慈遠の創作小説.

創作小説、活動中。 不定期になりますが、Upしていきたいと思います。宜しくお願いします。

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 電車の揺れは約束を忘れられないロボットの様に繰り返されていた。
 昨日の夜はいつもに増して母の心配がうっとうしかったと、聡子は思い出していた。どうして、母はあんなにも心配するのだろうと考えていた。そして、昨夜言われた二つの事を思い出していた。
 一つは、やはりお婆ちゃんの所まで母が付いて来ると言いだしたこと。誘拐が心配だとか、どこか別の駅で降りてしまったりするのではないかと。もしかしたら、小倉駅で間違った列車に乗るかもしれないって。
「お母さん、心配しすぎ!」
 結局、昨夜何度言ったか覚えていないけれど、母がその度に色々な言い訳をしてきた。心配性の母は、彼女の気持ちの中では既に聡子に付いて行きたいと考えていたようだった。それを途中まで乗って来ると譲歩させるのに三十分かかった。そして、乗り換えのある小倉駅のホームにまで着いてくる事で納得させるのに、更に一時間かかった。
 聡子には、それでも不安があった。母の事だから、ホームにまで見送りに来たら、そのまま列車に乗りかねないと思ったのだ。だから更に説得を続け、小倉駅の切符を買う所までという事に、更に四十分の時間をかけて納得してもらった。
 聡子はあきれてしまい、残業で遅くなって帰ってきた父にその一部始終を話した時、父は苦笑いをしていた。
「しょうがないなぁ」
 聡子は、父は母と聡子のどちらに言ったのだろうと考えたが分からなかった。多分、両方に言ったのかもしれないけれど。
 聡子は手にしていた本を傍らに置き、もう一つのことを思い出しながら、白色の大きな帽子を両手に取って太股の上に乗せた。
 聡子にとって、白色の大きなこの帽子は既に四代目になっていた。体の成長に伴い帽子が頭に乗らなくなれば、それを理由に父に一生懸命お願いして新しいものを買ってもらってきたのだった。そして今手にしたこの帽子は、今年入学のお祝いに買ってもらった物だった。母は最初、それは置いていきなさいと強く意見した。もちろん、聡子なりに母思っている事が分からない事も無かったのだが、それは聡子にとって譲れない事でもあった。
 そんな聡子の帽子好きには、理由があった。









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