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12月3日(金) - - - - - - 朝のうち降っていた雪は雨に変わり、やがて止んだ。曇ってるけど。 待っているデータの未着は気になるが、いつ来るか分からないメールを待って、一日中パソコンとにらめっこというのも能が無い。 「まあいいだろっ!」という気分で、午後から気分転換の散歩も兼ねて外出。 上の町にあるナイーヴアート美術館へ向かう。 ケーブルカーの脇に、歩いて行ける道(階段)があるのだが、そこを上っている時、曇り空からみぞれが降ってきた。折り畳み傘を開いている間にもみぞれは激しさを増し、あっという間に白い雪に変わった。おぉー!なんか、アレみたいだ、クリスマスの飾りで、ガラスの中に水が入ってて、振るとキラキラした白いのが雪みたいに舞うやつ…(伝わってますかね?)何だか、あれの中にいるみたいだ…と、思わずメルヘンチックな発想をしてしまった自分自身にビックリだ、俺。34歳。 坂を上がった所からナイーヴアート美術館までは目と鼻の先だ。…が、そこに着く前に、非常に気になるモノを見つけてしまった。 失恋博物館…だと…? 何だこれ!? 当初のナイーヴアートがどこかへ吹っ飛んでしまうほどのインパクトだ。というか、純粋に何なんだろう、ソレ? 頭の中に疑問符を残しつつも、とにかくナイーヴアート美術館を見に行く事にする。その後で、失恋博物館にも行ってみることにしよう。まずは、本来の目的であるナイーヴアートだ。 うっかり外観の写真を撮るのを忘れてしまったが、ナイーヴアート美術館の入口にはちゃんと表示がしてあって、決して大きな建物ではないけれど、ちゃんと分かりやすくなっている。 私が訪れた時にはほとんど見学者がおらず、ほぼ貸切と言っていいような状態だったので、落ち着いてゆっくりと見て回ることができた。 一つ一つの作品をじっくり見ていっても小一時間もあれば十分という規模ながら、様々な画家の作品が展示されており、それぞれ全く異なる作風を鑑賞することができる。フラッシュ無しなら写真撮影もOKだ。 上の2枚は絵葉書の写真(美術館収蔵作品)。 同じ「冬」をテーマにした作品でも、寒さの中に温もりを感じさせるもの、ダークな色合いが孤独と静けさを感じさせるもの、季節と命の循環をイメージさせるものなど、作品から受けるイメージは実にさまざまだ。 中には、ちょっと不気味な印象の作品もあったりする。 イヴァン・ラブジン氏の作品。パステルカラーで描かれた自然が、独特の明るく柔らかな世界観を生み出している。 イヴァン・ラブジン氏は、一昨年87歳で亡くなった、クロアチア・ナイーヴアートの巨匠。東京の旧宝塚劇場の緞帳をデザインした事でも知られる。 彼の作品を見ると、日本の素朴画家・原田泰治氏の絵を思い出す。何となく、彼の作品や、その世界観を彷彿とさせるものがあって… …と思っていたら、何と本当に原田泰治氏の絵もありましたよ! さすがは日本を代表する素朴画家!(原田氏はクロアチアの素朴画家とも深い交流がある。) この博物館には、クロアチア国内だけでなく、アジアやアフリカも含め、世界中の素朴画家の作品が収められているのだ。 人間や動物をモチーフとした木彫りの彫刻もあり、これまた非常に素朴なものばかり。木の素材感と相まって、温もりを感じさせる。 フクロウ。結構大きい。色彩も含め、どこかトーテムポールっぽい。 この美術館、収蔵作品のほとんどが絵葉書になっていて嬉しかった。ついつい大量購入してしまう。 美術館を出ると、大粒の雪が物凄い勢いで降りしきっていた(写真では分かりづらいが)。 続いて、例の失恋博物館へ(道を挟んですぐ向かいの位置だ)。 事前情報が全く無いため、どういう物が展示してあるのか、どういうコンセプトの博物館なのか、サッパリ分からない。それが余計に興味を引く。 入口を入って右にカフェスペースがあり、左に進むと博物館のようだが…。受付カウンターにいた女性に「すみません、ここが失恋博物館ですか?」と声を掛けると、「ええ、そうよ!」ととてもフレンドリーに迎えてくれた。チケットを買い、その際親切に荷物を預かってくれたので(暑くなったら上着も預かりますよ、と言ってくれた)、身軽になって、興味津々で展示物の並ぶスペースへ。 全ての展示物には、クロアチア語と英語の解説が付けられている。それらの説明を読んで分かった。ここに展示されているのは、かつて恋愛関係(または夫婦関係)にあった二人の思い出の品々なのだ。寄贈者は世界中の(クロアチアが多いが)一般の人達で、壊れてしまった愛の記念品と言うか形見と言うか…当時の関係にまつわる思い出の品々が、寄贈者(つまり失恋の当事者)自身のコメント付きで展示されているのである。 "I love you" テディ・ベア 「『愛してる』って言ったのに…嘘つき!嘘つき!!…そう、若くてナイーヴで恋に落ちてる時には気づかないものよ。彼があなたと付き合い始めたのは、単にベッドに誘いたいからだって事にね!このテディ・ベアは、バレンタインデーに彼からもらった物なんだけど、この子はビニール袋に入れて、クローゼットの中にとっておいたの。だって私を傷付けたのはこの子じゃない、この子を私にくれた大馬鹿男なんだからね!」 このいわくありげな義足にはどんな物語が秘められているのか? 戦争で負傷し、病院で知り合った若いソーシャルワーカーの女性と恋に落ちた兵士が寄贈した義足。これを通じて愛が生まれたらしい。コメントに曰く、「義足は僕らの愛よりも強く、長持ちした」 この博物館、面白い!