慈遠の創作小説.

創作小説、活動中。 不定期になりますが、Upしていきたいと思います。宜しくお願いします。

・キャンドル

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《説明》
 時代はまだ交通手段に馬車が活躍している頃、メラリ村と言う蝋燭を村の基幹産業にしている村があった。
 村は、宗主となる市に治められていて、その総領息子が二十三歳の誕生日に結婚する相手を、三つの村から選ぶ事になっていた。
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十二

 日はすっかり西の空に近づこうとしていた。
 馬車はゆらゆらと揺れていて、窓の外に見える景色は、もうすぐメラリ村に到着しようとしている事を教えていた。
 色々な事があった一日だと、サヌンは窓から見える景色を眺めながら考えていた。
 そう言えば、もうだいぶ前に亡くなった祖母がよく言っていた事を思い出した。
「ある時にはいっぺんにある」
 と。
 重なる時は、色々重なるものだと言うその意味がようやく分かった気がした。
「お爺ちゃん」
 今は、何故かそんな言葉が、とても自然にサヌンの口から出た。
 一瞬驚いた様子を見せたが、まだ少し赤いかをしたヘラウスがゆっくりと、何だと答えてサヌンの顔を見た。
「今、お婆ちゃんの事を思い出していたよ」
 ややあって、そうか、とヘラウスは答えた。
「俺----、お婆ちゃんが思うような男になっているのかな?」
 どうした突然、と答えてふふっと笑い、そして言った。
「たぶんお前は、あいつの想像以上に育っとるよ」
 多分褒められているのだと思えると、サヌンはこそばゆい気持ちになっていた。

 ---ガタン。

 馬車の車輪が、恐らく大きな石を踏んだのだろう。車体が大きく揺れた。
「メイの事なんだけれど」
 そう言い出したサヌンは、色々な事を祖父に話そうとした。彼女の良い所、彼女が最近話すのが上手になった事、そして好きだと言う事。残りの馬車の時間中かかっても良い足りない事を話して、改めて彼女の事を認めてもらおうと話し始めたのを、ヘラウスが「サヌン」と低い声で言い留めた。
 聞いて欲しいのに、と思った時だった。

「ワシには、孫娘がいなくなってしもうた。
 だがのう、どうも孫の嫁が出来るようじゃ」

 サヌンには、祖父が恥ずかしそうに窓の外を眺めている後ろ姿しか見えなかったが、目が笑っているのだと思った。

 揺れる馬車の御者が、大きなラッパの音を響かせた。村に馬車が戻ってきた事を告げる信号だった。
 かすかだが、このメラリ村の特産物である蝋燭のあの甘いつるんとした匂いが漂っているのがサヌンには分かった。
 いつも、嫌で嫌でなんとも思っていなかった蝋の匂いが、今日は心地良いものに感じた。

 この村で、
 ここでメイと生きていこう。

「それも良いじゃないか」
 サヌンは、ピートの声を初めて聞いた。胸にしまっている彼の化身の板に、伯父の存在を感じた。

「お爺さん。蝋の匂いがしますね」
「ああ、だがちっと温度が低い様だ」
 まだまだ勉強しないといけない事があると、サヌンは思った。

「おーい」「おーい」
 村人の声が聞こえ始めた。
 サヌンは、その中にメイの声がある気がした。




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キャンドル  11_11

 だが、その沈黙を最初に破ったのは、ヘラウスだった。ゆっくりと手を挙げ、話し始めた。
「領主様。そしてローリン様。まずはおめでたい事ではないですか。それに、これでエングド市が益々発展する事を考えれば、我らメラリ村としては異論なんてあるはずがねぇですわ」
 ありがとうと答える領主の顔が、やっと緊張からほどけたのが見えた。だが、まだ席上には微妙な空気が流れていた。
 だが、ヘラウスは構わず続けた。
「それに、我が子フィータも、これからの市の発展を思えば、きっと納得してくれているはずでげす」
 融通は利かないが、実直で知られていた元村長ヘラウスの、しかも亡くなったフィータ村長の名前が出た事を受けて、場の空気は一気に容認の方向へ流れた。
 領主は、その和やかな雰囲気を崩さぬように、隣の部屋で酒を用意してあると言い、参加者を会場に誘った。
 突然の謝罪に始まり、全員の容認、そして祝い事へと話は展開していき、結果サヌンの発言は完全に消え失せてしまい誰もその事に触れなかったが、ローリンの突然の結婚が決まっては、サヌンはもう良いかと思いゆっくりと隣室に行く為に椅子から立ち上がった。

