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 東京都練馬区立図書館の民託化問題で昨年末12月19日と26日に構えられた2時間の時限ストライキに大きな注目と支援が寄せられた。NHKなど多数のメディアが相次いでストを好意的に報じたのは、ストを構えたのが全員女性の「練馬区立図書館専門員労組」(自治労加盟、57人)という非常勤の労働者であり、自らの雇用問題と同時に何よりも本を愛し公立直営図書館を守ろうとする訴えだったから−。

 ◆ 練馬区の非正規司書がストを構え
   公立図書館が大好きだから
 (労働情報)
水谷研次(東京都労働委員会元労働者委員)

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 練馬区で区が直接運営している3館の図書館の内、練馬と石神井の2館を他館と同様に指定管理者へ民間委託しようとする提案があったのは2018年7月18日のことだった。


 話をうかがったのは岩村陽恵(あきえ)さん(勤続7年)とオニール原田芽(めぐみ)さん(同5年)。また組合の特別執行委員でもある元・練馬区職労(自治労加盟=約4600人)役員の三澤昌樹さんにも同席してもらった。

 ◆ 全員参加で闘争態勢

 図書館専門員労組は区から提案を受けて闘争委員会を立ち上げた。組合員全員が組織、渉外、教宣、理論、記録の5つの班のどれかに所属しているという。
 決めるのも、何をするのも全員参加で運営しているし、専門員として採用されればほぼ全員が組合に加盟するという。
 組合結成は1998年3月4日で約21年前。80年代後半から非常勤職員の雇い止めが相次ぎ、さらには当局が5年雇い止めをちらつかせてきた故の結成だという。

 結成当時は練馬の区立図書館職員の半数以上は正規の区職員だったが、退職不補充などにより次々に図書館専門員(当初は協力員と呼ばれた)に置き換えられ、さらに2006年、新設館を皮切りに指定管理者制度が導入され、民間委託が進められてきた。

 二人が所属する直営の練馬図書館は現在、職員全35人のうち、司書資格を持つ非常勤職員32人が蔵書管理や窓口対応などの専門業務を担っている。
 区内最初の図書館で、世田谷区と並ぶトップの貸出数がある練馬区で区内第二の貸出数があると同時に、図書館利用者が情報・資料などを求めた際に、図書館員が必要とされる資料を提供するレファレンス担当館の機能を有している。
 さらに同じく直営の光が丘図書館では、通常の選書のほか、指定管理者が運営する他の区内9館の選書や蔵書チェック、運営状況のモニタリングも担当している。
 「本が大好きだからできる仕事ですし、誇りをもっています」と二人は自信をもって言い切った。

 ◆ 直営館が全図書館を支える

 練馬の直営図書館3館は、常勤職員主体の「石神井」と図書館専門員32名がすべての専門業務を担当する「練馬」、そしてカウンター業務こそ民間委託しているが他の委託館9館の管理業務も行っている専門員25名の「光が丘」であり、それらが連携し、長期的な視点をもって練馬区全体の図書館の質の維持・向上や現場のノウハウに、行政が責任をもって運営する「3館体制」をつくり上げてきた。
 その成果もあって練馬区の図書館を通じての本貸し出し数は全国のトップテンにも入っている。したがってこれまでの経過及び大きな実績と成果をすべて壊そうという今回の提案を組合は決して認めるわけにはいかなかった。

 当局は「民間に任されるものは民間へ」と繰り返すだけで、専門員の処遇も学校図書館への「任用替え」という提案であった。
 「私たちは公共図書館で働くために今の仕事に就いています。学校図書館は専門性はあるがまったく違う仕事になります。公共図書館で働けなくなら辞めるという仲間は多いはずで、その提案自体が雇い止めに等しく絶対に認められません」とキッパリ否定する。
 とにかく組合員は練馬区の区民図書館が大好きで仕事をしているのだ。
 したがってこの提案に対しては最初から厳しい闘いになるだろうと予測し、ストライキをもってでも絶対にはね返していくと決意した。
 もちろんストライキに至る前にできるかぎりの反対の意思表示を行うこととした。

 多くの自治体の組合は区議会に対しては労使自治の立場から表面上コンタクトを避ける傾向にある。しかし組合は区議会「指定管理者制度導入の撤回を求める陳情書名」を集め積極的に訴えた。
 この署名には、区職労や区内の労組に加え、図書館利用者や区内の市民団体、全国の図書館関係者など1万6421筆が短期間で集められた。
 「重視したのは区議会各会派へのお願い行動で、何度も足を運び、電話でも訴えました」と苦笑したが、この事実上のロビー活動も効果的だったかもしれない。

 様々な区内の市民団体も熱い支援を寄せてくれた。
 「よりよい練馬区の図書館をつくる会」とは共同で学習会「図書館はだれのもの〜練馬区の図書館の現状から考える〜」を開催したし、古い歴史をもつ「ねりま地域文庫読書サークル連絡会」は独自に「経験や知識の豊富な区職員によるカウンター業務の存続」を求める陳情書を提出してくれた。
 「私たち組合員は、他の区や指定管理者の元で仕事をしていたメンバーが多くいます。したがって指定管理館の弱点など練馬の直営館との違いはよく理解できるし、これを守りたいと切実に感じています」

 もっとも図書館専門員の給与は、直営にしても実に低い何年勤続(練馬には勤続20年のベテランが多数いる)していようが月額19万8千円で、岩村さんのように主任になればプラス2万8千円が加えられるが「一人暮らしでギリギリの生活です。他区でしたが同じ頃に新卒で入局した正規の方がいて、はじめは同じぐらいの給与でも、1〜2年でどんどん差がつき、今は半分以下かもしれません」と苦笑する。
 もちろん図書館司書として常勤職員と仕事の内容はほぼ同一である

