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2008年
4.17 名古屋高等裁判所判決

自衛隊のイラク派兵差止等請求控訴事件
 
 
平成20年4月17日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
 平成18年(ネ)第499号 自衛隊のイラク派兵差止等請求控訴事件
  (原審・名古屋地方裁判所平成16年(ワ)第695号、同第1458号、同第2632号、同第4887号、平成17年(ワ)第2956号)
口頭弁論終結日 平成20年1月31日

判           決

        当事者の表示     別紙当事者目録記載のとおり
主           文
1 本件控訴をいずれも棄却する。    
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人ら
(1) 原判決を取り消す。
(2)別紙当事者目録別紙控訴人目録2記載の控訴人ら(以下「控訴人池住ら」という。)の請求
ア 被控訴人は、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法(以下「イラク特措法」という。)により、自衛隊をイラク及びその周辺地域並びに周辺海域に派遣してはならない。
イ 被控訴人がイラク特措法により、自衛隊をイラク及びその周辺地域に派遣したことは、違憲であることを確認する。
(3) 控訴人ら全員(別紙当事者目録別紙控訴人目録1に記載)の請求
    被控訴人は、控訴人らそれぞれに対し、各1万円を支払え。
(4)訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。

2 被控訴人
    主文と同旨

第2 事案の概要
1 本件は、被控訴人がイラク特措法に基づきイラク及びその周辺地域に自衛隊を派遣したこと(以下「本件派遣」という。また、以下、イラク共和国及びその周辺地域のことを単に「イラク」ということがある。)は違憲であるとする控訴人らが、本件派遣によって平和的生存権ないしその一内容としての「戦争や武力行使をしない日本に生存する権利」等(以下、一括して「平和的生存権等」ということがある。)を侵害されたとして、国家賠償法1条1項に基づき、各自それぞれ1万円の損害賠償を請求するとともに(以下「本件損害賠償請求」という。)、控訴人池住らにおいて、本件派遣をしてはならないこと(以下「本件差止請求」という。)及び本件派遣が憲法9条に反し違憲であることの確認(以下「本件違憲確認請求」という。)を求めた事案である。
 原判決は、控訴人池住らの本件差止請求及び本件違憲確認請求にかかる訴えは不適法であるとして訴えを却下し、控訴人らの本件損害賠償請求については請求を棄却したところ、控訴人らが控訴した。

2 前提事実(公知の事実、当裁判所に顕著な事実等)
(1) 平成15年7月26日、第156回国会において、4年間の時限立法であるイラク特措法(平成15年法律第137号)が可決成立し、同年8月1日、公布、施行された。
(2) 内閣は、平成15年12月9日、同法に基づく人道復興支援活動又は安全確保支援活動(以下「対応措置」という。)に関する基本計画(以下単に「基本計画」ということがある。)を閣議決定した。
(3) 防衛庁長官(平成18年12月法律118号による改正以前。以下同様。)は、基本計画に従って、対応措置として実施される業務としての自衛隊による役務の提供について実施要項を定め、これについて内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊に準備命令を発するとともに、航空自衛隊先遣隊に派遣命令を発して、これを同月26日からイラク、クウエート国(以下「クウエ−ト」という。)へ派遣し、その後、陸上自衛隊に派遣命令を発して、これを平成16年1月16日からイラク南部ムサンナ県サマワに派遣するなど、自衛隊をイラクに派遣した。
(4)  陸上自衛隊は、平成18年7月17日、サマワから完全撤退した。しかし航空自衛隊は、その後、クウェートからイラクの首都バグダッド等へ物資・人員の空輸活動を継続している(平成18年8月に基本計画の一部変更を閣議決定)。
(5)  平成19年6月20日、第166回国会において、イラクヘの自衛隊派遣を2年間延長することを内容とする改正イラク特措法(平成19年法律第101号)が可決成立し、現在も航空自衛隊の空輸活動が行われている。

3 当事者の主張
    別紙のとおり

第3 当裁判所の判断

1 当裁判所も、控訴人池住らの本件違憲確認請求及び本件差止請求にかかる訴えはいずれも不適法であるから却下すべきであり、控訴人らの本件損害賠償請求はいずれも棄却すべきであると判断するが、その理由は以下のとおりである。

2 本件派遣の違憲性について
(1)  認定事実
 公知の事実、当裁判所に顕著な事実に加え、証拠(各箇所に掲記のもの)及び弁論の全趣旨を総合すれば、以下の事実が認められる。

ア イラク攻撃及びイラク占領等の概要

(ア) 平成15年3月20日、イラクのサダム・フセイン政権(以下「フセイン政権」という。)が大量破壊兵器を保有しており、その無条件査察に応じないことなどを理由として、国際連合(以下「国連」という。)の決議のないまま、アメリカ合衆国(以下「アメリカ」という。)軍、英国(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)軍を中心とする有志連合軍がイラクヘの攻撃を開始した(以下、これを「イラク攻撃」という。)。
これにより、間もなくフセイン政権が崩壊し、同年5月2日、アメリカのブッシュ大統領がイラクにおける主要な戦闘の終結を宣言した。

(イ) フセイン政権の崩壊後、アメリカ国防総省・復興人道支援室(Office of Reconstruction and manitarian Assistance。 以下「ORHA」と略称する。)がイラクを統治し、平成15年5月、国連の安全保障理事会(以下「安保理」という。)決議1483号(加盟国にイラクでの人道、復旧・復興支援並びに安定及び安全の回復への貢献を要請するもの)が採択されたことを受け、アメリカを中心とする連合国軍暫定当局(Coalition Provisiona1 Authority。以下「CPA」と略称する。)がORHAからイラクの統治を引き継いだ。
なお、イラク特措法は、この国連安保理決議1483号を踏まえ、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動を行うものとして(同法1条)、同年7月に制定されたものである。

(ウ) 平成16年6月1日、イラク暫定政府が発足し、同月9日、国連安保理において決議1546号が全会一致で採択され(イラク暫定政府設立の是認、占領の終了及びイラクの完全な主権の回復の歓迎、国連の役割の明確化、多国籍軍の任務の明確化等を内容とする。)、同月28日には、CPAから主権移譲が行われた。これに伴い、多国籍軍が発足し、この多国籍軍に日本の自衛隊も参加することになった。

(エ) その後、平成17年1月30日、イラク暫定国民議会の議員を選出する選挙が実施され、同年4月28日、移行政府が発足した。同年8月28日、イラク国民議会でイラク新憲法草案が採択され、同年10月15日に同憲法草案の国民投票が実施され、同月25日までの開票の結果、これが承認された。同年12月15日、新憲法下でイラク国民議会の選挙が実施され、平成18年5月20日には、イラクにイスラム・シーア派(以下単に「シーア派」という。)のマリキ首相を首班とする正式政府が発足して、これによりイラクは主権を回復した。しかしその後も、イラク政府の要請により、多国籍軍がイラクに駐留している。

(オ) もっとも、当初のイラク攻撃の大義名分とされたフセイン政権の大量破壊兵器は、現在に至るまで発見されておらず、むしろこれが存在しなかったものと国際的に理解されており、平成17年12月には、ブッシュ大統領自身も、大量破壊兵器疑惑に関する情報が誤っていたことを認めるに至っている。

(カ) イラク攻撃開始当初の有志連合軍及びCPAからの主権委譲後の多国籍軍に参加したのは、最大41か国であり、いわゆる大国のうち、フランス共和国、ロシア連邦、中華人民共和国、ドイツ連邦共和国等は加わっておらず、イラク攻撃への国際的な批判が高まる中、参加国も次々と撤収し、現在(当審における口頭弁論終結時)の参加国は、アメリカ、英国及び我が国を含めて21か国となっている。

