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「…では、失礼します」 沈黙を破って私はそう答える。 ここでこうしていても事態は好転しない。 やはりとっとと切り上げるのが得策だ。 大切なものを失くしてしまったショックを見せないように、なるべく平静を装ってその場を立ち去ろうとする。 パターンからするとここでネギ先生が「待ってください、長谷川さん!」とか言ってくるはず。 しかしそれは無視だ。 無視してズンズン歩くことにしよう。 チッ、この子供教師の前だとなぜだか自分の弱い部分をさらけ出してしまう気がするぜ。 「待っ・・・」 「待て、長谷川千雨」 「え!?」 予想外の声の主に思わず振り返ってしまう。 ネギ先生の隣にエヴァンジェリンが立っていた。 バカな! オメーはさっきまで道路の向こう側にいたじゃねーか!? 走ってきたのか? それにしちゃ息が切れている様子もないが・・・? 「メーテルリンクの『L'oiseau Bleu(ロワゾブルー)』という話を知っているか?」 「ロワゾブルー・・・? 『幸せの青い鳥』か?」 「ほぅ、正解だ。なかなか博識じゃないか?」 なめんな、こちとらネット界No.1アイドルだぞ。 カワイイだけじゃその地位には辿り着けねーんだよ しかし一体何を言い出すんだコイツ? 「あのー、それってどういうお話なのでしょうか・・・?」 「知らんのか? 魔女に誘われた二人の兄妹が幸せの青い鳥を探しに旅に出る話だ」 「ああ、チルチルミチルの!」 おいおい、仮にも教師なら原題くらいは知っておけよ。 アタシなんかに負けてんじゃねーぞ。 「チルチルとミチルは最後に自分の家で青い鳥を見つけた・・・。つまり、探し物は身近にあったということだ」 「それがどうしたんだよ」 なんなんだこの謎かけは? 一体いつまで続く? 「お前の探し物も意外と近くにあるのかもしれないぞ。例えば、制服のポケット、とかにな」 何を言って・・・まさか? ポケットに手を入れようとした時、また満月が光を増したように感じた。 「あっ!・・・った」 それを取り出して自分の目を疑う。 でも、・・・あった! こんなところに! 「長谷川さん、それはキーホルダーですか?」 「・・・あ、いえ。メモリースティック、・・・パソコン用品です」 何の装飾もない、グレー色のUSBメモリフラッシュスティク。 容量は128MB これは私が「ちうのホームページ」を始めた頃に購入した思い出の品なのだ。 いまどき128MBは小さい方だ。 ましてや画像の多い私のホームページなのだから、すぐに容量がフルになってしまった。 とっくに新しいものを買い直しているのでこいつはお役御免になるはずだったが・・・。 捨てられなかった。 むしろ今では筆箱にストラップ代わりに取り付けて、肌身離さず持っている。 それは当時の私には高い買い物だったのでもったいないと思っているのか? それとも、当時の気持ちを忘れない為、なのか。 そう、HPを創り始めた頃の、ワクワクする様な気持ち。 もちろん今もその気持ちは持っているのだが。 でも気持ちは形にできないから。 だから形として残っているものって、失くしちゃいけない気がしたから。 「ポケットの中にあるなんて」 「探し物が見つかって良かったですね、長谷川さん」 「・・・ハイ、先生。あ、でもキャップがない」 よく見るとUSBコネクタをカバーするキャップが外れてなくなっていた。 すると満月が再び淡く光を増した。 (コツン) イテ。 なんだぁ? 何かが空から降ってきて頭にぶつかった・・・。 地面に落ちているそれを見ると・・・キャップだ。 「キャップが・・・? 空から・・・?」 阿呆のほうに空と地面を交互に見やる私。 「ア、あー、いま長谷川さん、それをポケットから取り出すときにキャップが外れて飛んで いっちゃいましたよー。ホラ真上に、ホラ、ね。僕見てたんで間違いありません!」 ネギ先生が慌ててなにやらつぶやいているが、私の耳にはほとんど入っていなかった。 見つかって良かった・・・。 まさかこんな身近にあるなんて。 私としたことがとんだボーンヘッドだぜ。 「ありがとうございます」 別に探すのを手伝ったもらった訳ではないのに、自然にお礼の言葉が口をつく。 「では、私は帰ります」 「ハイ、長谷川さんお気をつけて」 別れの言葉を口にして私は駅へと歩を進める。 よし、今回のブログのネタは決まったぜ! 〜続く〜
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ネギま!オリジナル小説
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そういうことでしたかw千雨の新たな一面が新鮮ですw
2007/3/19(月) 午後 7:27 [ lovespy ]
[水鏡先生]ちょっと長谷川っぽくないかな〜と思いつつ・・・(^_^;)本作品もあと一回で完結です。更新をお楽しみに♪
2007/3/20(火) 午前 0:01