少年絵日記

版権とオリジナル…どう分けていこうかしら…

サイバーフラッシュ

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闇の褥 プロローグ1

プロローグ1 明星サイド
 
初めて、その子を見たのは、風の強い日。
綺麗な長い髪の、女の子だと思った。
父さんが言うには、その子のお父さんとお母さんが急に死んでしまって、だから家に来た。のだとか。
初めまして、と手を出したら小さな声で返してくれた。
それが、雲母との出会い。
 
小さいからまだお手伝いの仕事はできない雲母は、僕と兄さんの遊び相手になっていた。
 
「これはね、「いぬ」」
「…いぬ」
「これは「きく」」
「きく…」
二人兄弟で下が居ない僕にとっては、一つ下の雲母は可愛い妹みたいで、本を読んだり、文字を教えたり。
一緒に走ったり、眠ったり…
それこそ毎日一緒に居たんだ。
 
それから間もなく、僕は東風学園に通うことになり、雲母と会えるのは学園が長期の休みくらいになってしまった。
 
 
 
「お帰りさないませ、明星様」
「…うん…ただいま」
長い、金の髪が動きに合わせて揺れる。
大きな瞳に、白い肌。
あの時、綺麗だと思った女の子は、あの頃よりずっと、もっと綺麗になっていた。
ただし、それは彼女…雲母が大きくなったという事で。
僕が東風学園に通うようになったころから、雲母とははっきりと立場が分かれてしまった。
使用人と、主人。
でも、他に手伝いがいるときは、周りの目があるから仕方がないけどせめて二人きりなら前みたいに名前で呼んでほしい。
雲母が使用人の仕事に本格的に就いてからずっと僕の中で燻ぶっている思い。
「それでは、お食事のときに、呼びにまいります」
「…うん」
もう、一緒に遊んだり、本を読んだりすることはできないんだろうか。
小さくため息をついた時だった。
「お、もう帰ってたのか、早いなぁ」
星夜兄さんが襖を開けた。
僕より6つ上で、もう高等部に上がってしまったから、学園でも殆ど会えないけれど。
「僕もさっき帰ってきたばかりだから」
「そっか。成績優秀で、母さんも父さんも喜んでるだろ」
「兄さんだって、また主席なんでしょ」
「はは。そういうなって」
大概、天狗の血統の子は成績が優秀で通ってる。
僕や兄さんが通う東風学園は天狗の子が通う学園の中でもその最高位にあるらしい。
別に、父さんと母さんの母校だし、兄さんも通ってるからよく考えないで通うことを決めたけど…。
「そういえばさ、雲母ちゃんにはもう会ったか?」
「さっき会った」
「随分と可愛くなったなぁ」
「…そう…かな」
兄さんに言われなくても、分っているのに、何故か俺は素っ気なく応えてしまった。
「そうだよ。驚いたなぁ」
「そんなに驚くほどのものでもないんじゃない…」
 
 
結局雲母と話ができたのは帰ったこの日と、学園に帰る日だけだった。
もやもやした気持ちのまま、僕の休暇は終わりを迎えてしまった。
 
 
 
 
 
「どうしたんだよ、明星浮かない顔して」
旧友の良秀が声をかけてきた。
初等部のときから一緒で、気心も知れている。
「なんか…上手くいかないなぁって…」
「なにが?」
「自分の気持ちを伝えるってこと」
もっと、友達みたいに話がしたいのに…
「なに?好きな子でも出来たのか?」
「そんなんじゃ…」
好き、なんだろうか…僕は雲母のことを…
「まあまあ、どんな子なんだ?明星のことだから、頭の良い子なんじゃないか?何処のご令嬢だよ?」
「だから、そんなんじゃないって言ってるだろ」
これ以上詮索されるのはたまらない。
僕は話の腰を折って席に着いた。
「この学園でも成績優秀で通ってる「あの」篁山明星でも悩むことだなんて、かなり興味があるんだけどな〜」
斜め後ろの席でまだぶつぶつ言う良秀をよそに、僕は教本に視線を落とした。
好きだとか、そんなんじゃ決してない。
小さいころ見たいに遊んだり、話をしたいだけなんだ。そうなんだ。
何度も自分に言い聞かせるみたいに、僕は心の中で繰り返した。
ただ、小さいころから一緒に居たから。妹みたいに思ってるだけ。
そう、それだけ…。
 
 
 
 
 
 
 
