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【鍵】 日本 1959
監督・脚本:市川昆 原作:谷崎潤一郎 脚本:長谷部慶治・和田夏十 撮影:宮川一夫 出演:京マチ子 / 仲代達矢 / 中村鴈治郎 / 叶順子 / 北林谷栄 ほか 1959年 ゴ−ルデングローブ賞外国語映画賞 1960年 カンヌ国際映画祭審査員賞 谷崎文学を市川昆監督が映画化した一作でございます。 何でも『芸術か、猥褻か』 とも騒がれた作品なのだそうですが。 しかしこの映画化に関する限りでは、そこまで目くじら立てるほどの猥褻さは無いですね。 製作当時はどう思われたか別にして。いかにも市川監督らしい官能さを醸し出した映画に仕上がっています。 原作は昔に読んだ事があるんですが、この映画化ではけっこう脚色されています。 初老の古美術商の剣持 (中村鴈治郎) は、己の体の老化と精力の減退に悩んでおります。 妻の郁子 (京マチ子) に隠れて、娘の敏子 (叶順子) の恋人で医師のタマゴ木村 (仲代達矢) の診察を受ける日々です。 ある夜、邸宅に木村を招いて晩酌してたところ、妻の郁子がブランデーに酔って風呂場で気を失ってしまいます。 剣持は木村に手伝ってもらい、裸の妻をベッドまで運びます。 木村を帰したその夜、剣持は寝てる妻のあられもない姿をカメラで撮影し、その現像を木村に依頼するのでした。 この映画のテーマは、老いから来る倒錯した欲望とそれに順ずる主人公4人の奇妙な人間関係。 中村鴈治郎 (中村玉緒の父) が演じる初老の男の行動が引きがねとなり、それまで隠れていた個々の欲望が次第に形になって行く様を、ポップな感覚でブラックにまとめています。 この時代の市川監督の才気溢れるところが大いに満喫できる作品でもあるでしょうねぇ。 『黒い十人の女』 なんかはポップでスタイリッシュな仕上がりでしたが、こちらは人間の欲望をある意味ブラックユーモアタッチで仕上げているのが見えました。 特に宮川一夫のカメラがいいですね。 陰影を効かした撮影といい、その構図といい。 主人公たちを演じる俳優もこの時代の "らしさ" が現れて、その演技の面白さが感じ取れましたよ。 ちょっぴり白塗りメイクで淡々と、人間らしさが欠如した喋りを披露する仲代達矢。 キリっと引きつった眉のメイクが印象的な京マチ子。 この京マチ子から発するエロチックさは尋常じゃないです。 そして当時の美人女優である叶順子に、わざと不器量に見せるメイクを施した大胆さ。 恋人木村と母親・郁子の不倫を知りながら、それでも女の意地を見せるしたたかさの演技。 この "知らんフリ" は登場人物の全員に通じるところです。 こうした "したたかさ" が人間の欲を際立たせるところですね。 ともあれ、同じ谷崎文学の映画化作品 『卍 (まんじ)』 とは違い、淫靡さに偏っていない部分が市川監督の腕でしょうか。 映画は終ってみれば、サスペンスでもあり、ブラックな悲喜劇でもあり。 果てしない人間の欲を映し出した見事な作品でした。 原作はこの映画以後に何度か映像化されていますが、観るなら本作は押さえておくべきでしょうねぇ。 |

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