぁ電話で言っててくれてたさかいにぃ
直ぐに取って帰って 裸ぁ〜!
掃除してた店の妓たちぃが、おおハシャギ!

Fだけがぁ、静かにしてたなぁ。
なにがぁ? 始まるねん? やった。

着替えたら、ママが言うたわぁ!
まぁ〜! 普段見ぃひん格好ぉ、見れたわぁ! って。

 ニヤニヤぁ、お笑いでんねん。



「えぇ! コッ、此処? ・ ・ ・ ぉぅ! 」

 格ッ好ぅ、キッチリお決めのぅ、オッチャン。 花束ぁ抱いてます。

「そぉうやぁ〜、何ッ処にぃ行くぅ想うてたん? 」

 ママぁ、涼しく言い放ちました。

「!ッ おぅ! えッ!ぇ ・ ・ ・ ・ 何でぇ? 」
「何でってぇ、何ッ処にぃ行く想ってたん、日劇かぁ?市民会館かぁ?あんたぁ 」
「ソッそやけどぉ、此処ってぇ! ぁあぁ〜ぁぃやぁ〜! ほんまかぁ!ぁ 」
「なに虚ってまんねん!アンサン! さぁ〜入るでぇ 」
「あぁ! いやっ、うん! ワッわかったわぁ!しゃあないわぁ! 」


入って、一番後ろ付近の席にぃ座って、開演時間待ちぃ。
キッと日頃は、職人相手にぃ、タブン怒鳴り散らしてるかもなぁ おっちゃん。
静かにぃ座って、落ち着きなくぅ太腿ぅ 揺すってる。

ママぁわぁ 消えはった。 仕方ぁないわなぁ!
Fわぁ、物珍しそうにぃ アッチこっちぃ見回してた。


みさこはん、此の世界でわぁ 新人さん。
だからぁ、演目の一番最初が 出番やった。

灯りが消えて、琴乃音。
舞台のぅ両袖の上辺りからから、虹色のスポットライトが走りました。
其れが消え、小さな劇場内が真っ暗になたら、舞台の真上からのぅ光の柱ぁ!

眩しい光の中にぃ、赤色だけのぅ、簡素な浴衣姿の女はん!

煌びやかな扇で隠して、伏せてた顔ぅ上げたら
昨晩にぃ見たぁ みさこはんとわぁ 違う顔してた。
元の顔が判らん位にぃ、舞台化粧がケバかった。
細いぃ首筋にぃ真っ白な、白粉がぁ〜!

けど、みさこはんでした。
自分、眼の遣り場にぃ ・ ・ ・ ・ !ッ

おっちゃん、横目で視たらぁ顔ぅ 下にぃ やった。
自分、肘で思いっクソぉぅ! 突いた!
おっちゃん。 呻いた!


「観てやらんのんなぁ ! 」
「 ぇ!・ ・クゥ〜イッタァ! ・ ・ 」
「なにしにぃ来たんやぁ! ボケッ!帰れ! 」
「ッ! ・ ・ ・ ッテ 」
「観な、失礼と違うんかぁ! 観ぃひんかったらぁ帰れやぁ! 」
「ワァ、わかった! 観るがなぁ! 」


みさこはん、踊りながらぁ客席のぅ 真ん中までのぅ
張り出し舞台にぃ 滑るようなぁ脚さばきでやって来るぅ!


綺麗なぁ 乳房ぁしてたぁ!
綺麗なぁ 肩ぁしてる!
綺麗なぁ 腹 ・ ・ ・ ・ ぁ!
綺麗なぁ お尻ぃ してるねんやぁ !

踊りぃ お世辞にも上手くなかったぁ
それでもなぁ 一生懸命にぃ 踊ってはった!

