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2009年05月14日
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. 新書庫「缶コーヒー雑感」をスタートする。 ここでは、通常の製品レビューとは別に、文字通り缶コーヒーに関する雑感を綴る。 今日はその第1回。 缶コーヒーは元来、当時果汁飲料(ジュース)ぐらいしか存在しなかった缶入り飲料に、 バラエティの一つとして考案・追加されたものである。 昭和40年代前半頃まで、缶入り飲料はせいぜい下記のような物しか存在しなかった。 * オレンジジュース * アップルジュース * グレープジュース * トマトジュース * コーラ * 炭酸入り無果汁ジュース 現在のように果実のバラエティ(グレープフルーツ・梅・レモンなど)がほとんど無く、 無糖飲料である緑茶も紅茶も、抽出済み既製品を買って飲むなど想像もしなかった時代である。 (缶入りもビン入りも同じような感じであったが) 無論、スポーツドリンクも無ければ烏龍茶も無い、コンポタも汁粉も天然水も無い。 昭和44年、UCCが初めて全国販売の缶コーヒーをリリースする。 現在の「UCCオリジナル」である。 乏しかった缶飲料バラエティの中で、缶コーヒーというものはさぞ新鮮に映ったことであろう。 最初のUCC缶コーヒーは牛乳と砂糖をたっぷりと使用したミルクコーヒーである。 当然、喫茶店で出されるコーヒーとは全く違う飲み物であると言えるが、 そもそもレギュラーコーヒーの味を再現しようとして作ったものではないことに留意する必要がある。 お金を出して買って飲む飲料は、甘くて口当たりがよければOKだったのである。 なにも、レギュラーコーヒーの代用になるような製品を志向したわけではない。 本格性など、消費者もメーカーも追求しなかった。 UCC以外のメーカーからも順次、缶コーヒーが発売されていったが、 いずれも砂糖が大量に添加されて非常に甘いものばかりであった。 コーヒーというよりは清涼飲料水的な感覚が強かったともいえる。 これには、当時の日本人のコーヒーの飲み方そのものが影響している。 レギュラー・インスタントにかかわらず、コーヒーを出されたら、 砂糖もミルクも大量に入れて飲んだ時代だったのである。 明治時代、日本でコーヒーがなかなか浸透しなかったのは、 苦いものを飲むということに対する日本人の抵抗感あったからだが、 砂糖やミルクをたっぷり入れて飲むことで苦味を緩和するという習慣が定着し、 ようやく日本人の間にもコーヒーは広まっていった。 実際、大正時代にビン入りの「コーヒー牛乳」が大ヒットしたのは、 そういった日本人の味覚に合致していたからである。 このような沿革的背景は、昭和40年代後半の缶コーヒーの甘さに、少なくない影響を与えている。 「コーヒーは、香ばしくて甘い飲み物」という概念は強固であった 現実に、UCCの初代缶コーヒーは、コーヒー牛乳を缶入りにしてみようという発想が元になっている。 もちろん、甘さ控えめやブラックのコーヒーを嗜む人もそれなりにいたが、 各メーカーとも、缶コーヒーをそんなに3種類も4種類もリリースする時代ではなかったので、 最大公約数的な大衆向けテイストとして、ゴッテリと甘い缶コーヒーを1〜2種類。 どうしてもコーヒーの味や香りにこだわる真のコーヒー好きの人は、 そもそも缶コーヒーなど飲まなかったのである。 「お砂糖、いくつ? (*゚д゚)」 「2つ (^_^)v」 などという会話を懐かしく感じる人は、角砂糖世代であろう。 昔は喫茶店でも一般家庭でも、コーヒーや紅茶に入れる砂糖は角砂糖が普通であった。 角砂糖が衰退してしまったのは、何よりも近年の健康志向によるところが大きい。 角砂糖一個分よりももっと砂糖少なめで飲みたいという人が増えて、 指でつまんで簡単に量を調整できるスティックシュガーが台頭したからである。 低糖志向・健康志向と同時に、缶コーヒーにも本格性を求める時代へ移行した。 ただ甘くしておけばそこそこ売れた頃と違い、 しっかりとコーヒーの味と香りがする製品が好まれるようになる。 昭和59年頃のポッカ・ミスターコーヒーの宣伝文句は、 「甘いだけのコーヒーは卒業した」というものであった。 (この台詞は俳優の時任三郎氏の吹き込み) ジョージア以外でごく初期に新しい缶コーヒー専用の「ブランド」を標榜し、 アイス専用とホット専用を分けたり、焙煎法や抽出法を工夫したりと、 より強いこだわりを積極的にアピールして缶コーヒーの新境地を開拓したのが、 昭和62年にスタートしたキリンのブランド「Jive(ジャイブ)」である。 ジャイブの基幹商品「ザ・ブレンド」は、当ブログのプロフィール写真にも使用している。 