日々の気持ちを短歌に

速ければいいのだろうか怪物と化したる新幹線の風圧(後藤人徳)

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石川啄木 100首 選 (1)  大西民子 選

(一握の砂)

東海の小島の磯の白砂に
われ泣きぬれて
蟹とたはむる

頬(ほ)につたふ
なみだのごはず
一握の砂を示しし人を忘れず

いたく錆(さ)びしピストル出(い)でぬ
砂山の
砂を指もて掘りてありしに

砂山の砂に腹這(はらば)ひ
初恋の
いたみを遠くおもひ出(い)づる日(ひ)

いのちなき砂のかなしさよ
さらさらと
握(にぎ)れば指のあひだより落つ

しつとりと
なみだを吸へる砂の玉
なみだは重(おも)きものにしあるかな

大とふ字を百あまり
砂に書き
死ぬことをやめて帰り来(きた)れり

燈影(ほかげ)なき室(しつ)に我あり
父と母
壁のなかより杖つきて出(い)づ

たはむれに母を背負ひて
そのあまり軽(かろ)きに泣いて
三歩あゆまず

わが泣くを少女等(をとめら)きかば
病犬(やまいぬ)の
月に吠(ほ)ゆるに似(に)たりといふらむ

こころよく
我にはたらく仕事あれ
それを仕遂(しと)げて死なむと思ふ

鏡とり
能(あた)ふるかぎりのさまざまの顔をしてみぬ
泣き飽きし時

怒る時
かならずひとつ鉢を割り
九百九十九(くひゃくくじふく)割りて死なまし

ダイナモの
重き唸(うな)りのここちよさよ
あはれこのごとく物を言はまし

目の前の菓子皿などを
かりかりと噛みてみたくなりぬ
もどかしきかな

あたらしき背広など着て
旅をせむ
しかく今年も思ひ過ぎたる

何やらむ
穏かならぬ目付きして
鶴嘴(つるはし)を打つ群を見てゐる

新しきインクのにほひ
栓(せん)抜けば
飢ゑたる腹に沁むがかなしも

はたらけど
はたらけど猶(なほ)わが生活(くらし)楽にならざり
ぢっと手を見る

(つづく)

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