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11月10日(水) - - - - - - 今日のメインイベントがあった夜まで、時間を一気に進めます。 「せっかくこっちに来ているんだし、もう3分の1終わっちゃったし…」 何だか急にそんな気持ちが芽生えてきたため、前夜に続いて外食。3度目となる「Korkyla/コルキラ」へ。 店に着くと、オーナーが私を見付けて声を掛けに来てくれた。「元気!?クロアチアは楽しいかい?」と、私の肩を叩きながら尋ねてくれる。 レストランの雰囲気にも色々あるけど、ここは本当に温かくて寛げるお店だ。 オーナーのお名前を伺ってみた。「私はHideというんですけど…」と名乗って(Hideは本名の一部だが、社長やクロアチアの友人はこう呼ぶ)。 オーナーのお名前はアレクサンダーさんだった。 「Hide、お腹すいてる!?」と聞かれ、「はい…狼みたいに!」と答えたら豪快に笑ってくれた。 この日、レストランの一角には20人近くで来ている団体客が。その中の一人に、オーナーが私の事を紹介してくれた。「ここには何のために来たの?日本のどこから?今どこに泊まってるの?」なんて聞かれ、会話をする。 彼は私に名刺をくれた。クルーザーやボートの販売とチャーター、クルージングを行っている会社でキャプテン(船長)をしているという。 しまった!名刺入れ、今持ってきていない! 辛うじて財布の中に1枚だけあった名刺をお渡しさせて頂いた。 これからは名刺入れは常に携帯するようにしよう。出会いはいつどこで訪れるか分からない。 まずはパンと一緒に「お通し」的な前菜が運ばれてくる。今回はツナのペーストではなく、何やら別の物が登場してきましたよ。 飲酒欲をあおる画像で申し訳ありません。 オリーブオイルの上に寝かされたやつをナイフで切って、まずはそのまま一口。うおっ、これは…!!! 塩辛っぽい!しょっぱい!そして旨い!生臭さは皆無。物凄い旨味。そして食欲をそそり、酒が進んでしまいそうな塩気。とにかく私の感想は「塩辛に似た味!」だった(塩辛は私の大好物の一つだ)。 オーナーに「これは何ですか?」と尋ねると、「それはインチュンって魚の塩漬けだ」と教えてくれた。インチュンというのはイワシの仲間。いわゆるアンチョビーの一種だ。 このアンチョビーの塩漬けには参った!そのまま食べてラキヤを飲んだり、オリーブオイルにひたしたパンに乗せて食べたりして、これがメチャクチャ美味かったのだが、この時私の中では「ああぁ、今!今ここに、白いご飯が欲しい!」という強烈な欲望が暴れ回っていた。全く、この時ほど自分の中に流れる日本人の血を実感し、恨んだ事はない。駄目だ。こんな物を食べたら白いご飯を求めてしまうのは、日本人の宿命だ。 もしも今ここに神様が現れて「一膳の白いご飯か世界平和のどちらかを与えよう」と仰ったなら、私は迷わず白いご飯を求めるであろう。 嘘である。世界平和を願うつもりである。 オーナーに、「これ、すごく美味しいですね!日本人はこの味が大好きですよ!」とお伝えしておいた。 小エビのレッドソースパスタ! パスタはほうれん草の練りこまれたグリーンのフェットチーネ。ソースはまろやかなトマトソースで、たっぷりの小エビの他、トマトそのものも入っている。 私は平べったい麺、フェットチーネやきしめんが大好きなのだが、「フェットチーネのアルデンテ」ってどんな状態を指すのかよく分からない。しかし、このパスタは「シコシコ」より若干柔らかめ、といった感じで、少なくとも「茹で過ぎ」の状態ではないと思う。勿論美味しかった! 2人組がテーブルを回って歌い始めた。 