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其の九、涙の石はお終いの語り
あれから暫くして、素焼きの小さな蓋付きの壷を二つ手に入れました。其々の壷の中に、黒と蒼姐の色が変わってしまった指を入れ 誰にも見つからないように、大事に隠しておりました。 あの頃は毎晩、寝る前にね、お二人とお話をしていましたよ。 藁布団を頭から被り、両手で小壷を大事そうに掴み 蓋を開けてね、お二人を想う心でお二人とお話してました。 だけどねぇ、やっぱりとゆうかぁ、日毎に壷からの匂いがきつくなってました。 わたしはそんな匂いなんかね、全く気には成りませんでしたよぉ。 ただねぇ毎晩、どうしてもですよぅ! 出そうになる啼き声ッ!必死で堪えるのには、もぉぅ!大変でしたよぉ〜! あの後わたしの身の周りでは、色々あったんですよぅ! だからね、わたしの舘勤めはですね、解かれました。 暫くして、二つの壷の中で乾いて縮んでしまった小指 蒼姐の壷の方だけの、一つにしてしまいました。 お二人とも、離れ離れは寂しかろうからって、想いましたから。 いつの頃からか、わたしは小壷を持ち歩くようになりました。 そぉしますと、わたしの周りの者たち、わたしには死臭がすると。 たぶん噂してましたでしょかぁ、死人(シビト)の臭いがする女(メ)だと。 人は陰口で言ってたはずですよ。 ほれあれが、あの時の女官よッ! 近寄れば臭うそうな、死人の臭いがするそうなッ! ふしだら関係の三人目の、女があれかぁ! 人は勝手にね想像して、絵をえがきますッ! それなりにぃ面白オカシクですよぉ! わたしは御舘でも臭いの為に次第に、周りから疎まれるようになりました。 だから其れが元でわたしにお達しが、生まれた村に帰れと 確かぁ、お暇の沙汰が出されましたのは、隣の国が攻め入ってくる 少し前の頃ぅ だったかとぉぅ・・・・。 故郷の村に帰る途中に、蒼姐や黒と子供時分によく遊んだ場所で 村外れの鎮守の森に在る、鄙びた神社に立ち寄りました。 わたしはね、森の中で枯れ枝を集めましたよ。 それから、神社の裏で二人の小指を荼毘に臥しました。 其の時、干物を焼くような匂い煙がね、辺りに漂いました。 煙はわたしの眼から涙をね、溢れさせましたよぉ〜! わたしぃ泣きながら懐から、あの時あの庭で 拾っていた小石を入れた袋、取り出しました。 袋の首の紐を緩めて中を覗くとね 石にこびり付いた、黒ずんだ乾いた血が眼に入りました。 観てると涙がですよ、此れでもかとね、止め処も無く溢れ出て来ました。 わたしは、あの出来事に出遭ってから、その時初めて声を挙げて泣きました。 自分でも、ぁ〜!こんな声で啼けるんだよねぇ・・・って お二人にこの想いが届けばいいよねぇ・・・って もぉねぇ! 袋で幾ら涙を拭いても拭いても、尽きませんでした。 中の石がねっ、涙を拭くときに鳴りました。 其の音ぅ聞きますとねぇ、想うんですよぉ! ぁッ! 蒼姐がぁ泣いてるぅ! って ヤッパリ! 黒がぁ啼いているよぉ ってッ! 其のうちに辺りが、黄昏て来ましたからね、暗くなる前にね 焼けてしまった小さな煤けた骨をね、指で摘んで拾い 涙塗れのぅ、あの小石の袋に入れました。 暗い森から出かけに、提げてる袋を振るとぉ 袋の中からね、音が鳴りました。 