イ イラク各地における多国籍軍の軍事行動

(ア) ファルージャ
 イラク中部のファルージャでは、平成16年3月、アメリカ軍雇用の民間人4人が武装勢力に惨殺されたことから、同年4月5日、武装勢力掃討の名の下に、アメリカ軍による攻撃が開始され、同年6月以降は、間断なく空爆が行われるようになった。
 同年11月8日からは、ファルージャにおいて、アメリカ軍兵士4000人以上が投入され、クラスター爆弾並びに国際的に使用が禁止されているナパーム弾、マスタードガス及び神経ガス等の化学兵器を使用して、大規模な掃討作戦が実施された。残虐兵器といわれる白リン弾が使用されたともいわれる。これにより、ファルージャ市民の多くは、市外へ避難することを余儀なくされ、生活の基盤となるインフラ設備・住宅は破壊され、多くの民間人が死傷し、イラク暫定政府の発表によれば、死亡者数は少なく見積もって2080人であった。

(イ) 首都バグダッド
a 平成16年6月のイラク暫定政府発足後、首都バグダッドにおいて、政府高官を狙った自爆攻撃等が相次いで多数の者が死傷し、武装勢力による多国籍軍に対する攻撃も相次ぎ、同月27日及び同年7月末、いずれもバグダッド空港離陸直後にC130輸送機が銃撃を受け、アメリカ人とオーストラリア人の乗組員2人が死亡した。また、平成17年1月30日には、バグダッド近郊を低空で飛行していた英国軍のC130輸送機が、武装勢力(アンサール・イスラム=イスラムの支援者が実行の声明を発したが、実際はイスラム・スンニ派(以下単に「スンニ派」という。)の武装組織ともいわれる。)により撃墜され、乗員全員(少なくとも10人)が死亡する事件が生じた。さらに、バグダッドでは、多国籍軍と武装勢力との衝突が頻繁に生じていた。 このような事態を受けて、多国籍軍は、バグダッドにおいて、武装勢力に対する大規模な掃討作戦を展開するに至った。
 b 平成17年5月29日、アメリカ軍約1万人、イラク軍約4万人を動員して大規模な掃討作戦が行われた。しかし、武装勢力を掃討することはできず、却ってバグダッドの治安が悪化した。そこで、多国籍軍は、バグダッド及びその周辺における掃討作戦を強化させ、平成18年8月からはアメリカ兵約1万5000人をバグダッドに集中させて、掃討作戦を行うなどした。
 c 多国籍軍は、バグダッド市内において宗派対立等による武装勢力同士の衝突が激しくなったことを受けて、平成18年末ころからこれらに対する掃討作戦を実施して、その回数を増やし、アメリカ軍もこのころイラク駐留軍を増派した。アメリカ軍は、平成19年1月22日、イラク治安部隊と共同で行った過去45日間の掃討作戦の結果を発表したが、この発表によれば、シーア派民兵に対して52回、スンニ派民兵に対して42回の掃討作戦を実施し、シーア派の強行派といわれるムクタダ・サドル師派(以下「サドル師派」という。)の民兵600人を拘束したものであった。同月24日には、バグダッド中心部のハイファ通りでスンニ派に対して猛攻撃を加え、同日だけで30人を殺害した。
 d 同年2月14日、アメリカ軍は、イラク治安部隊とともに、合計9万人を投入して、イラク戦争開始以来最大規模の作戦といわれ「法の執行作戦」と名付けられた掃討作戦をバグダッドにおいて実施し、多数の一般市民が犠牲となった。
 e アメリカ軍は、同年8月8日、バグダッドのシーア派居住区であるサドル・シティを空爆し、イランからの爆弾輸送に関与していた武装勢力30人を殺害したと発表したが、イラク警察は、女性や子どもを含む11人が死亡したと発表している。同年9月6日には、バグダッドのマンスール地区を空爆したが、その中でもサドル師派の民兵が活動し、シーア派住民が多いワシャシュ地域を攻撃し、少なくとも14人が死亡した。同年10月21日には、サドル・シティを攻撃し、市民13人が死亡した。
 f このように、アメリカ軍を中心とする多国籍軍は、時にイラク軍等と連携しつつ掃討作戦を行い、特に平成19年に入ってから、バグダッド及びその周辺において、たびたび激しい空爆を行い、同年中にイラクで実施した空爆は、合計1447回に上り、これは前年の平成18年の約6倍の回数となるものであった。
 g アメリカ軍は、平成20年1月8日から、イラク軍とともに、イラク全土で大規模な軍事作戦「ファントム・フエニックス」を開始し、同月10日からは、その一環として、バグダッド南郊において大規模な集中爆撃を行い、40箇所に爆弾を投下した。

(ウ) その他の地域
 多国籍軍は、平成16年中に、イラク国内の、マハムディヤ、マッサーラ、ラマディ、モスル等において、1000人規模の兵士を投入した掃討作戦を実施した。特に、モスルでは、同年11月14日から、大規模な掃討作戦を実施し、平成17年1月8日、アメリカ軍のF16戦闘機が500トンの爆弾を投下し、民家を爆撃して住民5人が死亡した。 多国籍軍は、平成17年には、カイム、ハディーサ、タルアファル等において、大規模な掃討作戦を実施し、同年9月10日のタルアファルでの攻撃にはアメリカ軍及びイラク治安部隊併せて約8500人が動員された。同年10月16目、スンニ派の地域といわれるラマディにおいて空爆を行い、武装勢力70人を殺害したと発表したが、実際は少なくとも39人が一般市民であったとも報じられている。
 平成19年8月には、アメリカ軍がイラク中部のサマラにおいて、武装勢力からの攻撃を受けた後に民家をミサイルで爆撃し、女性2人、子ども5人が死亡した。

ウ 武装勢力について

(ア) ところで、多国籍軍による上記のような掃討作戦の対象となったことがあると認められる武装勢力には、思想や宗派を問わず様々なものがあるが、有力な武装勢力として、少なくとも次のものが認められ、互いに協力又は対立の関係に立ちつつ、時として海外の諸勢力から援助を受けつつ、その活動を行っているものと認められる。

 a フセイン政権の残党
 平成15年5月のブッシュ大統領による主要な戦闘終結宣言の後にも、イラク国内には、旧フセイン政権の軍人等からなる反政府武装勢力が残存しており、その実体は不明な点が多いが、海外に拠点を置きつつ、イラク国内においてゲリラ戦を行っているとみられる。平成16年4月及び同年11月になされたファルージャにおける掃討作戦では、実はこの反政府武装勢力が対象であったともいわれており、現在も、スンニ派の一部と連携し、バグダッド市内の一部を実質支配していると見られている。

 b シーア派のサドル師派
フセイン政権崩壊後、シーア派強硬派のムクタダ・サドル師が率いる民兵組織「マフディー軍」が、各地で多国籍軍と武力衝突しており、 特にイラク中部のナジャフにおいて、平成16年8月、戦車やヘリコプターを用いた大規模な武力衝突が生じたとされている。サドル師派においては、社会福祉事業、交通警備等の公共事業の場で自発的に労働する150万人のイラク人を動員できるとの報告もあり、日本においても、同年4月の時点で、内閣法制局が、当時の福田内閣官房長官に対し、マフディー軍を「国に準じるもの」に該当する旨報告していた。
なお、シーア派には、フセイン政権時代から反フセイン・ゲリラ部隊を有しており、現在はマリキ政権を支える最大組織「イラク・イスラム革命最高評議会」があり、サドル師派との間で宗派内対立の状況にある。

 c スンニ派武装組織
シーア派に対抗するスンニ派にも反米、反占領を掲げる武装組織があり、特に、その中のアンサール・アル・スンナ軍は、イラク西部のラマデイやヒートを中心とするスンニ派住民の多いアンバル州一帯を拠点とし、アメリカ軍やイラク軍に兵器で敵対するほか、シーア派やクルド人を襲撃するなどの過激な武力闘争を展開している。平成17年5月に日本人を拘束したのも、アンサール・アル・スンナ軍であるといわれている。

