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かつてペットボトル入りの飲料が登場した当時、筆者は結構な抵抗感を禁じ得なかった。
ペットすなわちプラスチックは独特の合成樹脂臭があり、
飲料を詰めるのに適さないというのが世の常識であったからだ。 (ヤクルトとかジョアといったチルド飲料だけは例外であったが)
ボトル形状の容器から直接飲むのは「ラッパ飲み」と呼ばれる下品な行為とされていた。
現在のように、屋外で若い女性までが普通にラッパ飲みするようになるとは、当時は誰も思わなかったハズだ。
現在はペットボトル入り飲料が完全に市民権を獲得したが、今日の記事ではもっと遡ってみよう。
昔、ほとんどの飲料は長年の間、ガラス瓶に詰めて売られていた。
昔はガラス瓶入りコーラの自販機が存在し、自販機本体に栓抜きがついていた。
また缶入りビールも出ていない時代にまで遡ると、外出・遠出、特に交通機関による移動や、
屋外でのピクニックなどには栓抜きは必需品であった。
昔の鉄道車両などでも車内のテーブルの端には栓抜きがついていた↓
一定以上の年齢の方にとっては、この写真は非常に懐かしく感じられるのではないだろうか。
この写真は、先日東京のJR東日本・尾久車両センターのイベントで展示された旧型客車の車内である。
当時は、ビールやコーラを買い込んで出かけるにも、栓抜きを使わないと開封できなかった。
ガラス瓶でもスクリューキャップを装備したオロナミンCのような製品はあったものの、
コーラやビールにはまだまだ王冠しかなかったのである。
金属缶はもともと、保存食のために考案された殺菌密閉方式パッケージである。
その後、ジュースを詰めて売るようになったものの、 当時はまだプルタブも存在せず、缶に口をつけて直接飲むような行為は考えられなかった。 缶の上部の2ヶ所に穴をあけ、そこからコップに注いで飲むのが普通だった。 (プルタブ登場後もしばらくは、トマトジュースだけがなぜかこの方式だった) 穴あけ器具を使わなくても簡単に開封できるプルタブの登場で、 飲料業界における金属缶の地位は一気に向上した。 ガラス瓶よりも軽く、落としても割れる心配が無く、栓抜きが無くても出先で簡単に開封して飲める。 コーラもファンタも金属缶入りが登場し、缶入り飲料の自動販売機も一気に増加し、
ガラス瓶入りは徐々にその存在価値を狭めてゆく。
その後、コカコーラの1.5Lガラスボトルなどにはスクリューキャップも登場したものの、
ペットボトルの登場と台頭によってガラス瓶は淘汰されていった。
(ビン回収システムの発展的縮小もその理由である)
ペットボトルが市民権を得ることになったのは、合成樹脂臭を効果的に除去する技術が確立したからであり、
当時原油価格の安定した時期だったことも追い風になった。
しかしながら、当初はあくまでペットボトルは大型ガラス瓶の代替商品であり、
ジュースやコーラの1.5L〜2Lガラス瓶製品を置き換える性格の存在であった。
(当初はまだスクリューキャップが金属製であった)
スクリューキャップによってリシール可能というのは、あくまで残りを冷蔵庫に保存するためのものであり、
現在の500ペットのように「ボトルに口を直接つけて飲み、残りを持ち歩く」という存在意義ではなかった。
そもそも当時の認識として「500mlは人ひとりが飲むには多過ぎる量」だと思われていたのだ。
しかし、それまで250〜350mlの缶入りが常識だったジュースやお茶に、500mlペットが登場。
なるほど、缶入りならば開封後は全部飲み切る必要があるが、ペットならキャップを閉めて残りを温存できる。
それならば500mlは決して多過ぎる量ではない、ということになってくる。
この流れに勢いをつけるように、「500mlペットボトル対応自動販売機」が登場して以降、
500ml飲料の大幅普及という、ソフトドリンク史上でみても重大なムーブメントへと展開した。
(250mlや350mlの割高感も手伝ったのであろう)
コーラ、ファンタ、緑茶、烏龍茶、紅茶、スポーツドリンク……
一部を除いてほとんどがペットボトルへと移行し、現在に至っている。
……さて、この一連の流れと隔絶され、金属缶という文化を頑なに守っている分野がある。
そう、我らが缶コーヒーである(゚∀゚)
コーヒーは今も缶入りがメインである。
むしろ缶コーヒーは、以前は250mlロング缶が主流だったのに現在は190ml缶だ。
350ml缶のガブ飲み製品や、500ペットのカフェオレ系の製品もあるにはあるが、
缶コーヒー飲みにとって、ソフトドリンクとしてのコーヒーは190mlで事足りてしまうのだ。
コーヒー好きの中には、キチンとドリップしたコーヒーをマグカップで何杯も飲む人もいるにはいる。
しかし、缶コーヒーを短時間のうちに何本も開封して飲む人はほとんどいない。
つまり、缶コーヒーは基本的に190gが適量なのである。
そして、少ない量を一度で飲み切るので、リシールキャップの必要性も無い。
200mlにも満たないコーヒーを、キャップを閉めて何度にも分けて飲みたいという人はいるまい。
こうしてみると、缶コーヒーのパッケージというのはじつに理に適っている。
コーヒーという飲み物に最適な容器といえるだろう。
また、充填後の加圧加熱殺菌のために金属缶でなければならない、と聞いたことがある。
ペットボトルと違って光線を遮断できる金属缶は、中身の変質を抑えることができ、
加温して飲む場合もホットペットより迅速に加温できるという利点も兼ね備える。
缶コーヒーはこのまま、今後もペットボトル化の波に逆らい続けてほしい。
金属製の円筒に直接印刷された美麗なデザインは、それだけで心をワクワクさせるものがある。
プラスチックのスクリューキャップをグツッとひねるより、プルタブをカシュッと起こす音のほうが好きだ。
透明な容器にデザインフィルムを巻いただけのペットボトル飲料とは質感が全く違う、
コンパクトな円筒形の小宇宙、それが我らの愛する缶コーヒーなのである。
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缶コーヒー雑感
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見事な主張でした。拍手万雷です!
2010/11/24(水) 午後 4:32
素晴らしい!
2010/11/25(木) 午後 1:03
>柳井未奈人 さん
ありがとうございます(*^_^*)
缶コーヒーが好きな人なら絶対にわかってもらえる、この感覚!
缶コーヒーが全廃されてペットになってしまったら、趣味的に成り立ちません。
そのぐらい、「缶入り」であることの意味は大きいと思います☆
2010/11/26(金) 午前 10:13
>ふじあつ さん
ありがとうございますm(_ _)m
微糖だゼロだとケチをつけてはいますが、結局やはり缶コーヒーが好きなのです。
美味しい缶コーヒーを求めて遥かな旅を続けましょう(^^)/
2010/11/26(金) 午前 10:16