一曲終わって 直ぐに場内が少し明るくなった。
客席がまぁまぁ、見渡せる程度のぅ灯りぃ。
続けて、次の曲ぅ。 みさこはん、踊りながら客席見て、捜す様な視線。

突然!Fが、持ってる花束ぁ持ち上げて、振り回したぁ!
おっちゃんもぅ 揚げた。 釣られて、わてもぉ!


他のお客さん、なんやぁって、こっち観だした。
まぁ〜! ・ ・ ・ ぁ ワイらぁ 浮いてたわなぁ。
礼服着てるん わてらだけやでぇ!


おっちゃん、ナにぃ想うてかぁ、舞台めがけて小走りぃ!
自分、連れ戻しに追いかけた!
追いついたら、おっちゃん 舞台の直ぐ下で 精一杯ぃ背伸びぃして見上げ
花束ぁ渡そうとして、捧げ持ってる。

みさこはん、驚いてた!

「みさこはん、綺麗やでぇ!ほんまにぃ綺麗やでぇ〜! 」

おっちゃん、花束ぁ渡しながら言ってた。

「うん! ありがとうぅ!! 」
「これも、とってんかぁ 」

Fがぁ、おっちゃんのぅ肩越しにぃ、視線外しながら渡した。

「ぅうん、ありがとぉ! 」 ・ ・ ・ ・  泣き声やった!


わい、なぁんもぅ見えん様になってきた!
全部ぅ 水の中での出来事みたいやった。


慌てて席に戻った。

戻りかけに場内入り口ぃ 見たらぁ、ママがぁ警備員と話してはった。
ママぁ、引き止めてくれてたんやぁ!


公演が全部終わって、劇場出る時ぃ
同伴出勤の、倶楽部の女はん達に見つかった。
なりが悪ぅて悪うて、ホンマニィたまらんかった!



   
【 続きですぅ 】




暗い夜道ぃには、気安さが生まれます。
夜の暗さが、お互いにぃ人を近くに感じさせます。
そしてぇ、今までどぉうしても 届かんかったもんでもぅ
摑めるようなぁ気ぃにぃ、させるかもぉ ・ ・ ・ ぅ。 

けどぉぅ ・ ・ ・ 、ナンかぁ ナンかぁ知らんけどぉ ・ ・ ・ ぅ。
ぅん 解ってる。 けどぉぅ、口にぃ出して言うとぉ
何ッ処かにぃ、何ッ処かにぃ
逃げて逝ってしまう かもなぁ ・ ・ ・ ・!ッ



大人の男のぅ躯から、力の抜けてしまった、お人さん。
此れほど運び難いもん! あんましぃ

ないでぇ〜!


店の前の狭い裏路地から、タクシー停まってる道まで運び
乗せて、座らせて、シートにぃ倒れんように支える。
車内わぁ、煙草のヤニ臭いのと、饐えたようなぁ変な酒精の臭いがぁ〜!
自分、あんまし酔っぱらてなかったけど、気分が悪く為ってきそうやった。
運ちゃんは、お慣れかしれんけどやぁ〜!


運ちゃん、深夜晩くまで輪ッパ握って、酔い客乗せ
いい加減、嫌になってるんやろなぁ!
投げ遣り、問いかけみたいやった。

「どちらぁまでやぁ ? 」 っと。


「競馬場方面やってかぁ 」 知らん振りぃの わい。
「えッ!ぇ、知ってるんですかぁ? 」 Fぅ支えている女。
「うん、知ってるでぇ 」
「さっきぃ お店で知らないって 言ってましたやんかぁ? 」
「うん。 ママぁかて、知ってて言ってるんやでぇ 」
「ふぅ〜ん ・ ・ ・ そうねぇ、わからんとぉ、うちぃ 」
「何処ぅ、国(故郷)ぃ? 」
「長崎ですぅ 」
「うん、えぇとこみたいやなぁ! 」
「ぅんぅ ・ ・ ・、 でもぉ ・ ・ ・、 いぃやぁよかとこですとぉ 」
「なんやぁ? どないしたん? 」
「うん、何でもないですぅ 」


