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「ハァ、ゼィ、ま、間に合った・・・」 車内で荒れた息を整える。 タイミングよく電車が来て良かった。 午後六時を過ぎたこの時間のせいだろうか、寮から学校に向かう電車に乗客はほとんどいない。 毎朝の喧騒から考えると、新鮮な光景だな。 さて――――。 電車が到着する前に今日一日の行動を振り返ってみよう。 朝→普通に学校行った。 午前→普通に授業を受けた。 午後→普通に授業を受けた。 フ、表の世界では目立たず騒がず危険を冒さず。 われながら完璧だ。 そして本日6時間目の授業、HR・・・。 コレだよ、イレギュラーは。 普段ならあの子供教師とウチのバカどもがワイワイやって、何の生産性も無い時間を過ごしたら帰る。 それがなんで今日に限って「視聴覚室で特別講座」になるんだよ! そう、今日に限ってなぜか「視聴覚室でパソコン講座」が行われたのだ。 近年はパソコンの操作にも精通する必要がある・・・って、1時間だけ突発的にそんなもん 行っても成果が上がるわけないだろう! パソコンの操作なんてもんはなぁ、独学で学んでいった方が効率いいに決まってるんだよ! それになんであの子供先生が講師なんだよ! オメーはメカ音痴だったはずだろう! ・・・とまあ不条理なことが多すぎて思考停止していた私だったが、最後列の席であることを 逆手にとってネットサーフィンしてたんだよな。 そうそう、そこでちうのHPに使えそうなフリー素材を見つけたんだっけ。 フリーであんなにスペックの高い素材サイトがあったとは。 私としたことが、チェックを怠ったぜ。 それでウェブ上のブリーフケースにアップしておこうと思ったんだけど、公共のパソコンで ログインすることに抵抗を感じたんだよな。 そこで私の目に留まったのが・・・。 筆箱についていた、アレ、だった。 素材の要領もそんなに大きくなかったし、と気軽な気持ちで使ったのが悪かった。 その時に失くしたとすれば視聴覚室、もしくはその後に移動した教室、だな。 <次は麻帆良学園中央駅―> 目的地の分析が終わったちょうどその時、電車が駅に着いた。 よし、行くか。 電車のドアが開くいて車内に吹き込んできた風は予想以上に冷たかった。 けれどもここまで来てしまった以上、引き返すつもりは毛頭無かった。 〜続く〜
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ネギま!オリジナル小説
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「なーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!」 パソコンの画面だけが光る薄暗い部屋で、思わず叫んでしまった。 無い、無い、絶対に無い。 いつも筆箱に付けているから、そこに無ければ絶対に無い。 落とした? いや待て落ち着け。 今日一日の行動を思い返してみる。 ・・・視聴覚室だ。 チィッ、裏目ったぜ。 時計を見るともう午後六時を過ぎている。 今から探しに戻るか? 待て待て、落ち着け。 戻らなくても別にいいんじゃないか? URLは覚えていないがちょっとググれば辿りつけるだろう。 別に明日でもいい・・・か? いや、アレでなきゃ、ダメだ。 違う、アレが無くなっちゃ、ダメだ。 そう結論を下すと同時に、制服の上から外出用のコートを羽織り、電車の定期入れを握り締める。 着替えなくて済んだのは幸運かもしれない。 ちうに変身する前で良かった。 パソコンの電源がつけっぱなしであることにも気付かずに部屋を出る。 目指すは麻帆良学園中等部校舎。 視聴覚室か、それとも教室かもしれない。 急いだって見つかる可能性が上がるわけでもない。 それなのに寮から駅へ向かう足取りが次第に速くなる。 私の名前は麻帆良学園中等部3−A出席番号25番、長谷川千雨。 またの名を、世界のスーパーネットアイドル・ちう。 ただし、今はアイドルの面影など無く、駅に向かってひた走るただの女子中学生だ。 2月の初旬ともなると外は暗い。 それに外気が肌寒い。 くそ、なんでこんなに必死になってるんだアタシは!? コレで見つからなかったらただじゃおかねーぞ! 誰にとも無く湧き上がる怒りを胸に抱き、それでも足を止めることは無いのであった。 〜続く〜
