S君に対しては、他にも、間違っても良いから自分なりに考えて工夫してみることや、知識やスキルを高めるための自己研鑚の必要性などを繰り返し話しました。
とにかく、S君にはプロとしての意識を高め自立を目指して欲しかったし、それを業務での成果に繋げて欲しかったのです。
本来、挨拶や報告、連絡、相談と言った基本的なことや業務に対する取り組み方、自己研鑽の必要性などは先方の会社で指導すべきものです。
先方の会社には定期的にS君や我々と面談し、その結果を双方にフィードバックする役目の担当者のTさんと言う方がいましたので、
Tさんを通しても会社としてS君のスキルアップや意識改革に取り組んで欲しい旨をお願いしていたのですが、このTさんが期待外れでした。
Tさんは、S君に対して我々の真意(S君の考え方を変えて欲しい。我々が望むエンジニアとしての行動が取れるように指導して欲しい。等)を伝えるのではなく、
「挨拶ができないと言われた。」とか「質問や相談がないと言われた。」とか、ただの告げ口程度になっていたようでした。
なので、S君も指摘されたことだけに対しては改善が伺えましたが、本質的な部分の変化はなかなか見えませんでした。
ところが、一度、我々が「おっ!」と思うくらい明らかに変わる兆しを見せたことがありました。
それは、Tさんと共に責任者のHさんが来られて話をされた後でした。
Hさんは、我々の真意を理解してくれました(同席していたTさんは、その時も理解できなかったようでしたが…)。
そして、我々との話の後で、S君に対してS君自身がどうしなければならないのかを諭してくれたようでした。
この時は、我々もS君に対して期待をし始めました。
しかし、それも束の間のことで終わってしまい、少しずつは成果も上がるようにはなりましたが、暫くすると言われたことを言われた通りにやるだけのS君に戻ってしまいました。
もしかしたら、親子以上ほどの年齢差がある私相手だと相談もし辛いのかもしれないと、後半は若い主任の下に付けたのですが、やはり目に見える変化は感じられませんでした。
正社員であれば、それなりの時間とエネルギーをつぎ込んで教育することも出来るのですが、派遣社員に対して求めるのは先ず契約した業務での成果です。
また、正社員であれば、本人の資質に業務が合っていなければ担当替えをすることなども可能ですが、派遣社員に対してはそうは行きません(法律上も)。
そうこうしているうちに、契約を継続するかどうか決める時期になりました。
S君は若いし、良いところもたくさんあります。
我々が望むエンジニアとして業務への取り組み方が変わるのであれば、目の前の成果よりも将来性に期待しようとも思いましたが、悩んだ末に契約の打ち切りも止む無しと先方に伝えました。
契約期限の1ヶ月半くらい前に、再び責任者のHさんが見えました。
いつものTさんが来られなかったのでどうしたのかなと思ったら、退社されたとのことでした。
やはり、Tさんは会社への報告やS君を含む他の派遣者に対するアドバイスも、ただお客(派遣先)の言ったことを伝えるだけで、お客の本当の要望を汲み取ることが出来ず、いくら指導しても改善しなかったので退社してもらうことになったとのことでした。
そして、会社として監督不行き届き状態になり、S君に対する適切な指導も出来なかったことを詫びられました。
また、今後は自ら指導するから何とか契約を継続してもらえないかと言われました。
しかし、その時には既に契約の打ち切りを決定していたので、その要請を受けることは出来ませんでした。
Tさんは、残念だが致し方ない、あと1ヶ月半だがS君には最後までしっかり役目を果たさせると約束されました。
そしてその日、TさんはS君とじっくり話し合われたようでした。
すると、次の日から前回Tさんが指導された時と同じように、いやその時以上にS君が変わろうとする姿勢を見せ始めたのです。
この時、私はハッ!としました。
なぜ、私はS君を変えられなかったのか?
それに対し、なぜTさんはS君を変わろうとする気にさせられたのか?
もしかしたら、S君の契約を打ち切らざるを得なくしたのは、本当は私の指導にこそ原因があったのではないだろうか?