それから、何度か季節が巡り、僕と雲母の距離は詰まることが無かった。
 
 
「お帰りなさいませ。明星様」
「……」
「御用が御有りでしたら、御呼びください」
「……」
「では、失礼いたします」
「……」
静かに、襖が閉まって、衣擦れの音が遠ざかったの確認すると、僕は重い息を吐いた。
中等部に上がってから、会話も殆どしなくなってしまった。
兄さんはもう、義塾に入ってしまい、余程のことがないと家には帰ってこられないし。
父さんが病で倒れたという知らせで、僕は長期休暇でもないのに屋敷に戻ってきている。
随分と我慢していたようで、ここ数日が峠という状態。
畳みかけるように色んな事を教えられて、僕は混乱していた。
家のことは心配ないって兄さんや母さんは言うけれど…。
この先どうなってしまうのか全く先が見えなかった。
父さんの容態は、日を追って悪くなる一方で、結局医師の見立て通り僕が屋敷について4度目の朝に、苦しみながら息を引き取った。
それから、葬儀はあっという間に終わって、母さんと兄さんは親族で難しい話をしている。
僕は、「子供の聞くような話じゃないから」と兄さんに諭され部屋に居た。
父さんが逝った時も。
葬儀の時も。
僕は一滴も涙が出なかった。
あまりに実感が無くて。受け止めきれていなかったのかもしれない。
こうして一人きりになって、漸く落ち着いて考えを巡らすことができるようになった。
父さんがもう居ないとか。
この先これまで居たみんなと一緒に居られないかもしれないとか。
これまで考えられなかったことが一気に湧き上がって、僕はひとり押しつぶされそうになった。
「っく…っ父さん…っ父さん…」
そうしたら、それまで全く出なかった涙が堰を切って溢れだした。
止めようと思っても、涙も嗚咽も止まらない。
その時だった。
「…失礼いたします」
「だ、誰だ」
使用人たちにも皆暇を出しているはずだったから、誰も来ないと思っていた。
「黒木…雲母です」
「な、何だ」
「お、お飲物を…その…」
「頼んでないだろ、要らないことをするな」
「申し訳…ありません…」
久しぶりの会話がこんな状態で、僕は益々苛立っていく。
こんな事を言いたいわけじゃないのに。
「暇を…出したはずだけど…」
「……」
「ここは、お前の家じゃないんだ、そっちに帰ってろよ」
「…無い、んですよ…」
「あ…っ」
「私に…帰るところなんて…無いんだもん…」
雲母が家に来た理由を思い出した。
雲母には、もう家族が居ないんだった…
「その…ごめん…色々あって…その………」
「あ、すみません、失礼なことを…っ」
「いや、良いから…昔みたいに…話していいから…どうせ、周りに誰も居ないんだし…」
「明星…さま」
「さま、も要らないよ。呼び捨てて。昔みたいにさ」
「明星…」
「少し…聞いてもらえるかな…」
「は…うん」
今まで話せなかったのが不思議に思えるくらいに。
障子越しなら、素直に話せた。
父さんとの思い出。
楽しかったこと、怒られたこと、悔しかったこと。
雲母はただ、静かに座って、たまに相槌を打って聞いてくれた。
いつも間にか空が白んできて、随分と長く話し込んでいたことに気がついた。
「雲母…っごめん気がつかなくて、寒くないか…っ」
急いで障子戸を開けると、凭れかかりながら寝息を立てている雲母が居た。
朝焼けで白く輝く頬に触れると、氷のように冷たい。
掌も、肩も。すっかり冷え切っていて。
「なんで…言わないんだよ」
きっと寒かったろうに…ゆっくりと抱きあげて、僕は敷いたままになっていた布団に横たわらせた。
「ありがと…雲母…本当に…ありがとう」
一生守る。そう決めた朝だった。
 
 
 
 
「明星、さま。行ってらっしゃいませ」
「うん」
荷物を受け取って、屋敷を後にする。
そこまでは、これまでと同じ景色。
でも、今日からは違う。
『学園に帰ったら、手紙を書くから』
『え?でも』
『母さんのこととか、家のこと知りたいし…あ、雲母が嫌じゃなければの話だけど』
『迷惑…じゃない?』
『なんで迷惑だなんて思うのさ』
『だって…私…全然勉強とか出来ないし…』
『だったら尚更だよ。手紙を出しながら、僕が教えたりできるからね』
『…うん』
 
