男は、八日の間、喰う事を忘れたいたが、九日目にようやく腹に物を入れた
再び、メシを喰いはじめたとはいえ、それはわづかなもので、日に粟飯を一椀喰らうほどのものであった
女房が生きていた頃は里一番の働き者として評判だったが、野良に出ず、仕事を忘れたかのように家に閉じこもったままでいることには変りがなかった。朝からやることといえば、囲炉裏端に一人、ポツ然と座り、脇に置いた、女房の遺髪を入れた箱を、ただただながめていることだった
そして、腹が減ると一椀だけ粟飯を喰らうのだった
そうして、二ト月三月四月と日月が進んだ
男の畠には春、夏と実をつけた成り物が、そのままに、やがて冬をむかえる秋の終わりの今になって枯れてしまい、覆いかぶさる雑草の下に隠れてしまった
着替えもせぬ衣は、油染みてしまい、髪の毛は油と垢まみれた衣の肩を過ぎ、ヒゲも伸びて顔を覆った
その姿は、二十七歳という若さから遠く、老いさらばえた乞食とも見えた
ある夜、男は思った
その夜は新月で、脇に置いた女房の遺髪を入れた箱さえ手探りをしなければ、どこにあるのかわからないほど闇が深かった
「美しく、いとおしいと思う女房を、穢らわしく、おぞましいと思うようになれば、きっと楽になるのだ
と、
つづく
= 月の舎人より =
火雷天神吉相みくじ
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