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 ◆ 表彰台での勇気ある行為が原因で、母国で生涯を通して
   除け者扱いされ続けたオリンピックの銀メダリスト
(イミシン)

http://wind.ap.teacup.com/people/timg/middle_1472647002.jpg
銀メダリストの左胸にも他の2人と同じOPHR(人権)バッジ。

 この時代を通過してきた人もそうでない人も、この写真(略)が何を示しているかわかるはずです。そう、それは1968年。4月にマーティン・ルーサー・キング・Jr牧師、その2か月後の6月にロバート・ケネディが暗殺された年に撮られた写真です。ベトナム戦争に対する反戦運動が高まる中、多くの都市で学生運動や反戦運動が起こり、同時にアメリカ国内のいたるところで人種差別が引き金となった暴動や警察との衝突で多くの人が命を落としました。アメリカ、そして世界が揺れに揺れた年です。
 その真っただ中に行われたのが、
1968年のメキシコシティオリンピックでした。

 世界が大きな変動のなかにあったその年のサマーオリンピックで、1968年10月17日夕刻、メダル授与のために
表彰台に上がった2人のアメリカ人が史上に残るある行為を行いました。


 
男子200メートル競争を、世界記録で優勝したトミー・スミス3位に輝いたジョン・カーロスが、アメリカ合衆国国歌が流れ星条旗が掲揚される間、壇上で首を垂れ、黒い手袋をはめた拳を突き上げたのです。
 2人が見せたこの
ブラックパワー・サリュート(アメリカ公民権運動で黒人が拳を高く掲げ黒人差別に抗議する示威行為)は、近代オリンピックの歴史において、もっとも有名な政治行為として知られています。
 2人は黒人の貧困を象徴するため、シューズを履かず
黒いソックスを履き、スミスは黒人のプライドを象徴する黒いスカーフを、カーロスは白人至上主義団体によるリンチを受けた人々を祈念するためロザリオを身につけていました。

 しかし、この
3人目の選手は?一見、写真の中の彼は、静かにスミスとカーロスの両選手の隣に立ち、歴史的瞬間を目撃しているだけのように見えます。

 彼の名前は、
ピーター・ノーマンオーストラリア史上最速の短距離陸上競技選手で、この写真が撮られたときは世界で2番目に足の速い選手でした。
 
スミスとカーロスは、示威行為を行なったことで、その後長い間アメリカスポーツ界から事実上追放され、批判に晒されました。新聞などのメディアにも非難・中傷され、彼らのもとには殺害を予告する脅迫文が何通も届けられたといいます。
 しかし、多くの人に知られることがなかったのは、
ピーター・ノーマンも世界のスミスとカーロスの両選手の意図に共鳴して2人の隣に立っていたということです。そして彼もまた、その報いを受けていたのです。

 当時のオーストラリアには、アメリカと類似した
白人最優先主義とそれに基づく非白人への排除政策が存在していました。実際、南アフリカのアパルトヘイトは、オーストラリアの先住民に対する差別政策を見習って作られたものだと言われています。
 1905年から1969年にかけて、「先住民族の保護」「文明化」という名目で約10万人の先住民族であるアボリジニの子どもを強制的に親元から引き離し、白人家庭や寄宿舎で養育するという政策も行われていました。
 そのため、この時代に
白人オーストラリア人のノーマンが黒人やその他の少数民族と接触を持つ、公民権運動に同調するというのは、本国では彼の人生を破壊しかねなない非常に危険性の高い行為だったのです。

 決勝レース終了直後、スミスとカーロスは銀メダルを取ったノーマンに
「人権を信じるか」と尋ねたそうです。ノーマンは、「信じている」と答えました。
 再び彼に
「神を信じるか」と尋ねると、ノーマンは「強く信じている」と答えたそうです。そして、その次にノーマンが口にしたことを2人はいつまでも忘れることはないといいます。

 「僕も君たちと一緒に立つ」

 そう言ったノーマンの目にはちっとも恐れはなく、ただ愛に満ちていたとカーロスは追想しています。

 スミスとカーロスは、
「人権を求めるオリンピック・プロジェクト(略称:OPHR)」のバッジを着けていました。このバッジはオリンピック選手たちによる平等な権利を求める無言の訴えを示すシンボルでした。
 表彰台に向かった際に、スミスとカーロスが、「ブラック・パワー・サルートをするつもりだ」とノーマンに打ち明けると、ノーマンは2人の胸に留められたバッジを指差してこう言ったそうです。
 「君たちが信じていることを僕も信じている。
それ、僕の分もあるかい?そうすれば僕も人権運動を支持していることを証明できる」