黒と、蒼姐と、わたしのですよぉ、涙の石のねぇ! わたしは必死で涙を堪えて 袋を胸に仕舞いました。 耳に涙石の音 何時までも残っていました。 今でも時々、夜になって明かりを消し寝る時に している枕の中からね、音が聴こえたぁって、想う事もねぇ・・・・ 哀しかったです 此れで、わたしのお話はお終いですよ わたしの知ってる限りを、お話し致しました お暇じゃぁないでしょうに、長々と わたしなんかのくだらないお話を、聴いて下さって、 ほんとうにぃ、ありがとうございました。 でもねぇ、お話してるとなんだかねぇ、懐かしさがねぇ・・・・! ぁ〜! そぉそおぅ、わたしね。 あれから、と或るお方と契りました。 あの出来事の時に、随分とわたしに力を貸してくださったお方ですよ。 そぅですねぇ、もぉぅ何年にもなりますよぉ・・・ 幸いにも子供が二人、授かりましたよぅ! ぇっとですねぇ、わたしたち二人の子供が生まれた其の時 小さな赤子の肌にぃ、赤い血がぁ! 突然わたしそのときにね、黒兵衛様と蒼様の指 想いだしてしまいましたよぅッ! 子供が生まれました嬉しさと、ナンだかねぇ 此の赤子ぅ、黒さんかなぁ、蒼さんかなぁ・・・・って ドッチの生まれ変わりなんだろぉぅ! 涙ぁ! 信じられないほどイッパイ出てきますよぉ! それ視て夫もね、ナンだか察したようで、滅多と啼かない人なのにッ! どぉしてでしょぉかねぇ、大の大人がですよねぇ 二人で泣き笑いな顔ぉ見合わせてねぇ! イッパイ、イッパイぃ泣きましたんですよぉ・・・・! 初めての赤子に、黒兵衛 次に産まれた女の子には、蒼 二人を偲んで夫とわたしで名前をね お二人から頂いて付けました 精一杯、不幸な生き方をしない様にって 躾けようって、夫も言って下さいます さようならぁ ヤット「完」デスヨ。ありがとう。
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【石の物語 】
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いつの時代でも若者たちは 己が憧れとする英雄を求めます 現代ならば、どのような方が、そのような憧れの対象なんでしょうかねぇ? 歌い手さんなんでしょうか、それともぉぅ? わたしみたいな爺ぃには、今の若い方の考えてることなんて サッパリ理解できませんし、如何にもなぁって想像すら及びません。 今の若者さんたちなにかねぇ、こぉぅ観てますと 違う世界の人種のように感じること多々ありますよッ! ものの話しかたや仕草。ほかにもねぇ・・・・ ぁッ! チョット説教臭く為ってます。 もぉぅよしましょうかね、辛気臭いでしょうからぁ! 昔は、今の時代とは違い、単純に強い者に憧れを、ですか。 古くには腕力がね、もの言う時代もあったんですよ。 己が持っている力だけで勝負して、他者を叩きのめし 退けることが出き、まったく寄せ付けない腕力。 そんな自分の周りで一番力が強い者のが、未だ未熟な若者の心を捉え 自分もね、あのような人と同じように、強くなってみたい、って。 それは生まれつき財力も地位もなく、個人が自分の一生を如何もできなくて 勿論、如何足掻いても生きる目的が限られている、そんな時代のせいですかねぇ。 今の自分が囚われている、どん底なこの世界から もしかして、這い上がれるかもなぁ って。 