「ちゃんと、約束だからね」
「…うんっ」

昭和の日 ケータイ投稿記事

までまだまだありますが…

限定UPしますね〜



興味関心の無い方は

はい。

回れ右〜














4月29日


毎年の事だけど
この日 宵天は何時も居ない
[誕生日、なのに]
[一年先から予約が入ってるんだもん、仕方ないよ]
雑誌を見ながら緋天が言う
[一年前からの先約…って一体どんな人なんだろ…]
宵天はいつも表情が変わらないから…
好きな女の子…かな…
それとも、大親友…?
やっぱり、宵天にとっては僕なんて、単なるルームメイトなのかな…
[でも、午後には帰って来るんだし…あたしたちを友達って思ってくれてるんだと思うよ]
はっとして、緋天を見ると暖かい笑顔
[だから…心配しなくて大丈夫だよ。夜天]
[…うん、そうだね]
緋天にはなんでもお見通しだなぁ
ありがとう




同じ頃

[あ、宵天待った?]
パーカーにデニムのロングスカート
駅前の喫茶店に現れたのは、東風学園食堂に勤めている桔梗だった
[全然]
読んでいた本から目を移し、宵天が言う
学園関係者もほとんど知らない事実だがこの二人は実の親子なのだ
父親は居ない
母と子の二人家族…
それ故か普段は仏頂面の宵天がはにかむような笑顔で席を開ける
隣りに腰を下ろし、桔梗が小さな包みを差し出す
[お誕生日おめでとう、なにが良かわからなくて]
やや子供染みたラッピングを解くと
[…?クマ?]
ぐったりとした、黒目のクマの縫いぐるみが色違いで2体と黄色の鳥が1羽
[可愛いでしょ、ダラックマっていうの]
やや脱力しながらも宵天は受け取り礼を言う
[ありがと]
[たまにはリラックスしてね]
その言葉に宵天が怪訝な顔をする
[してないように見える?]
[お腹を痛めて産んだ子供だもの、何となく分かるよ]
オーダーを取りに来た店員に注文しながら、桔梗はやんわりと言う
[別に、適当に休んでるよ]
[宵天がそう言うなら信じるけど…無理はしないでね]
母なりに心配をして居ると言う事が、嬉しくもあり、こそばゆくもあった
[で、今日はどうするの]
毎年
この日だけは予定を入れて居ない
このデートの為の日
[一年に一度の息子とのデートだから…いっぱい色んな所に行きたいな]
[はいはい。今日は俺を産んでくれたお返しをする日ですから]
毎年の恒例行事になっている親子デート…
こんな歳にもなってまだ母親のお願い(デート)を聞いて居る辺り、やはり自分は母親に弱いなと自嘲する宵天に桔梗は首を傾げるのだった

年々、この親子デートの時間は少なくなって居るのだが…
今回もその例に漏れず午後を回る辺りでデートは終いになった


プリクラの筐体の中
[ほらほら、カメラ見て]
[……]
恋人の様に腕を組み桔梗が笑顔で指す
[宵天、笑って、笑って]
[はいはい]


幾つかのポーズとフレームのプリクラを撮り、桔梗は満足げにそれを見つめる
[これで満足していただけましたか]
[うん。アルバムに入れておくね。ご苦労様でした]
[母さんも気を付けて帰って]
[うん。じゃあ…また来年も…]
[はいはい。ちゃんと空けておきます]
げんなりしつつも、宵天は笑顔で返す
母にとって、このデートがどれくらい嬉しい事かよく知って居るから…






[あ、お帰りなさい〜宵天]
[早かったね]
[ああ]
ちょっと疲れた顔で宵天は3時前に寮に帰ってきた
どんな子と遊んでたんだろ…
今にも聞きたい気持ちを抑えて、僕はふつーの言い方をした
[今日、誕生日だよね]
[ああ]
相変わらず素っ気ない宵天にちょっぴり、怯みそうになってしまう
[ねぇねぇ、もうケーキ食べた?]
僕が次になんて話そうか考えていると、緋天が今度は宵天に聞いた
[いや…まだだが…]
[じゃあさ、準備したんだ。美味しいケーキだから食べようよ]
午前中に僕と一緒に買いに行った奴だ
[丁度3時だし、ね?]
[…まぁ…構わないが…]



