国際刑事裁判所(ICC)と日本

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米ブッシュ大統領、BIA締結拒否14カ国に対する制裁措置を1年間解除

国際NGO連合CICC及びAFP通信によると、ホワイトハウスは20日、米国民に対する免責を約束する協定であるBIA(※解説)の締結を拒否するアジア、ラテンアメリカ、中東、アフリカにまたがるICC締約国に対する国内規制法に基づく経済支援の停止について、その適用を1年間免除する大統領令が発令されたことを発表しました。

この大統領令によりボリビア、コスタリカ、キプロス、エクアドル、ケニア、マリ、メキシコ、ナミビア、ニジェール、パラグアイ、ペルー、サモア、南アフリカ、タンザニアの計14カ国が、今後1年間の経済支援停止を免れます。

このような大統領令による米国の反ICC姿勢の軟化傾向は、実はいまに始まったことではありません。

2004年6月、米国は国際社会の賛同が得られないことの懸念から、2002年以降1年毎に更新されてきたPKO要員に対するICCの訴追免責を求める国連安保理決議案を取り下げました(※1)。同年12月、ブッシュ大統領は二国間免責協定(BIA)を締結していない国際刑事裁判所規程締約国に対する経済援助を停止するという修正案を含む2005年度予算に署名しますが(※2)、欧州連合(EU)などの反発に遭い、2006年の3月にはライス国務長官自らが政府として初めて、反ICC政策の転換を検討するという主旨の表明を行い(※3)ます。さらにその2日後には米上院軍事委員会でラテンアメリカ方面軍司令官が同地域に於ける中国の勢力拡大を理由に軍事支援の禁止政策に対して懸念を表明。委員会では大統領候補でもあったヒラリー・クリントン議員やジョン・マケイン議員などにより支援規制法の一部再検討が要請される場面もありました(※4)。

以降、ホワイトハウスはあからさまな反ICC政策の推進を控え、徐々に軟化傾向を示しています。今回の大統領令の発令は、2006年以降米政界内で起きた様々な論議を受けて、大統領が遂に、反ICC法といわれるASP法及びその改正版であるネザーカット修正(併せて「アメリカの反対」を参照)についても、その適用を取り止めるという決定をするに至ったことを示しています。

CICCの調べによると、2006年11月時点では米国とのBIAを署名した国は102カ国に上り、そのうち46カ国がICCの加盟国であるとのことです。しかしこの102カ国のうち、議会により協定が正式に批准されているのは21カ国であり、そのうち18カ国は行政協定によるものです。さらに、54カ国がBIAの署名を公式に拒否しているため、全世界規模で見れば法的効力を持つBIAは依然少ないのが現状です。CICCの調べでは、この統計以降、米国のBIA政策に目立った動きはなくなったそうです。

ただし、今回の行動により米国が完全にICCに対して軟化したと考えるのは早計です。
 
今回発表された禁止解除対象の14カ国は、米軍が軍事・外交戦略上その協力を必要としておりまた中国が影響力を拡大している地域の国々です。ブッシュ政権が今回の解禁措置をこの14カ国に絞ったのには明確な戦略的意図があると考えられ、その一方でそれほど戦略的重要度が高いと見られない国、たとえばアフリカのコンゴ民主共和国とは2004年8月にBIAを締結し(※5)、同地域のスリナム共和国とはBIA締結の打診を求めていたが2007年10月にこれを拒否されています(※6)。

したがって米国の反ICC政策は実質的な軟化傾向にはあるものの、その適用は至極選択的かつ戦略的であり、中長期的に見ても全体的な政策の撤回ということにはならないだろうと思われます。いずれにせよ、選択的であれ戦略的であれ、米国の反ICC政策が具体的に軟化している傾向にあるというのは歓迎すべき展開です。少なくとも、ブッシュ政権の存続中は反ICC法は限定的に適用されることがこれで確実になりました。


【脚注】
※1 「2004年6月23日」のエントリを参照
※2 「2004年12月8日」のエントリを参照
※3 「2006年3月12日」のエントリを参照
※4 「2006年3月14日」のエントリを参照
※5 「2004年8月6日」のエントリを参照
※6 「2007年10月24日」のエントリを参照


【出典】米ホワイトハウス報道官事務所報道発表(2008年6月20日付)
【参考】AFP経由Yahoo Newsの報道(2008年6月20日付)

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