(イ) 武装勢力の兵員数について
 イラクにおいて反政府武装勢力とされる者らの人数は、平成15年11月に5000人、16年11月に2万人、17年11月に2万人、l8年11月に2万5000人、シーア派民兵の数は、平成15年11月に5000人、16年11月に1万人、17年11月に2万人、18年11月に5万人といわれ、年々増加している。

(ウ) 武装勢力の用いたとされる強力兵器について 
  現地においては、次のような内容の報道がなされている(なお、以下の武器を使用したとされるのが、具体的にどの武装勢力であるかは、証拠上必ずしも明らかではない。)。
 a ファルージャにおける平成16年11月の掃討作戦においては、武装勢力の側においても、多連型カチューシャ・ロケットの架台を積んだ車両を用い、ファルージャに近いカルマとサクラーウィーヤにおいて、グラーダやリーリク・ミサイル約160発をアメリカ軍の集結地に発射した。
 b 平成16年11月21日午前8時15分ころ、バグダッドの北方のパラドにあり、アメリカ兵2500人が駐留するバクルアメリカ軍基地に、化学物質の弾頭を装備したロケット弾4発を打ち込まれ、アメリカ兵270人以上が死亡した。抵抗勢力は、過去にもハバーニーヤハドバ、ラマディ、モスル、ドウェイリバの各アメリカ軍基地の攻撃に化学兵器を使用した。
 c イスラム抵抗勢力の報道官は、平成16年12月15日、ファルージャにおいて敗走するアメリカ兵を、軽火器とBKS、クラシニコフ銃、RBG携行型ロケットを遣って追撃した、本日少なくとも500人のアメリカ兵を殺害し、100両以上の戦車と装甲車を破壊したと述べた。

エ 宗派対立による武力抗争

(ア) 平成18年2月、スンニ派のテロ組織がシーア派聖地サーマッラーのアスカリ廟を爆破し、シーア派・スンニ派の両派が抗議デモを起こしたが、聖廟破壊に怒ったシーア派武装勢力がスンニ派のモスクなどを襲撃して衝突し、200人以上が死亡する事件が起こった。

(イ) 平成18年11月ころには、首都バグダッドでシーア派とスンニ派との対立が激化し、街を二分して双方から迫撃砲が飛び交う状況となり、マフディ軍がスンニ派地区へ迫撃砲を同月初旬の1週間に47発撃ち込み、スンニ派武装勢力のイラク・イスラム軍が、シーア派地区に迫撃砲44発、ロシア製ミサイル4発を打ち込んだ。
また、同月から12月にかけて、バグダッドのシーア派地区で連続爆弾テロが発生し、マフディ軍が治安維持に乗り出してテロは収まったものの、アメリカ軍がマフディ軍をアルカイダ以上の脅威とみなして、本格的に掃討を進め、民兵600人と幹部16人を拘束した。そこで、平成19年1月になってマフディ軍が一時活動を停止したところ、その隙を狙ってスンニ派の武装勢力がシーア派地区で爆弾テロを繰り返し、同年2月3日、バグダッドの市揚でテロが発生し、135人の死者が出た。

(ウ) フセイン政権下では、暴力的な宗派対立は殆どなかったが、フセイン政権の崩壊により重しが取れ、占領政策の稚拙さとも相俟って、上記のような武力抗争を伴う激しい宗派対立が生じるようになったものといわれており、多国籍軍はこれらに対応せざるを得ず、前記のとおり、特に平成19年になってから、バグダッド等の都市への掃討作戦がー層激しくなったものと理解される。

オ 多数の被害者

(ア) イラク人
 世界保健機関(WHO)は、平成18年11月9日、イラク戦争開始以来、イラク国内において戦闘等によって死亡したイラク人の数が15万1000人に上ること、最大では22万3000人に及ぶ可能性もあることを発表し、イラク保健省も、このころ、アメリカ軍侵攻後のイラクの死者数が10万人から15万人に及ぶと発表した。なお、平成18年10月12日発行の英国の臨床医学誌ランセットは、横断的集落抽出調査の結果を基にして、イラク戦争開始後から平成18年6月までの間のイラクにおける死者が65万人を超える旨の考察を発表している。
 平成19年の死亡者については、NGO「イラク・ボディ・カウント」が同年中の民間人犠牲者数は約2万4000人に上っていると発表した。イラク政府発表の死亡者数も、同年6月1241人、同年7月1652人、同年8月1771人であることからして、上記約2万4000人という死亡者数は信憑性が高いといわれている。
また、イラクの人口の約7分の1にあたる約400万人が家を追われ、シリアには150万人ないし200万人、ヨルダンには50万人ないし75万人が難民として流れ、イラク国内の避難民は200万人以上になるといわれている。

(イ) アメリカ軍の兵員等
 平成19年8月の時点で多国籍軍の兵士の死者数が4000人を超えたと報道され、アメリカ国防総省の発表によれぱ、イラク戦争開始以来現在までのアメリカ軍の死亡者は、約4000人であり、重傷者は1万3000人を超えている。特に平成19年に死亡した米軍兵士は、同年11月の時点で852人に上り、それまで最も多かった平成16年の849人を超えて、過去最高となっている。

カ 戦費・兵員数
イラク攻撃開始後、イラク駐留アメリカ軍の兵員数は概ね13万人から16万人の間で推移しており、アメリカのイラクにおける戦費は4400億ドルに達する見込みであり、イラク関連の歳出としてはベトナム戦争の戦費(貨幣価値換算で約5700億ドル)を上回ったともいわれている。

キ 航空自衛隊の空輸活動

(ア) 輸送機について
航空自衛隊は、イラクにおける輸送活動にC−130H輸送機3機を用いているが、これはアメリカ軍が開発したパラシュート部隊のための輸送機であり、その輸送能力については、完全武装の空挺隊員(パラシュート隊員)64人を輸送することが可能であり、物資については最大積載量が約20トンである。

(イ) フレアの装備と事前訓練
 後記のとおり、現在、航空自衛隊のC−130H輸送機は、バグダッド空港への輸送活動を行っているが、飛行の際に地対空ミサイルを回避するための兵器であるフレア(火炎弾)を臨時装備しており(フレアは制式兵器ではない。)、イラクヘの出発前、硫黄島においてフレア訓練を実施しており、実際にバグダッド空港での離着陸時にフレアが自動発射されている。

(ウ) 空輸活動についての多国籍軍との連携
 航空自衛隊は、C−130H輸送機3機の空輸活動にあたり、中東一帯の空輸調整を行うカタール国(以下「カタール」という。)のアメリカ中央軍司令部に空輸計画部を設置し、アメリカ軍や英国軍と機体のやりくりを調整して飛行計画を立て、クウェ−トのアリ・アルサレム空港(アメリカ空軍基地)を拠点とする上記3機に任務を指示している。

(エ) 平成18年7月ころ(陸上自衛隊のサマワ撒退時)までの空輸状況
 航空自衛隊のC−130H輸送機は、平成16年3月2日から物資人員の輸送を行っているところ、クウェ−トのアリ・アルサレム空港からイラク南部のタリルまで、週に4回前後、物資のほかアメリカ軍を中心とする多国籍軍の兵員を輸送した。その数量は、平成17年3月14日までに.輸送回数129回、輸送物資の総量230トン、平成18年5月末までに.輸送回数322回で、輸送物資の総量449.2トン、同年8月4日までに、輸送回数352回、輸送物資の総量479.4トンとなる。したがって、輸送の対象のほとんどは、人道復興支援のための物資ではなく、多国籍軍の兵員であった。

