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世界津波の日(11月5日)に寄せるアントニオ・グテーレス国連事務総長メッセージ

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津波は頻繁に起きませんが、壊滅的な被害をもたらします。私は最近、10月1日に地震と津波に襲われて間もないインドネシアのスラウェシ島を訪れ、その様子を現地で目の当たりにしました。死者は2,000人を超え、さらに何千人もの人々が被災したり、避難を強いられたりしています。

スラウェシの人々は、喪失感やトラウマと闘いながら、この災害による経済的損失からも復興を遂げる必要があります。経済的損失を減らすことは、仙台防災枠組の重要なターゲットの一つであると同時に、極度の貧困を根絶する上でも欠かせません。

過去20年間で、災害による経済的損失の約10%が津波によるものであり、特にインド洋や太平洋の沿岸諸国における開発の成果を後退させています。

「世界津波の日」は、早期警報や人々への教育や啓発、津波をより理解し、より適切に予測できるようにするための科学、そして地震帯や津波に襲われやすい沿岸部のリスクを考慮した開発など、災害を防ぎ、これに備えることの重要性を改めて強調する機会です。



  《澤藤統一郎の憲法日記から》
 ◆ 徴用工訴訟・韓国大法院判決に真摯で正確な理解を(その2)


 10月30日韓国大法院(最高裁に相当する)の徴用工判決。原告である元徴用工の、被告新日鉄住金に対する「強制動員慰謝料請求」を認容した。
 この判決に対する日本社会の世論が条件反射的に反発しあるいは動揺している事態をたいへん危ういものと思わざるを得ない。政権や右派勢力がことさらに騒ぎ立てるのは異とするに足りないが、日本社会の少なからぬ部分が対韓世論硬化の動きに乗じられていることには警戒を要する。
 まずは、同判決を正確に理解することが必要だと思う。それが、「真摯な理解を」というタイトルの所以である。判決は、けっして奇矯でも、反日世論迎合でもない。法論理として、筋が通っており、条理にかなっていることも理解しなけばならない。


 昨日のブログは、時間の足りないなか急いで書いた。文章が練れていない生硬な読みにくさがあるし、判決の全体像を語ってもいない。あらためて、大法院広報官室の本判決に関する「報道資料」(日本語)にもとづいて、紹介記事の続編を書き足したい。

 同事件において、被告側は「原告の請求権は日韓請求権協定(1965年)の締結によってすべて消滅した」と抗弁した。
 この抗弁の成否、つまり、「日韓請求権協定で原告らの損害賠償請求権が消滅したと見ることができるか否か(上告理由第3)」を判決は核心的争点と位置づけている。

 この核心的争点における原告の抗弁の根拠は、同請求権協定2条第1項「両締約国及びその国民間の請求権に関する問題が…完全かつ最終的に解決されたことになるということを確認する」、及び同条3項「一方の締約国及びその国民の他方の締約国及びその国民に対する全ての請求権として同日以前に発生した事由に起因するものに関しては、如何なる主張もできないことにする」との文言が、原告ら元徴用工の被告企業に対する一切の請求権を含むものであって、「解決済み」で、「如何なる主張もできないことになっている」ということにある。

 しかし、この被告の抗弁を大法院は斥けた。
 その理由を、多数意見は「協定交渉の経過に鑑みて、原告の被告会社に対する『強制動員慰謝料請求権』は、協定2条1項の『両締約国の国民間の請求権』には含まれない」とし、だから同条約締結によって原告の請求権は消滅していない、との判断を示した。
 これは、論理としては分かり易いもので、昨日のブログで詳細に紹介したとおりである。
http://article9.jp/wordpress/?p=11369