甘い香りが僕らの部屋中に広がる
[ん〜おいし〜]
嬉しそうに緋天が頬張るのは、今にも崩れてきそうなくらいにベリーが乗ったタルト
甘いのが苦手な宵天だから、ベリータルトを選んだ緋天は、やっぱり凄いなぁ…
[…わざわざ、買って来たのか]
[友達の誕生日だもん。お祝いしたいじゃない]
[うん。そうだよ]
緋天の言葉に僕も続く
[お節介だな…]
宵天の言葉は相変わらずキツい…
[でも、お節介しなくちゃ。友達同士ってそんなものでしょ?]
[…親しき仲にこそ礼儀は必要だと思うがな]
苦笑いをしながら宵天はタルトを、取り分けた分ではあるけれど食べてくれた
[ところで今日はどちらに?]
緋天がもう一個目に手を伸ばしながら宵天に聞く
[…関係ないだろ…]
何か…やっぱり触れられたくないのかな…
[だって、ね?友達としては気になるんだよ]
[……]
宵天を見つめる緋天の大きな目は凄く真剣で…
しばらくそんな緋天を見てた宵天は、少し長い溜め息を吐いてから僕の方をちらりと見た
[家族と…母親と会って居たんだ]



宵天の横顔を見ながら少し分かった
僕達に気を使ってくれたんだって
お母さんの顔を知らない僕を…
病弱のお母さんとあんまり会えない緋天のことを…
[毎年?]
[……]
僕の質問に宵天は無言で肯定した
[じゃあ、一年先からの予約って…]
[くどいな…母親だと言ってるだろ]
あんまり触れられたくないのかな…っていうか…
[あ、宵天の顔〜ちょっと赤い、もしかして恥ずかしいの〜?]
緋天が嬉しそうに指差しながら、言う
[煩いな…だから言いたくなかったんだ。きっとお前の事だ、面白おかしく囃立てると思ってな]
それきり宵天はそっぽを向いてしまった
[ごめん、怒らせちゃった…?でも、そう言うつもりは無くて、ただ…そんな風に宵天に思って貰えてるのが嬉しくて…つい]
緋天の表情が曇る
[別に…気にしてはいない…]
宵天はこっちを見ないで言ったけど…その声は優しくて
顔を見合わせた僕と緋天は同時に笑顔になった

そして
一緒にこう言ったんだ

[[お誕生日、おめでとう]]






***

こんな感じでした〜

ケータイで打ったので、二日もかかりました…

感想よろしくです〜

ちなみにUP期間は二日間でつ〜

feb 24

10日遅れで、小話UPです。

一応王道で…

::::::::::::::::

   はぴはぴばれんた    


「あう〜ついてない…」
縹はがっくりと肩を落とした
カレンダーは2月20日
バレンタインデーの調度一週間後…
「仕方ないよ、だって、インフルエンザだったんでしょ」
友人の百合が宥める
「でも、運が悪いよね。よりにもよってインフルエンザにバレンタインデーの当日かかっちゃうんだもん」
縹よりまだ小さい桜子が言う

バレンタインデーのその日
縹は一生懸命作った、ガトーショコラを寮の机の上に置いたまま保健室のベットに横たわっていた
「インフルエンザだねぇ…予防接種はしたと思うけど、万全ってわけじゃないから」
保健医の錦が判定キットの結果を見ながら呟く
「そんなぁ…」
高熱に魘されながら、縹は今日意を決してチョコを渡そうと決めていた宵天の顔を思い出していた
「折角作ったのに…」


「でも、黒木くん、あんまり貰ってなかったと思うよ。チョコ」
「あんな無愛想な男、フツー渡さないと思うけど」
百合と桜子が口々にいう
「やっぱり…タイミングが悪いかな…」
黄色にピンクのドット、黒のリボンで飾られた小箱を抱え、暗い表情の縹
「教室に渡しにいくのはちょっと難しいと思うけど…それでもいいなら、付き合おうか?」
「え?」
あまりにも友人の落胆ぶりが痛々しかったのか、百合がその長身を屈めて縹に聞く
「ほら、もう直ぐ昼休みだし、ちゃ、と行って帰ってくれば」
「一緒に行ってくれるの?」
「わたしでよかったら」
はにかむ様な百合の笑顔に、縹の表情も明るくなる
「ちょっと…!二人じゃ心配。あたしも行くわ」
「桜子…」
縹よりまだ小さい桜子も、不承不承同行を名乗り出た
「二人とも、ありがと」


