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慈遠です。こんにちは。 迷い鳥の掲載が終わりました。 読み終わった時の爽快感等とは対極にあると言いますか、「うーん」と考えちゃうかな、なんて最後の文字を打ち込んだときに思いました。 しのぶの決心。 けっして綺麗な話ではなく、人間のもつ泥臭いところというか、どろっっとした所を書いたイメージです。 どのように感じて頂けましたでしょうか。 ありがとうございました。 筆者。
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・迷い鳥
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《説明》
⇒男性と縁の無い人生を送っていたしのぶは、今年も別荘で夏を一人で過ごすのだが、そこに現れた・・・・。
⇒男性と縁の無い人生を送っていたしのぶは、今年も別荘で夏を一人で過ごすのだが、そこに現れた・・・・。
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立ち尽くす彼女に、中村徹が、その表情を緩めて言った。 「いやー、しのぶちゃん。朝、電話があった時にはびっくりしたよ。まさか、只野がココにいるなんて、思ってもみなかったからね」 「でも、一度いらっしゃっているじゃないですか・・・」 「いや、あの時は、万一ここに奴がやってきたら大変だと思ってね。かわいい姪っ子に、注意する為に来ただけなんだよ。しかし、あれだね・・・」 中村徹は、刑事部長である前に、やはりしのぶの優しい伯父だった。 「とにかくだよ、こうしてしのぶちゃんが生きている事は、嬉しい。ホッとしているよ。奴は、何と言っても人を殺している男だからね。それも奥さんを、包丁で何度も刺して、その上、遺体を家の庭先に埋めてから、逃亡してしまう様な残虐非道な奴だからね。だから・・・」 「だから?」 「いや、だから、奴をかばうような事は言わなくて良いからね。しのぶちゃんは、自身が受けた被害を、包み隠さずちゃんと説明するんだ。じゃないと・・・・・。一応しのぶちゃんには、容疑者隠匿と逃亡者幇助の疑いがあるから、警察に来て貰って、いくつか話を聞かなくてはならないからね。いくら僕でも、それを反故にする事は出来いんだ、残念ながら」 「いえ、叔父さん色々ありがとうございました」 しのぶは、深々と頭を下げた。 「しかし、あれだな。-------聞いてい良いかな?」 「はい」 「どうして、僕に----いや、警察に知らせてくれたのかな? 少なくとも、まだ隠せおおせていたわけだろう」 しのぶの視線が、すっと中村から外れ、更に下のほうに落ちた。その目の動きは、完全に女の目だと中村は思った。 (この子は・・・) 中村は、数々の経験から、姪っ子とは言え、目の前にいる女性と被疑者との関係を素早く想像していた。 一方しのぶは、一瞬ぶるぶるっと体を振るわせ、そして言った。 「あの人はは絶対に、私を置いて出て行く人よ。そして新しい所に到着すると、きっと誰かが、あの人の横に現れるの。私、そんなの耐えられない。 だったら・・・・ そう思ったら・・・・」 しのぶの顔に浮かぶ二つの瞳が、鈍く光った。 「行こうか」 「はい」 中村に軽く背を支えられつつ押されて、しのぶは歩き出した。玄関を出ると、白と黒の二色塗りの車が停車していた。 そして、真っ青な夏の空に浮かんだ太陽が、しのぶの影を、濃く写していた。 完 ⇒あとがき
