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大人になって残念だったことの一つは、1カ月半の夏休みがなくなったこと、そして大人になって良かったことの一つは、夏休みの宿題をやらなくてよいということだ。 * * * * * * 子供の頃から図鑑を見るのが好きだった。特に生物(虫を除く。以下この記事において同じ)が好きで、動物、鳥類、魚類、古生物(恐竜)の図鑑は葦編三絶…は大げさだが、かなりボロボロになるまで読み込んでいた。今でも本の背中がばらけかかった状態で家にある。大人になってから新しく買った本もあって、実は今でも暇があると図鑑の中の生き物たちを眺めていることがある。また、それらについてネットで疑問を調べたり画像検索したりしていると、次々に連鎖して色々なものを調べたくなってしまい、つい時間を忘れてのめり込んでしまう。生き物に関する知識を得ていくことは、私にとっては面白くて楽しいことなのだ。 翻訳の仕事をしていると時々、生物の名前がたくさん出てくるテキストに出会うことがある。 ちなみに、私がやらせて頂く翻訳というのは、主にクロアチア語から日本語への翻訳で、パンフレットや資料、説明書、ビジネス文書、ニュースレターなどを訳す商業翻訳である(尚、このような仕事をしている私のことを、決して優雅な頭脳労働者だと考えてはいけない。水鳥は常に水面下で必死に足をバタつかせているものなのだ。この辺りのことについては、また別の機会に)。だから例えば、「この国立公園内では、…、…、…といった野生動物や野鳥が見られます」とか、「この海域には、…、…、…などの魚が生息しています」というような文章が出てくるわけである。 さてここで、書かれている生物の種が、例えば「シカ」「サギ」「カサゴ」のような大まかなものであれば問題はない。だが、生物の種には下位区分というのがあり、例えばサギという鳥ならアオサギ、ダイサギ、カンムリサギなどの種に細かく分かれているもので、そういう詳しい名称が元のテキストに書かれていることも少なくない。よく出てくるものは大体決まっているので、もうだいぶ分かってきたが、初めの頃は片っ端から調べていた。これは、学名を経由して調べると、正確に対応する和名が分かるのである(クロアチア語から対応する学名を調べる→その学名に対応する和名を調べる)。このような作業もまた、私は嬉々として行っていくわけである。 それで、そういった調べ物をしていく中で、乏しい経験ながら一つ気付いたことがあったのだ。上記の方法でヨーロッパや地中海に生息する生物の種を調べると、鳥類の場合、ほぼ確実に対応する和名を探し当てることができる。動物(哺乳類・爬虫類・両生類)も、かなり高い確率で和名がわかるのだが、中には「和名なし」というのも出てくる(主に爬虫類・両生類)。これが魚類になると、格段に高い確率で「和名なし」となるのである。そのような魚は日本語で書かれた専門書や学術論文の中でも学名のまま記載されており、和名での命名はなされていないわけである。 どうやら、太平洋・インド洋に分布する魚と大西洋・地中海に分布する魚というのは、進化のかなり早い段階で分かれており、棲む場所も互いに交じり合っていないらしい。だから例えば、同じカサゴの仲間であっても、その下位区分の種となると太平洋と大西洋のものでは(見た目は似ていても)生物学的に異なっていて、生息域も完全に分かれているということのようである。 一方、鳥は空を飛ぶため比較的地形の影響を受けずに広範囲を移動する。そのため、同一の種がヨーロッパでもアジアでも観察されるので、クロアチア語でも日本語でも名前が付いている場合が多い…どうやらそういうことらしいのだ(細切れに得た知識を元にしているため、語尾が伝聞推定ばかりになってすみません)。 和名がついていない魚はどうするか?論文や学術調査の資料ならば学名のまま表記し、観光パンフレットなど一般向けに分かりやすくした方がいい場合には「カサゴの仲間」とか、クロアチア語あるいは英語名のカタカナ表記に続けて「(カサゴの一種)」などと書くことになる。もっとも、最後にはクライアントがチェックするはずで、最終的にどのような表記となっているのか、私には分からない場合もあるのだが…。 私は自分用に、エクセルで辞書を作っている。新しい単語や表現が出てくる度に補足しているのだが、その自作辞書は生物の名称ばっかりやたらと詳しい、マニアックで思いっきり偏った、ヘンなものになっているのだった…。 Photograph/Source: Wilfried Berns/ Tiermotive.de 写真の魚は「シュカルピナ(フサカサゴの仲間)」。「チチュウカイカサゴ」と訳されることもある。怪獣ガラモンのようなご面相だが、美味。ブロデットという魚介の煮込み料理によく使われる。 |

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