昼休み
男子の教室と女子の教室は棟自体が違う為、幾つかの廊下や階段を行かなくては中々行くことが出来ない
その為、縹たち3人は中等部の生徒たちが必ず通る渡り廊下で、待っていた
「あ、緋天くん」
「あれ?百合ちゃん…縹ちゃん、桜子ちゃんも…?どうしたの?」
普段から宵天と一緒にいる緋天と夜天だった
「ちょっと、黒木くんに用事がね…あれ?黒木くんは?」
まるで女の子のような緋天は男女共に友人が多い
本来、この学園では男女生徒の仲はあまり良いとはいえないのだが、百合とこのように話が出来るのも、緋天の中性的な外見と、人当たりの柔らかさから来ているのだろう
「宵天は…」
緋天の隣に地味にいる夜天が逡巡する
「ちょっと、今日休んでるんだ」
「え?なんで?」
「珍しいでしょ?風邪だって」
百合の問いに緋天は苦笑いで返した
「そんな…どうしよ」
一週間も遅れたのに、これ以上遅くなってはそれこそ空気の読めない女だと思われてしまいそうだ
縹は抱えていた包みを強く抱きしめる
「あれ?それ、もしかして宵天に?」
その様子に気が付いたのは意外にも夜天だった
「あ、ぅ…うん…」
今にも消え入りそうな声で、縹が言う
「別にあんたには関係ないじゃない。ほら、縹もうかえろ」
その間に桜子が割って入り、友人二人に向き直る
「でも…」
渡したかったという気持ちだけでも伝えたかった
「…そうだ…」
そんな様子の縹を見ながら、緋天が小さく呟く
「それ、宵天に直接渡してみる?」
「え?」




「い…いいのかな」
「静かに、寮母さんに見つかったら怒られちゃう」
声を潜め、縹が居るのは緋天たち男子生徒たちの暮らす、寮
「まだ、お昼休みが始まったばっかりだから、今のうちにちょっと宵天見る位、大丈夫だと思う」
緋天の提案
それは、縹一人だけ直接宵天にチョコを渡す為に寮に潜入する。というものだった
しかし何故縹一人なのか
それは…
「静かにね、縹ちゃん。見つかったら一週間外出禁止のペナルティだから…」
基本生徒たちは異性の寮は愚か、体育の時間など決まった授業でもない限り交流を持つことが許されていないのだ
「解ってる…でも、ごめんなさい、緋天くんたちにまで危ないことさせちゃって…」
「ううん。いいよ。ほら、宵天のベットは右の上段だから」
緋天の笑顔に救われ、縹は寮のドアを開けた


男の子の部屋の割りに綺麗な部屋
初めて入る男子の部屋
緊張のあまり、震えて言う事を効かない手でロフトベットの階段を上る
「こ…こんにちは…」
ゆっくりと顔を上げると金色の髪
どこか苦しそうな息遣いが聞こえてくる
「咽喉が腫れて、熱が高いって緋天くん言ってたっけ…」
更に身を乗り出し、壁側を見ている彼の顔を見ようとしたときだった
「ひ、てん…か…?」
普段から低い声では有ったが…こんなに掠れては居なかった…
「あ、あの…宵天さま?」
「誰だ…?」
ゆっくりと、しかし怪訝な声が返ってきた
「あの…」
「曲直瀬、か?どうして…」
声だけで自分だとわかってもらえたことが嬉しかった
「緋天くんが…」
「…あいつ…要らないことを…今、起きる…下で待ってろ」
宵天の起き上がる気配を感じ、急いで縹が階段を下りようとしたとき
「…っきゃあぁぁ!」
叫び声と共に、寮全体に響くような轟音
「おい、大丈夫か!?」
4,5段くらいしかない残りの階段を踏み外し、床に思い切り縹は尻餅をついた
「うぅ…」
情けなさと、それ以上の恥ずかしさに縹は宵天の問いに答えもできない
すると、そこに…
「なにかあったんですか?」
寮母の声
さっきの轟音だ、何かあったと駆けつけたのだ
「わ、どうしよぅ…」
「仕方が無い…ちょっと苦しいかもしれないが、我慢してろよ」
「え?」
うろたえる縹、その横で、宵天が小さくしたうちするとタオルケットで縹ごと身体を覆う
「宵天くん、大丈夫?」
きっと入り口で緋天がいくらか足止めをしてくれたのだろう、寮母が入ってくるまでに時間がかかった
「あ、大丈夫です…寝ぼけて、階段から落ちて…」
縹を後ろに隠し宵天が言う
「そう?大丈夫?」
「熱も下がったんで…明日は授業に出ます」
「それは…いいんだけど…」
タオルに隠れながら、縹は気がきではなかった
何時隠れていることがばれるかということでドキドキしているのではない
宵天の背中に身体をぴたりと寄せているから
宵天の鼓動がストレートに胸に伝わる
逆を返せば、それは縹の鼓動が宵天に伝わっていることにもなるのだが…
「あんまり、薄着しないでゆっくり休んでなさいね」
「はい」
いつも以上に素直な受け答えに、少々面食らいながらも、寮母は部屋を出て行った
足音が遠ざかったのを確かめ、宵天はタオルを取る
「まったく…もう直ぐ始業だろ、何をしに来たんだ?」
「あ…あの…これ…」
しかし、差し出した包みは無残にもひしゃげていた
多分、先ほど階段を踏み外して尻餅をついた時に下にしてしまったのだろう
「…なんだ?これ」
「あの…あの…」
本当に、何処までもついていない…、泣き出したい気持ちで、それでも縹はそれが一週間遅れのバレンタインチョコだと説明する
「…ふぅん」
「あの、明日、ちゃんとしたの買ってき…」
「別に必要ない。それでいいよ」
言い、宵天は縹から包みを取り、中のトリュフを頬張る
「……甘い…」
俄かに眉間に皺が寄る
「あ、す…すみません…」
「ほら、もう帰れ。遅れるだろ」
縹の言葉など聴かず、宵天は立ち上がりドアに手を伸ばす
「あの…あの…」
「インフルエンザで昨日まで休んでたんだろ。あまり無理するな」
「あ…」
それ以上の言葉は無く、宵天に流されるまま縹は部屋を後にした