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キャラクターの誕生月を祝うという形で企画したネギま!オリジナル小説 第一弾「光る風」はいかがでしたでしょうか? 桜咲刹那さんの視点から書いた小説でした。 せっちゃんの心の声についても 「せっちゃんならどう考えるか」 ということを念頭におきつつ、私なりのアレンジを加えて表現してみました。 読まれた方によっては 「刹那はこんなことは考えない!」 という印象をもたれた方もおられるかもしれませんが、その点はフィクションと いうことでご勘弁願います。 さて、2月に誕生日を迎えた生徒は出席番号25番 長谷川千雨さん一人。 登場人物はその月に誕生日を迎えた生徒、というコンセプトにしておりますので 次作品のヒロインは長谷川ということになります。 しかし悲しいかな、私には長谷川に対する愛情がほとんど無いということ(T△T) 「a little」ならぬ、「little」。 ゴメンな、長谷川。 申し訳ございません、長谷川ファンの皆様m(__)m そんなワケで特別ゲストのお二方にも登場していただいております。 さて2月誕生日お祝い小説の題名は「探し物はなんですか?」。 掲載が3月二連れ込むことは確実なこの作品です(; ̄ー ̄) 長谷川の奮闘振りをご覧ください! |
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「ななな、なんですかコレは朝倉さん!」 「まあまあそう言わず。しっかりまとめられた良い記事でしょ」 「アラアラ、まあ」 後日完成した麻帆良スポーツが校内の掲示板に貼り出された。 ところが特集記事として紙面に躍る文字は・・・ 「巨乳とスレンダーの真実! コレであなたも理想のボディに!」 なにげない生活習慣から謎を解明。 これは我が編集部の独自取材によって解明された様々な記録である。 「胸を大きくするには、和食よりも牛乳を摂取すべし」 「ウォーキングで豊胸、それ以上の運動は引き締まったボディ形成に効果的」 「サラシは胸を苦しめる。サイズにあったブラを!」 編集者:2−B 越前亜由美 取材内容を聞かなかった落ち度はこちらにあるのかもしれない。 いや、取材は楽しかったし、記事の内容にも特に文句は無い。 どうぞお好きに分析して下さい、というトコロだ。 しかし。 コレは、コレだけはマズイです、朝倉さん。 「そんなに記事の内容が気に入らなかった?」 「内容じゃありません。ココです、ココ」 そう言って紙面の端を指した。 取材協力:貴重な意見を下さったインタビュアーのお二人 ・C.Nさん(顔写真、目線入り) ・S.Sさん(顔写真、目線入り) コレです。 「なぜ顔写真付きなのですか〜」 「アレ? 匿名にしてくれなんて言ってたっけ?」 「言ってはいませんが、この内容で顔が掲載されるのは嫌ですよ」 「いいじゃん、目線入ってるし」 「コレではまるで容疑者ではないですか〜!」 そうなのだ。 内容に文句はないが、写真を掲載することだけは勘弁して欲しかった。 よりによって巨乳と貧乳の話題なんて・・・恥ずかしすぎる。 「そんなに気に入らない?」 「・・・できれば、発行を差し止めて頂けるとありがたいですが」 「あちゃー、そこまで?」 頼みをきいてくれるかな? と思ったのも束の間、朝倉さんが不敵な笑みを浮かべる。 「でも、亜由美が喜んでたんだけどな、今回の麻帆良スポーツ」 「う」 「あのコの初めての記事になる訳じゃない? 企画立案から取材まで全部一人で取り組んで。 その努力の結晶が掲載された記念の麻帆良スポーツを差し止めるなんて。 きっと悲しむだろうなぁ」 「うう」 「取材受けてくださって、本当にありがとうございました! 私、頑張って良い記事を作ります!」 