シンプルで渋いデザインも含めて、当時の筆者のお気に入りの一つである。 (1993年4月20日製造・中身入り・筆者所蔵) それまでは、缶コーヒーメーカーといえども製品ラインナップはせいぜい1〜3種類が普通で、 ジョージア以外はブランドという概念が無く「メーカー名+商品名」がふつうであった。 例:ポッカコーヒー / ダイドーブレンドコーヒー / ビーボコーヒーZ しかし、キリンジャイブの斬新な試みと、印象的なCM展開に触発され、 ジョージアも缶コーヒーのラインナップを拡大し、他社も缶コーヒー多様化に本腰を入れ始める。 現在に至るまで、廃止されたものまで含め様々なブランドが登場している。 アサヒ……J.O(ジョー)⇒WANDA(ワンダ) サントリー……WEST(ウェスト)⇒BOSS(ボス) サッポロ……BEANS(ビーンズ)⇒生粋(きっすい) UCC……MAJOR(メジャー) ペプシ……BIRDY(バーディー) JT……HALFTIME(ハーフタイム)完熟豆シリーズ⇒Roots(ルーツ) ポッカ……AROMAX(アロマックス) ネスカフェ……匠(たくみ) 各社ともブレンド(基幹商品)・カフェオレ・単豆系・ブラック・デミタス・アイスカフェ・フレバードなど、 以前からは考えられないぐらい多彩なラインナップを展開するようになり、競争は熾烈化する。 コカ・コーラが全く新しいブランド「EMBLEM(エンブレム)」で驚異的な高品質ブラックを出すに至り、 いよいよ消費者側にも本物志向が芽生え、より完成度の高い製品を要求するようになってくる。 しかしながら、スチール缶に封入して長期保存を可能とする缶コーヒーは、 逆立ちしたってレギュラーコーヒーに肩を並べることは絶対不可能。 レギュラーコーヒーに近づける努力より、缶コーヒーとしての美味しさの追求がスジである。 そもそもレギュラーと缶は、飲むシチュエーション・楽しみ方が激しく異なるものである。 ◎レギュラーコーヒー * ゆっくりと椅子に座って飲むものである * 夏でも基本はホットである * 喫茶店であれ自宅であれ、部屋中にコーヒーの甘い香りが漂う * カップに注がれたコーヒーの液色を観賞できる * 砂糖もミルクも自分の好みの量を淹れて飲める * 淹れたてのアツアツである ◎缶コーヒー * 炎天下であったり、酷寒の屋外であったり、昼の休憩時間の楽屋裏であったり、状況は様々 * 座って飲むとは限らない * 夏場はホットがまず手に入らず、アイスが基本となる * カバンに入れて持ち歩き可能で、いつでもどこでも飲みたい時に飲める * 缶から直接飲むことがほとんどであり、液色を見る機会はほとんど無い * 自分で淹れるコーヒーよりは量が少ない(一度に2本以上も飲む人は稀であろう) いたずらにレギュラーに近づけることを考えるより、 むしろ「レギュラーには無い、缶コーヒーならではの味わい」を目指してゆけば良いのである。 現在のところ、これは順調に推移していると考えられる。 「レギュラー好きだけど、缶コーヒーもよく飲む」という人がかなり多いことから考えても、 缶コーヒーには缶コーヒーなりの旨さがある、と彼らに受け入れられているものと判断できるのだ。 ただしブラック製品だけは、あくまで最終目標を「極限までレギュラーに近い味」に設定すべきであろう。 ブラック缶コーヒーは、少なくとも前述のコカ・コーラエンブレムの登場までは、 あまりにもマズくて飲めたものではなかった。 筆者は1988年頃に秋田県内でヤマザキの缶入りブラックコーヒーを飲んだ経験があるが、 マズくてほとんど吐き出してしまったのをよく憶えている。 当時はまだ「缶コーヒーは甘く作るもの」という概念が支配的であり、 砂糖を加えずに美味しい缶コーヒーを作る技術も無かった。 (余談だが、当時はまだまだ缶入り緑茶も凄まじくマズかった時代でもある) 缶コーヒーは、砂糖やミルクの添加を抑えれば抑えるほど、馬脚を現す。 コーヒーそのものがしっかりしていないと、マズくて飲めないのである。 そしてその究極の形であるブラックは、レギュラーに少しでも近づけねば美味しく感じない。 幸いなことに、現在各社から発売されている無糖ブラック缶コーヒーは、 10年前と比較しても圧倒的に優れた味のものが多い。 だからこそ、今後より一層の努力をしてレギュラーコーヒーの境地を目指してほしい。 当方のブラック缶コーヒー評価としては、 ◎飲みやすい系……ジョージアエメラルドマウンテンブラック / サントリーボスブラック ◎本格派……ポッカアロマックスブラック / 伊藤園 W ブラック あたりが高評価となっている。 次回は、筆者が口を酸っぱくして主張している「人工甘味料」について語ってみたい。 (文責:紫布) .
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