「どうだった?渡せた?縹」
「あの男に変な事されなかった?」
教室に帰ると百合と桜子が矢継早に問いかける
「ううん。ちゃんと受け取ってもらえた…それより、あたしが休んでたのって、緋天くんに言った?」
「?言ってないよ?どうして?」
「ううん、なんでもない」
チョコを受け取って貰えたから、嬉しいのではない
知っていてくれたのだ
自分が休んで居たこと
それだけで縹にとっては舞い上がるには十分で
「なんか解らないけど、上手く行ったみたいね」
「とりあえず良かったんじゃない?」
それからの午後の授業上の空だった縹が担任の逆鱗に触れ、反省文を命じられたのは言うまでも無い…



:::::::::::::::::


はい。

今回は現代版で。
(よくわからない人はコメントにお願いいたします)

急いで打つからこんなことに…

3月3日(位まで?)の限定UPです〜〜

The fathers day

JUN 16

「何がいいかな…」
珍しくため息を吐き、彗は窓の外をぼんやりと見ていた
「お?どうした?浮かない顔して」
輝章が小テストを持ち、前の誰も居ない席に座る
「…明日…どうしようかな…」
「明日…あぁ父の日だっけ」
彗のファザコンぶりは周知の事実だ
そんな彗が悩むとは…
「去年は何だっけ?」
「去年はネクタイ…とネクタイピンとカフスボタンだった」
「なになに?」
芥已太も話に加わる
「彗がさ、大好きなパパへのプレゼント。明日なのに決まってないっぽい」
「へぇ?彗が?珍しいね」
「算数のテストが結構あったから…すっかり…」
明るい茶の髪がさらりと揺れる
「そんなにヒカンしなくても」
「まだ今日一日あるだろ?ボクたちも手伝うからさ」
親友の一大事に輝章と芥已太が口々に言った




「あ!明日!!」
昼下がり、珍しく緋天が叫んだ
「どうかしたの?いきなり大きな声出して…」
うとうとしていた夜天が聞き返す
「明日、父の日だったの…わわ;どうしよう」
大きな瞳を逡巡させ、緋天が呟く
「…まだ一日あるだろう…」
その様子に半ば呆れ、宵天が言う
「だって…何にするか決めてなかったんだもん…」
「…去年は何だったのか、分かったなら、違うものにすれば良いだろう」
あいもかわらず、素っ気の無い宵天の言葉
「ねぇ、明日は学校休みだし…それに今日だって、買い物いけるんじゃない?」
「夜天…」
思わぬ助け舟に、緋天の顔が綻ぶ
「そして、宵天も、ありがとう」
「…俺は何も言っていないが?」
いきなりの緋天の言葉に宵天の険が増す
「だって…あたしと夜天二人じゃ不安じゃない?」
「ボクも宵天が一緒だと心強いな」
「………」
「ね?」
「ね」
夜天と緋天が宵天に詰め寄る
「…………」