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玄関の締まる音がして、数秒後、しのぶは大野がいる部屋のドアを開けた。 「純」 そう言うと、タンスの裏に隠れていた大野が姿を表した。 「誰だったんだ? 帰ったみたいだから、お父さんじゃないよな」 安堵したのか、にっこりと笑いながら答え、そしてベッドのヘリに腰を下ろした。 すると、しのぶの後ろに開け放たれたドアの所から、スーツ姿の男が三人躍り出た。 「只野だな。お前には、妻殺害及び死体遺棄の疑いで、令状が出ている」 大野の表情が、見る見るうちに変化した。いったい何が目の前で起こっているのか、さっぱり分からなくなったが、その男達が警察の関係者である事が明らかに分かると、続いて、彼の今置かれている状況と言うのが理解できた。 焦る男は、さっと立ち上がり、体を捻って逃げ道である後ろの窓を見たが、既にそこには、窓の向こうにスーツを着た刑事らしき男が立っていた。 「只野。お前に逃げ道は無い。神妙にしろ!」 有無を言わせぬ低い響きの声に、男は呆然とした表情のまま、しのぶを見た。 「しのぶ・・・・。お前が呼んだのか!」 「あなたは、もう・・・・」 そう言いかけたしのぶは、ポケットから取り出した黒い物を、彼女の隣に立つ男にさし出した。 男は、直ぐにはそれが何だか分からなかったが、刑事らしき男の手の中で開かれるその黒い物が、無くしたはずの彼の財布である事が分かった。そしてその財布の中には、彼の本名が記載された免許書が入っていた。 ベッドに座り込んだ男は、だらしなく両肩を落とすと、消え入るような声で聞いた。 「いつから・・・・」 「初めて会った日から、あなたが嘘の名前をついている事は知っていたの。でもその事は、私にとって何の問題も無かったの。ただ、この前叔父さんが来た事あったでしょう。それが、この人。市の刑事部長やっているの」 「そんな事、あの時一言も・・・・」 「だって、そんな事言えないわよ。あの時叔父さんから、奥さんを殺して逃げた男がいるからって、写真を見せられたの。それは、もちろんあなたの写真だった。その上、名前が只野だ言われて、動揺していたのよ。でも、それでも良いと思ったの。あなたが、私にうその名前を、つまり大野純として傍にいてくれるなら、私はそれで良いって・・・」 「だったら」 大野の声が、声を発する度に、段々を大きく怒気を含み始めていった。 「でも、あなたは私の所から逃げて・・・」 「あの時は、確かに・・・・。でも、もう何処にも行かないと言っただろう! 俺は、お前に約束したじゃないか」 「ううん、あなたは足が良くなると、また出て行くのよ。私を置いてね」 「違う!」 「ううん、あなたは・・・・」 しのぶは顔を抑え、首を左右に大きく振った。泣き声は聞こえなかったが、細い肩が小刻みに揺れていた。 「連行しろ」 しのぶの伯父である中村徹が、強い響きのある声で言い切ると、脇に控えていた若い男二人がさっと只野の脇を固め、立て、と言って立たせた。 大野は観念したのか、それとも、あまりにも色々な事が一度に起こってしまった事に驚いてしまったのか、抵抗する素振りなど全く見せず、首をうな垂れたまま、ゆっくりと歩き出した。 しのぶの横を通り過ぎる時、大野の首が僅かに上がり、ちらりとしのぶを見た。 そして、刹那、二人の視線がかちりと絡んだのだが、先に視線を切ったのはしのぶだった。そして、両脇を固められた大野が、------いや只野が、壁の向こうに消えた。 ⇒次はコチラ
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今日の朝も、昨日と同じで、誰もが真夏の一日を想像させる様な、良い朝だった。 「明日、しのぶのお父さんが迎えに来る日だよね」 大野は、彼女が作った朝食の味噌汁を口に運びつつ、尋ねた。 「うん、そうよ」 「そっか、いよいよだな」 「-----そう、いよいよなの」 大野は、笑っていた。昨日とも一昨日とも同じ笑顔で、しのぶは彼のそれを見るだけで、本当に良い男だと思ってしまうほどだった。 「ご飯、美味しかった?」 皿の上に盛り付けされた全ての物を食べ終わった彼に、しのぶは笑顔で聞いた。 「うん、美味しかったよ」 「昨日食べた朝食も、昼食も、そして夕食も?」 「ああ、美味しかったよ」 「一昨日も、そのまた前の日も?」 「ああ、本当に美味しかった。しのぶの作る料理は、美味しい物ばかりだよ」 しのぶは、突然涙が流れ出したのを、感情を押さえ込む為に口に手を当てて我慢するのだが、頬を伝った一粒の涙は、彼女に次の涙を呼んでしまった。