その時代の一番最下層の底辺で、望まぬ一生を送るくらいなら 何も力というものを持ち合わさない無力な己にも っと。 もしかして、自分にもなにかがぁ って。 微かな期待と羨望の想いで憧れる、戦いの時代が生んだような 自分たちがただ独りの英雄と崇める方 黒兵衛様はぁ・・・・・! 其の八、 偲ぶ者たち 黒の若衆、あの騒動の直ぐ後で、他所の組頭から呼び出されました。 「お前、このままでは身が危なかろう、ならば儂の手下(テカ)になれ そぉすれば、お前とお前が引き連れてくる者ども、助けてしんぜよう 」 「かたじけないお言葉なれど、我等の組頭は亡くなられた黒兵衛様ただお独りのみ 他の組の者ども我と同じかと、それゆえ固く御辞退申し上げまするッ! 」 「そぉかッ!それじゃぁ仕方が在るまい 」 「誠に、申し訳なき事であい済みませぬ 」 「じゃがな御舘様のお心ひとつでは、唯じゃぁ済むまいッ! 」 「もとより、覚悟いたしておりまするッ! 」 若衆、両拳床につきつつ面上げ、視線離さぬ覚悟喋り 他所の組頭、ふっと目線逸らします。 「ぅん、あい解ったッ!じゃが惜しいのぉ滅多とないことじゃのにぃ 」 昼間の、あの黒の所業、己が使える御舘様への裏切り行為ッ! 他所の領主への御舘様の体面潰しッ! 我が領民への御舘様の物笑いの種ッ! 恥曝しッ! 黒の一族郎党、抹殺じゃッ! 容赦はするなッ!悉く皆殺しにせよッ! 命令は、絶対ッ! 騒動の後、直ぐに行動に移ったのは黒の若衆たち。 このまま、ただ無駄に時間を過ごすもんカッ! もし黒兵衛様が生きておられるならば、迅速に行動するはず。 我等その様にお頭から、きつく躯に叩き込まれて覚えさせられているッ! 兎も角何処かに遁走しなければッ! 逃げる支度で慌しい中、一人が言います。 「済まぬが、よりたい所が 」 っと、っで周りの者ども手を止め、もの言った一人を見ます。 「何処にじゃ? 」 「莢殿の所に 」 「判った、為らば囮は任せろ 」 「済まぬッ! 」 「なにを謝る、頭は滅多と謝るなとッ! 」 「ぉう!謝るくらいなら、口にするなッ! 」 「なにかがなけりゃぁ、お前も言うまいにぃ 」 「判った、よろしく頼むッ! 」 刀が切り重なる音、次第にと遠のいていきますのでぇ なんだか心、わたしの心にね、穏やかさが戻って着てました。 それと共に、藁布団を若衆と二人で被ってることで 何と無く恥ずかしかったんですよ。 だから、暗さの中が静かになることがですよぉ! わたしぃ直ぐに、喋りましたよぅ。 「じゃぁ外の騒動、お仲間さんがぁ 」 「そぅじゃ、皆じゃッ! 」 「どぅしてじゃぁ? 」 躯の上に載せてた藁布団、突然若衆がッ剥がし降ろしましたよ。 暗かったけど若衆がわたしに向き直り、整然と身を正すよに正座したの判ります。 っでね、声、低く潜めてたけどねぇ、はっきり聴こえてきました。 暗い向こう側からぁッ! 「莢殿、お頼みしたいことがッ! 」 「ぇ! なにぉ? 」 そしてね、我の背中の左肩より袈裟懸けに背負っていたんでしょうかぁ なにかぁ、旅拵えを解いて取り出しました、黒の形見の品をねッ! 聞きたくも無い、音を発ててねぇ! 暗かったけど、音がねッ! わたしを、再び恐さな気配の中にぃ堕とすんですよぉ! 刀の鯉口をッ!切る音ッ! ユックリト鞘から刀の刀身がね、抜くときに鳴る 滑らかに滑る音発ててッ! 