「理事長先生って、甘いものとか好きなわけ?」
放課後、図書館に彗と輝章、芥已太の三人の姿があった
「うん。お酒はあまり父様は飲まないけど、甘いものは好きだよ」
「じゃ、それで良くないかな」
輝章の質問に彗が答える
「ただ、ちょっと遠いんだ…今日だと着いたとしても、もう閉まってるかも」
「じゃぁ明日行けばいいんじゃない?ところでそれってどこなの?」
「…南風」

「「南風????」」
輝章と芥已太が同時に叫んだ

同時刻

「は、南風?」
同じように夜天が目を白黒させる
「うん…央都にも、東風にもお店はあるんだけど…南風の本店限定なの…」
申し訳なさそうに緋天が小さく呟く
「…南風、か…大分早く出ないと行けないんじゃないか。新幹線で1時間、特急でも3時間といった所か…」
「学割使えば、東風、南風間って1000円くらいだよね…お金、間に合うかな」
宵天、夜天ともに声が暗い
「どうしたの?三人とも」
調理婦の桔梗が盆にジュースとクッキーを載せ、やってくる
「明日、南風に行くんです…けど」
「南風に?どうして?」
緋天の隣に腰を下ろし、桔梗が聞き返す
「明日、父の日なんで…父様にプレゼントを買いたくって…」
「素敵ね。何にするの?」
ぱっと笑顔になる桔梗
「千駄木屋の、吟夜絵馬です」
「わぁ。素敵ね。きっとお父様喜ばれるんじゃないかしら」
桔梗がぱ、と顔を綻ばせる
「だと、良いんですけど…」
「お父さんは、どんなものでも、喜んでくれる筈よ」
「ですよ、ね」
「とにかく」
桔梗と緋天の会話を遮り、宵天が言う
「明日行くなら駅に9時までに行くんだな」
「え?…宵天くん…は一緒に行かないの?」
桔梗が聞く
「…いえ…俺に関係無いですし」
歯切れの悪い宵天の言い方に、空かさず緋天が宵天に抱きつき言う
「一緒に行くんですよ。ね。宵天」
「そうなんだ。楽しんできてね」
「…はぁ…」
「は〜い」
ぐったりとした宵天と、してやったり笑顔の緋天、そして未だに翌日どのようにして南風まで行こうかと考えて、返事どころではない夜天だった…



翌日

「「あ」」
南風の千駄木屋の前で、同じ顔、同じ声が鉢合わせた
緋天と彗
そして輝章と芥已太、夜天、宵天も
「おはよ。彗」
「……」
笑顔の緋天とは対照的に彗の表情は硬い
「緋天もここにしたんだね」
彗の代わりに…といっても、何時もの事なのだが、芥已太が言う
「うん。父様はここのお菓子が好きだから」
にっこりと微笑み、緋天が答える
「そんなことより良いのか」
意外にも宵天が口を挟む
「あ、そうだった…ごめんね、先急がないと…」
緋天が申し訳なさそうに頭を下げ、店の中に入っていく
「良いのか?彗」
「別に…店が逃げるわけじゃないし…」
むすっとし、彗は腕を組みそのまま動かない
「まったく…」
輝章と芥已太が同時にため息を吐いた

彗たちが千駄木屋の中に入ったのは緋天たちが去ってしばらくしてからだった
「え?無い?」
目を白黒させる輝章
呆然とする彗
そんな中唯一冷静に店員と話をしているのは芥已太だった
「はい。数量限定でして、特に休日は午前中で売り切れてしまうことが多いので…電話での予約を承っているのですが…」
若い女性が申し訳なさそうに頭を下げる
「彗、知ってたか?」
芥已太が問う
「…全然…でも…じゃあ…」
「さっき、緋天、箱を持ってたよな?」
彗が言葉を濁し、輝章が首をひねった



「さっすが、宵天だね。予約しておいてくれたなんて」
千駄木屋の紋が入った包みを大事そうに抱え、緋天が嬉しそうに言う
「ほんと。宵天、頭良いね」
心から感心し、夜天が呟く
「…普通分かるだろ…さぁ、用事は済んだんだ。帰るぞ」
相変わらず素っ気無い
「うん。ありがと。宵天も夜天も」



