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アラム・イリイチ・ハチャトゥリアン。 プロコフィエフ、ショスタコーヴィチと共に、「ソヴィエト3巨匠の一人」と言われた作曲家です。 もうこの曲はあまりにも有名になりすぎました。 かつてまだメジャーでなかった頃、「この曲いいよ」とテープをダビングして推薦し廻った頃が懐かしいです。嬉しい反面、ちょっと寂しい思いもいたしますが・・・。 この「仮面舞踏会」は劇音楽、19世紀ロシアの文豪「ミハイル=レールモントフ」の同名の戯曲に基づいて作曲されました。 この悲劇は、主人公の「アルベーニン」が、仮面舞踏会で腕輪を無くした妻「ニーナ」に嫉妬し、毒殺してしまうものです。 「仮面舞踏会」というのが曲者ですね。その言葉の通り、仮面で顔を隠して相手が誰なのか謎のまま踊り明かします。 危険な香りがプンプンしますが、そこが抑圧された貴族の心を開放する場。しかし、嫉妬からトラブルも避けられず、諸刃の剣となる大人のパーティーです。 初演は1941年、真珠湾攻撃の年。全14曲で演奏されましたが、3年後に作曲者自身の手によって5曲の組曲に作り替えられました。 当時は政府による音楽の統制が厳しかったですし、ナチスが独ソ不可侵条約を破って初演の当日にソヴィエトに攻め込んで公演はすぐに打ち切り。 組曲にしたのも色々な事情があったようです。 さて、今私のコレクションで好きな演奏は「フェドセーエフ/モスクワ放送」。 このオケ独特の金管がバリバリ鳴り響き、欲求を大きく満たしてくれます。 欲を言えば、ドイツ的でゆったりと重々しい演奏も欲しいです。この曲は色々なタイプの演奏を楽しめますから。 しかし、そこがこの曲は難しい所でもあります。 どんな演奏でもそれなりの音になってしまう。「どの演奏もしっくり来ない」曲はよくある事ですが、その逆は少ない。 「これもいいんじゃない?」 下手をすると曲が持つ力に負けてしまい、深く掘り下げる事をせず目指す演奏を見失う。それは恐ろしいことです。 では、演奏です。演奏時間が長い順から御紹介しましょう。 どんどんテンポが速くなって行きますよ。 「1.演奏時間4分22秒」 この演奏は「踊る」事を想定した演奏なのでしょう。テンポを乱さず進めて行きます。 ゆったりとしたテンポの場合、弦が歌い込めますね。繋ぎのフェルマータしたくなる所が窮屈と言えなくは無いですが、雄大な感じがして落ち着いて聴くことが出来ます。 まさに「踊る姿」を意識出来る演奏です。 「3.演奏時間4分03秒」 ロンドン・シンフォニー、さすがに巧いです。 オケの個性から言うと、もっと金管がバリバリ出てきそうですが指揮者の好みなのでしょう、抑えられていて良いとも言えますが、もう少し欲しいですね。 「4.演奏時間3分58秒」 聴き始めて「速い!」と思いました。が、癖になってしまいます。 仮面を付けた貴婦人が、不適に笑いながらビュンビュン振り回される。時には顔を上げて大きく口を開けて笑いながら。 仮面をつける事によって抑え付けられていた心のたがが外れ、本性が露わになる高揚感がたまりません。 この速さが快感に変わって行きます。 かつてこの曲を見つけたときには興奮いたしました。
それから数十年が経ち、今は曲と共に「浅田真央のトリプルアクセル」が連想されて無意識の緊張が走ります。 メジャーになったのは嬉しいですが、音楽以外の理由による心の緊張は「弊害」と言えるでしょう。 |

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