Fのアパートまで、其れ以上 喋らんかった。
時々ぃ音量絞ったタクシー無線とぅ、ワイパーが硝子ぅ擦る音ぅ
着くまで 止まんかったですぅ、じっとぉ、降りるまで聴いてましたぁ!
近い所がぁ 永く乗ってるみたいにぃ感じましたぁ 。


よれよれなぁ Fぅ背負って、古いぃ木造襤褸アパート
外付けで雨で濡れた鉄の階段、滑らんようにぃ登って
漸くFの部屋の前。 Fぅ扉の反対側の、柵に背中をぅ。
F顎落ちで、首の後ろのぅ ボンの窪みが視えてた。

自分、息ぃ喘がせながら言いました。

「じゃぁ、カッ帰るなぁ〜! ぁんたも早ぁにぃ寝るんやでぇ 」
「えぇ〜! 晩いからぁ泊まっていってくださいぃ 」

っと、薄暗いぃ部屋の前で、バックの中にぃ手ぇ突っ込んで掻き回し
部屋の鍵ぃ捜してた、娘がぁ。


仕方がないので、玄関框に運び込んでやった。
其処にぃ、寝かせた。

「ぅん、えぇ。 タクシー待たしてるさかいにぃ、じゃぁ 」
「そぅですかぁ、でもぉ此の人ぉ、此処でよかやろかぁ! 」
「うん。 ナンならなぁ、毛布でも掛けてやってかぁ 」
「ぇ! ・ ・ ・ぁ、 はいぃ、ありがとうございましたぁ ! 」

「うん、じゃぁ」


ドア、背中で閉めた。
濡れた鉄の階段、静かに下りた。

ほんとうわぁ、部屋の中にあがって、布団に寝かせてやりたかったんやぁ〜!
でもぉぅ あいつの生活ぅ見るのが、わいにわぁ 耐えられんかったぁ!
そやさかいにぃ、逃げてきましたんやぁ!


タクシ〜ィ 何ッ処かにぃ消えていた!
コナイナ時間やから、車も人もぅ ・ ・ ・ ・ ・ チクショウって呟いたぁ!
歩きました。 濡れてしまうけど、仕方がないなぁ っと。

夜明け近くにぃ自分のぅ 寝ぐらにぃ!
靴下ぁ、ビショビショにぃ 濡れてましたぁ〜ぁ!!



  
【 踊り妓 】 ですねん。
 つづき、ですねん。     



サッキまで騒いでた客ぅ、ボチボチっとぉぅ連れだって、帰ります。
煙草の紫煙揺らして流れてた、有線の音量ぅ絞った演歌ぁ
聴き易ぅなってますぅ。


隣のオッチャン、ほんまにぃお酒、強いっわ!
幾らでも、ナンボでも呑める みたいやねん!
それに、態度が始めと変わりまへん。

 まいった参ったぁ!


おっちゃん、わいがぁ白呑んでるって聞いたら、言いますねん。

「そないなぁ安い酒、呑んだらアカン!これ呑めばええねん! 」
「えぇですわぁ、これがわいにぃ合ってるさかいにぃ 」
「なにゆうとんねん、遠慮せんでええから、これ呑んで! 」
「チィフゥ、頂きんかぁヘネシィ 」
「ママぁなに言うてますんやぁ、もぉ呑めんわぁ 」
「若いモンがぁ、アカン! 呑まんとオッチャン切れるでぇ! 」
「キッキレルってそないなぁ! ・ ・ ・ ・ッチ! 」
「そこの、姐さんもぉぅ呑みぃ 」
「うちぃですかぁ? 」 友人Fの背中擦って言いましたぁ。
「そや、呑んでんかぁ 」
「ありがとぉぅ、そんならぁ頂きますぅ 」

半分冗談脅しの飲ませ方。
接待慣れした遣り口ぃ。 オッチャン援護のぉママ。
今夜ぁ ・ ・ ・ ・ 、なぁんかぁオカシイねん?

