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山梨県にあるリニア実験線。20年来走行実験を繰り返していますが、現在延伸工事を行い、そのまま中央新幹線の路線として転用する計画になっています。
 
その山梨リニア実験線42.8㎞については、環境アセスメントを行っていないようです。
 
法律上の疑問については前回記述したとおりですが、当時の環境保全についての認識にも疑問がつきまといます。なにしろ国立公園の中だろうとブルドーザーで引っ掻き回してリゾートホテルやらゴルフ場やらを次々作っていたバブル期の構想ですから。
 
当時の環境保全についての認識を示す、興味深いやり取りを見つけましたので、掲載したいと思います。
 
平成3年第120回国会での答弁です。リニア実験線建設に関して扱われています。 
 

平成三年五月七日提出
質問第一三号

 リニアモーターカー山梨実験線にかかわる諸問題に関する質問主意書 
 
質疑応答のうち、実験線という土木構造物建設の環境アセスメントとして扱われるべき項目について、抜粋してみました。全文につきましては、こちらをご覧ください。http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumona.nsf/html/shitsumon/a120013.htm
 
実験線の建設が、山、川、谷等の自然、植生や小動物等の生態系に多大な影響を与えることが懸念されます。
 1 実験線は約八割がトンネルですが、トンネルの規模、残土の量、残土の処分方法について明らかにして下さい。
(→答弁)
トンネルの規模は本数でみると十四本、総延長でみると約三十五キロメートルであり、トンネル工事により発生する残土の量は約五百万立方メートルと見込まれている。残土の処分方法については、日本鉄道建設公団、山梨県及び地元市町村の間で調整を行いつつ、宅地、田畑等の造成に活用していくことを計画しているところである。

 2 トンネル工事により、地盤沈下、地下水脈の破断、温泉の枯渇を指摘する声がありますが、予測されるこれらの事態にどう対処されますか。
今後工事を進めるに当たり、御指摘の事態により問題が生ずることのない設計及び施工法が採られることとなる。
 
 3 ボーリング調査の地点と規模、方法について明らかにして下さい。
ボーリング調査は、トンネル区間の地点及び主な構造物の設置が予定される地点において四十二本実施されたところであり、今後も必要に応じ実施される予定である。その方法は、ボーリング調査において一般的に採用されているものであり、地盤を掘削し基盤層に至るまでの土を採取するというものである。
 
 4 山梨の現地では動植物について現況調査が行われていません。すでに送電線建設により、イヌワシは姿を消しました。早急に専門家による現況調査を行う必要があります。この事についてどのような予定になっていますか。
動植物については、既存の文献等による調査が既に実施されており、今後とも所要の現地調査が行われる予定である。
 
 5 実験線予定地は低山の里山が多く、ふつうの動植物の生息地が広範囲にわたって破壊されます。もはや日本に残り少なくなった貴重な里山が失われ、見なれたふつうの動植物が姿を消すだろうことが憂慮されます。生命をはぐくむ自然環境が衰退することは、同時に人間の生命にとっても大きなマイナスです。里山が失われることによる種の絶滅の可能性について、どのような対策を講じる予定ですか。
山梨実験線の約八割はトンネルであり、それ以外の区間についても、その多くは既に田畑、宅地等となっていることから、実験線の建設による里山の自然環境への影響は少ないものと考えられる。

このほか、電力消費、磁界の影響についても興味深いやりとりが行われていますが、それらは走行実験によって明らかにされる性質のものであり、実験線建設前のアセスメントとしては馴染まないともいえるので、ここでは割愛します。
 

これらやり取りから判断する限り、建設前におこなわれたという調査とは、その報告書「山梨実験線環境影響調査報告書」については、実験施設をつくるうえでの基本的な地質調査にとどまったと思われます。
 
動植物について文献調査はしたというものの、その結果をどう活用したのかは全く不明です。少なくともその結果がルートや施設配置に活用されたとは思えません。地形図を見た限りでは、周囲の地形に全く関係なく一直線に山や谷をぶち抜いていますから・・・。500万立方メートルの残土もどこへ消えたのでしょう?

ちょっと注目すべきは次の2点。
 
当時、地下水脈の切断について懸念する質問が出され、政府としては「今後工事を進めるに当たり、御指摘の事態により問題が生ずることのない設計及び施工法が採られることとなる」というありきたりな回答をしています。しかし実験線延伸工事により、2009年には笛吹市にて地下水位低下と井戸枯れを、2011年には上野原市で川の水枯れを引き起こしています。そのほかにも数十件の苦情が寄せられているとの報道もあります。http://www.sannichi.co.jp/linear/news/2011/08/14/13.htmlまた、先行して完成した18㎞区間については、どのような影響が出たのかは定かでありません。
 
「問題が生ずることのない設計」をとったはずなのに、実際に問題を引き起こしてしまったわけです

里山の環境保全についてのやりとりも、「その多くは既に田畑、宅地等となっていることから、実験線の建設による里山の自然環境への影響は少ないものと考えられる」という回答で、20年経た現在となっては通用する見解ではありません。なにしろ、メダカやキキョウのように、「絶滅のおそれのある動植物の半分は里山に生息」しているのが現在の認識ですから。http://www.env.go.jp/nature/satoyama/chukan.html
 
◇   ◇   ◇   ◇   ◇

2007年から行われている延伸工事区間(約24.4㎞)については、法律や県条例に基づいた環境アセスメントすら行われていないようです。そして新旧区間あわせた42.8㎞は、将来的には品川〜名古屋286㎞の一部に転用されます。全体の15%に相当します。
 
本来なら1㎞の延伸でも環境アセスメントを行わなければならないふつうの新幹線よりもはるかに高速で走行し、磁界など未知の影響をも考慮しなければならないリニア新幹線の15%もの区間が、一般市民はもとより外部専門家からの意見を受けず、内容も定かでない「調査」と、20年前バブル期の環境に対する認識とだけに基づいて造られ、それが既成事実化してしまう国・・・。
 
 
なんとも異常な事態ではないのでしょうか?

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