「はぁ…」
がっくりと肩を落とし彗は実家の門の前に居た
何も準備できなかった
手は軽いのに、足が重い
「何て言ったら良いのか…」
きっと緋天は既に千駄木屋の菓子を父に渡しているのだろう…
惨めなことをするくらいなら、いっそのこと家に入らないで帰ってしまおうか…
彗が踵を返したときだった
「彗さま。いらしていたんですね」
よく知った声
彬が門から出てきた
「彬…どうしよう…僕…」
「暁さまも大変喜んでいらっしゃいますよ。さぁ、彗さまを待っていらっしゃいます」
「何を言ってるんだ?…だって…僕はなにも…あ…緋天…っ」
「緋天さまでしたら、午後早くにいらっしゃいましたね…その際に、千駄木屋のお菓子を、彗さまから預かったと」
一瞬目を点にさせた後、彗は彬を伴い走り出した



「よかったの?理事長先生に会わなくて」
風呂上り、夜天が隣で涼む緋天に聞く
「うん。いいの。これでいいの」
いつものように優しい笑顔なのに、どこか寂しそうだった
そのとき、緋天のケータイがなる
「雪音?」
メールが送られてきていた
 『本日父の日でしたが、緋天さまが送られたオレンジのバラの花に、暁様は大変喜んでいらっしゃいました。彗さまは千駄木屋のお菓子をご用意なさっていて―――…』
「どうしたの?」
ケータイ画面をじっと見つめたままの緋天を訝り、夜天が問う
「ううん。なんでもない……父の日って、いいねぇ…」
少し、鼻にかかった声で、緋天が言った。




::
なんとか無事当日にUP出来ました…
次は何にしようかな

The Motyhers Day

  Mey 13

「はい。母さま」
満面の笑顔で彗は薄桃色の包みを母、芙蓉に渡す
「まぁ。母の日を覚えていてくれたのね。うれしい」
芙蓉は恭しく包みを開く
出てきたのは、包みと同じ色のカーディガンだった
「まぁ…」
「まだ、肌寒い日が続きますので…」
「ありがとう。大事にするわね」
珍しく相好を崩して、彗は頭を掻いた


「やはり、双子なんだね」
彗が帰った後の部屋
父親の暁が複雑そうに言う
その手には同じ色のそして、これまた同じカーディガン
「さっき緋天が持ってきてくれたのと同じ…」
小さく笑い、芙蓉がカーディガンを二枚羽織る
「二枚なんて要らないわ…早く、二人で選んだものを一つだけ欲しいの…」
「………」
寂しげな芙蓉の呟きに、暁は沈黙で答えた





「カーネーション…赤いのを…」
唇を指で弾きながら考え事をするのは、宵天の癖だ
たぶん本人にも自覚は無いのだろうが
「10本…それとカスミソウを…3本くらい…」
店員の『ラッピングは?』
という問いかけにも、いつもであれば剣呑な反応をしている彼が酷く丁寧に答えていた

少し、安心してしまった…
彼女の息子なのだと…
「……」
出来上がった花束を抱えた彼の笑顔…
「今日は…行けそうに無い…ですね」
彼女の為に買ったプレゼントだったが…こんなものよりも、今日、彼女が一番に望んでいるのは彼のあの笑顔なのだろう
そんな事が分からないほど子供でもない
母の日は親子の蜜月を再実感する…そんな日なのかもしれない…


明星は空を見上げると、ケータイのボタンを押した
『あ…雲母さんですか?えぇ…すみません…今日、急な仕事でいけなくなってしまいまして…』



そういえば
今日は母の日だった
でも、お母さんのいない僕にはあんまり実感が無くて
それに、一緒にいた記憶もないし…
絵にも描けない
お母さん…
「あ、いたいた」
寮の戸が開いて、緋天が入ってきた
「あれ?今日、お家帰るんじゃなかったの?」
「まぁ…ね」
緋天はちょっと寂しそうに笑って、それだけだった
「きっと寂しいんじゃないかなって…それに、ほら…うちはもう一人いるから」
「優しいな、緋天は」
「いえいえ。ただ、居場所の無いしがない長男坊ですよ〜〜」
にっこり笑って緋天は自分のベットに横になる

ありがと…
すごく、嬉しい…

「はい。コレ」
渡されたのは白いカーネーション
「例え、お墓が分かんなくても、夜天には優しいお母さんが居たんだよ」
「うん…そうだね…ありがと…」
一輪の白いカーネーションには、ピンクのリボンが結んであって、
僕は急いでコップに水を汲みに走った





Fin(6・14まで)


父の日までの限定UPにします。
 
身内の方。
見つけて読まれましたら
コメント等お願いいたします。

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