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先日、ある若い、女の患者さんと話したことで、ふと思ったことなのだが、
その人は、どこの医者でも、「特に、悪いところは、ない」と言われて、知り合いに相談したら、「先生の所に行きなさい」と言われて、私のところに来た、と言っていた。
訊くと、胸のところが、腫れて、押すと痛い。息苦しい。夜寝るとき、寝返りしたりすると、背中が痛い。体が熱っぽく、だるい。何をやっても、意欲が湧かない。ということを、私に訴えた。
最近、こういう症状の患者は、たくさん来るので、あまり話を訊かなくても、どこがどうなっているか、どこをどうしたらよいか、大体、わかるようになった。
この時も、話もそこそこに、早速、胸を、触ると、果して、固くなった神経が、指先にざらざらと触れる。
これは、神経が炎症を起こした後だ。
神経は炎症を起こすと、硬くなる。固くなると、その周りの筋肉が硬くなって、動かなくなる。筋肉は、柔らかいのが望ましく、固くなれば固くなるほど、その機能を失う。
その固くなった神経を軽く押しただけで、必ず、「痛い!」と言う。
ご存知の通り、死んだ直後の体は、固く硬直する。それは人間ばかりではない。どんな動物だってそうなる。これを死後硬直と言う。
極端なことを言えば、私のやり方は、患者が、不調を訴える個所を中心にして、神経の硬くなった所や、それによって引き起こされた、筋肉の固くなった所を、指先で探って、そこに「気」を入れるだけである。
これから、病気というものは、どんな病気でも、神経の中を流れる、生きて行く為に必要とする情報が、滞るか、流れが悪くなって、引き起こされる、ということがわかる。
その証拠に、先ほどの、神経が硬くなって、不調を訴える個所を、私が触っているだけで、その神経が、柔らかくほぐれて来て、それにつれて、周辺の筋肉も柔らかくなって、痛みや、不調も治ってくる。
私は、患者本人でないから、細かいことまでは、わからないが、固かった神経が、柔らかくなるにつれて、気持ちよくなるという。
柔らかくなるのは、私も、指先にわかるから、その時、「気持いい?」と訊くと、陶然として、コックリして、「ウン」と答える。こうなったら、もう治ったのも、同然だ。
そういうことからして、私は、神経の中の流れていて、私たちの命を生かしている、さまざまな情報は、
「気」がそれを運搬していて、その「気」が不足するから、その不足した個所に、病気という不具合が、発生する、と考えている。
又、私が、日ごろ、死というのは、人間の体から、「気」が抜けてしまうことを、「死」と言うのだ、と主張しているのも、そういう理由からである。
つまり、死後、筋肉が硬くなって、死後硬直が起こるのも、体の中に、「気」が完全にまわらなくなるため、即ち、肉体から「気」が抜けてしまうために、筋肉が硬直するのである。
これまでは、余談である。これからが、今日の本題である。
治療を続けながら、患者:「どうして、神経が腫れて固くなるんでしょうか?」と、訊くから。
私:「それは、多分、ストレスだと思います」「ストレスから気の流れが悪くなるのだと思います」「ストレスは、まじめで、考え込む性格の人が受けやすいのです」「それは、心と気は、密接な関係があるからです」「ちょっと、したことでも直ぐ傷付いたり、すぐ、イライラ、カリカリしたり、落ち込んだりする心を、弱い心と言うのです」「そういう弱い心の人が、ストレスを受けやすく、このような病気になりやすいのです」
患者:「では、心を強くする為には、どうすればいいのでしょうか?」
私:「瞑想をしなさい。そして、中村天風さんの本を読んで見てはどうですか?その本には、心を強くする具体的方法が、懇切丁寧に書いてあります」
その時、その患者から、特に、訊かれたのではなかったが、そういう会話の後で、フッと思った。
「心が、強くなると言うのは、無神経になったり、感覚が鈍くなることでは、決してないぞ」と。
むしろ逆である。心が強くなると、神経や感覚は、以前にも増してずっと鋭敏で、繊細になる。
天風先生みたになると、会っただけで、或いは、ふとすれ違っただけで、その人が何を考えているかわかるようになったり、見えもしない、他人の、バッグの中身がわかったり、まだ検査・検診もしてない病人の、病気がわかったりする、と言う。
天風先生ならずとも、私だって、神経や感覚として感ずる力は、以前よりずっと強くなっている、と思う。
強くなって、人の感ずることの出来ないことまで感じるんだけど、感じても、心が動かないようになっているだけである。
皆さんは、感じたら直ぐ、カッカしたり、ハラハラしたり、気持が落ち込んだりするが、心が強くなると、感じても、そういうふうに、直ぐに、心が、動かないだけのことである。
心が強くなる為には、信念を強くしなければならないんだよ。信念を強くする為には、心の中の雑念・妄念を、心の中から排除してしまわなければ、信念は強くならないんだよ。
雑念妄念を、心の中から排除して、信念を強くする為の、一番いい方法が、瞑想をすることなんだよ。
それを、論理的、科学的に説いて、具体的方法を教えてくれているのが、天風先生の心身統一法というものなんだよ。
みなさん、よく考えなさいよ、直ぐにカッカしたり、ハラハラしたり、訳もなく気持が落ち込んだりするのは、心の中の、雑念・妄念がそうさせているんだぜ。
ゲーテという人は、「凡人と言うものは、何ごとも信念なく諸事に対応する為に、自然に不可解な苦しみに悩んで、不安な生涯を送ることになる」と、言ったという。
女の人が、よく言う言葉だが、「いつもまでも、ドキドキした気持を持ち続けていたい」。
心がドキドキするのと、心が弱くて、直ぐ、ハラハラ、イライラ、カリカリするのと、どう違うのだろう。
感動するとか、感激するとか、歓喜、とか言うことと、心がドキドキするのとは、少し違うように思うのだが。
ゲーテじゃないけど、そういう人を、ただの凡人、と言うのじゃないかなあ。
最後に、一言、上の女の人同じような症状の人で、どこのお医者に行っても、どこも悪くない、と言われた人は、私のところに来るんだよ。
こういう病気は、お医者じゃ、治せないんだよ。私じゃなくちゃ、治せないんだよ。
さっきの女の人も、言っていたが、医者は、「検査も全てやったが、どこも悪くない、後は、心療内科しかない」と言った、という。
心療内科じゃ、こういう場合、必ず、「うつ病」と言われるからね。
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