(オ) 平成18年7月から現在までの空輸状況
 航空自衛隊のイラク派遣当初は、首都バグダッドは安全が確保されないとの理由で、バグダッドヘは物資人員の輸送は行われなかったが、陸上自衛隊のサマワ撤退を機に、アメリカからの強い要請により、航空自衛隊がバグダッドヘの空輸活動を行うことになり、平成18年7月31日、航空自衛隊のC−130H輸送機が、クウェートのアジ・アルサレム空港からバグダッド空港への輸送を開始した。以後、バグダッドヘ2回、うち1回は更に北部のアルビルまで、タリルヘは2回、それぞれ往復して輸送活動をするようになり、その後、週4回から5回、定期的にアリ・アルサレム空港からバグダッド空港への輸送を行っている。
 平成18年7月から平成19年3月末までの輸送回数は150回、輸送物資の総量は46.5トンであり、そのうち国連関連の輸送支援として行ったのは、輸送回数が25回で、延べ706人の人員及び2.3トンの事務所維持関連用品等の物資を輸送しており(平成19年4月24日衆議院本会議腸における安倍首相の答弁)、それ以外の大多数は、武装した多国籍軍(主にアメリカ軍)の兵員であると認められる。

(カ) 政府の情報不開示と政府答弁
 a 政府は、国会において、航空自衛隊の輸送内容について、多国籍軍や国連からの要請により、これを明らかにすることができないとしており(平成19年5月11日、同月14の衆議院イラク特別委員会における久間防衛大臣の答弁)、行政機関の保有する情報の公開に関する法律により国民からなされた行政文書開示請求に対しても、顕微鏡・心電図・保育器などの医療機器を空輸した1件以外は、全て黒塗りの文書を開示するのみで、航空自衛隊の輸送内容を明らかにしない。
 b 他方で、久間防衛大臣は、国会において、「実は結構危険を工夫して飛んでいる」(平成19年5月14日衆議院イラク特別委員会)「刃の上で仕事しているようなもの」(同年6月5日参議院外交防衛委員会)「バグダッド空港の中であっても、外からロケット砲等が撃たれる、迫撃砲等に狙われるということもあり、そういう緊張の中で仕事をしている」、「クウェ一トから飛び立ってバグダッド空港で降りる、バグダッド空港から飛び立つときにも、ロケット砲が来る危険性と裏腹にある」(同月7日参議院外交防衛委員会)、「飛行ルートの下で戦闘が行われているときは上空を含め戦闘地域の場合もあると思う」(同月19日参議院外交防衛委員会)、などと答弁している。

(2) 憲法9条についての政府解釈とイラク特措法

ア 自衛隊の海外活動に関する憲法9条の政府解釈は、自衛のための必要最小限の武力の行使は許されること(昭和55年12月5日政府答弁書)、武力の行使とは、我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為をいうこと(平成3年9月27日衆議院PKO特別理事会提出の政府答弁)を前提とした上で、自衛隊の海外における活動については、
① 武力行使目的による「海外派兵」は許されないが、武カ行使目的でない「海外派遣」は許されること(昭和55年10月28日政府答弁書)、
② 他国による武力の行使への参加に至らない協力(輸送、補給、医療等)については、当該他国による武カの行使とー体となるようなものは自らも武力の行使を行ったとの評価を受けるもので憲法上許されないが、一体とならないものは許されること(平成9年2月13日衆議院予算委員会における大森内閣法制局長言の答弁)
③ 他国による武力行使とのー体化の有無は、「ア」戦闘活動が行われているか又は行われようとしている地点と当該行動がなされる場所との地埋的関係、「イ」当該行動の具体的内容、「ウ」他国の武力行使の任に当たる者との関係の密接性、「エ」協力しようとする相手の活動の現況、等の諸般の事情を総合的に勘案して、個々的に判断されること(上記大森内閣法制局長官の答弁)、を内容とするものである。

イ そして、イラク特措法は、このような政府解釈の下、我が国がイラクにおける人道復興支援活動又は安全確保支援活動(以下「対応措置」という。)を行うこと(1条)、対応措置の実施は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならないこと(2条2項)、対応措置については、我が国領域及び現に戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為)が行われておらず、かつ、そこで実施される活勤の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められるー定の地域(非戦闘地域)において実施すること(2条3項)を規定するものと理解される。

ウ 政府においては、ここにいう「国際的な武力紛争」とは、国又は国に準ずる組織の間において生ずるー国の国内問題にとどまらない武力を用いた争いをいうものであり(平成15年6月26日衆議院特別委員会における石破防衛庁長官の答弁)、戦闘行為の有無は、当該行為の実態に応じ、国際性、計画性.組織性、継続性などの観点から個別具体的に判断すべきものであること(平成15年7月2日衆議院特別委員会における石破防衛庁長官の答弁)、全くの犯罪集団に対する米英軍等による実力の行使は国際法的な武力紛争における武力の行使ではないが(平成15年6月13日衆議院外務委員会における山本内閣法制局第二部長の答弁、同年7月2日衆議院イラク特別委員会、同月10日参議院外交防衛委員会における秋山内閣法制局長官の答弁)、個別具体的な事案に即して当該行為の主体が一定の政治的な主張を有し、国際的な紛争の当事者たり得る実力を有する組織体であって、その主体の意思に基づいて破壊活動が行われていると判断されるような場合には、その行為が国に準ずる組織によるものに当たり得ること(上記秋山内閣法制局長官の答弁)、国内治安問題にとどまるテロ行為、散発的な発砲や小規模な襲撃などのような、組織性、計画性、継続性が明らかでない偶発的なものは、全体として国又は国に準ずる組織の意志に基づいて遂行されているとは認められず、戦闘の行為には当たらないこと、国又は国に準ずる組織についての具体例として、フセイン政権の再興を目指し米英軍に抵抗活動を続けるフセイン政権の残党というものがあれば、これに該当することがあるが、フセイン政権の残党であったとしても、日々の生活の糧を得るために略奪行為を行っているようなものはこれに該当しないこと(平成15年7月2日衆議院特別委員会における石破防衛庁長官の答弁)、非戦闘地域イコール安全な地域を意味するわけではなく、米軍が指定するコンバットゾーンが戦闘地域と同義でもないこと(平成15年6月25日衆議院特別委員会における石破防衛庁長官の答弁、平成18年8月11日衆議院特別委員会における麻生外務大臣の答弁・甲B77の2)、等の見解が示されている。