 隣室では既に皆が立食スタイルで酒を酌み交わしていた。
 何処からも笑顔と笑い声がこぼれ、誰もが今回の慶事を祝っていた。気の早いものは、市一番の結婚式をするべきだと話していたし、生まれ来る子供が男であれば、その未来の領主に、まだ生まれてもいない孫娘を嫁がせたい等話していた。
 ヘラウスも、今日はまだ決定していない村長の代理として出席していたが、会場には当然知己も多く、酒を飲んでいた。
「サヌンさん。この度は本当に大変でしたな」
 はっとして振り返ると、そこにはローリガグラスを持って立っていた。
「いえ、お言葉ありがとうございます」と慌てて返事をした後、ひとしきりフィータの事を話した。そして、近くあるローリンの結婚と彼の新しい家族についてお祝いを言った。
 ローリンは嬉しそうに答えてから、今回嫁選びが無くなった事を詫び、そして先程サヌンが言おうとした事を尋ねた。サヌンは、いえもう問題ありませんと答えた。それを聞き、一瞬不思議な顔をしたが、それでも良いかと納得した様子だった。
「ところでサヌンさんには、結婚を約束した人はいるのですか?」
 突然の質問に、ちょっと考えたサヌンは、ええ、と恥ずかしそうに答えた。
きっと綺麗な人なのだろうと尋ねるローリンに、サヌンは笑顔で答えた。
「実はローリン様。私は絵を描くんですよ。いつか、彼女を描いた絵をお見せします。驚かれると思いますよ」
 と。
 ローリンは上機嫌で、それは楽しみですと言って、後ろから呼びかけられた方向に向かって歩いていった。
 パーティは、まだまだ続きそうだった。





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キャンドル  11_10

 いきなりの謝罪に、しんとしていた一同が、さすがに『えっ』と言う顔をした。そして直ぐに頭を下げてその謝意を表した彼の姿に、みなざわめいた。
 だがそんな突然の空気の変化にも関わらず、ローリンは下ろしていた頭を元の位置に戻すと、話を続けた。
「市に伝わるならいで、私の妻となる人を三つの町から選ぶ事が決まっていながら、私にはそれが出来なくなってしまいました。特に、三つの村の皆さんには、かなり前から色々と準備をしてもらっていながら、この様なことになってしまい、申し訳無いと思っています」
 100%非は自分にあると言う真摯な態度がその体から出ていたが、やはり突然である事は間違えなかった。オネ村長が、理由を聞かせてもらえませんかと言うと、ローリンは素直に答え始めた。
「実はつい一ヶ月前まで両親にも黙っていたのですが、実は私とある女性との間に赤ちゃんが出来た事が分かったのです。私達は、真剣にお互いの事を思っていて、元々結婚を考えていました。ですが、私にはこのしきたりがありましたし、彼女にも家の事情がありました」
「ローリン様。赤ちゃんが出来た事はおめでたい事として、しかし私達は・・・」
 オネ村長の言いたい事は、誰もが分かる正論であり、その為に娘を育ててきた父親としては納得しかねるのは当然と言えた。
「本当に申し訳無いと思っています。ですが、今回その相手と正式に会って事情を話し、当初無理かと思われていた話がまとまったのです」
 そう言ってから、その相手が、日頃なにかと仲が悪いわけではないのだが、力が元々互角の為、色々と張り合っている隣の市の領主の娘であると説明したのだった。
 うーん、と言う低い声が部屋中に広がった。
 そこにいた誰もがうなってしまう、まさかのローリンの結婚相手だった。
 だが、その空気を敏感に感じ取ってか、横でずっと黙って座っていた領主が立ち上がった。
「この度のこと、領主として、そして一人の父親として、皆さんには謝らなくてはなりません。本当に申し訳ない」
 そう言って謝る領主にならって、直ぐ横でローリンもまた頭を下げた。
 さすがに領主に頭を下げられては、他の者はもう何も言い様が無かったし、息子の不始末を詫びる父の気持ちが分からないでもなかったからだ。
「今ローリンが申したとおり、私も-----そう初めて隣の領主と腹蔵無く離して来たのですが、素晴らしい人柄のご家族でした。それとなく、これまで互いの市が張り合っている事も話してみたのですが、それは互いに向上心あっての事であるし、何より相手を忌み嫌っている事は無い事を、少なくとも私達は感じました。
 そして息子達の将来、そして二つの市の今後を考えれば、今回の事は良い関係を築ける一歩ではないですかと言う結論に達したのです。
 随分自分勝手な言い方で申し訳ないが、二つの市がより良い関係を築き、そして発展する事は、ひいてはその市を支えるそれぞれの村の発展にもなりうると私は思いました。
 皆さんには本当に申し訳なく思っていますが、ご理解頂きたい」
 まさかそんな話が飛び出すとは思ってはおらず、一同は事の重大さと、その意味を咀嚼するのに少なからず時間を必要として、しんと黙り込んだ。




