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内容
紀元前五十二年、美しくも残忍な若者ウェルキンゲトリクスは混沌とするガリア諸族を纏め上げ、侵略を続けるローマに牙を剥いた。
対するローマ総督カエサルはポンペイウスへの劣等感に苛まれていた…。
ガリア王とローマの英雄が繰り広げる熾烈な戦いの果てに、二人は何を見たのか。
久しぶりに読んだ佐藤賢一。
今回はカエサルと、そのライヴァルとしてガリアを率いて戦ったウェルキンゲトリクスの物語です。
いつもの佐藤文体を駆使して、ウェルキンゲトリクスとカエサル、それぞれの内面をじっくりと描き出していました。
若者と中年、侵略するものとされるもの、二人の男のそれぞれの対立軸が浮き彫りになり、そこに様々な物語が絡まりあって重厚な人間ドラマに仕上がっていると思います。
とくに、カエサルの内面の煩悶は読んでいて面白かったです。
後の世に英雄として語り継がれたカエサルも髪が薄くなったことを気にしていたり、人心掌握のために相当のストレスを抱え込んでいたりと、中年のおじさんが抱えているであろういたって普通のストレスにうじうじうじうじ悩んでいるところがとてもいとおしく感じました。
対するウェルキンゲトリクスもまた、幼いころに父を失い、母の愛情を受けられなかったトラウマを抱え、古い権威に反抗する実にパンキッシュな若者として描かれます。
豪放磊落、自由奔放、傍若無人な植える金下トリクスにつき従う参謀役のウェルカッシウェラーノスの苦労が伝わってくるところがかわいらしかったです。
そして、この二人が最後に直接対峙する「アレシアの戦い」の後、カエサルがウェルキンゲトリクスと相対するシーンでは、『銀河英雄伝説』のバーミリオン会戦後のヤンとラインハルト思い出しました。
全編を通じて、なんとなくウェルキンゲトリクスがラインハルトのキャラクターと重なってしまいました(笑)。
カエサルは日本でも有名ですが、彼が何をした人か、はっきり答えられる人は少ないのではないでしょうか。そして、そのカエサルに立ち向かったウェルキンゲトリクスとなると、がっくりと知名度も落ちるかと思いますが、この作品はそんなことを気にせず読むことができるかと思います。
塩野七生とはまた違った視点での「ローマ」の物語です。
「ガリア」の視点をふんだんにとりいれて描かれたカエサルは、まさにフランス史研究者だった作者の面目躍如といったところでしょうか。
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