彼女なりに、強く我慢している様子だったが、一度決壊した感情は、洪水の時に堤防を切り裂いた雨水と同じで、後は轟々と流れ出すだけだった。 突然の事に、暫くは黙って見守っていた小野だったが、あまりにも激しくしのぶが泣くので、優しく言葉をかけた。 「どうしたんだよ。そんなに、泣くなんて、どうしたんだ? 俺が、何か酷い事を言ったのか?」 しのぶは大きく、ぶんぶんと首を振った。 「しのぶが作った料理は、本当に美味しかったよ。俺は、幸せ者だよ」 にっこりと笑った大野に、しのぶは答えた。 「ありがとう」 と。 その時、玄関の方に、車のエンジン音が近づいて来るのが聞こえた。 「誰か来たんじゃないか? まさか、しのぶのお父さんが、一日間違ったとか? ま、とにかく隠れておくよ」 大野はそう言うと、椅子から立ち、いそいそと消えて行った。 しのぶは、彼の姿を見守る中で、ちょっと口を開いた。 「じゅ---」 呼びかけ様として上げかけた右手が、僅かに上がった位置で止まり、空気が抜けかけたビニールの人形の様に、するすると落ち、だらんとぶら下がった。 すると、玄関のブザーの音がした。 しのぶがパタパタと足音を立てて、玄関に向かって廊下を歩いて行った。 ⇒次はコチラ
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夜がやってきた。 (もう、何度目なのか、覚えていない・・・) しのぶは、彼女の上で体を激しくぶつけてくる男の顔を見ていた。二人で生きている事を強く感じる一方で、今日は、彼の顔が遠くになり近くになるのを感じていた。 彼が揺れ、彼女が弾み、ベッドが軋む度に、女はそんな事を考えていた。 「嘘つき・・・」 かすれた小さな声で、しのぶがそう呟いたのと、男が最後の時を迎えたのが、一緒だった。 「今、何か言った?」 体から強い熱を発している男の耳に、それは届いていなかったらしかった。 しのぶは、「ううん」と小さく首をふった。 二人横に並んで天井を見上げて暫くすると、二人の呼吸と心拍数が、徐々に平常値に戻っていった。 「ねえ、他には何も絶対に聞かないから、一つだけ本当の事を教えて」 「どうしたんだよ、急に」 「お願い、一つだけなの」 二人は、天井を見たまま会話を続けていて、大野は、暫く考えていた様だが、最終的に分かった、と答えた。 「奥さん、綺麗な人だった?」 「奥さんって、俺?」 「ええ、結婚していたんでしょう?」 「結婚? 俺が?」 しのぶは、大野から、彼が結婚していたかどうかについて、今日まで一度も聞いた事が無かった。それなのに、彼女は、断定的にそう言ったのだった。 「薬指の日焼けよ。指輪は外していても、日焼けの後はうっすらと残るものなの。それに、貴方みたいかかっこいい人が、ずっと独身だなんて、考えられなかったし」 大野は、図星を言い当てられ黙り込んでしまったが、暫くして観念したのか、重い口を開いた。 「当たりだよ。参ったな。実は、僕はバツ一でね」 「それで?」 「それでって?」 「奥さん、綺麗だったの?」 話を逃げる為にか、少し茶化すような口調で聞く大野に対し、しのぶは、ややきつい口調で尋ねた。明らかに表情を曇らせた大野だったが、ずっと天井を見つめているしのぶは、彼の表情の変化を見ていなかった。ただ、彼の声を一言も聞き漏らさないようにと、黙って意識を集中していた。 大野は、小さく咳払いをしてから、答えた。 「ふつ・・・・普通だった」 「普通って!」 「いや、だから・・・」 「うん、分かった」と、しのぶは、話を無理やり終らせる様にしてそう答えると、大野が何かごにょごにょと口の中で言ったのだが、もう一度、分かったからとつぶやき、そして口をつぐんだ。 あたりに夜が再び訪れ、しんとした空間が二人を包み、そして二人はそのまま眠りに落ちて行った。 ⇒次はコチラ
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