 「主任制度も組合の先輩たちががんばって獲得した成果で、これが賃上げの代わりかもしれません。ただ練馬には勤続制限はありません(主任は5年毎に試験)。1年毎の契約ですが何年でも働くことができます。他区や民間では雇い止め制度がまだまだ多く、試験制度もあって合格しなければ落とされてしまうことも。私が前にいた区では求人サイトをいつも見る生活でした。練馬では安心して働き続けることができます。これも組合の成果です」と岩村さん。

 ◆ SNSで拡がった支援

 7月の提案以来交渉を重ねたが当局の対応はほとんど変化が無く、いよいよストライキも視野に入れて闘争態勢が組まれ始めた。
 当然ながら誰もストライキの経験者はいない。闘争委員会理論班の出番として、三澤さんも協力し全労協全国一般東京労組のNTT関連労組の方にレクチャーしてもらうなど対策を重ねた。
 提案では誰も反対しなかったが、やはり不安を感じた仲間もいた。
 バックアップしたのは練馬区職労で、三澤さんと共に委員長も専門員労組の特別執行委員となり団交にも出席する。都内の多くの区職労は大きく組織人員を減少させているが、練馬は正規職員のほとんどは自治労に加盟している組合員だ。
 もちろん他の区役所同様、現業職をターゲットとする退職不補充・採用停止、民間委託などの攻撃はあり、そこでの労働組合づくりや共闘、未だ実現できていない公契約条例制定なども大きな課題となっている。
 「今も頑張っている学校現業の直営化と同時にこの図書館専門員の課題は、練馬に2千人いるとされる非常勤職員に労働運動の影響力が発揮できるかどうかの試金石かもしれません」と三澤さん。

 そして、ストライキ戦術を成功させた力は何よりも57名の団結力だった。勤続が長い諸先輩がいることもあるが、全員が持ち回りで執行委員など役員を務め、機関紙も定期的に発行している。ランチミーティングや諸会議で報告し合い、できる限り情報は共有していくことになっている。
 さらには組合活動にSNSが活用されている。
 ある組合員のツイッターには「ペーパーを作ったり、電話取材にこたえたり、手分けしています。手元に資料が無かったりして迷うと、『全員ライン』『全員メール』に載せるのです。たちどころに欲しい答えが返ってきます。これはすごいことだ、と感動します」とあった。

 このSNS活用は闘いでも大きな威力を発揮した。組合員有志の個人ツイッターをはじめ、組合を支援してくれる区議会議員や組合の活動に共鳴し図書館を守ろうとの声がSNSでどんどん拡がっていった。
 組合がストライキにむけて作った斬新なビラ「図書館司書のストライキ The Librarians STRIKE」はそのまま多くのツイッターに添付された。それが多くのメディアも動かし、取り上げられ、さらにSNSによる支援が大きく拡がり、組合員を励まし、うねりとなっていった。

 スト前日の12月18日、ギリギリの交渉の中で「図書館専門員を解雇する考えはない」など4項目の区側回答を引き出した。組合は一定の前進があったとしてストを回避し、19日の練馬図書館前でのスト集会は「スト延期報告集会」になった。
 報告集会には区内や北部地域の全労協などの労働組合、自治労都本部東京清掃労組に加え、支援する市民も多数参加し、200名も結集した。
 練馬図書館OBで「東京の図書館をもっとよくする会」の大澤正雄さんは「区は金がほしいから民営化を進めようとしているが、教育はお金じゃない。人を育てることを民間に預けてはならない!」と訴えた。

 ◆ 本を愛しているからこそ

 組合は「当局の回答は指定管理の撤回ではありません。とりあえずのストライキの延期であり、引き続き交渉をしていくとの態度ですので闘いはまだまだ続きます」「ストをやめたのは私たちの優しさだと思って欲しい」と言う。
 「光が丘図書館のカウンター業務は重要だと思うとの発言があり、私たちの仕事をやっと認めてくれた感触がもてました。これで同じテーブルで交渉できるという段階であり、これからが本番です」と意思統一をしている。

 ストを構えて嬉しいことも多々あった。組合員からは「家族から思いもかけず“頑張れよ”と褒められ驚きました」「知らなかったけど自分の親も労働組合で活動した時期があったそうです」との声もあった。

 「練馬区のことだけではなく、いま図書館で何が起きているのか、指定管理者制度とは何なのか、私たちのストライキをきっかけとして報道され、知ってもらったことも大きな成果だと思います」
 「今回このように闘えたのは労働組合があったからだと言われます。しかし、指定管理館で働く仲間と分断されていては、いつまで経っても状況は変わりません。みんなで良くならなければ図書館は維持できないと思います。これは正規・非正規の問題でも同じでしょう」
 「日常の組合活動だと、内側に眼が向きがちですが、ストライキとなると外に発信していく大きな力が発揮されることを知りました。初めての経験をいっぱいしましたが、今後は支援してくれた皆さん以上に多くの方に図書館とそこで働く労働者の存在を訴えていきたい。そして子どもたちが、もっともっと本を読む図書館をつくっていきたいですね。そうすれば本を買う大人にもなり、出版業界も活性化し、さらにいい本が増えていく。目先の3年とか5年とか、指定管理とかいうよりも、100年先の人々に伝えられる図書館をつくっていきたいですね」
 と、今後の決意を語る眼がキラキラと輝いていた。

『労働情報 No978』(2019.2)

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