暗かったけど、横にした抜き身が閃きながら、此方にッ! 「なにするッ! 」 「穏やかに、あい済まぬが莢殿穏やかにぃ! 」 「お前さまぁ、いったいなにをいたすのじゃ? 」 「この刀、黒兵衛様が蒼様を想い拵えた刀じゃ 」 「!ッ・・・・・蒼姐のぉぅ? 」 「夜が明けてから見て欲しい 」 「なにぉぅ? 」 「鍔のところじゃ 」 「なぜぇ? 」 「刀の根元に、蒼様の名が彫られておる 」 「蒼姐ぇのぅ! 」 若衆、日の出前には部屋から出て行きました。 若衆の背中を見送ろうとしてふとっ、気づいて言いました。 「黒兵衛様から、あづかってるものが 」 「これはッ! 」 若衆の顔、お二人の小指を見たとたん、直ぐに堪え歪みにッ! きっと、あれはぁ嗚咽だったんでしょうねぇ! それを堪えながらねぇ、いいますよぉ! 顔を背けながらぁ! 「きっと戻る、我はきっと戻るッ! 」 夜明けと同時にね、観ました。 刀の鍔際の根元の鉄に一字 「蒼」 っと彫られていました。 黄金(コガネ)で象嵌されてて、朝日で輝いていました。 視てましたらねぇ何故かぁ、ぼやけるんですよぅ 「蒼」 の金色文字がッ! 俯き加減で下を視てるのに、水の中で文字を眺めてるようなねぇッ! 目からの雫はね、いつまでも落ちてましたねぇ・・・・ わたしね、あの時ぃお二人の名を呼んで、叫びたかったんですけどねぇ 叶わぬ叫びの堪え悶えでね、躯がねぇ! 暫く震え止みませんでしたよぉ〜! |
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其の七、転ガリ堕チ 荒ム石 あの部屋には、何かの生き物が住んでいたようなぁ! それが、あれとはぁ・・・・・ッ! 薄板一枚の莢殿の家の壁では、ヒソヒソ声でも外に。 況してあの晩の状況下では、何かが起こってもぅ。 だから、我(ワレ)と莢とは、藁布団に潜って話しおうた。 ケッシテ、ふしだらな物では無かった。 あの晩、二人ともが同じ想いに駆られていただけだった。 だから、アマリ言葉の遣り取り、そんなには無かった。 それでも同じ想いとゆう事は、互いの胸の奥の、心がぁ・・・・・! 「我らの頭(カシラ)は、黒兵衛様だけじゃ 」 「どぉしてじゃ、命が懸かっておるのなら、嘘も方便じゃないのか? 」 「ナラバ問う、莢殿なら、いかが致すッ! 」 「ぇ!・・・・わたしぃ 」 「そぉじゃ、如何いたす ? 」 「・・・・何もせぬ・・・なにもぅ・・・・ 」 「せぬとは ? 」 「言えば、嘘を喋れば、裏切りましょぅ 」 「裏切る? 」 「わたしには、嘘を吐きとおすなんてぇ 」 「嘘ぅ ? 」 「そぅじゃ、黒を裏切るからじゃッ! 」 「シッ!声が高いッ! 」 暗い藁布団の中、互いに詰めてた呼吸の音、時々忙しなくしてた。 藁布団の中に居ても外の騒動、よく聞こえていました。 アンガイ近くで剣が激しく打ち合ってましたからね。 一つ刀が切り重なる音、暗さナ中で響き聴こえたら 莢殿の躯、其の度に痙攣みたいにぃ! 武士が発する気合の声聴こえたら 小さく、非ッ! っと、呻き悲鳴をッ! 暗さな藁布団の中、鄙びた藁の匂いと 布団に沁み込んでた、莢の汗の匂いもぅ! 其れにぃ、我の血濡れた着物の匂いが混ざっておったッ! 我の血の匂い、追っ手と切りあって被った返り血でしたぞ。 三つの匂い混ざると、妙に心が冷静にぃ為っておった。 突然其処で、想わぬ感情がッ! 