【白いリボン】 DAS WEISSE BAND - EINE DEUTSCHE KINDERGESCHICHTE
ドイツ・オーストリア・フランス・イタリア 2009
監督・脚本:ミヒャエル・ハネケ 製作:シュテファン・アルント 他 撮影:クリスティアン・ベルガー
出演:クリスティアン・フリーデル / レオニー・ベネシュ / ウルリッヒ・トゥクール / フィオン・ムーテルト
ミヒャエル・クランツ / ブルクハルト・クラウスナー / ライナー・ボック / スザンヌ・ロタール
ウルシーナ・ラルディ / シュテッフィ・クーネルト / ヨーゼフ・ビアビヒラー / ブランコ・サマロフスキー
2009年 カンヌ国際映画祭パルム・ドール
2009年 ゴールデングローブ外国語映画賞
2009年 ヨーロッパ映画賞 監督賞・作品賞・脚本賞
2月になれば神戸でも上映が始まるのですが・・・。
思えば、カンヌにおいて パルム・ドールを獲得した報から一年半以上。
これ以上待ってらんないという事で、銀座テアトルで鑑賞してまいりました。
第一次世界大戦直前のドイツ北部の村を舞台に、次々に起こる不可解な事件と共に 村に暮らす人々の心の闇を暴き出そうと試みるミヒャエル・ハネケ監督の最高傑作ですね。
じつは自分、簡単に "最高傑作" などと言う言葉は使いたくは無いのですが、この作品に限ってはそう使わざる得ないだろうと感じた次第でありまして。 何故そう感じたのかは今から記述させてもらうとします。
ミヒャエル・ハネケ監督の言うところ、「すべての事件に論理的な説明がなされています。 見ようとすることで見えるものを見て欲しい。」 と言うことです。
ハネケ監督の作品では、物語の結末や解釈を "観客、それぞれの解釈に委ねる" とする描き方が多いのですが、この作品に限っては、その謎解きにせよ、物語の解釈を 明確な論理を持って読み解けと言う事なんですよね、これまた。
こうなれば、ある意味において "鑑賞を強いる" 作品です。(笑)
その裏にはハネケの冷徹なまでの映画作りの計算が成されてる訳なんですが、それに付いて行こうとする観客は もう講座でも受けてる感覚になりそう。
ハネケ映画では 初となるモノクロ映像。
それも、時にブルートーンになったり イエロートーンをも帯びたモノクロです。
モノクロ特有の、光と影を多用したという感覚は微塵も無い。
しかし、その映像はどこを切り取ってもアートです、素晴らしい映像。
物語は、語り部となる男性教師が31歳の頃に過ごした "その村で起きた事件" を回想する形をとっています。
登場人物もハネケ作品の中でもダントツに多い。
その村を取り仕切る男爵家の人々、その男爵家に仕える家令の一家。
牧師の一家、ドクターの一家と その愛人となる助産婦の母子。
小作人の一家、そして教師の恋人、・・・おもな登場人物でも20人を上回る多さですね。
事件の発端は冒頭、診察から帰ってきたドクターが自宅前に張られた一本の針金によって落馬して大怪我を負うシーンから。 明らかに作為的な事件です。
語り部の教師はこの事件の犯人を示唆してるのですが、「今となっては語る内容がすべて事実かどうかはわからない」 と最初に付け加えます。 多くの手がかりをも描きながら、全てが曖昧なミスリード的な物語構成。
これもハネケの真骨頂ですね。
そしてその事件の翌日、小作人の妻が男爵家所有の製材所で事故死。
この一件で、小作人の息子は男爵家に恨みを抱きます。
そして後、男爵家の息子が何者かに誘拐され暴行を受ける。
男爵は礼拝の日に、「この村人の中に犯人が居る」と告発。
やがて不穏な空気は村中に漂い始めるのですが、これらはあくまで序章に過ぎない出来事なんですよね。
欺瞞に疑心暗鬼など、人の心の闇の部分は 確実にこの村に根を張っているという事が綴られて行きます。
数々のエピソードと共に。
その中でも象徴的なのが、映画のタイトルになってる "白いリボン"。
牧師の長女クララと長兄マルティンが、行儀作法の躾として腕に巻かれるリボン。
大人が 戒めとして子供の腕に巻くリボンですが、これは子供にとっては抑圧の象徴でしかない行為。
ハネケ映画に出てくる子供の多くは、感情を押し殺したように言葉少なく、異様と言う感じが当て嵌まる。
この作品では、観てるうちにリボンがあのハーケン・クロイツの腕章を連想させそうな感覚。
しかし個人的な見解では、だからと言って全てナチズムを語ってる、という訳じゃないと思います。
ハネケのメッセージは、その多くが普遍的なものだからなんですね。
人間の心の闇や、奥底に潜む邪悪。
子供の無垢な魂がどう変貌しつつあるのか。
これはいつの時代でも通用するテーマですよね。
この作品は単なる謎解きミステリー映画では無いことは観れば一目瞭然ですが、ミヒャエル・ハネケが "強いる" そのテーマの真意は言葉に表すことが困難。 一度観ただけでは消化不良もイイところ。
人によっては不快に感じるだろうし、あるいは睡魔に陥るか、途中退出さえしかねないだろうし。(笑)
しかし作品のクオリティの高さに異論は無いかと思いますが・・・。
本作では、ハネケ映画にすれば その表面的な暴力描写が驚くほど少ない。
無論、その裏に潜むアブノーマルな狂気は相変らず大きいモノがありますが。
それを完成度の高い熟練の演出で、一分の隙も無いほどの緊張感を保って見せる技に唸るのです。
それが今の時点での "ハネケ最高傑作" という所以ですかね・・・。
まぁ DVDリリースがなされたら 論理的な見解が出来るまで再見する覚悟ですが。(笑)
ここん所が、個人的に「ハネケに嵌る理由」でもあります。
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