「ねぇ〜!チィフゥさんぅ、観に来てくれへんのんぅ? 」
「ぅん。 堪忍してぇなぁ 」
「そうなんかぁ、ダメとねぇ ・ ・ ・ ・  」

みぃハン、サッキまで弾んでた声ぇ、落としてた。
隣のぅおっちゃん、其れおぅ見咎めてぇ ワイぃ睨みますぅ!
おっちゃんの唇ぅ  無言で開いてナニやらぁ・・・・ぁ!

動きがぁ!ボケっ!ッテェ ・ ・ ・ ッケ!


「姐さん、踊りの発表会でもあるんかぁ? 」

 中年オヤジのぅ猫撫で声でっせ! ッケ!

「いえぇ、そないにぃ いいのとぉ違ぅとぉ 」
「ならぁ、なんやねん? 」
「チョットぉ、もぉええやろぉ! 」
「ええやろおぅってママ、わしが聴いたらアカンのんかぁ? 」
「なにもアカンって、言ってないぃ・・・ナに、この妓の踊り。 見たいん? 」
「あぁ〜!ぁ観たいでぇ。 わしかてなぁ、寄せんかいなぁ 」
「観るなゆうてないわぁ、もぉ〜! 」
「じゃぁ、ええなっ、いつあるんやぁ? 」
「いつって、いっつでもぉ、明日でもしてますとぉ〜! 」

言いながらみさこぅ、酔っても変わらんかった顔色がぁ、段々赤みが差してきた。
其れ視てたママさん、気負って何か言いたそうやなぁ?

「ワカッタ!ほんなら明日、もぉ〜ぉ今日やけどねぇ、夕方の四時に此処、来て 」
「えぇ!今日かぁ?またぁ早いなぁ!ママぁ〜! 」
「ぅん。 あんさんがぁ言い出したことやさかいになぁ 」
「仕事早ぁにぃ済ませて くるがぁなぁ 」
「うん、そないして 」
「あんたぁ、あんたもぉ来なぁ、アカンデぇ! 」 っと、ワイにぃ!
「えぇ〜! なんでぇわいもなん? 」
「あんたぁ、Fの友達やないねんかぁ? 」
「っ、と、友達やぁ 」
「そんならぁ来(き)ぃ!来なぁアカン! 」

それで、話しがお決まり。!
うっもぉ、すっもぉ無い。! 


演歌が消えた店の中ぁ、換気扇が働いてる音してた。
冷蔵庫のぅ音もぉ ・ ・ ・ ・、 其れでもぅ静かで妙な雰囲気。
店の妓がぁ、ギョウサン詰まった営業用のゴミ袋提げて
カウンタァ〜潜って出てきた。
其れぇ取り上げて、外にぃ出て行こうとしたら
カウンターの隅で、売り上げ伝票勘定してたママぁ
伝票、手提げ金庫に突っ込んで、慌ててスツールから降りぃ着いてくる。


「雨降ってるさかいにぃ、何で来るねん 」
「ぅん、ええやんかぁ。 たまぁ〜にぃ、お姉さんとぅ歩くんもええやろおぉ 」
「冗談なぁ、きっついねん! 」
「なぁ、Fのん知ってるんやろぉ? 」
「 ぇ! ・ ・ ・ あぁ、知ってるでぇ ・ ・ ・ ・ 」
「なにおぉぅやぁ? 」
「なにって ・ ・ ・、わかるわなぁ!  」
「そうかぁ、ならぁええけどなあぁ〜  」


其れからぁ、お互いぃ黙って街角のぅ、ゴミ袋のぅ集積場まで歩きぃ
わいぃ提げてたぁ袋ぅ、ギョウサン積まれたぁゴミ袋のぅ
山の上ぇ目掛けて、放り投げたぁ!
袋ぅ、天辺に落ちてぇ転げて落ちて、途中で止まった。

其れをぉぅ小雨の中ぁ、二人ぃ無言で観てた。
店に戻る間も、二人ぃ、なぁ〜んもぅ喋らんかった。


薄い肩ぁのぉぅ、ママぁの赤い髪の毛ぇ
小雨のぅ雫ぅ、イッパイぃくっ付いてた!
其れにぃ、通りすがりの車のぅヘッドライトぅ当たりぃ
綺羅綺羅って光って輝きぃ、水晶の粒みたいでぇ、綺麗やったぁ〜!