(3) 以上を前提として検討するに、前記認定事実によれば、平成15年5月になされたブッシュ大統領による主要な戦闘終結宣言の後にも、アメリカ軍を中心とする多国籍軍は、ファルージャ、バグダッド、ラマディ等の各都市において、多数の兵員を動員して、時に強力な爆弾、化学兵器、残虐兵器等を用い、あるいは戦闘機で激しい空爆を繰り返すなどして、武装勢力の掃討作戦を繰り返し行い、武装勢力の側も、時としてこれに匹敵する強力な兵器を用い、あるいは相応の武器を用いて応戦し、その結果、双方に多数の死者が出るなどしてきているのみならず、子どもたちを含む民間人を多数死傷させ、民家を破壊し、都市機能を失わせ、多数の者が難民となって近隣諸国へ流出することを余儀なくさせるなどの重大かつ深刻な被害を生じさせているものである。そして、これら掃討作戦の標的となったと認められるフセイン政権の残党、シーア派のマフディ軍、スンニ派の過激派等の各武装勢力は、いずれも、単に、散発的な発砲や小規模な襲撃を行うにすぎない集団ではなく、日々の生活の糧を得るために略奪行為を行うような盗賊等の犯罪者集団であるともいえず、その全ての実体は明らかでないものの、海外の諸勢力からもそれぞれ援助を受け、その後ろ盾を得ながら、アメリカ軍の駐留に反対する等のー定の政治的な目的を有していることが認められ、千人、万人単位の人員を擁し、しかもその数は年々増えており、相応の兵力を保持して、組織的かつ計画的に多国籍軍に抗戦し、イラク攻撃関始後5年を経た現在まで、継続してこのような抗戦を続けていると認められる。したがって、これらを抑圧しようとする多国籍軍の活動は、単なる治安活動の域を超えたものであって、少なくとも現在、イラク国内は、イラク攻撃後に生じた宗派対立に根ざす武装勢力間の抗争がある上に、各武装勢力と多国籍軍との抗争があり、これらが複雑に絡み合って泥沼化した戦争の状態になっているものということができる。このことは、アメリカ軍がこの5年間に13万人から16万人もの多数の兵員を常時イラクに駐留させ、ベトナム戦争を上回る戦費を負担し、単発で非組織的な自爆テロ等による被害も含むとはいえ、双方に多数の死傷者を続出させながら、なお未だ十分に治安の回復がなされていないことに徴しても明らかである。
 以上のとおりであるから、現在のイラクにおいては、多国籍軍と、その実質に即して国に準ずる組織と認められる武装勢力との間で一国国内の治安問題にとどまらない武力を用いた争いが行われており、国際的な武力紛争が行われているものということができる。とりわけ、首都バグダッドは、平成19年に入ってからも、アメリカ軍がシーア派及びスンニ派の両武装勢カを標的に多数回の掃討作戦を展開し、これに武装勢力が相応の兵力をもって対抗し、双方及び一般市民に多数の犠牲者を続出させている地域であるから、まさに国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為が現に行われている地域というべきであって、イラク特措法にいう「戦闘地域」に該当するものと認められる。
なお、現在にまで及ぶ多国籍軍によるイラク駐留及び武装勢力との戦闘は、それがイラク政府の要請に基づくものであり、国連の理解ないし支持を得たものであるとしても(前記安保理決議集1483号、1546号等)、平成15年3月に開始されたイラク攻撃及びこれによってもたらされた宗派対立による混乱が未だ実質的には収束していないことの表れであるといえることや、現在のイラク政府が単独でこれら武装勢力と対抗することができないため、現在も敢えて外国の兵力である多国籍軍の助力を得ているものと理解できることに鑑みれば、多国籍軍と武装勢力との間のイラク国内における戦闘は、実質的には当初のイラク攻撃の延長であって、外国勢力である多国籍軍対イラク国内の武装勢力の国際的な戦闘であるということができ、この点から見ても、現在の戦闘状況は、国際的な紛争であると認められる。
しかるところ、その詳細は政府が国会に対しても国民に対しても開示しないので不明であるが、航空自衛隊は、前記認定のとおり、平成18年7月ころ以降バグダッド空港への空輸活動を行い、現在に至るまで、アメリカが空挺隊員輸送用に開発したC−130H輸送機3機により、週4回から5回、定期的にアリ・アルサレム空港からバグダッド空港へ武装した多国籍軍の兵員を輸送していること、これは陸上自衛隊のサマワ撤退を機にアメリカからの要請でなされているものであり、アメリカ軍はこの輸送時期と重なる平成18年8月ころバグダッドにアメリカ兵を増派し、同年末ころから、バグダッドにおける掃討作戦を一層強化していること、それ以前の空輸活動がカ夕−ルのアメリカ中央軍司令部において、アメリカ軍や英国軍と機体のやりくりを調整し飛行計画を立ててなされているものであり、平成18年7月以後も同様にアメリカ軍等との調整の上で空輸活動がなされているものと推認されること、C−130H輸送機には、地対空ミサイルによる攻撃を防ぐためのフレアが装備され、これが事前訓練を経た上で、実際にバグダッド空港での離着陸時に使用されていること、バグダッド空港はアメリカ軍が固く守備をしているとはいえ、その中にあっても、あるいは離着陸時においても、現実的な攻撃の危険性がある旨防衛大臣が答弁していること、航空自衛隊が多国籍軍の武装兵員を輸送するに際し、バグダッドでの掃討作戦等の武力行使に関与しない者に限定して輸送している形跡はないことが認められる。これらを総合すれば、航空自衛隊の空輸活動は、それが主としてイラク特措法上の安全確保支援活動の名目で行われているものであり、それ自体は武力の行使に該当しないものであるとしても、多国籍軍との密接な連携の下で、多国籍軍と武装勢力との間で戦闘行為がなされている地域と地理的に近接した場所において、対武装勢力の戦闘要員を含むと推認される多国籍軍の武装兵員を定期的かつ確実に輸送しているものであるということができ、現代戦において輸送等の補給活勤もまた戦闘行為の重要な要素であるといえることを考慮すれば(甲B161、当審における山田朗証人)、多国籍軍の戦闘行為にとって必要不可欠な軍事上の後方支援を行っているものということができる。
したがって、このような航空自衛隊の空輸活動のうち、少なくとも多国籍軍の武装兵員をバグダッドヘ空輸するものについては、前記平成9年2月13日の大森内閣法制局長官の答弁に照らし、他国による武力行使とー体化した行動であって、自らも武力の行使を行ったと評価を受けざるを得ない行動であるということができる。
(4) よって、現在イラクにおいて行われている航空自衛隊の空輸活動は、政府と同じ憲法解釈に立ち、イラク特措法を合憲とした場合であっても、武力行使を禁止したイラク特措法2条2項、活動地域を非戦闘地域に限定した同条3項に違反し、かつ、憲法9条1項に違反する活動を含んでいることが認められる。

3.本件差し止め請求等の根拠とされる平和的生存権について

憲法前文に「平和のうちに生存する権利」と表現される平和的生存権は、例えば、「戦争と軍備及び戦争準備によって破壊されたり侵害ないし抑制されることなく、恐怖と欠乏を免れて平和のうちに生存し、また、そのように平和な国と世界をつくり出していくことのできる核時代の自然権的本質をもつ基本的人権である。」などと定義され控訴人らも「戦争や武力行使をしない日本に生存する権利」、「戦争や軍隊によって他者の生命を奪うことに加担させられない権利」、「他国の民衆への軍事的手段による加害行為と関わることなく、自らの平和的確信に基づいて平和のうちに生きる権利」、「信仰に基づいて平和を希求し、すべての人の幸福を追求し、そのために非戦・非暴力・平和主義に立って生きる権利」などと表現を異にして主張するように、極めて多様で幅の広い権利であるということができる。
このような平和的生存権は、現代において憲法の保障する基本的人権が平和の基盤なしには存立し得ないことからして、全ての基本的人権の基礎にあってその亨有を可能ならしめる基底的権利であるということができ、単に憲法の基本的精神や理念を表明したに留まるものではない法規範性を有するというべき憲法前文が上記のとおり「平和のうちに生存する権利」を明言している上に、憲法9条が国の行為の側から客観的制度として戦争放棄や戦力不保持を規定し、さらに、人格権を規定する憲法13条をはじめ、憲法第3章が個別的な基本的人権を規定していることからすれば、平和的生存権は、憲法上の法的な権利として認められるべきである。そして、この平和的生存権は、局面に応じて自由権的、社会権的又は参政権的な態様をもって表れる複合的な権利ということができ、裁判所に対してその保護・救済を求め法的強制措置の発動を請求し得るという意味における具体的権利性が肯定される場合があるということができる。例えば、憲法9条に違反する国の行為、すなわち戦争の遂行、武力の行使や、戦争の準備行為等によって、個人の生命、自由が侵害され又は侵害の危機にさらされ、あるいは、現実的な戦争等による被害や恐怖にさらされるような場合、また、憲法9条に違反する戦争の遂行等への加担・協力を強制されるような場合には、平和的生存権の主として自由権的な態様の表れとして、裁判所に対し当該違憲行為の差止請求や損害賠償請求等の方法により救済を求めることができる場合があると解することができ、その限りでは平和的生存権に具体的権利性がある。
なお、「平和」が抽象的概念であることや、平和の到達点及び達成する手段・方法も多岐多様であること等を根拠に、平和的生存権の権利性や、具体的権利性の可能性を否定する見解があるが、憲法上の概念はおよそ抽象的なものであって、解釈によってそれが充填されていくものであること、例えば「自由」や「平等」ですら、その達成手段や方法は多岐多様というべきであることからすれば、ひとり平和的生存権のみ、平和概念の抽象性等のためにその法的権利性や具体的権利性の可能性が否定されなければならない理由はないというべきである。