為るほどと、此れがっと。 生前、頭と話したことが 「戦(イクサ)で血オ浴びてもじゃ、以前ならば其れだけで何もかも忘れた、だが・・・ 」 言葉が途切れたので、後ろで佇む頭を仰ぎ見た。 頭の首、月の輪ッ架の中だったので、黒き影になっていた。 頭の面、視えなかった。 月の光のせいで翳になっていたから。 我は、言葉の続き待っていたが・・・・・ 唯、あの強い頭が、如何したのかと・・・・ぅ。 我が胡坐座りの、夜露塗れの草群れる地面。 其の雑草一掴みして、毟り抜き上の闇に放った。 濡れ草、夜風に乗ることもなく降って来た。 月に輝く、無数な細かき露球と共にぃッ! 緩やかに降る露球、真珠球の如くに輝いていました。 「・・・・頭ぁ ? 」 「ぅん、今は、心が騒ぐッ 」 「心がどの様にぃ・・・? 」 「虚しゅうなる 」 「頭ぁ、我には如何にもぅ・・・・ 」 「お前は未だ若い、解らんでもよい 」 「頭、強い頭が何故じゃぁ 」 「酔わぬからじゃ 」 「・・・・酒にぃ? 」 「血にじゃぁ 」 「ぁ!・・・・ 」 「もっと、強い物にぃっと、為ってきた 」 「もっとっとは? 」 「お前は何故に何時もぅ、そぅ訊きたがる 」 「頭、我は早く頭みたいにぃ為りたいッ! 」 「儂(ワシ)にッ!かぁ? 」 「ハッ!強くなりたいッ!頭のように強くなって、戦で手柄の一つも・・・・ 」 「ぬかすなッ! 」 近くの川端陣屋で篝火燃やし、呑み騒いでいた皆ドモ、急に静まるくらいの音声ッ! 暫くは我、握り摑んで抜こうとしていた雑草束其の侭にぃ ジット動くことも為らず、月明かりで輝く夜露草、恐ろしさで覗いてた。 やがて、何事もなかったようにぃ陣屋で、派手な賑やかしぃがぁ! 「為るなよ、成れば失くす物も在るぞぉ・・・・ 」 降って来た声、穏やか過ぎてました。 「カッ 頭ぁ ! 」 恐る恐ると、後ろ仰ぎ見ますと、翳になった頭の面の中にぃ何かがぁ・・・・ッ! 我の胸の中、戸惑がぁ!・・・・他にも、口では言い表せない迫る物がぁ! 今度は我が、口にぃ言葉ぁ浮かんできませんでした。 気まずさ隠しで我、立ち上がろうとしたら、近くの叢影から声がッ! 「我ら命を賭けおったぞッ! 」 「頭に、此の命ぃお預け申してるッ! 」 「頭ぁ、鍛えてくだせぇ!」 「ワガもじゃ! 強く為りたいッ! 」 暗い月明かりが照らしたるは、頭の組の者ども。 馬鹿にもぅ! 口々にぃ、でした。 皆が、黒尽くめな戦支度姿。 戦バでじゃぁ、少しは知れた黒尽くめ装束。 あの頃、若かった我ら、どうせ此の躯、いずれは戦に駆りだされる身。 ッならば、近在どころか他領土の百姓の間でも噂しあう、有名な黒兵衛様の元に。 同じ百姓出の、黒兵衛様ならばぁ・・・・! 何時の戦でも戦塵切って、敵の陣屋にまでもと突貫し 其処らの柔な侍以上な活躍、元々百姓とは思えぬ度胸在る手柄ッ! っがと、何処の村でも噂しおうてました。 「黒ベイな、オナゴヤ子供になぁ、絶対ぃ手ぇださんそうな 」 「百姓の家では、何も盗まん盗らん火も点けんそうじゃッ! 」 何時の頃からか、黒兵衛様が戦場(イクサバ)で独り先駆けて突進すると 後から、必死で追う者がッ! 最初は、我と今じゃぁ討ち死にした数人の仲間だけでした。 暫くは我等が、必死で走ってナンとかぁ・・・・っと、追ってました。 其のうちにぃ、次第にぃッ!人数がッ! 