ママぁのぅ、細いぃ肩紐のぅ真っ白なぁドレスのぅ、後姿ぁ!
降る雨がぁ霧雨に変わって、小粒なぁ液体ぃギョウサンくっついた
剥き出しの細い肩ぁ視てたらぁ ・ ・ ・ ・ ・ タブンぅ
ママぁの心の中にもぅ、自分と同じで雨垂れぇ!
ギョウサンぅやろうかなぁ? っと、想っていたらぁ!

ママぁ 急に立ち止りぃ振り返った。

「アンタもかぁ? 」 って、ママぁ!


車のぅ、ヘッドライトに照らされたママぁの顔、ナンかを必死で堪えて 歪んでた。
其の眼ぇ、雨以外のもので濡れてぇ、光ってましたぁ〜!
自分、眼ぇ逸らしました。
横向いて 「 ・ ・ ・ ・ ぅん 」

 っと、小さく言いましたぁ〜! 



     
  
【 路地裏スナック、ボギィー 】
  っの、続きですぅ。



有線、ヤット聴こえるかどうかなぁ程にぃ音量絞って
流行 (はやり) のぅ演歌ぁ !
店内にぃ満ちてる酒精の匂い
煙草の煙とぅ混ざって、人の息にぃ吸い込まれてた。

濃いクぅ漂う紫煙揺らいで、店の雰囲気盛り上げてたなぁ ・ ・ ・ !



元々ぅ白木だった L字のカウンター。
今じゃぁとっくに、何ッ処かのぅ、浜に打ち揚げられた流木みたいな古木色。
其処には、無数の煙草の焦げ後点々。
アッチコッチにぃ、何かの、多分なにかの染みがぁ ・ ・ ・ ・、迷走地図模様。

眼の前にはぁ、吸殻盛り上げた、ウイスキィ〜屋さんの硝子の景品灰皿。
よく手持ち無沙汰で折り曲げたぁ、和紙のコースター


この店に着たら自分、最初はだいたいぃ俯いて
背凭れが鍍金パイプのぅ スツールに座った。
腰を据えて面を上げると、カウンター越しのボトル棚下段のぅ
左の隅にぃ、お店の妓らのぅ化粧袋ぉ、積み上げてた。
其れぇ眺めもってぇ、互いにぃ肩ぁ窄ませ擦り合わせぇ、呑んでる常連客ぅ!


夜半過ぎ頃にはぁ、知らぬ同士の他人者でも、呑んだら近しぃお人ぉぅ!
互いがぁ聴く耳持たずにぃ、怒鳴りあってるみたいなぁ、お喋りいぃ!
今から想うと、あないなぁ会話。 よぉ成り立ってたなぁ〜!

