日々の気持ちを短歌に

数知れぬ星をいだいて働ける母のごとしも宇宙というは(後藤人徳)

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詩集<転位のための十篇>全篇 (4) 

 吉本隆明著 1952〜53

「絶望から苛酷へ」

ぼくたちは肉体をなくして意志だけで生きている

ぼくたちは亡霊として十一月の墓地からでてくる

ぼくたちの空は遠くまで無言だ

ぼくたちの空のしたは遠くまで苛酷だ

うたうことのできないぼくたちの秋よ

うたうことを変えてゆくぼくたちのこころよ

ぼくたちが生きていることだけでぼくたちの同胞はくらい

ぼくたちが死なないことだけでぼくたちの地球は絶望的な場処だ

そうしてぼくたちは生きている理由をなくしていることだけで

同胞と運命をつないでいる

ぼくたちは愛をうしなったときぼくたちの肉体をうしなった

ぼくたちが近親憎悪を感じたとき

同胞はぼくたちの肉体を墓地に埋めた

おう いちまいの風だけが

ぼくたちの肉体に秋から冬への衣裳を着せかける

ぼくたちの肉体は風と相姦する

ふごのように

からすの啼きかわす墓地から

ぼくたちは亡霊となってでてくる

ぼくたちの衣裳は苛酷にかわっている

ぼくたちの視る風景はくろずんでいる


屈辱のはんぶんはぼくたちの土地から生まれそこにある

屈辱のあとはんぶんはダビデの子から遺伝してそこにある

ぼくたちはいまもむかしのように労働を強いられ

鎖をたちきるために反逆をかくまっている

ぼくたちの空はやがて語りはじめ

ぼくたちの空のしたはやがて抗争するだろう

ぼくたちの都市は波うち際までせまり

ぼくたちの工場地帯は海にむかって炭煙をはき出す

そうして生きてきたことがぼくたちを変えなかったように

海はその色と運搬をつづける

ぼくたちの屈辱はみのり はじけ 枯れる

つぎにぼくたちはあかるい街々で死ぬだろう

おう 未来のむげん都市と生産地帯から

ぼくたちの屈辱とぼくたちの絶望は発掘されるか

そのときあかるさがにんげんを変え

ぼくたちの遺伝子はぼくたちの屈辱を忘れる

ぼくたちの絶望は意味を拒絶される

反逆と加担とのちがいによって

ぼくたちの屍はむちうたれるだろう


ふたたび死のちかくにいる季節よ

ぼくたちの分離性の意志が塵埃にまみれて生きている

労働は無言であり刑罰である

未来のことがなにひとつ視えないとき

ぼくたちの労働はしいられた墓堀りである

ぼくたちの疲労のほかにぼくたちをたしかめる手段はない

苛酷はまるで呼吸のように切迫する

遠くまで世界はぼくたちを檻禁している

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