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師走の雨

早暁、雨がきた。目が覚めるほどの雨音。
これで気温が下がり寒さが一段と厳しくなる。
というのが本格的な冬への序章なのだが、
近年になってお天気も気温も気まぐれ・・・
先日は雨が来て、翌日は初冬の快晴ながら気温は高め。
晴が続かずまた雨。ながら、週末にかけて「寒くなる」との予報。
週末はクリスマス。雪はなくてもクリスマスには寒さが似合うのだ。
 
そのクリスマスの思い出。
高校生のとき、一級上にいたのがМ君で彼の家は教会だった。
秀才だったМ君はホームルームでも女生徒には人気で、確か生徒会副会長を務めていたと思う。
「来ないか」と誘われたのはクリスマス・イヴ。照れくさいので仲間を連れていった。
М君はニコニコしながら私たちを出迎え、教会の中へ誘ってくれた。
集まった信徒達を見て仲間「これじゃプレゼント狙いとバレるね」と。
言わないまでも私もプレゼントが目的であった。ヨコシマをそう思わなかったのだから許して貰えるだろう。
昨年帰郷の折に教会の前を通った。立て直された教会は立派になっていた。
(М君、元気かな?)その気持ちを閉ざされた扉越しに送ったのだった。
戴いたプレゼントは確か学用品だったと思う。半世紀以上も前のことである。
 
ラジオ番組にCMを書いていて半年で終わった。
残ったお金で五島放浪を試み、連絡船に乗ったのは40歳代半ばの晩夏。
民宿に泊まったり野宿したり・・・その野宿最終日が昼ケ浦という小さな海岸。
山肌に点在する民家は10戸ほど、しかし1戸を除き廃屋になりつつあった。
老夫婦が住んでいる家を訪ねた。空家をかりて一夜の宿と思ったのだが、
乏しくなった財布を考え海岸で野宿することにした。老夫婦「ウチでよければ」と。しかし辞退した。
海岸で焚き火を起こし、丸くなった石を片付けてねぐらを拵えた。
焚き火は晩夏でも明け方の冷たさを防いでくれる。
波の打ち寄せる音、満天の星を独り占めでまどろみに入ったのだった。
 
早暁、冷たさで目が醒めた。焚き火が消えかかり用意の流木を燻していると人声。
昨日の老夫婦が漁に出るらしい。朝の挨拶を交わす。
そのとき、まだ明けきれぬ光のなかで老婆の胸元に揺れるクルスを認めた。
長崎県五島は隠れキリシタンの島でもあった。
その日の便で私は五島を離れた。連絡船から見下ろす海は、もう秋の青だった。
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