ありとあらゆる「記念品」が展示されていて、そこに秘められたエピソードや、コメントから浮かび上がる人間模様に引き込まれてしまう。当事者本人による解説・コメントというのがいいのだ。この解説を含めて写真を撮りまくってきたので、後でじっくり読もうと思っている。 そもそもこの博物館、創設者の女性が自身の失恋をきっかけに、失った恋を素敵な思い出にするための方法を模索した結果として生み出されたものらしい(ちなみに、別れた男性が、博物館の共同設立者との事!)。 このコンセプトがまた興味深いと思う。失恋も含め、誰もが持つであろう辛い思い出や悲しい記憶をどう処理するべきか…という問題である。悲しみを甦らせる物を全て捨てて、その事を忘れようとする?思い出を全部消して、記憶を封印する?心が引き裂かれるような苦しみに耐えながら、思い出が心の淵に沈んでいくのをひたすら待つ?… 実際にはどれも難しい。真剣な心が傷付いた時ほど、消したい気持ちや忘れたい記憶はとめどなく溢れ出し、耐え難い苦痛に苛まれ続けるものだ。それでも大抵の人は、何らかの形で最終的には自分の気持ちに折り合いをつけて、新たな道に進んで行くものだけど。 悲しい気持ち、心の傷の元となっている「思い出の品」を他人(親しい友人などではなく、不特定多数の人というのがポイント)にあえて公開し、「展示品」としてディスプレイしてしまうというのは、この立ち直り、回復の手段として秀逸な物のように思える。大勢の人に向けて状況を説明し、公開するという過程で、自分自身を俯瞰する視点が生まれるからだろうか? この博物館に失恋の思い出を寄贈した人達の気持ちが、私には分かる気がする。「折り合いがついたから寄贈する」という人も勿論いるだろうが、むしろ「寄贈することで折り合いがついた」という人もいると思うのだ。 面白い。ネガティブな事でも、あえてその思い出を「これは…の記念品」として表に出していくことで、深刻な悲しみからも解放される可能性がある。過去の傷や汚点は、隠したり消そうとしたりするよりも、むしろ積極的にメモリアルに変えていくべきだ。 嫌な思い出、辛い記憶、死ぬほど恥ずかしい失敗、忘れたい出来事などにまつわる品も、全ては人生における記念碑の一つなのだ。 とは言え、できる事なら消し去りたい記憶だってあるよね。という訳で、自分と友人のために、ショップでお土産を買った。 「Bad memories eraser」。悪い思い出なんか、消しちゃえ消しちゃえ! 外に出ると、雪はほとんど止んでいた。石の門をくぐり、ラディッチ通りを下って帰ることに。 途中、「Miris dunja/ミリス・ドゥーニャ」というお土産屋さんに立ち寄った。以前、クライアントの方から紹介して頂いてお邪魔したお店だ(詳しくはこちらの記事参照)。 店に入ると、以前お会いしたご主人のアミルさんがいて、「やあ!よく来たね!」と握手で迎えてくれた。そして当然のように「何か飲む?お茶でいいかな?」と言ってミントティーを淹れてくれたのだった。あわわ、そんなつもりでは…(汗)恐縮しながらも、店の一角のカフェスペースでお茶を頂く事に。 温かくてとても美味しい。ミントの爽やかさがスーッと抜けていく。 クリスマスの飾りが施され、ベートーヴェンの曲が静かに流れる店内でお茶を頂きながら、アミルさんとお話をした。好きな音楽の事、クロアチアで出掛けた場所や気に入った場所の事、仕事の調子について…。私もアミルさんに「お店はどうですか?ツーリストは多いですか?」と尋ねてみた。「私の店も今の季節は難しいんだ。夏は大勢のツーリストが来るけどね。勿論日本からも。でも、冬はやっぱり少ないんだよね」との事。 途中、お店の電話が鳴ってアミルさんが出た。話が済んで、「家内からだ。いつもこうなんだ。5時間会わないと、まるで5日間も会ってなかったみたいに私を質問攻めにするんだよ!」とアミルさん。あはは!どこの国でも、夫婦はこんな感じかな? 今日は自分用に何かお菓子を買おうと思い、ロクムというボスニア(元を辿ればトルコ)の伝統菓子を購入。これは食べた事が無いので、この機会に是非試しておきたいと思ったのだ。 手作りのロクム。味については後日レポートします。 ご主人のアミルさん。とても優しい方です! ご馳走になったミントティーとアミルさんのお人柄のおかげで、すっかり温まった。 帰りがけ、アミルさんから「日本からのお客さんを増やしたいので、あなた達の会社とビジネスしたい」という事を言われた。こ、これは!クライアント開拓のチャンスなのでは!?今、すごく重大な展開になっているのではっ!? 即座に「ありがとうございます。今度うちの社長と一緒に、また伺ってもいいですか?」と私が言うと、「勿論!是非そうしてほしい。社長さんがこの店を見て気に入ってくれたら、協力してビジネスをしていきたいと思う」と。「ええ、絶対気に入ると思います。必ず伺います!」私は勢い込んで答え、再来を約束してご挨拶し、この日は引き上げた。大変!チャンスを掴んでしまったわ! 帰宅後、早速事の成り行きを伝えるために社長と連絡を取ろうとするが、電話、メール、スカイプ、いずれでも捕まらず。もしかすると移動中かも知れない。アミルさんは土日の10〜15時の間なら確実にお店にいるそうなので、できれば明日か明後日にでも早速!と考えたのだが…。
明日の朝、また電話してみよう。このチャンスは逃したくない。絶ッ対、モノにしたるー!!! |
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2010年12月04日
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