時々、カウンタァ〜の中を行き来するお嬢たちが
中の土間に敷いてる簀 (すのこ)ぅ 軋ませていた。


左肩ぁ誰かに叩かれた。
顔ぅ向けたら、隣のF越しにぃ、女の白い腕が伸びていた。
ゴキゲン!仕上がりの、みさこはん。 やった。

「なぁ〜? 今度ぉぅ見にきてんかぁ? ウチのぉ踊りぃ 」
「おいおいぃ、わいにも言わんことゆうなぁ! 」 酔眼が座り始めのF。
「ぁれ!っ、珍しぃ!! あんた(みさこ)がぁそないなん言うん 」 少々お疲れ気味のぅ、ボギィーママぁ。
「なんでやぁ〜! 観にいかへんわぁ 」 唯の酔ッパライのぅ某倶楽部のぅチィ〜フぅ。
「あんたぁ、観にいってやりんかぁ! 」
「ぇえぇ〜! ぃ、いややでぇ! 」
「花束もって 行ったらええねん 」
「花束ぁ〜あ! ・ ・ ・ ・、なんでワイが いかなアカンねん? 」
「この娘(こ)がぁ そないに言うてるさかいにぃやぁ、珍しぃねんでぇ! 」
「もぉ〜ええっ! おかわりぃ 」
「なにぃ恥ずかしぃがってんねん、チョットこれっお代わりやてぇ 」

ママぁ、自分が呑んでたファショングラス、
指先ぃ揃えた両手で挟んで、横向いて離れた。

アイツなぁ、なにぃ勿体つけてんやろなぁ、・ ・ ・ ・ なぁ、ナニなにぃちゃん。
こっちにぃ、聞こえるぐらいの声で話してる!
もぉ〜!


「ほれ、でけたで! 」 置きかたが痛い!
「おおきにぃ ・ ・ ・  」
「これ呑んで、勢いつけてやぁ〜! 」
「なんで?ぇ 」
「こいつぅ、置いとくつもりなん? 」

細い顎振って示したF。 カウンタ〜っで沈没。

「タクシ〜ぃ 呼んだらええやんかぁ 」
「薄情ぉぅ 言わんときんかぁ! 」
「どないせぇ言うねんなぁ、わい、こいつの家しらんがなぁ 」
「うちぃ知ってますぅ! 」

って、ゴキゲンみさはん。 Fの背中撫でもって、オッシャッタ。

「なぁ〜! タクシぃ〜呼んだりぃなぁ 」
「あんたぁ、鈍ぅってアカン! 」
「なにぃ怒ってるんやぁ! 」
「アホぉ〜! 」
「ぁ、あほぉって、なんやねん! 」

「まぁまぁ〜まぁ 」

わいの肩掴んで隣のオッチャン。

「機嫌よぉ呑んで、なっなっ、ママもぅアカンでぇ、シツコイねん 」
「わいぃ、ご機嫌ぅえぇよぉぅ、どぉぅもすいませんぅ 」
「ぅん、喧嘩しとらへんわぁ!、この子とわぁ何時もこないなんやでぇ 」

ってママぁ、ぺティナイフ握って おっしゃった。
わいおぅ、子って言うなぁ! アホ〜!
ナイフの切っ先ぃ、コッチャぁ向けるなぁ! 化けモンぅ!

・ ・ ・ ・ っと、心でやでぇ!


「うん、そうですねん 」
「そおぉかぁ? それならぁええけどぉなぁ、こっちの姐さん心配してるでぇ 」
「あぁ〜、うちぃ別に心配してませぇん 」
「ほんまぁ?ならぁ〜ええわぁ ・ ・ ・ ・ 姐さん踊りしてるんやてぇ? 」
「はぃ〜いぃ、少しですぅ 」
「少しぃって、踊りに少しぃ? どないなん? 」
「どないってぇ? 」
「何の踊りかぁ やぁねん? 」
「ぅ、うん、そぉやねぇ、ぇえっとぉぅ、ニィにぃ日本ぅ舞踊ぅ〜ですぅ 」
「ほぉ〜!そぉかぁ 」
「 ・ ・ ・ ・ ハ、はいぃ 」
「姐さんやたら、えぇ腰ぃして!ぇ、 細いさかいにぃ踊ったらぁ ええやろぉなぁ! 」


 ありゃ! ・ ・ ・ ・
お話しがぁ 分かりませんの方角にぃ、行ってはる!



チョット、急用です。
真夜中のぅ、野暮用ですけどなぁ。
続きぃ、股ぁ〜


 ホナ、逝ってきますぅ ・ ・ ・ ・ !

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