明日は明日のクロアチア

「買っても買ってもどこかに行ってなくなってしまう物、な〜んだ?」「リップクリーム」(私の場合)

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クロアチア語は簡単だ

クロアチアの公用語「クロアチア語」とはどんな言語であるか?

言語学的に説明すれば、「インド・ヨーロッパ語族スラヴ語派南スラヴ語群」というグループに分類されている。「スラヴ語派」ということで、大まかに言えばロシア語などの仲間である。
スラヴ地域といえば、大体ロシアや東欧の辺りをイメージして頂ければよいのだが、これがさらに、東、西、南の地域に区分されているわけである。
クロアチア語が属する「南スラヴ語群」には、他にスロヴェニア語、セルビア語、ボスニア語、モンテネグロ語、マケドニア語、ブルガリア語などが含まれる。「東スラヴ語群」にはロシア語、ウクライナ語、ベラルーシ語が、「西スラヴ語群」にはポーランド語、チェコ語、スロヴァキア語などが含まれている。
尚、余談だが、かつてクロアチアを含む6つの共和国で構成されていた国家の名称「ユーゴスラヴィア(Jugoslavija)」とは、もともと「南スラヴ人の土地」を意味する言葉である("jugo"が「南」の意味)。

さて、これらスラヴ語派の各言語は、言語学上同じ家族とされているぐらいなので似ているわけであるが、特にクロアチア語、セルビア語、ボスニア語、モンテネグロ語に関しては、「方言程度の差しかない」とも言われるほどよく似ている。事実、かつては「セルボ・クロアチア語」という一括りの言語にされていた時代もある。その後、ユーゴスラヴィアから各共和国が独立し、政治的背景や民族のアイデンティティーなどの問題もあって各言語がそれぞれの国の標準語として整備されていったのだが、これらの言語はいずれも、元を辿れば南スラヴ地域で話されていた同じ方言に行き着くわけである。語彙や音韻に多少の相違はあるものの、各言語の話者は不自由なく会話をすることができる。だから私も、(レベルはともかくとして、)「クロアチア語とセルビア語とボスニア語とモンテネグロ語が話せます」と言ってもいいわけである。1つの言語をマスターすれば、4つの言語をマスターしたことになるのだ。ひゃっほう!お得である。

ここで一つ、「話せます」とは言ったが「できます」とは言っていない点にご注目頂きたい。クロアチア語とセルビア語の最大の違いは、その文字なのである。ラテン文字(A,B,C...)を使用するクロアチア語に対して、セルビア語でメインに使われるのはキリル文字(ロシア語でおなじみの文字です)。私はキリル文字の読み書きはできないため、「セルビア語ができる」とは言えないわけである。

クロアチア語がラテン文字表記の言語であったことは、私にとって非常にありがたいことだった。さらに嬉しいことに、クロアチア語は「ローマ字読み」で読むことができるのである。いくつか英語にない文字があり(クロアチアのアルファベットは30文字。英語にあってクロアチア語にない文字もある)、"j"がジャではなくヤ行の発音になる("Japan"=「ヤパン」)違いはあるが、基本はローマ字読みでいける。「言字一致」で、"a"はどこに出てきても常に"ア"と読む。英語のように"エイ"になったり"アとエの中間"になったりしない。フランス語のように"Mont Blanc"と書くのに「モンブラン」と読んだりもしない(「語尾の子音は読まない」たぁ、そりゃ何だね。読まないなら書くな!書いたんならちゃんと読め!最後まで責任持て、大人なら!と言いたい)。

さらに、発音も英語と違って明快で容易である。クロアチア語は5つの母音(日本語と同じa,i,u,e,o)と25個の子音の組み合わせで表される。日本語と異なるのは「子音連続」があることで、例えば「教会」を意味する"crkva(ツルクヴァ)"という単語は子音が4つ連続している。慣れないとどもってしまうが、私はこのスピード感(?)が好きである。
アクセントは音の高低と長短の組み合わせで4種類あるが、あまり厳密なものではない(間違えると意味が通じない、ということはほぼない)。アクセントは母音(または例外的に"r")に置かれ、語頭(最初の音節)に置かれるケースが多い。「最後の音節にアクセントが置かれることはない」という法則があるので、前述の"crkva"という語の場合、アクセントは最後の"a"ではなく、"r"に置かれる。ついでに言うと、クロアチア語では"r"は巻き舌で発音される。これも私が個人的に好きな点である。

それから、英語と違って無意味な冠詞がない。「この場合の冠詞は"a"か"the"か?」なんてどうでもいいことに迷う時間を節約できる。「一つの」とか「その」という意味を付加したい場合には、それに応じた語を名詞の前に置けばいいだけである。つまりは、日本語と同じ発想だ。