 スミスは驚きました。「なんなんだ、この白人のオーストラリア人は?銀メダルを取ったんだから、それで十分大きなことは成し遂げてるじゃないか!」
 スミスは余分なバッジを持っていなかったため、ノーマンは他のアメリカ人選手から借りたバッジを胸に付けました。そして、史上に残る瞬間が実現したのです。

 3人の若いアスリートが表彰台に上がり、スミスとカーロスは拳を高く上げ公民権運動への敬礼をしました。何百万人もの人々を前にした「非政治的なオリンピック」の場で、これほど勇気ある政治行為をした人は前にも後にもいません。
 3人は、すべての人間は平等であるという信念のために行なったこの行為が、永遠に残るだろうということを理解していたのです。
 事件後、アメリカのオリンピックチームの代表は、3人が生涯にわたって大きな代償を支払うことになるだろうと発言しました。

 その後、時代は流れ、アメリカの人種差別が撤廃された後、スミスとカーロスは人権のために戦った英雄になりました。
 歴史はスミスとカーロスの行為に正当な評価を下し、サン・ホセ州立大学には2人の行為を祝して像が建てられます。しかし、2位の表彰台が空です。
 このノーマン不在の像は、あの日以降、オーストラリアでノーマンが辿った運命を象徴するかのようです。それは最も悲しいヒーローの物語と言ってもいいでしょう。

 オーストラリアでは、ノーマンは歴史から抹消されたかのような扱いを受けました。
 1972年のミュンヘン・オリンピックでも、選抜で出場資格を得たにもかかわらず、オリンピックのオーストラリア代表から除外され、ノーマンはスポーツ界を引退。
 その後は、体育の教師や肉屋などの職を転々としていたそうです。白人中心のオーストラリア社会でノーマンは、あの事件がきっかけで、家族ともども疎外されてしまったのです。
 その後、怪我により壊疽も患い、除け者にされ、無視された存在となった元アスリートは、アルコール中毒とうつ病に苦しみました。ジョン・カーロスはノーマンのことをこう言います。
 「ピーターはたった一人で、国全体に立ち向かって戦っていたんだ」

 ノーマンは当時、信じられない名誉挽回のチャンスを与えられたことがあります。スミスとカーロスの行為を人類に対する冒涜だと公に非難すれば、ノーマンの行為も許されるというものでした。
 しかし、自分は間違っていないことを知っていた彼は、その申し出を退けました。
 2006年、ノーマンは心臓発作で亡くなりました。受けるべき謝罪は何一つとして受けないまま、この世を去ってしまったのです。

 彼の葬儀ではトミー・スミスとジョン・カーロスが棺を担ぎました
 2012年、ノーマンはオーストラリア政府から正式な死後謝罪を受けました。
 政府は、ピーター・ノーマンに対し、「・・・何度も予選を勝っていたにもかかわらず、1972年のミュンヘンオリンピックに代表として送らなかったオーストラリアの過ちと、ピーター・ノーマンの人種間の平等を推し進めた力強い役割への認識に時間がかかったこと」を謝罪しています。

 「彼は自身の選択に対して報いを受けた」トミー・スミスは説明します。
 「あれは、私たちを同調するという単純な行為ではなく、彼自身の戦いでもあった。彼は白人で、有色人種男性2人に並んで勝利の瞬間に立ち会った白人オーストラリア男性で、私たちと同じ志のもとにあそこに立っていた

 ノーマンは1968年のあの日、200m陸上で20.06秒の記録で2位に輝きました。この記録は未だにオーストラリア記録として破られていません
 本来なら英雄になるはずが、人権のために立ち上がったため批判され、生前は遂に認められず、2000年オリンピックにも招待されなかったのです。

 しかし、世界にはもっと多くのピーター・ノーマンが必要かもしれません。
 あれから約50年、私たちはいまだに平等と人権のために戦っています。ノーマンの物語は、白人だろうが黒人だろうが人種に関係なく、平等を実現するのは私たちみんなの戦いなのだと教えてくれます。

 この物語をシェアして、ノーマンの行為への敬意と彼の愛と思いやりのメッセージを広めてください。たった少数の人間でも大きく世の中を揺るがすことができることがあるのです。

『48年前のオリンピック、ある男性の勇気ある行為が彼の人生をめちゃくちゃにした。』
http://www.imishin.jp/peter-norman/


パワー・トゥ・ザ・ピープル!! パート2   

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