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よく、人格の陶冶というが、その陶冶すべき人格とは、どういう人格の事を言うか、よくわかってない人が多いんだよ。
目的地がわからずして、ただ、歩け歩けというようなもので、目的とすべき人格について、具体的にわからないでいて、何を、どう陶冶するというのだろうか?
こういうことが、教育の専門家でさえも、わかってない人が多い。専門家の、教育論と言えば、どう子供たちを教えたらいいかという、教育技術論ばっかり。
簡単なんだよ、「陶冶すべき人格」とは。
教育が目指すべき人格、或いは、陶冶すべき人格とはね、「人生で、どんな事が起ころうとも、泰然自若としていささかも動揺しない心をつくる」ことなんだよ。
昔、中国に荀子という人がいたが、この人がこう言っている。
「それ学は、通の為に非ざるなり。窮して苦しまず、憂えて意(こころ)衰えざるが為なり。禍福終始を知って、惑わざるが為なり」
目的とすべき人格については、この一言に尽きるね。
意味はね、「勉強は、立身出世の為や、生活の糧を、得る為にするのではない。貧乏しても、泰然自若としており、不幸にあっても、落ち込む事がないような強い心を作るために、するのだ。つまり、この世の法則(つまり、宇宙法則、原因結果の法則)を知って、迷わない為に勉強するのだ」
それは、確かにそうなんだが、
残念な事に、中村天風さんに至るまで、その強い心を作るための、具体的方法を、教えてくれた人は、一人もいない。
坐禅なんかも、100%、強い心を作るためにするんだが、その方法はと言えば、
「不立文字」(言葉では、教えられない)とか、何とか言って、具体的には、何も教えてくれてない。
私も、この事については、随分悩んだよ。
だって、強い心を作るためには、子を捨て、妻を捨て、深山幽谷に分け入り、木の実を喰らい、霧を吸って、難行苦行しなければ、強い心は作れない、などと、どの本に書いてあるんだもの。
儒教だって、似たようなもんだよ。
西郷さんだって「人生、幾度か辛酸を経て、志、いよいよ堅し」なんてね。
これも、難行苦行しなければ、悟れないよ、と言っている事と同じなんだよ。西郷さんには悪いけど。
いずれにしても、天風さんに出会うまで、人生に絶望していたね。俺は。半分、やけのやんぱちよ。
天風さんは、仕事を持ち、女房子供を養い、普通の家庭生活を営みながらも、こうすれば、強い心を作れるよ、ってその具体的方法を教えてくれているんだもの。
その通り、やってみたら、心が強くなった。
心が強くなったと感じ始めた頃から、「気」が体内に流入するようになって、又、その様子も、よく、わかるようになった。
「気」が体内に流入することが、実感としてわかるようになったら、「気」で他人の病気が治せるようになった。
勿論、自分自身も、これまでと比べたら、スーパーマンにでも、なったんじゃないか、と思うほど、それこそ、風邪一つ、ひかない、疲れ知らずの元気な体になった。
「気」で他人の病気が治せ、自分自身、無類の健康体を維持できるようになったことから、人間の体も含めて、この物質界というものは、「気」によって、出来ていることが、わかった。
この大宇宙が、「気」を素材として、出来上がっている事がわかれば、この世には一定の法則がある事がわかってきて、
その法則に反して生きているから、私たちは、運命も健康も自分の思う通りにできないので、
その法則に従って生きて入れば、「日々、是、好日」で、運命も健康も思いのまま、ということが、わかってきた。
つまり、宇宙法則についても、次第に分かるようになったんだよ。
ところで俺は、よく、自分のことを、根っからの、リアリストと言うよね、
それは、ただ本を読んだだけとか、人の話を聞いて、考えただけ、というのじゃなくて、自分の体を通じて、「気」による治療による経験を通じて、わかりえた事を言っているから、そう言っているんだよ。
人の幸・不幸は、自分の外にあって、外から、自分に向かって来るのではなくて、自分の心の中に、幸不幸をつくる素があるんだよ。
だから、お金を得ようとか、地位がほしいとか、名誉がほしいとか思って、そのために、ガツガツ、ゴマすったり、人の足を引っ張ったり、蹴落としたりして、競争する必要はないんだよ。
そういう事をやるから、かえって、失敗するんだよ。
自分の心が、強くなれば、なるほど、その心の強さの程度に比例して、お金も、地位も、名誉もついてくるもんなんだよ。
いや、心が強くなったら、そんなの、もう、どうでもいいようになって来るんだよ。
天風さんが、こう言っているよ。「この頃、俺も随分心が強くなってきたなあ」と思っているうちは、まだ、「未だし」、つまり、未だ、「未熟だ」と、言っている。
そう言えば、俺も、最近、「信念!信念!」と思わなくなったなあ。
「信念」が、強くなったせいだろうか。
「信念」なんて、どうでもいいや、と考えるようになった。
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