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「ガタ、ガタ、ガタン」
--- 白い帽子の少女 ---
鼻腔を抜けて咽に届く風が、夏が乾いた季節である事を皆に伝える真夏。そして、かなり暑い。 白くか細い女性の腕でも簡単に持てるほどの小さな鞄を左手に持ち、ペットボトルを持ったままの右手で、福永亜美は器用に自動改札機に乗車券を挿入し、そして出てきた券を素早く抜き取った。それから改札を抜け、大分行きの日豊線に繋がるホームに向かって、JRの小倉駅構内を早歩きで移動していた。周りに人を探す様子も無く、誰かと一緒に列車に乗るようには見えなかった。 七月も終わりを迎えようとしていて、少し朱色が入った白色に近いブラウスと、紺色の少しゆったりとした短めのスカートとパンプスと言う軽装にもかかわらず、お茶のペットボトルに付いた水滴同様に、彼女は額に薄く汗を浮かばせていた。 彼女は特急列車に乗らず、あえて普通列車に乗って、お婆ちゃんが待つ田舎にゆっくり帰りたいと思っていた。予定より遅くアパートを出てしまた為に、当初少し慌ててしまった彼女だったが、なんとか予定した列車の発車前に乗り込む事が出来た。 「良かった。間に合ったみたい」 特急列車のように全席が進行方向に向かった二列シートではなく、窓に対して垂直に向かい合わせになった席を両脇に見ながら、通路をゆっくりと歩いた。客車には申し訳ないくらいしか乗客が乗っておらず、好みの席を自由に席を選んで良かった。彼女が選んだ席は窓際で、進行方向と逆向きだった。 亜美はその椅子に腰を下ろし、乱暴にバックを置いてから、冷房が効いていない車内に風を呼び込む為に、窓を上に引き上げた。だが彼女の頬をなでたのは、むっとするほど暑い夏の空気だった。 (あんまり変わらないっか) それからペットボトルの蓋を開け、胃に落とし込むようにして、お茶を流しこんだ。 「ふぅー」 彼女が吐き出す大きな息の音と合わせる様にして、車両がゆっくり動き始めた。モーターのエネルギーが、電車の駆動力へと姿を変える振動と音が聞こえてきた。。 ガタ、ガタ、ガタン。 彼女が車窓からホームを眺めると、疲れた様子で所在無げに立っている見知らぬおじさんが、ゆっくりと視界の中から消えていった。そして直ぐにプラットホームが見えなくなり、車窓から見えては後ろに飛んでいく景色の速度が徐々に速くなっていった。 車窓から空を見上げてみると、真っ青な青空の中に、亜美同様に汗をギラギラかいた太陽が昇っていた。 ⇒次はコチラ
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