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数十年前、二十代の私がコンピューターとシンセサイザーを使って初めて手がけた曲がこの曲。ですからとても思い出深い曲です。
トッカータと言うと、バッハの「トッカータとフーガ」で御存知の方も多いはず。
フーガは同じメロディーを次々に重ねて行くのに対し、トッカータ(toccataイタリア語)は演奏技術を誇示するように細かい音符が休みなく動き回る、非常にテクニカルな曲。
そしてこの曲は私が好きなソナタ形式。落ち着きます。
シューマンは「ピアノ」「歌曲」「交響曲」等、色々な分野の作品を手がけましたが、やはり作曲家として世に出たのはピアノの曲です。
作品番号1番から23番まで全てピアノ曲が続きますが、この曲はその中でも「7番」と初期の作品。バッハの影響を受けた対位法的な音の動きが見られる、私が大好きな世界です。
ところがシューマンは、病気の影響もあってか曲の性格がどんどん変わって行き、ピアノですら初期と後期で性格が全く違うのですから、シューマンをピアノで知る人とオーケストラで知る人とでは、「シューマン」という作曲家のイメージが全く違ってしまっても当然と言えましょう。
では早速曲に参ります。
ちなみに「ステレオ」と書いていないものは全てモノラルです。
イーヴォ・ポゴレリチ(動画無し ステレオ)
私が一番好きな演奏です。速さは必要以上に早すぎず、音を明確に出しています。
ごまかしが利かない分、逆にテクニックが露わにされて寒気がするほど。
アーティキュレーションがはっきりして、音楽性を明瞭に聞き取ることが出来ます。
タッチも揃い、テンポも正確。まるでコンピューターの様ですが、この曲をそう弾く事がいかに難しいことか。
展開部に入ってからのオクターヴの連続など、全く揺るがず安定し切っています。素晴らしい、いや凄い。
これを聴くと、「名人芸」とばかりに「勢い」「熱気」にまかせた演奏がハッタリに聞こえてしまうから不思議です。
スビャトスラフ・リヒテル(動画無し)
さすがはリヒテル。
でもテンポが乱れ、タッチも揃いません。
多分曲のせいもあるのでしょう。この曲は「エチュード」の様に、まず類い希なる技巧を要求されますから。
すごい迫力。でも、コーダが乱暴なのが残念です。「どうだ!!!」と、そこまでやらなくても伝わっていると思いますよ本当に。
ただ、「正確さ」より「表現力」を求めるのでしたら、こちらが良いと言えるでしょう
ウラディミール・ホロヴィッツ
ホロヴィッツってやはり凄いのですね。
テンポや強弱を動かして表情を変える演奏に時代を感じますが、余りある独特の世界とカリスマ性。
この表現は癖になります。
シフラ
これまたスピードも表現もオーバーな演奏です。
ちょっと危険な表現ですが、正確な技巧を求める「体操競技」ではなく、「サーカス」を思い浮かべてしまうのです。
パッと見は「うわ〜凄い!!!」。でも、長く付き合いたい演奏ではありません。何か聴いていて疲れてしまうのです。
これは多分に「時代」が関係しているのでしょう。当時は録音を聴くより「ライヴ」が基本。見せ方も当然今とは違っています。「花形ピアニスト」とはこういうものだったのかも知れませんね、当時は。
エミール・ギレリス(動画無し)
録音が古いですね。でも載せたのはとても安定している演奏だから。
曲芸的な「どうだ凄いだろう」という所が無く好感が持てます。
テンポは速いですが安定していますね。
音が良ければ最高なのですが・・・。
シモン・バレル(動画無し)
さすがは「バレル」、速いですね。でもレガートな奏法なので「凄み」はさほどありません。
それより、所々で最初の速さを維持できずに遅くなってしまいます。どう聴いても「音楽的表現」でテンポを揺らしている様には聞こえない。そうするといくら速くても興ざめしてしまいます。
この演奏も、やはりライヴ。
お金を払って聴きに来てくれる客を興奮させ、満足させる演奏とはどういうものなのか。
きっとこういうものであったのでしょう。
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