其れが、アレヨアレヨな間に追う人数、可也なものにぃ! 雑魚の集まりぞと、言われました。 弱い物は群れる、とも。 黒兵衛頼みの、寄せ集め者らよッ! 高が知れてるッ! 並べる言葉、悉く、蔑視ッ! 羨む者どもがッ!っと我等。 或る日、大戦(オオイクサ)ガッ! 我、安刀を振り上げ、頭の真似して大声張り上げ叫びッ! 敵味方怒鳴りあっての、大乱闘ナ混戦模様ッ! 互いの生き死にの始まり、未だ明け暗い、早朝。 命の遣り取りの終わりは、一日置いての、静かさ支配な黄昏時。 ッフト、疲れ躯で、折れた刀に凭れて、辺りを眺め観れば 累々たる人と馬との屍、重なり覆う山野。 頭ぁ、斃れた仲間ぁ捜し出し、見つけては担いでました。 其の担いだ骸を、一所(ヒトトコロ)に集めてました。 我も視るとホットケヌゆへ、手伝いました。 するとぅ、生きてた仲間がぁ、何人かぁ集まってきました。 其々が肩に、死んだ仲間を担いでました。 夕陽が、仲間の顔赤く照らしてました。 返り血が乾き、瘡蓋みたいになった顔に。 頭、何も発せず黙ったままで、何回も何回も、担いできました。 我等、同じようにさせてもらいました。 死人の躯はね、冷たく重かったです。 骸を積み上げると、若い百姓上がりの者ばかりッ! 骸を弔い荼毘にと、折れた槍の柄とかソコラノ枯れ雑草木々、地面に落ちてた汚れた旗 近くの陣屋跡から持ってきた床机や、敗れて血飛沫で染まった陣地幔幕 戦地炊き出し拵えように用意して、積み上げられていた薪束・・・・ 我等、周り中から燃える物、集めてきました。 頭、骸から小指ッ! 無言で頬濡らしぃ、切り取ってました。 紙縒り(コヨリ)を結んで、紙縒りに亡骸の名前を墨でッ! 自分らも、手伝いました。 人の指、ナカナカに切り落とせませんでした。 今でもあの時、指切る時の自分の手の感触、覚えています。 闇に、骸を覆って燃え上がる火ッ! 雨が降ってきても、消える事はなかった。 何時の間にか、火の周りに大勢の人がぁ! 自然に湧き上がった念仏唱へ、何時まで続くかとぅ! ケッキョク、此の合戦で生き残った仲間はぁ、ホンの数えるぅ・・・・! 我等、此の日より、黒の組の者と言われるようにぃ! 「お前、何故ッ手柄が欲しいぃ? 」 頭に問われて、何も言えなかったッ! 「其れより、為さぬ物を見つける方が、難しいぃ・・・・ 」 我・・・・・、何が? とぉぅ |
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あの騒動があった次の日の、未だ明けやらぬ暗さなぁ・・・・ 確かぁ・・・・一番鶏が鳴く前にぃ わたしぃ あの晩ぅ・・・・・ 幾ら眠ろうと頑張っても、眠れませんでした。 昼間の、あんな出来事のお陰で、心がぁ悶々となっていましたからねぇ。 それとぅ色々な想いがですねぇ、わたしの頭の中にぃ巡ってきてました。 一晩中、ただぁ暗闇をね、ジット見つめていましたよ。 暗くって見えない天井をですよぉ、下からぁジット眺めておりました。 もぉ直ぐ鶏が鳴くころだよぉ って想ってたら 微かにぃ聞こえてきましたよぅ・・・・。 最初はね、空耳かと っで、確かにぃ・・・・ッ! 何処かで、金(カネ)が打ち合ってるような音ぅ・・・・・ わたしぃそぅ考えただけでぇ、ナンだか怖いなぁって想いましたよ。 だけどわたしの耳、勝手に澄ましてたからねぇ・・・・・ 音、段々と近づいて来てるよぉ・・・・ぅなぁってッ! 