この衣装、この歌声…懐かしいなぁ、「クラパ」だ! クラパというのは、ダルマチア地方の伝統的な男声アカペラ合唱。通常5〜8人のグループで、無伴奏あるいはギターなどのシンプルな伴奏で歌われる。歌詞は人々の日常や愛を歌ったものが多く、素朴でハーモニーの美しい民族音楽だ。ドゥブロヴニクやスプリットの街中でこのパフォーマンスを見掛けた方も多いかも知れない。私もかつてシベニクに滞在していた時、このダルマチアの旋律に親しんでいたものだ。 クラパは若者から年配の方にまで、国中で愛され、親しまれている。 この時も2人の歌に合わせ、他の人達も一緒になって歌っていた。 何だかシベニクにいた時の事を思い出す光景だった。夜のオープンテラス。お酒が入っていい気分になったグループが歌い出す。周りの人々も歌に加わって、いつの間にか周り中で大合唱に…。 クラパの旋律を聞くと、あの夏の思い出が一瞬で蘇る。そして、たまらなく懐かしい気持ちになる。 隣のテーブルの4人連れ。 このおじさん2人が歌っている様子が何だかすごく良くって、カメラを向けて「撮ってもいいですか?」と合図を送ったら、皆でこっちを向いてポーズを決めてくれたのだ。 この後、黒い服のおじさんがワインの瓶を持って私の席に来て、一杯奢って下さったのだった!しかも、「カメラを貸してごらん。ほら、あの2人と並んで!」と言って、クラパの2人組と並んだ私の写真を撮ってくれたりしたのである。何ていい人!! クラパの2人は、私の所にも来てくれた。「こんばんは!何かリクエストは?」私はちょっとドキドキしながら、「Šibenska balada(シベニクのバラード)」はできますか?」と言ってみた。すると2人は手を打って「やあ、それはいいね!」と喜んでリクエストを受けてくれた。私のテーブルのすぐ脇で、2人が歌い始める… 遠く離れた故郷シベニクへの郷愁を歌った美しいバラード。「シベニクは私の全て。昔も今も…。渇きを癒し、全てを教えてくれた故郷。夜の灯となって私に道を示し、導いてほしい…静かで優しい、故郷シベニクの歌よ…」 本当にすぐ横に立って歌ってくれた。「シベニクのバラード」を。私のために! 歌が始まった時、他の席の人達も「おおっ!」って感じでこっちを見た。 この歌が、本当に好きだった。今の私にとって、まさしくシベニクへの郷愁をかき立てる曲である。涙が出そうなほど懐かしい。あの街へ、あの夏へと帰りたくなる。 しんみりと…奢って頂いた白ワインを飲みながら… 2回目のリクエストには、「何か、オリヴェルの曲を」とお願いした。 オリヴェル・ドラゴイェヴィッチ…1947年スプリット生まれ。ダルマチア方言で海や愛や人生をテーマに歌い続けるクロアチアの国民的歌手。 2人が歌ってくれたのは、「Kad mi dođeš ti(君が来てくれるなら)」… 「不安に満ちた夜、僕の隣に君はいない。心は凍え、唇に浮かぶのは君の名前。君が僕のもとへ来てくれる日、ただそれだけを待ってる…。君がここに来る時、僕は笑顔を取り戻し、痛みや苦しみは消えて行く…。眠れぬ夜、僕は君を呼んでる。ここに来て!そして、穏やかな生活を始めよう…皆と同じように…」 ああ〜感激してしまった!やっぱり生で聞くクラパは感動物!Bravo!! 心に響くダルマチアの旋律と歌声をありがとうございました!! 奢って頂いたワインを楽しんでいた私を、店の奥からオーナーが「Hide!」と呼び「カモン、カモン!」と手招き。何だろ? 急いで行ってみると、オーナーは厨房の手前にある大きな窯というのか炉というのか、そこを指して私に言った。「見てごらん!ほら、写真撮りな!」…と。たくさんの魚が炭火で焼かれ、網の上でモウモウと白い煙をあげていた! 興奮してパタパタと急いで席に戻り、カメラを取ってくる。