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それは、春樹が六年生の頃、とある事情があって北高に行ったときのことであった。
〜読心術師の少女〜
ここは県立北高校。小高い丘の上にあるため、体力のない生徒は学校に着いた時点でへとへとになって
しまうという点以外は特に目立った部分はなく、校内のレベルは学問・スポーツともに中の下。つまり、
何処にでも有りそうなごく普通の高校である。そして、普通の高校はたいてい、この夏休みに運動部が大
会に向けて練習したり、成績が下の下の生徒が補習授業を受けたりするものである。それは北高も同じ
で、グラウンドでは運動部が走り回り、校舎の廊下では教室で補習授業をしている先生の声が響き渡って
いる。
そんな真夏の北高に少し場違いな建物が涼しげに建っていた。その異様なオーラを放っている建物は、
旧館と呼ばれ、普段は美術室や音楽室などの特別室を持たないクラブや同好会が集まるところである。し
かし、夏休みがはじまると、特に使われることはなくなる。というのも、北高にあるほとんどの文化系の
クラブや同好会は規模が小さく、夏休みに活動していられるだけの費用を持っていないからである。
そんな薄暗くて人気のない校舎の、文芸部室で春樹と有希は出会った。
今日は春樹のご先祖の墓参りの日だ。今までは、家族そろって行っていたのだが、兄の慶が北高に入っ
てから、もっとも練習日の多い陸上部に入部したために、夏休みの特訓中の兄を弟の春樹が迎えに行くこ
とになった。何故春樹だけなのかというと、母親が「学校に行ったら先生になんか言われそうで恐い」か
らだそうだ。慶は学年で一・二を争うお馬鹿さんなのである。
当然だが春樹は北高に来るのは初めてだ。小学校から遠回りして帰るときに外から見たことは何度かあ
るが、実際に中へ入ったことはなかった。
北高のグラウンドは、春樹の予想以上に広かった。探すのに手こずるだろうと予想した春樹であった
が、気を利かした慶が校門の近くで待ってくれていた。春樹に気づいた慶が近寄りながらこう言った。
「おう、春樹。悪いけ…ど、もう…ちょい待って…くんね?」
慶はとても疲れてるようだった。その証拠に息がものすごく上がっていて、足取りも酔っぱらいみたい
にふらふらしている。相当きつい練習をしているようだった。
完璧には聞き取れなかったが、どうやら「もうすぐで練習が終わるからもう少しだけ待っていて欲し
い」ということらしい。どこで待っていればいいかと春樹がたずねると、慶は何度か深呼吸をして呼吸を
整えてから、
「うーん、ほいじゃあ正門のところで待ってて。あそこは影になってるし、ちっとくらい暑さはしのげる
と思うぞ」
と言って、片方だけ閉まった大きな門をゆび指した。慶の言ったとおり、その近くには大きな木が生え
ていて、ちょうど日光を避けられるようになっている。暑さに悩むことはなさそうだ。が、そこでじっと
しているだけというのは少し退屈そうだ。
そんな春樹の心中を探ったのか、慶は何か考え込んだような顔をした。
「う〜ん…。すぐっていってもあと十五分くらいだし、かといってあんまりウロチョロしてると怒られる
からな〜」
慶がそう言い終わった直後、どこからか山なりに飛んできたテニスボールがスコンッという心地のよい
音を立てて慶の頭に直撃した。跳ね返ったボールは春樹の頭を飛び越え、二・三回バウンドしてから校舎
の壁にぶつかった。その校舎は……
「ああ〜!!」
「!? な、なんだよいきなり。そんなに痛かったのか?ボール」
と、驚く春樹であったが、その後急に静まった慶を見てさらに驚いた。
「いや、そうじゃなくて。あの校舎あるだろ?」
といって、春樹の後ろ側にある古い校舎を指さした。
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2007/12/8(土) 午後 5:33 [ - ]