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「僕、根っからのクラシックファンなんだ。吹奏楽も小学生からずっとやってたし」
「私も幼稚園からピアノやっていて、クラシックしか知らないの♪」
これは運命の出会いか!
子供の頃からクラシックを愛し、「結婚するならクラシック好きな人」と思い続け、やっと巡り会えた理想の伴侶。
クラシック好き同士が結婚という、業界人でなければなかなか難しい奇跡が起きたとも言えるのですが、いざ蓋を開けてみると・・・。
「何よ、この“春の祭典”って。これのどこが音楽なの?」
「そう言う君はどうなんだ? CDを沢山持っているって言うから見てみたら、訳の分からないピアノの独奏曲しか無い。コンチェルトすら無いじゃないか!」
「だってオーケストラとなんか演奏しないもの」
「でも聴くぐらいはするだろ?」
「私はピアノを弾く為の参考に聴くのよ!」
さて、この二人のすれ違いは修復できるのでしょうか。運命やいかに!
では、もし二人ともベートーヴェンの交響曲が大好きだったとしたら、果たしてどうだったでしょう。片や「フルトヴェングラー派」片や「カラヤン派」で相譲らないとなれば、「私の前で○○はかけないで!」ともなりかねません。本当に難しいものです。
クラシックに親しむきっかけとして多いのは、概ねこの3つのタイプだと思います。
1.ピアノやヴァイオリンなど、楽器を習っていた。
2.吹奏楽部に入っていた
3.親が聴いていた。好きな曲に巡り会い、聴き始めた
1.のように楽器を習っていると、当然教本や発表会で様々な曲と出会います。
図書館を見てみましょう。「こんなに聴けるの?」というくらい沢山の独奏曲があり、「発表会」に使われる曲だけ集めたCDなども結構あります。
「ランゲ」「バルス」「クラーウ」。
これは、ピアノを習っていなければ一生出会う事も無い作曲家ですし、「ハノン」「ツェルニー」「ブルグミュラー」などは、「ブラームス」「ラフマニノフ」など比較にならない程身近に付き合う作曲家。そういう世界なのです。
普通に習っていれば、まずオケとの協奏などありません。日々独奏曲で練習し、発表会の曲を仕上げて行く。ですから、コンチェルトは聴く環境にないのです。
では、2.のように吹奏楽部に入るとどうでしょう。
「リード」「ネリベル」「ネオゲル」「スーザ」。これらを知らない人はまずいません。
オーケストラの曲をアレンジしたものもどんどん演奏します。
ただし、曲には傾向があります。
どちらかと言うと編成の大きいもの。金管楽器が入っているもの。打楽器が使われているもの。
「弦楽四重奏」、弦楽器やピアノの「協奏曲」「独奏曲」などは向きません。
したがって、「ホルスト」「ショスタコーヴィッチ」「ストラヴィンスキー」「バルトーク」「レスピーギ」などに、当然人気が集まります。
また、日々金管や打楽器の音に慣れ親しんでいますから、派手な金管・打楽器の曲を聴いたりすると思わず興奮してしまいます。
交響曲で言えば、「モーツアルト」「ベートーヴェン」ではなく「ドヴォルザーク」「マーラー」等でしょうか。
すると、どうしても疎くなるのがピアノや弦の独奏曲。吹奏楽をやっている環境で、これらの曲に関わる事はまずありません。
3.は、何かのきっかけで聴くようになったケース。
例えば「オペラやバレエが好きで他の曲も聴くようになった」という場合は、やはりスタンスはオペラやバレエ中心になります。
分類的には、1の「楽器を習っている」に近いでしょう。
ただ、「家にCDがあった」「映画で使われた曲に興味を持った」などの場合は、その先どこに向かってしまうのか分かりません。
それは、聴き始めたものによって「刷り込み」が行われるからです。
聴き込むCDの傾向や、目覚めた曲によって変わるでしょう。
ルネッサンス、バロック、古典派、ロマン派、近代・現代、前衛。
バッハ、ベートーヴェン、シューマン、クライスラー、マーラー、シェーンベルク。
どの時代でも、どの作曲家に引っかかっても広い世界が待っています。どこまで行ってもきりがなく、果てしなく「○○オタク」の道を突き進んでしまうでしょう。
私の知人に「ルネッサンス以前の曲しか聴かない」という方がいますが、そのへんの「クラシックファン」より遙かに多くのCDコレクションを持っています。
どちらが“クラシック音楽をより堪能しているか”は敢えて問いません。
広さや深さは関係なく、限りなく音楽を愛している事に違いは無いのですから。
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