炭が赤く燃え、炉の前はすごい熱気!オーナーはそこに立ち、2つのヘラを使って魚を裏返していく。 焼かれている魚はマトウダイ。メジャーな食用魚。 焦げ目がついてカリッとなった皮の下に、白身がふっくらと焼けている…のだろう。 Photo by de:Benutzer:Kleines.Opossum 海の中でのマトウダイ。モヒカンみたいな背びれと、体の真ん中の斑点が特徴。 和名の「マトウダイ」の由来は、この斑点が弓の的に似ているためという「的鯛」説、そして、口が長く伸び、その顔が馬に似ているためという「馬頭鯛」説の2つがある。 クロアチア語では「コヴァッチュ」という。私をクロアチアと結びつけた「ER」のルカことDr.コヴァッチュの苗字と同じだが、「コヴァッチュ」はクロアチア語で「鍛冶屋」の意味だ(英語圏のスミスさんに相当?)。 この魚が「鍛冶屋」と名付けられた由来として、次のような伝説がある。 「ゼウスの馬が天から蹄鉄を落とし、海辺に降りて来たゼウスは蹄鉄を打ち直す術もなく途方に暮れる。海岸に腰を下ろしている所へ海から飛び上がってきた魚があり、ゼウスはこれを食べた。そして、残った骨格から様々な鍛冶道具を作り出して馬に蹄鉄を履かせる事ができた。それでその魚を『ゼウスの鍛冶屋』と名付けたが、海はポセイドンの領域である故に『ゼウスの』の部分は失われ『鍛冶屋』だけが残った」 オーナー、アレクサンダーさん(45)。個人的には「親方!」とお呼びしたい風貌。 この後、オーナーの息子さん(23歳)とも会った。私の歳を聞かれて34と答えたら「34!?」と親子で声を揃えて驚かれてしまった(汗)「若く見えるね!」との事。 日本人って、こちらの人達には若く見えるらしいのだ。2、3年前、日本に来ていたクロアチア人に「15歳ぐらいに見える」と言われた事がある。こんな(髪の)毛の薄い15歳がいるかっ!(あるいは「まだ生え揃っていない」と思われてるのだろうか。ヒナ鳥みたいに) オーナーは私に「Hide、何か飲むかい?」と聞いてくれた。私はもう既に飲んだ事を伝えた。ロガチュのラキヤがとても気に入ったので、それを飲みました、と。するとさらに、「じゃあ甘い物は?ケーキはどうだ?ロガチュのケーキっていうのがあるんだよ!」と勧めてくれて、私が思わず目を輝かせてしまうと、オーナーはすぐに、通りかかったウェイターさんに「Hideにロガチュのケーキを!」とか言ってくれてしまい、何とまたまた今回もご馳走になってしまったのだった! もう自分が何しにここに来ているのか忘れた。 ガトーショコラっぽい、しっとりとした口当たりのケーキ。ロガチュにはカルシウム、鉄分、食物繊維が豊富に含まれる。「体にいい上に美味しい」なんて、「美人な上に性格もいい」みたいな感じだ。そんな物は空想上の存在でしかないと思っていた。そういう人はこのケーキを食べてみれば、考えが変わるかも知れない。天が二物を与えたデザートがここにある。 結局2時間半以上コルキラにいた。 あーあ、何だか今夜はメチャクチャに楽しかったなぁ。すんごく密度の濃い時間だったような気がする…。 夜、ここに食べに来たってだけで、いろんな事があったなー…。 帰り道がちっとも寒くなかったのは、アルコールのせいだけじゃなかったと思う。 ザグレブにいるのに、ダルマチアの風に吹かれてるような気がしていた。 - - - - - - 余談だが、この翌朝の顔のむくみが半端じゃなかった。
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2010年11月11日
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