そして、これも謙遜を美徳とする私の感覚においては重要なポイントなのだが、クロアチア語には英語と違って、文頭以外でも一人称が大文字になったりするイヤラシさがない。あれ、本当に不自然に感じるんだけどなー。クロアチア語では逆に、「あなた」という語を文頭以外でも大文字で始める場合があるほどだ。また、日本語と同じく、主語はしばしば省略される。これは、クロアチア語の動詞の語尾が主語の人称と単複によって6通りに変化するので、主語を省いても動作の主が分かる、という理由もあるのだが。
ちなみに、クロアチア語で「あなた」を表す語には"ti(ティ)"と"vi(ヴィ)"の2種類がある。"vi"は「あなた達」という二人称複数をさす言葉でもあるのだが、相手に対して、丁寧な、改まった言葉遣いをしたい時には、相手が一人でも"vi"の方を使う。すなわち、"ti"は友達や家族や子供に対して、"vi"は目上の人や初対面の人に対して使うというわけだ。動詞も"vi"に対応した語尾に変化させれば、これがクロアチア語における初級の敬語となる(上記の、文頭以外でも大文字で始めるというのは専ら"vi(Vi)"の方だ)。

動詞の語尾が6通りに変化するという話をしたが、「語形変化」が多いのがこの言語の特徴とも言える。この変化の多さがクロアチア語習得の上での最大の難関だと思えるのだが、それでも私が何とか乗り越えることができたのは、語形変化が多いとはいえ、それらが英語よりも(とことん英語を敵役にしているが)規則的・系統的であるという点で理解しやすく、覚えやすいからである。
英語ときたら、発音にしろ文法にしろ、覚えようとしても例外だらけで話にならない。あんなに例外の多い規則が「規則」と言えるか!である。その点、クロアチア語はシステマティックで、規則さえ覚えてしまえばこっちのものである。勿論、クロアチア語においても「例外」があることはあるが、そこにおいても「こういう場合は例外的にこのようになる」という規則が働いているからそれを覚えておけばいいし、それにもあてはまらない「例外中の例外」は、(日常会話のレベルで言えば)暗記してしまえるほどわずかである。

さらに言ってしまえば、日常の場面で語の変化を間違えたとしても、ほとんどの場合、意思疎通に影響はないと言っていい。日本語で言うなら「てにをは」を間違えるようなもので、大抵のケースではその場の状況や前後の文脈から、「ああ、本当はこう言いたいんだな」ということが分かってもらえるのである。

このようにクロアチア語は、英語の難解さに音を上げて挫折した人、あるいはデタラメさに憤って拒絶した人に是非お勧めしたい言語である。マイナー言語なので希少価値が高いところもポイントである(だから私レベルの者にも翻訳の仕事が回ってきているのだ。勿論私自身、スキルの向上を目指して日々努力はしているが)。
クロアチアを旅行される折には、簡単な挨拶だけでも覚えていかれてはどうだろうか。クロアチアの人達自身も自分達の言語がマイナーであることを自覚しているので、目の前の日本人の口からクロアチア語が出てくると、大抵はビックリして、喜んでくれるものだ。"Dobar dan!(ドバル・ダーン)「こんにちは!」"、"Hvala!(フヴァーラ)「ありがとう!」"、"Super!(スーペル)「素晴らしい!」"、"Ukusno!(ウクースノ)「おいしい!」"、"Doviđenja!(ドヴィジェーニャ)「さようなら!」"…このようなたった一言のクロアチア語が、あなたとクロアチアの距離をぐっと近いものにして、旅の思い出をより豊かなものにしてくれるかも知れない。

* * * * * *

【蛇足的お断り】
言うまでもないことではあるが、この記事における各言語に対する見解は全て私の主観に基づくものである。「個人の感想」であり、「意見には個人差がある」ことを蛇足ながら申し添えておきたい。
また、私は英語が嫌いであると述べたが、これは、英語の話者および英語を公用語とする国に対して必ずしも同様の感情を抱いていることを意味するものではない。以上。(大人の世界って面倒ですね。)

イメージ 1
これは"more(海)"である("more"は当然、「モア」ではなく「モーレ」と読む)。

イメージ 2
"Danas je lijepo vrijeme.(今日はいい天気です)"は「ダナス・イェ・リイェポ・ヴリイェメ」。
"lijepo vrijeme(リイェポ・ヴリイェメ)"が発音しにくい方は"lipo vrime(リーポ・ヴリーメ)"でどうぞ。これだとダルマチア方言の発音になるので、多分、外人さんが「ええ天気やね」とか言ってる感じになる。

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