4 控訴人らの請求について

(1) 控訴人池住らの本件違憲確認請求について

民事訴訟制度は、当事者間の現在の権利又は法律関係をめぐる紛争を解決することを目的とするものであるから、確認の対象は、現在の権利又は法律関係でなければならない。しかし、本件違憲確認請求は、ある事実行為が抽象的に違法であることの確認を求めるものであって、およそ現在の権利又は法律関係に関するものということはできないから、同請求は、確認の利益を欠き、いずれも不適法というべきである。

(2) 控訴人池住らの本件差止請求について
 ア 民事訴訟法としての適法性

イラク特措法は、対応措置を実施するための具体的手続として、①内閣総理大臣が対応措置の実施及び基本計画案につき閣議の決定を求めること(4条1項、基本計画の変更の場合も同様。同条3項)、 ②当該対応措置ついて国会の承認を求めなければならないこと(6条1項)、 ③防衛大臣は対応措置についての実施要項を定め、内閣総理大臣の承認を得た上で、自衛隊の部隊等にその実施を命ずること(8条2項。実施要項の変更の場合も同様。同条9項)を規定しているところ、これら規定からすれば、イラク特措法による自衛隊のイラク派遣は、イラク特措法の規定に基づき防衛大臣に付与された行政上の権限による公権力の行使を本質的内容とするものと解されるから、本件派遣の禁止を求める本件差止請求は、必然的に、防衛大臣の上記行政権の行使の取消変更又はその発動を求める請求を包含するものである。そうすると、このような行政権の行使に対し、私人が民事上の給付請求権を有すると解することはできないことは確立された判例であるから(最高裁昭和56年12月16日大法廷判決・民集35巻10号1369頁等参照)、本件差止請求にかかる訴えは不適法である。

イ 行政事件訴訟(抗告訴訟)としての適法性
そこで、仮に、本件差止請求にかかる訴えが、行政事件訴訟(抗告訴訟)として提起されたものと理解した場合について検討する。
 本件派遣は、前記のとおり違憲違法な活動を含むものであり、関係各証拠によれぱ、本件派遣が控訴人池住らに大きな衝撃を与えたものであることは認められる。しかしながら、本件派遣は控訴人池住らに対して直接向けられたものではなく、本件派遣によっても、日本において控訴人池住らの生命、自由が侵害され又は侵害の危機にさらされ、あるいは、現実的な戦争等による被害や恐怖にさらされ、また、憲法9条に違反する戦争の遂行等への加担・協力を強制されるまでの事態が生じているとはいえないところであって、全証拠によっても、現時点において、控訴人池住らの具体的権利としての平和的生存権が侵害されたとまでは認められない。
なお、控訴人五井泰弘は、本件派遣によってアフガニスタンで行っている自らのNGO活動に支障が生じ、また、アフガニスタン人の対日感情の悪化により生命身体の危険が高まった旨主張するが、アフガニスタンにおける控訴人五井泰弘のNGO活動への支障又は生命身体への危険が本件派遣によってもたらされたと認めるに足りる十分な証拠はなく、控訴人五井泰弘の平和的生存権が侵害されているとは認められない。
そうすると、控訴人池住らは、本件派遣にかかる防衛大臣の処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有するとはいえず、行政事件訴訟(抗告訴訟)における原告適格性が認められない。したがって、仮に本件差止請求にかかる訴えが行政事件訴訟(抗告訴訟)であったとしても、不適法であることを免れない。

(3) 控訴人らの本件損害賠償請求について
関係各証拠によれば、控訴人らは、それぞれの重い人生や経験等に裏打ちされた強い平和への信念や信条を有しているものであり、憲法9条違反を含む本件派遣によって強い精神的苦痛を被ったとして、本件損害賠償請求を提起しているものと認められ、そこに込められた切実な思いには、平和憲法下の日本国民として共感すべき部分が多く含まれているということができ、決して、間接民主制下における政治的敗者の個人的な憤慨、不快感又は挫折感等にすぎないなどと評価されるべきものではない。
しかしながら、控訴人池住らの本件差止請求に関して前述したのと同じく、本件派遣によっても、控訴人らの具体的権利としての平和的生存権が侵害されたとまでは認められないところであり、控訴人らには、民事訴訟上の損害賠償請求において認められるに足りる程度の被侵害利益が未だ生じているということはできない。
よって、控訴人らの本件損害賠償請求は、いずれも認められない。

第4 結論
 以上のとおりであって、原判決は結論においていずれも正当であるから、控訴人らの本件控訴をいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。

名古屋高等裁判所民事第3部       
裁判長裁判官  青山邦夫       
裁判官  坪井宣幸       
裁判官  上杉英司   
 


福島原発事故の国民負担は約11兆円 
2016/3/7

日本政府は福島原子力発電所事故の費用は東京電力が負担していると主張しているが、フィナンシャル・タイムズ紙(FT)の試算では、同事故による日本の納税者の負担は約1000億ドル(約11兆4000億円)になる。

 東日本大震災の津波で冷却用の電源を失い、東電の3機の原子炉で炉心溶融(メルトダウン)が起こってから5年がたとうとしているが、この額は日本国民が事故で発生した費用のほとんどを負担してきたことを示している

 これは民間の一企業に原発事故の膨大な費用を負担させることの難しさを浮き彫りにしている。

東電は全費用の20%を負担

 FTが用いたのは立命館大学の大島堅一教授の試算だ。同氏の試算ではこの事故でこれまでに掛かった費用は13兆3000億円だ。東電の株主が失った株式の価値を見ると、東電の株主が負担することになるのはこの内の20%だけだと分かる。
 大島教授は「(それ以外の)隠れたコストは主に国民が電気料金か税金の形で負担している」と話す。

 日本政府は原発事故の費用に関する数字を何一つ発表していない。だが、大島教授はこれまでで最も掛かった費用は企業や避難者に対する賠償金で6兆2000億円、次いで福島原発周辺の除染費用が3兆5000億円、そして、廃炉費用の2兆2000億円だ。

 賠償金と廃炉費用は東電が払っているが、同社は政府から支払い能力維持のための補助金をもらっている。理論的にはこれは東電やその他の原発事業者への賦課金として政府に戻ることになっているが、最終的にこれを負担するのは電力の使用者であることから、これは別の名目で国民から徴収する税金だといえる。

 また、4月1日から日本の電力市場で競争が自由化されるのに伴い、これまで通りの賦課金が維持できるかも疑問だ。東電の広瀬直己社長は最近のインタビューで、同社が福島第1原発の廃炉に充てる十分な収入を確保できると主張した。

 東電の負担状況を把握する一つの方法は株価を見ることだ。株価は過去の損失と市場が予想する今後のすべての負担を反映しているはずだ。東電の株式は原発事故前日の2011年3月10日以降2兆6000億円を失った。債権者は損失を被っていない