剣が激しく打ち合って、切り重なるようなぁ音がっ! 其れと人が、なんだか大声で呼び交わす声もですよ なんとなく、聴こえてくるような・・・・ぁ わたしね今でも、剣はですね見るのも怖いんですよぅ! あの出来事からね、如何にもいけません。 あの晩のも、タブン刀が打ち合う音だと想いながら聴いてますとぅ 眼の前の暗さの中にですよ、あの時の出来事が浮かんできます。 本当に、怖かったんですよぅ! 。 でもねぇ、怖いもの見たさなんですよぉ。 つっかえ棒を外して閉めてた、雨戸代わりの降ろし戸の節穴から、外を覗きました。 すると真っ暗な中に、あんがい近くでね、火花が飛ぶのが見えました。 火打石とは違う、金(カネ:金属)が打ち合う、赤い火花でした。 何故にぃ? 刀が打ち合ってるんかなぁ・・・? こんな夜中にぃ・・・・、何事ッ!ナンだろぅ 外の暗いのぉね、節穴から覗いてますとねぇ 突然、人が駆けて通り過ぎたよぉなぁ! 慌てて直ぐに藁布団に潜りました。 恐ろしかったんですよぉ! お布団をぉ頭から被って、ジット息ぃつめてましたぁ。 其れから暫く致しましたら、さっきの窓辺の閉め切った降ろし戸ぅ トントン って、なんだか遠慮がちな叩き方でぇ・・・・? 本当に、ヨッポド気をつけていないと判らないほどのぉ 微かな聴こえるかどうかなぁ、叩く音でした。 こんな晩くに、誰がぁ? わたしはですね、聴こえない知らないフリをしたかったけど 如何にもぅ、出ないわけにはぁ・・・・って。 そりゃぁ! こんな時間にぃ? って怖かった。 でもねぇあんな目にぃ遭ってから、妙に度胸といぃますか 何と無くわたしはですねぇ、肝(キモ)が据わってました。 如何にでもなれッ! もぉぅ!何が起こってもぅ!って。 藁布団から起き出て、降ろし戸の節穴から覗きました。 そしたらですね、星明りで見えたのは 死んだ黒兵衛のね、子飼いの者が居りましたよぉ! あの騒動の時に、わたしに声を掛けて下さった若衆です。 わたしは咄嗟に、囁き言葉で言いましたよ。 「表からッ! 」 って 小さナ声でッ 若衆を部屋に入れ、灯明にぃ火をぅっと、此処らにぃ火打(イシ)がぁ・・・・・ 手探りで石の置いてるあたりを弄り、石を探り当てました。 両手で石ぃ握り、打ち合わせよぉとしたら 若衆、抑えたキツイ声で言いますよぉ 「灯りは要らぬッ! 」 って わたしね、其の声に驚き慌てて火打ちを投げ出しました。 暗さな中、石が床に落ち当たる音、驚きますように鳴りましたッ! 音はね、わたしの堪えていた恐怖な心を、突然襲いましたよぅ! 暗さの向こうからね、何かが向かって来るようなぁ! わたしぃ我慢の限界ッ! 叫びましたぁ〜! ッと想ったら、口を大きな掌で、塞がれてましたぁ〜! 耳元で声がッ! 優しいぃ声がッ! 囁いてくれましたよぉぅ!! 「ナにもしないよぉぅ・・・・ 」 って だけどぅ、涙ぁ、溢れ出ましたよぉ! わたしぃ、若衆にぃ縋ってましたよぉ〜! 若衆ぅのぉ躯からぁ、血が匂ってましたよぉぅ! 纏ってる着物がねぇ血で、濡れてたからぁ! 其の匂い、益々、昼間の出来事ぅ 脳裏に、再びぃ・・・・・でした。 「済まぬな 想い出させてしまって 」 言葉はね、人を包む事が出きるんですよ。 今になって、あの晩のぅコトを想い出してもねぇ 胸の奥がねぇ・・・・・! |