取材が終わってお礼を言われた時の、希望に満ち溢れていた越前さんの姿が頭に浮かぶ。 「あのコの頑張りに比べたら顔写真なんて些細な問題じゃない? 目線入ってるし」 むしろその目線が嫌なんですけど。 目線が入っていても見る人が見れば一発で私と那波さんだと分かるに決まっています。 もっとも、素顔で掲載されたらもっと嫌か。 「千鶴はどう?」 「そうね、和美の言うとおり、亜由美ちゃんの頑張りに比べたら顔写真なんて些細な問題よね」 いつの間にか“亜由美ちゃん”と呼ぶほど仲が進展している那波さん。 あなたならそう言うと思いました。 ・・・ふう。 越前さんがより良い記事を作る為に考えて行ったことならば、仕方が無いのかもしれない。 越前さんの為、ウン、越前さんの為だ。 (・・・なーんて、顔写真を載せるように説得したのはアタシなんだけどねー。より良い記事を 作る為なら顔写真も載せるし、取材内容を秘密にすることも必要さね。ま、今回は勘弁してよね、 目線入れたし) ・・・ん? 何か聞こえたような。 しかしお嬢様がこの記事を見られたらなんと言われるか。 せっちゃんせっちゃん、あの記事せっちゃんのことやろー。 目線入ってても分かるでー。 流石はお嬢様、目線ごときで私のことが分からなくなるはずがないということですね。 感激しました。 なんやせっちゃん、胸のこと気にしとったんかー。 な!? いやややや、別にそういう訳ではないのですが! せっちゃんはそのままでええと思うでー。 ウチはそんなせっちゃんが好きやー。 はぅ! そのままの! 私が! 好き!! そ、そんなこのちゃん、いけません女同士でそんな。 いや、嬉しいことに違いはありません。 好きと言われると、嬉しくなってしまいます。 私もその、このちゃんのことが、す、す、す・・・ 「刹那さん?」 はうあ!! 那波さんに話しかけられて正気を取り戻す。 し、しまった、また妄想してしまっていたようだ。 どうしたというのだ最近の私は変だ。 神鳴流剣士たるものいついかなる時でも気を緩めてはいけない。 こんなことではお嬢様をお守りできない。 私が動揺しているとその心中を察したかのように、那波さんは向かい合って私の両肩に手を置いた。 「大丈夫」 え? 那波さん・・・? 「・・・あなたの胸は、希望に満ち溢れているわ!」 強い口調で私をさとす那波さん。 いや、胸の話はどうでもいいんですが。 「・・・ワケ分からないです、那波さん」 言えた。 村上さん、いつもあなたはこんな気持ちなのですね。 朝倉さんは満足そうな表情でうなずいている。 那波さんは私の肩に優しく手を置いている。 校庭には昨日の雪は跡形も無い。 しかし冬の陽光に照らされて、今日も確実に風が光っていた。 〜End〜
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さて、かくして取材は始まった。 取材はインタビュー形式で、越前さんの質問に私と那波さんが答える形をとっていた。 テープの不要な、ニュース番組で見たことのあるようなスティック状のボイスレコーダーが 机に置かれ、私達の会話が録音されている。 わざわざボイスレコーダーまで用意するとは、なかなか本格的である。 たとえば長時間の取材になった場合、録音した内容をもう一度聴き直すのだろうか? だとすれば一つの記事を作るということは大変な作業であるな、と思い後から朝倉さんに 聞いてみたが、別に全てを聴き直すわけではないらしい。 人にもよるが取材内容をメモしたノートの方を主な資料として使い、ボイスレコーダーは あくまで補足として使う程度であるらしい。 越前さんは質問に対する我々の答えを熱心にノートに書き込んでいる。 しかし、だ。 その質問というのが・・・。 「朝食は主に何を食べますか?」 「お米に味噌汁といった和食がほとんどです」 「そうねぇ、いろいろ食べるけど・・・、今朝はトーストと目玉焼き、それにホットミルクだったわ」 「週にどのくらい運動をしますか?」 「剣道部に所属しているのでその練習と、あとは早朝の稽古も行っています」 「そうねぇ。毎朝の通学がウォーキングといえるのかしら?」 