 このため、東電は全費用の20%をやや下回るほどしか負担しておらず、残りの10兆7000億円は納税者が負担する計算になる。これは概算で、日本の全原子炉の停止による費用は加味されていないため、この全費用と国民の負担は低めに見積もられている

 東電と財務省、経済産業省はこの試算についてのコメントを拒否した。政府関係者は東電が最終的には全費用を弁償することになると主張している。

By Robin Harding
(2016年3月7日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)


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 ▲ 都立高校卒業式ビラまきの続報です。
 3月5日は、定時制を含めて50校以上の高校の卒業式が行われました。
 このように一日に多くの学校が重なるようになったのは、私たちが2014年春にビラまきをはじめて数年たってからです。
 しかし、仲間たちは手分けしてビラまきを行いました。
 この中で、「上の方(校長というより都教委というニュアンスでした)から生徒にはまかないでくれと伝えるように言われています」などと言ったのは、<大山高校>だけでした。
 ちなみに、この学校の教職員は「敷地内に入ったら警察に通報する」などとも言ったようです。


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 (3月5日)
 <淵江高校>
 8時過ぎから10時前まで、ひとりで撒く。約200枚。
 生徒は自転車通学が多く、自転車の生徒にはなかなか渡せなかった。
 8時20分頃、副校長と校長が来て、門の真ん前では撒かないで、端の方で撒いてくださいと言う。
 門を入ったところに、椅子の上に段ボールの箱を置く。
 段ボールには「いらないものはこの中に入れてください」と書いた紙がはってあった。
 淵江高校は、いままでは「警備」の先生が多かったが、今年は2人だった。
 チラシを受け取った男性の保護者が「どういう団体か」と聞いてきた。
 チラシの裏も見て、「非正規労働か。いろんなことが書いてあるんだな」と言って行った。
 学校の前の道を通る人にも渡す。わりとよく受け取ってくれる。
 この学校にはいつも警察が来ていたが、今年はみえる範囲にはいなかった

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 <大山高校>
 8時前に正門前に行くと、すでに「学校と地域を結ぶ板橋の会」の方が1人でビラまきを始めていました。
 その後すぐにHさんが到着して2人で包囲ネットのビラを配りはじめると、間もなく板橋の会も2名体制になり、総勢4名で言葉を交わしながら10時前までビラまきを続けました。
 今回も8時過ぎに管理職らしき教員が出てきて、「上の方(校長というより都教委というニュアンスでした)から生徒にはまかないでくれと伝えるように言われています」「敷地内には入らないでください」と声をかけてきましたが、笑顔を浮かべながらの穏やかな物言いで、接触してきたのはその1回だけでした
 (ただし、Hさんは出勤してきた教職員から「敷地内に入ったら警察に通報する」と言われたそうです)。
 式の準備ものんびりしたもので、私が着いたときには正門に日の丸だけが掲げられており(旗にははっきりした折り目が付いていました)、
 8時半近くになってから少し離れた別の門の脇に「卒業証書授与式」という看板が取り付けられました(それにしても、なぜ、そしていつ頃から、「卒業式」はでなく、こんな持って回った表現をするようになったのでしょうか?)。
 保護者を受け付けるテーブルが用意されたのはさらにその後で、テーブルの横にはゴミ箱が置かれましたが、(ずっと見ていたわけではありませんが)そこにビラを捨てる人はほとんどいないようでした。
 ビラの受け取りはまずまずで、卒業生が半分程度、保護者は8割くらいだったでしょうか。この日は包囲ネットのビラ約200枚をまくことができました。

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 <忍岡高校(単位制高校)>
 午前8時3分から9時50分まで、2人で正門と通用門に分かれてまきました。
 正門前に到着した8時3分には、正門横校労の掲揚台に3つの旗が揚がっていました。(日の丸・都旗・校旗)
 8時10分に、Y副校長と名乗った男性が出てきて、「敷地内には入らないようにして下さい。生徒の登校がスムーズにいくようにして下さい。」と軽く言ってきたので、「わかってますよ」と答えていると、すぐ校内に入っていきました。
 その後、職員によって校門に、「都立忍岡高校 卒業証書授与式」の看板がつけられました。
 校門前には9時半すぎまで、4〜5人の職員がいましたが、チラシまきに干渉するようなことはありませんでした。
 チラシ回収箱を出すこともありませんでした。
 (以前は校門近くの校舎内に、段ボール箱をおいていた時もあった。)

 チラシの受け取りは、「おはようございます」・「おめでとうございます。」といいながら渡すと、生徒も保護者・教員もよく受け取ってくれ、持って行った350枚が9時50分になくなった。
 中には、「大丈夫です!」といって受け取らない生徒や、手を軽く振ったり・頑なに手を握りしめて通り過ぎる保護者や教員もいましたが、他校に比べると少ないと思います。
 母親と思われる1人だけ、チラシを見るなり、「こんな日に、くらい内容のチラシをまかないで」と小さめの声だけれど抗議してきましたが、連れ合いと思われる男の人が止めて、中に入っていきました。
 こわばった顔で受け取りを拒否する人も数人いました。
 おおむね穏やかな雰囲気で、チラシの受け取りもいい学校でした。

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 <山崎高校(町田市)>
 昨年に続いてビラをまきました。
 8時5分過ぎに行くと、校門に日の丸と校旗、卒業証書授与式の立て看板。
 大規模団地の奥深くにあって、自転車通学が多いので極めてまきにくいところです。
 小さな学校で、早くからPTAの女性たちが次々と手伝いに来て、駐車場所の案内に立つ等、和気あいあいの雰囲気。
 数少ない徒歩通学の生徒の半数くらいは受け取ってくれたように思います。
 全員が制服で、お行儀がよい感じ。
 自転車でも受け取ること人もいるし、教室の窓から見ている生徒もいる。

 「18歳、選挙権だね。自分の思ったことはこうやって人に伝えられるよ。選挙の1票にまけないよ、ビラまきって」とか話しかけると、たちどまって聞いてくれる人もいて。
 なかに「大丈夫です」とはっきり断る人がいると、これがまたうれしくて、「ねえ、ねえ、教えて。何がどうして『大丈夫』なの」と話しかけると、困ったような顔で受け取る人も。
 教職員もうけとりはよく、なかには「ご苦労様」と。
 しばらくして式服を着た人が「副校長ですが」と。
 祝意を述べて挨拶の後「敷地には入りません。事故がないよう気をつけてます」と一方的にこちらが言うのを「ハイ、ハイ」聞いて、「ビラを一枚いただけますか」とのことなので渡し、会釈をかわして、これでオシマイ。
 その後、平服の男性が出て来たので身構えましたが「校長です」とのことなので、またこちらがまくしたて、あちらは「はい、はい」でおしまい。
 ビラ回収用の箱もなし。