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其の五、 其の後の 莢殿 わたしはあの騒動のとき、黒兵衛から、お二人の小指を預かりました。 そのあと最後の悲鳴を叫んだら、何故か強く正気がさしてきました。 そして、託されたこの小指、誰にも渡せぬッ! っとの想いが強くでした。 でもぉ、何処に隠せば良いかとぉ・・・・ わたしが、お二人の小指を持っている っと、館の者に知れたら、わたしの身がぁ危ない。 それよりも、あの様な亡くなり方をなさった黒との約束、果たせなくなる。 だから何に変えても、必ず約束だけはッ! だけど何処に、何処に隠せばと? わたしの広げられた血塗れな掌、お日様が明るく照らしてました。 蒼と、黒の小指の先ぃ、今になって想えばねぇ・・・・二人仲良くぅ 血の赤の衣装に包まって、寄り添っていたようなぁ・・・・! お二人の手に小指が無いのは、直ぐに気づかれる。 理由(ワケ)を知ってると疑われるのは、あの状況だったら、わたし。 出来事が、余りにも尋常じゃぁないから、厳しいお調べが。 キット身包み剥がされてでもっと、厳しいぃ! お取調べをぉぅ! 我(ワレ)の頭の中、破裂しますかと。 もぉぅ!色々と目まぐるしく考えましたけど、良き案がぁ! 大勢の人々が、此方に迫り来る騒がしい足音がッ! 何処かに隠さねばぁ? っと、随分と気持ちは焦りましたよぅ。 此の指見つかればぁ! きっと取り上げられまする。 何処かに、隠さねばっ! 決して見付かる筈のない、何処かにっ! 嗚呼ぁ・・・・ッ! どんな事が在ろうと黒との約束が大事、この指、必死で絶対に守らねば! 迫って来てましたよ、床を踏み鳴らす足音が! もぉぅ!其処までっ!! なんにも考えられず、なにも思いつかず! 必死で思い悩む頭の中で、其処の片隅の何処かから ぁッ! 隠せるっ! 閃きがッ!! 閃きと同時に咄嗟にでした。 わたしの躯、閃きに勝手に応じてました。 着ていた女官衣装の下前をね、持ち上げて開きました。 下半身がですよぉ、お日様に照らされましたけど 少しもでしたよぉ、恥ずかしいとも、なんにも思いませんでしたよぉ! 大慌てでゞすねぇ、わたしの女のぅあそこに、二つの小指を無理やりにと 痛さを堪え、突っ込みましたッ! 突っ込んだ刹那、痛さを感じたら眩暈がっ! 立っていなきゃぁ って、倒れたら駄目だぁって。 もぉぅ、よっぽどの我慢でしたぁ! 其処から、其の後の憶へがですねぇ、無くなりました。 其の日の晩、夜半過ぎの遅くにわたしは、漸く自分の部屋に戻どされました。 薄暗い菜種油灯明の明かりの中で、躯から指を取り出しました。 暗い明かりで観た指、ふやけた白っぽい紫色に少し変色していました。 だけどもねぇ、少しも汚いとも、嫌だとも思いませんでしたよぉ! 「ぁ〜!蒼姐とぉ 黒の血ぃがぁ わたしにも入ったぁなぁ! 」 そぉぅこの時に、想いましたよぉ! 随分あの時は、哀しかったんですけどねぇ、そぅ想ったらですよぉ 私の躯はですねぇ、ナンだか芯から暖まってきましたぁ! それはね、自分でも予期してなかったから、驚きましたぁ!! 「蒼姐ッ喜んでるぅ!!黒さんもぉぅ! 」 涙はね、流そうとも想わなくっても 嬉しいぃかったらね、自然に流れるもんだぁ・・・・! イッパイ、イッパイですよぉ〜! |







