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お姉ちゃんは開けかけたドアをそのままに手で押さえながら振り向いてから言ってくれた。そして、そのお姉ちゃん手には、真っ白で大きな帽子が見えた。雪のように綺麗な白色の帽子だった。命の恩人であるはずのお姉ちゃんの顔を覚えていないのに、その時の帽子だけは何故かはっきり覚えていた。 聡子は大事をとって一晩入院し、次の日にはお婆ちゃんの家に戻る事が出来た。聡子は死線を彷徨ったと言うのに、何事も無かったようにけろっとして帰ったのに、お婆ちゃんをはじめ多くの大人達が腫れ物に触るようにしてくれたのが、聡子は不思議でならなかった。 それに従兄弟達全員から、一人ずつごめんなさいと謝られた事を彼女は覚えている。 (お兄ちゃん達のせいじゃないのに) みんなこってりとそれぞれの親に怒られたのだと、それから数年して聞いたのだったが、その時聡子は全く分からなかった。 とにかく、聡子は死なずにすんだ。きっと、究極の緊張感後の開放感印象的だったからか、それから白色の大きな帽子が大好きになった。そうではないかと理由を知っている母は、聡子があの時の事を思い出すのではないかと思っているようで、あまり白色の帽子が好きでは無かったが、父は幸運の印として良いじゃないかと賛成してくれた。 不思議な事に、その後、聡子は水が怖いという事は無かった。恐怖の幼児体験をしたにも関わらずに。そして、白い帽子好きも変わる事無く今に至るまで続いていた。そして今も彼女の目の前に、それは確かにあった。 そして、ふと考えた。 (あのあのお姉ちゃん、なんて名前だったのだろう。今頃何処にいるのかな?) 亜美は飽きる事無く斜向かいに座る女の子を眺め続けていた。彼女はお気に入りらしい白い帽子を両膝の上に置いて眺めていたが、また被りなおしてから周防灘の景色を見始めていた。表情は、やはり何か難しい事を考えている様に、亜美は思った。 それから、ふと高校生の頃の彼女自身について思い出していた。今でこそかぶる事も無くなっていたが、あの水泳部の練習に明け暮れていた頃、白い帽子が大好きだった事を。 (でも私、どうしてかぶらなくなったのだろう?) ⇒次はコチラ
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