 昨年は一人突出して文句を付けに来た教員がいましたが、今年はその姿もなし。警備の教員も穏やか、にこやか。
 「保護者」さんたちも受け取り良好。
 「3年間、いや10年間、ご苦労様でした」と声をかけ、笑顔を返してくれる人が多い。
 二人で180枚程度を平穏にまき終わりました。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 <田園調布高>
 時間:8時〜9時55分
 枚数:321
 参加:4名、弁護士ナシ
 概況:国旗は3本ポ−ルのみ。ビラ配布、前半は生徒中心だが、受取はよくない。
    後半の保護者は、ほぼ受け取っていた。
    今年は配布者に文句を言う者はおらず。8時45分過ぎに、副校長が出て来て、お愛想のにこにこ顔で「今年もいつもの通りですので、よろしくお願いします」とのこと。
    具体的に、「敷地に入るな、生徒に配るな」との発言もなし。
    こちら側への対応は、これ1回のみ。女子は和服正装が目に付いた。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 <八潮高校>
 午前8時20分から9時50分までビラ撒き。
 1人で撒いたが、入り口が狭いので能率が良い。
 生徒の受け取りは2人に一人くらい。あまりよくはない。
 9時少し前に副校長(体育)が出てきて敷地に入るな、と例によっての通告。
 しばらくたつともう一度きて、少し離れろ、という。
 どうしてだ、公道だぞ、というと、学校の看板が隠れる、という。
 50センチばかり移動すると、それを確認して戻る。
 しだらくたつとまた来て、同じことを言う。
 教科は何だ、と聞くと、体育だ、という答え。
 自分も八潮で教員をやってた、というと、先輩たちがぴらまきやってるのは知ってる、という。
 今の学校はたいへんだな、オリンピック教育に年35時間も何をやるのだ、ときくと、ノーコメント。
 一人立ちは、心理的負担が大きく、時間のたつのが遅い。
 年に一度の修行だと思ってやっている。
 保護者に対しては順調にさばけて、全部で150枚は撒けた。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 <大森高校>
 時間:8時〜10時
 枚数:約320
 参加:2名、弁護士ナシ
 概況:教員、生徒、保護者いずれも受取よし。保護者で返却してきたのが1、2件あり。
 副校長が出て来て、ビラを要求し、交通の邪魔にならないようにとのこと。
 また、ゴミ箱を出して来て、生徒に捨てるように促していたが、
 捨てる者はあまりいなかった。日の丸が3本ポ−ルのほか、正門の両側にも掲げられていた。
 当該高勤務と思われるのkさんは姿を見せなかった。
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 以上です。

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パワー・トゥ・ザ・ピープル!! パート2
 
 ■ 処分を重くすれば教員の非行は減るのか? (レイバーネット日本)

 議題のうち、議案「教職員の主な非行に対する標準的な処分量定の改正について」、報告①「第9期東京都生涯学習審議会県議について」 ②「英語村(仮称)」事業の実施方針について ③平成27年度「Good Coach賞」について報告します。今日は山口教育委員が欠席。

 ■ 「教職員の主な非行に対する標準的な処分量定の改正について」
 今日も6件の懲戒処分案件の議案と、何件かは記されてはいないが、報告にも懲戒処分が非公開議題にあがっていた。処分案件がない定例会は、私が傍聴をしてきたこの5年、一度もなかったのではないかと思う。それくらい、性的行為や体罰、または刑法に触れる行為での懲戒処分が頻繁に起きている。
 処分量定の全文改正から10年たった今、現状に合わせて内容を変更・追加するのだと、都教委は言う。


 いくつかの追加を挙げると――
「対象を問わず、法律・条例に触れるわいせつ行為等は、免職であることを明記」
「児童・生徒に対する性的行為について、免職とする非行の種類に、直接『乳房、でん部』を触った場合を追加。免職、停職とする非行の種類に『性的行為と受け取られる着衣の上から身体に触れる行為を行った場合』『メール等で性的行為の誘導・誘惑を行った場合』を追加」
「勤務態度不良の項目では、免職・停職とする非行の種類に、『公文書偽造・変造、私文書偽造・変造若しくは虚偽公文書を作成・行使した場合』を追加」
「麻薬、覚せい剤、危険ドラッグの所持又は使用した場合」
 も免職等々、免職の対象が確実に増えている。

 都教委が焦っていることだけは伝わってきた。しかし、処分量定を厳密にすればこれらの非行が減るというものではないのに、都教委にはそのことがわからないのか。あるいは対策を講じたということを示すためなのか。
 管理・監視されていることに耐えられず、教員として働くことや生きることに意味を見いだせなくなった教員の、その一つの行動が性犯罪や体罰、窃盗などのかたちであらわれている場合がかなり多いのではないかと私は思う。都教委の管理・監視を今すぐやめることこそが、人間性を取り戻させ、犯罪を生まない最善の策と思う。
 都教委がこうした思考を続ける限り、子どものいじめ問題にも対応できないことははっきりしている。

 ■ ①「第9期東京都生涯学習審議会建議について」
 2005年教育基本法17条は、政府の教育振興計画を受けて、地方公共団体が当該地方公共団体における教育振興のための施策に関する基本計画を定めることと謳う。昨年4月、首長が権限を持つ教育委員会制度に変わったことにより、東京でも知事招集の下、総合教育会議が開かれ、都教育施策大綱が策定された。また、中央教育審議会は、アクティブ・ラーニングの視点から教育内容や教育方法の見直しを求めている。そうした中、この建議は、保護者や地域住民、企業・NPO等社会を構成する様々な主体が教育においてどのような役割を果たしていけるかを提言したのだという。

 今回の建議は、これまでのように地域から学校への一方的支援ではなく、地域、学校の双方向から支援し働きかけることを目指したと強調。
 「地域・社会からの教育支援を受け入れる学校側の体制づくり」「地域におけるオリンピック・パラリンピック教育を推進する」「中途退学の未然防止と中途退学等への切れ目のない支援」等のことばが列挙されている。学校にあらゆる団体が口を出せるということのようだ。
 オリンピック教育で都教委が言う「子どもを通じて家庭・地域を巻き込む」というのも、この双方向からの支援ということだろう。学校も社会も、異論を許さない同調圧力でがんじがらめにされそうだ。

 本当ならば、地域と学校が双方向に働きかけ支援することは大事なことだと思う。それを大事にするのであれば、「政治的中立性」を理由に廃止させた教育委員の公選制を復活させることだ。公選制では、地域と学校がともに自由に行き来できる関係になるのだから。

 ■ ②「英語村(仮称)」事業の実施方針について
 「児童・生徒が英語を使用する楽しさや必要性を体感でき、英語学習の意欲向上のきっかけづくり」を目的とした事業を、2018年9月の開業を目指して行うというもの。
 運営機関は開業から10〜15年間。
 事業施設はタイム24ビル(江東区青海)を確保し、事業者は3月下旬に公募し、9月下旬に決定する。
 決定した事業者に対し都は施設改修経費(開業までに発生した経費)の2分の1(4億5千万円を上限)及び事業施設賃料の10分の10の補助金を支給するという。全額補助を補助金というか?!
 都学力テストでベネッセに市場を開放したと同じように、英語村で大儲けをする企業を都は出すのだ。金と癒着した都教委村の英語村事業に、宮崎教育委員は「英語村とはいいネーミングですね」と絶賛した。あきれ果てる。

 夜間定時制高校存続を願う人たちの声は受験倍率が低いからと閉校を決めるのに、華々しい英語村にはこれだけ巨額の税金を投入する。教育委員たちは、これを不公平と思わないのか。

 ■ ③平成27年度「Good Coach賞」
 「体罰根絶に向けた総合的な対策の一環として、(中略)模範となる指導を実践している運動部顧問教員を表彰し、望ましい運動部活動を普及する」というのが、この賞の趣旨だという。校長、区市町村教委(都立校の場合は学校経営支援センター)の推薦を受けたうえで審査会が決定する。
 中・高、特別支援学校の被推薦者は92人、うち79人が受賞となった。審査会で落ちた13人は、年齢的に若い人、そして、過去に体罰をした人という。体罰をした人の推薦については、苦笑いするしかない。その程度の賞ということでもあるのか。

 教職員の処分量定といい、この賞といい、上意下達の中にどっぷり組み込まれた都教委の人たちには、もので釣ったり脅したりの対策しか考えつかないのだろうか。こうした対策で、人の心からの気づきはないだろう。

『レイバーネット日本』(2016-03-05 )


パワー・トゥ・ザ・ピープル!! パート2

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