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--- 次の時代へ --- 十年前とも、五十年前とも同じ様に、春には春の花が咲き乱れ、夏には夏の鳥がその生を喜び、そして心地良い秋が過ぎようとしていた ナオミばあさんは、みつまたの泉からカーペン国へ移動中だった。 道中、前方から走り寄って来る女の子の姿が見えた。 「ナオミばあちゃーーん」 (おやおや、リリーの様だね) ナオミばあさんは、心の中でつぶやく。最近カーペン国に行く用事が多かったのであるが、その道中、道沿いにリリーが住む家があったので、彼女に会う事が多くなった。それだけの付合いだったが、人懐っこいリリーは、いつの間にかナオミばあさんのことを「ナオミばあちゃん」と呼ぶ様になっていた。 (そんなに急いだら転んじゃうよ。ほら、あ、言わん事じゃない) リリーはすくっと立ち上がり、泣く事も無く、こちらに向かってまた走り出し、そしてナオミばあさんのスカートに飛びついた。 「また、お城にお出かけなの?」 「そうだよ。王様に会う用事があってね」 「へー、王様に会うんだ。リリーね、まだ王様に会った事がないんだ。ナオミ婆ちゃんは偉いだね」 リリーは、いつもパッチリと開いている目を、更に大きく開いて驚いていた。 「私かい? 私は別に偉くなんか無いさ。偉いの王様さ」 「ふーん」 「リリー。リリーのお婆ちゃんは?」 「お婆ちゃんね、あそこ。歩くのが遅いの」 リリーは、自分が駈けて来た方向を指差した。その方向から、リリーのお婆ちゃんらしき女性が歩いてくるのが見えた。彼女はかなりの高齢で、歩くのが遅かった。そんな足の弱くなった彼女だったが、昼間の散歩は欠かす事が無かった。 「リリー。お婆ちゃんの所まで一緒に歩こうかね」 「うん、リリー、歩く!」 ナオミばあさんは、リリーの手を取り、彼女が来た道を一緒に歩いた。 「これはこれは、ナオミばあさん。いつも、リリーがすみません」 「別に構わないよ。しかし、貴女は元気ですね。リリーを散歩に連れて回れるんだから」 「いえね、どっちがどっちの散歩をしてやっているだか、最近では分からないくらいで」 ほほほ、と、彼女は自分の言った事に自分で笑いだしていた。 「貴女の年を考えれば、大したものですよ」 ナオミばあさんは、にっこりと微笑んだ。 「話は変わるけど、恐らく今夜あたり、月の融合が終わると思うよ」 「ナオミばあさんもそう思われますか。私も良く分からないのですが、何となくそんな気がしていたんですよ」 「貴女もそう思うなら、間違いないね。それだったら、リリーをつれて、今夜月見をすれば良いよ。綺麗な物を見る事が出来るから」 「綺麗な物?」 仰ぎ見る格好で、リリーが話しに加わってきた。 「そう、綺麗な物。でもリリーは小さいから、夜遅くまで起きている事ができないかな。どう、リリー?」 「リリー、見る。見たいもん。頑張って起きて、綺麗な物見るもん!」 「ほー。そうかい。リリーは頑張るかい。じゃあ、今のうちにお昼寝しておくんだね。じゃ、私は用事があるから行くよ」 ナオミばあさんは、そう言い残してリリーの手を離し、バイバイと手を振りながらその場を後にした。 「お婆ちゃん。帰ろう。お昼寝しなきゃ。ね。ね」 「はいはい」 リリーは既に家に向かって走り出していた。もちろん頭の中からは、彼女のお婆ちゃんが走れないなんて忘れていた。大好きなナオミ婆ちゃんが言った綺麗な物って何だろうと、一生懸命考えていたから。 ==================================================================
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