これは大好きな映画で何回も観ました。
かなり前ですがブエノ的ゲイ映画評の書庫の中
黒田邦雄さんが書いた「レスリー・チャン(張國榮)の恍惚」と題された
インタビューをまとめた記事の話を載せています。
1993年:香港 原題:「覇王別姫」
監督:チェン・カイコー
出演:レスリー・チャン、チャン・フォンイー、コン・リー、グォ・ヨウ
<ストーリー>
1977年、人けのない体育館に「覇王別姫」などで、かつてのスターだった京劇役者が入ってくる。物語は二人が出会った1924年から始まり、文革開始から11年後の1977年のこの体育館で終る。
その頃、京劇の役者は捨て子とか、可愛そうな子供達で 子供の頃から 師匠に徹底的にしごかれて、芸を身に付けていた。京劇で人気の演目「覇王別姫」を演じる覇王役、子供の頃は「石頭」と呼ばれていた段小楼(チャン・フォンイー)と別姫役、子供の頃は「小豆」と呼ばれていた程蝶衣(レスリー・チャン)は同性愛の関係にある。特にレスリー演じる蝶衣は女形となる為、男ばかりの世界で男性を否定され、女の心を持つ事を強要される。
体罰なども受けながら日中戦争の頃には、二人とも人気役者になっていた。小楼が遊郭の女、菊仙(コン・リー)と結婚したので、三人の物語となって行く。
京劇役者は日本軍の占領時代、解放軍の指揮下、反右派闘争、何より恐ろしい文化大革命の時代と常に酷い迫害を受ける。憎しみあったり、協力したりしながら暮らしていた三人だが、文化大革命の中、壮絶な裏切り合いになってしまう。紅衛兵の青年達の前で自分が助かりたいが為に、互いの秘密を暴露しあう様は本当に恐ろしい。そんな中、遊女であった事を暴露された菊仙は自殺してしまう。
文革の11年後、再会した小楼と蝶衣は観客の居ない舞台で子供の頃を懐かしみ、台詞を言い合うのだった。そして・・・。
<感想>
この映画は本当に圧倒される。レスリーが北京に住んで、北京語を
練習し(レスリーは香港の人なので、広東語です。同じ中国語と言ってもかなり違うんですね。私も、少しだけ勉強したし、色々映画を観ていると違いが分かります。)
京劇も吹き替えなしで特訓して(京劇独特の高〜い声は吹き替え)入魂の作品ですね。それに子役たちもとっても上手いです。
レスリーがチャン・フォンイーを見る時のまなざし、恋焦がれる目つき、
上手いですねぇ。コン・リーと結婚してしまったので、自棄になって、
自分に気がある京劇界の大物、袁の邸宅に行き、みせる媚態。色っぽすぎます〜。でもまぁ、この映画でチェン・カイコー監督はそれだけを描きたかったわけでは
無いのです。
監督自身、文革で16歳の時 下放されてゴム園労働者として7年間
すごしたのです。色んな思いを胸に秘めて、働いていたんでしょうね。
監督の歴史観は冷静で、その中で暮らす、庶民の苦しみや切なさが
悲しいまでに、描かれています。
その当時の三代に渡る家族の歴史を書いた「ワイルドスワン」という本が
ありますが、あれを読んでも、中国の歴史の壮絶さがわかります。
紅衛兵に囲まれて、他人の罪を無理やり言わされる時、
人は簡単に裏切ってしまう。歴史の有る物、美しい物、教養があること、
そんな事は罪になってしまう。
レスリーが京劇で着ていた素晴らしい、そして美しい着物を庭に
ズラッーと並べて 火を付けていく時の 何もかも諦めた虚無的な顔・・・。
コン・リーの遊女であった事をばらされ、愛していないと言われた時の失望・・・。
カンヌ映画祭で上映された時、始め外国の人は見慣れない京劇に
(特にあの高〜い声で歌うので)笑って見ていたそうです。
でも話が進むにつれて内容の濃さに絶賛の嵐だったそうです。
そして グランプリを受賞してしまいます。
本当にこの映画は見ごたえがあります!
カンヌ国際映画祭・パルムドール賞、国際映画批評家連盟賞
アジア太平洋映画祭・監督賞、編集賞
全米批評家協会賞・外国語映画賞、助演女優賞(コン・リー)
ニューヨーク映画批評家賞・外国語映画賞
ロサンジェルス批評家協会賞・外国語映画賞
ゴールデングローブ賞・外国語映画賞
イギリスアカデミー賞・外国語映画賞
日本映画批評家大賞・外国映画部門主演男優賞(レスリー・チャン)