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 連句の会で「非懐紙」を巻いた。
 非懐紙は橋寮个考え出した形式で、懐紙の表裏に書くことを前提として定められている連句の式目(きまり)をすべて反故にし、自由に作ろうというのである。だから表も裏もない。月の定座も、花の定座もない。
 それで何が残るかといえば、付合の妙味と変化の醍醐味である。そこにすべてを賭ける。師匠の丹下博之先生は、「詩情を作りましょう」とおっしゃった。
 
 石を噛む冬の蝗の動かざる   原 伸一
   涸れたる川をなぞりゆく風  秋尾 敏
 乳母車眠る子乗せてゆっくりと 丹下博之
   三下半を胸に忍ばせ     柳田 萠
 
 四句目までを記す。あとは捌き手の伸一さんが校合中であるから遠慮しておく。
 伸一さんの発句は、冬の句としてなかなか迫力がある。大病を乗り越えられた方の句として読むと、さらに趣が深い。「冬の蝗」は初冬の季語であるから、本来は脇の句も初冬であるべきだ。しかし、そこは非懐紙であるから、あえて三冬の季語で出した。非懐紙であることを意識していますよという意思表示である。しかし、そのほかは発句に寄り添う。同時同場で、気分も発句の景を受けて詠んでいる。
 しかし、作者の自己表現がないわけではない。この座の連衆は、みな大先輩である。「なぞりゆく」には私の思いがある。この会に参加して五年が経とうとしている。ようやく連句の概要が見えてきたレベルなのだが、先輩方が培ってきたこの文化を、次の世代につなごうという志は持っている。
 第三は先生の句。「て」止めでないのも非懐紙であることを意識されてのことだろう。荒涼とした発句と脇の世界に、乳母車に眠る幼子を登場させて、みごとに転じられている。動作の主体を乳母車に置いているのもおもしろい。
 四句目は「来たぁ!」という感じである。さすが萠さん。これが歌仙なら、表からなんということを、ということになってしまうのだが、そこは非懐紙である。どこで何が出てきても驚くわけにはいかない。
 こうして十八句を詠んで夕方にみごと首尾。二時間半くらいであったろうか。充実した冬の一日であった。
 
 
 
 
 

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すてきですね

2013/11/20(水) 午後 11:23 みゅーみゅー 返信する

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