これ、何の取材なんでしょう?? 生活習慣をいろいろ答えているだけなのですが、こんなものが記事の役に立つのかと 不安を覚える。 しかし越前さんも朝倉さんも真剣そのものだ。 きっとジャーナリストにしか分からない重要な要素が隠されているのだろう。 「普段はどんな下着を着けていますか?」 ・・・やっぱり分かりません。 ちなみに私はいつもサラシですが、ノーコメントで。 「では、最後にお互いに聞いてみたいことなどはありませんか?」 一時間くらい経過して、いよいよ最後の質問となった。 が、お互いに・・・? 「それは、私が那波さんに聞きたいこと、という意味でしょうか?」 「ハイ、なんでも構わないので、何かあれば」 「そう言われても・・・」 「あー、ほら、食生活とか、何でもいいよ」 朝倉さんがフォローを入れる。 しかし突然そんなことを言われても何も思いつかない。 ・・・いや、思いついたことがあった。 先程は答えられなかったが、今なら答えられる。 それを那波さんにも問いかけてみたいといういたずら心が沸き起こった。 しかし、どうしようかな? 考えあぐねていると越前さんが突然慌て始めた。 「あわ、朝倉先輩」 「ん? どしたの?」 「電池が無くなってしまいました」 見るとボイスレコーダーに赤いランプが点滅している。 ははあ、電池が無くなったというのはコレのことだな。 「ありゃ。電池の代えは持ってきてるの?」 「え!? いえ、ありません・・・」 「あちゃー。ダメよ、取材の時は用意しておかないと」 「あわ。す、すいません先輩」 すると越前さんは立ち上がって言った。 「部室にストックがあるので借りてきます!」 「え? いや、質問も最後だから別にいいよ」 「そういう訳には行きません。桜咲先輩、那波先輩、すみませんがちょっとだけ待っていてください」 いや、最後の質問しか残っていないのであれば、もうボイスレコーダーは必要ないと、私も思うのですが。 「慌てなくていいのよ。気をつけて行ってらっしゃい」 行かせるんですか、那波さん。 「ハイ! あ、それではその間に質問を考えておいてください! では!」 そう言うと駆け足で行ってしまった。 意外と行動派なんですね。 「あちゃ〜、別にもういいと思うんだけどな〜」 ボイスレコーダーの電池を取り出しながら朝倉さんがそう言う。 「あら、元気があっていい子じゃない」 「そうだね。真面目なところは亜由美の長所だね」 「和美も見習ったほうがいいんじゃないかしら、ウフフ」 「勘弁してよ〜」 仲良く話す二人を見て肩の力が抜ける。 ・・・やはり、私は緊張していたらしい。 緊張がほぐれたところで、勇気を出してみた。 「千鶴さん」 意識して名前で呼んでみる。 「あら・・・? なにかしら?」 「光る風を追い越したら、何が待っていると思いますか?」 私の突然の質問に那波さんは少し面食らった顔をしていたが、ニコリと微笑んで言った。 「もうその答えは分かっているんじゃないかしら」 私も自然と顔がほころぶ。 背中に翼を持って生まれた私にとって“風”は身近なものであるといえる。 その風が光っているのだから、きっとそれは良いことのきざしに違いない。 とすれば、光る風を突っ切ってその先に向かえば・・・。 君にきっと会える。 このちゃんの顔が浮かんだ。 「希望です」 「希望に溢れた、夏美が待っているわ」 二人同時にそう答えた。 そう、私達の向かう先には希望が待っていてくれる。 なぜだか分からないが、二人ともそう思った。 私は那波さんと顔を見合わせて微笑んだ。 「ちょっと〜。二人とも亜由美の前でそんなサイコな質問はしないでよ〜」 朝倉さんが呆れ顔で私達に話しかける。 はて、サイコとはどういう意味合いの言葉だったかな? 確かあまり良くないことを指すような気がする。 しかし那波さんと一緒ならばどのように言われてもいい。 そんなことを思った。 横目で様子を窺うと、那波さんも同じことを考えているかのように、こちらを横目で見ていた。 〜続く〜
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