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キャンドル  11_9

 領主の家にヘラウスとサヌンが現れ、三つの村の代表者が顔をそろえた所で、早速会は始まった。
 未だに何故あんな悲劇が起こり、しかも二人の村長が同時に襲われたのは謎のままだったが、領主はまず、二つの村の代表者達に今回起きてしまった突然の不幸に対し、心中から悔やみごとを述べた。
 この、かつて無い凶事を、市民は勝手な推測を交えて色々話していた。その中には真相に近いものもあったが、中には、漁夫の利を得たエコノム村の仕業ではないかと言う話もあった。
 いずれにしても、あの日当人に一番近かったメイと御付きの者にしても、あっと言う間に誘拐され、しかも突然の事に気が動転していて真実に触れる事が出来ずにいたのであれば、本当にお手上げと言う所が悲しいかな現実だった。
 領主の言葉が終わると、彼の横でじっと黙っていたローリンがゆっくりと立ち上がった。
「今日は、私の」といいかけた所に、いきなり椅子から立ち上がった男がいた。
 サヌンだった。真剣な顔をして、彼は言った。
「ローリン様。失礼は承知しておりますが、私に、私に言わせて欲しい事があるのです」
 隣にいたヘラウスは、そんな同席者の突然の行動をあえてとめようとはしなかった。驚いてもいないその表情には、孫の覚悟を肌で感じていた様子だった。
「サヌンさん。何事ですか?」
「はい。今回のローリン様の嫁候補に関しての事なのです。ですから、私に言わせていただきたい事があります」
「なるほど、その事であれば、尚更私が先に言わなくてはいけない事があるのです」
「いや、私が」
 サヌンとローリンは、広いテーブルを挟んで暫く対峙していた。互いに譲れない事を背負っているように見え、領主すら若い二人の真剣なやり取りに口を挟みかねていたのを、ヘラウスが止めた。
「サヌン。ここはやはりローリン様の話を先に聞かせて頂こうではないか。お前も大事な話ではあるようだども、それはローリン様も同様みてぇだ。ならば、この場は元々ローリン様のご発言の場だで、先ずは座りなっせ」
 有無を言わせぬ発言の後、すっと立ち上がったヘラウスはローリンに対して、失礼しましたと言って頭を下げ、そしてサヌンの肩を押さえ込んで一緒に腰を下ろした。
「すまない、サヌンさん。ありがとうございます、ヘラウスさん」
 納得していない顔だったが、サヌンは黙って座っていた。
 ローリンは改めて一同を見渡し、そして言った。
「このローリン、皆さんに謝らなくてはならない事があります」
 



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キャンドル  11_8

 本当に色々な事があっという間で、それを追いかける様に時が流れていった。
 ローリン嫁候再選定を前日に控え、各村の代表者が領主の家に呼ばれた。もう何があっても驚かないと決めていたサヌンであったが、何事があるのだろうと気にしている事は間違えなかった。
 今日はメラリ村の代表として、サヌンはヘラウスと二人で会場に向かっていた。ガタンガタンと揺れる馬車の中で、サヌンはずっと言えなかった正直な気持ちをヘラウスに告白した。
 最後の最後で、しかもこんな馬車の中で言う事では無いと怒られるかもしれないと思ったが、サヌンは行動に移したのだ。
 トバモリが亡くなった日、サヌンはメイが彼の娘で無い事は報告していた。だが意外にも、彼はその事に驚きを示さなかった。孫娘と思っていた者が、他人だったと判明しても、そうか、と言うだけだった。
 そんな祖父に対してだったが、サヌンは熱い気持ちのまま伝えた。
 自身が、メイの事を好きである事。
 彼女を一生守って生きたいと思っている事。
 今回の事を辞退して欲しい事。
 ヘラウスは、眉一つ動かさず、ただじっと進行方向を見たままサヌンが言う事全てを飲み込み、ただ一言だけ言った。
「良く考えてみろ」
 言葉は厳しかったが、ヘラウスは怒ってはいなかった。だが、喜んだ顔もしていなかった。




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