 この多数意見とは反対に、請求権協定における「両締約国の国民間の請求権」には、本件の「強制動員慰謝料請求権」も含まれる、とする5名の個別意見がある。
 そのうちの2人は、「だから、協定締結の効果として、韓国国内で強制動員による損害賠償請求権を訴として行使することも制限される」「結論として、原判決を破棄して原審に差し戻す」という意見。要するに、原告敗訴の意見。いま、日本政府や産経などが主張しているとおりの判断。
 残る3人の意見は、違ったものである。
 結論から言えば、「強制動員慰謝料請求権」も、「解決済み」ではあるが、解決の済みの意味は、国家間の問題としてだけのことで、国の国に対する権利は放棄されているものの、「個々の個人が持つ請求権は、この放棄の限りにあらず」ということなのだ。
 実は、この見解、日本政府の見解と同じなのだ。多数意見と理由を異にするが、上告棄却で原告徴用工勝訴の結論は同じものとなる。日本政府も反対しようがないのだ。

 「報道資料」は、この3裁判官意見をこう紹介している。
 「原告らの損害賠償請求権は請求権協定の対象に含まれると解するべきである。ただし原告ら個人の請求権自体が請求権協定によって当然消滅すると解することはできず、請求権協定により、その請求権に関する大韓民国の外交的保護権のみが放棄されたに過ぎない。したがって原告らは依然として大韓民国において被告に対して訴によって権利を行使することができる。」
 この3裁判官見解では、「請求権協定の締結によって『外交的保護権』は放棄された」が、「原告ら個人の被告企業に対する『請求権自体』は、請求権協定によって消滅していない」ということになっている。だから、韓国内での裁判による権利行使は可能という結論なのだ。

 『請求権自体』とは異なる、『外交的保護権』という、一般にはなじみの薄い概念がキーワードとなっている。
 『外交的保護権』(あるいは、「外交保護権」)とは、大法院の広報部の「報道資料」の表現によれば、
 「自国民が外国で違法・不当な扱いを受けた場合、その国籍国が外交手続きなどを通じて、外国政府を相手に自国民の保護や救済を求めることができる国際法上の権利」と解説されている。

 法律学小辞典(有斐閣)を引用すれば、
 「自国民が他国によってその身体や財産を侵害され損害を被った場合に、その者の本国が加害国に対して適切な救済を与えるよう要求すること。国家がもつこのような権利を外交保護権という。」

 この裁判官3人の意見は、
 「原告らの個人請求権自体は請求権協定だけでは当然消滅すると見ることができず、ただ請求権協定によってその請求権に関する大韓民国の外交的保護権が放棄されることにより、日本の国内措置により当該請求権が日本国内で消滅しても大韓民国がこれを外交的に保護する手段を失うことになるだけである。」ということ。
 つまり、国家は自国民の特定の権利については、国民に代わって相手国に対して救済を求める国家自身としての権利をもつ。まさしく、徴用工の日本企業に対する請求権はそのようなもので、韓国が日本に対して「自国民である徴用工の権利について適切な救済を与えるよう」要求する国家としての権利をもっていた。この権利が外交保護権。
 しかし、65年請求権協定によってその「国家(韓国)の国家(日本)に対する権利」は消滅したのだ。しかし、「この国家間の協定によって、個人の権利が消滅させられたわけではない」というわけだ。

 「報道資料」には、その理由としてこんな説明が付されている。
 「請求権協定には、外交的保護権の放棄にとどまらず「個人請求権」の消滅について日韓両国政府の意思の合致があったと見るだけの十分かつ明確な根拠がない。」
 「国家と個人が別個の法的主体であるという近代法の原理は、国際法上も受け入れられているが、権利の『放棄』は、その権利者の意思を厳格に解釈しなければならないという法律行為の解釈の一般原則によるとき、個人の権利を国家が代わりに放棄する場合には、これをさらに厳格に解釈すべきである。」
 「請求権協定では『放棄(waive)』という用語が使用されていない。」

 さらに重要なのは、以下の日本側の意思についての指摘である。
 「当時の日本は請求権協定により個人請求権が消滅するのではなく国の外交的保護権のみ放棄されると解する立場であったことが明らかである。」
 「日本は請求権協定直後、日本国内で大韓民国国民の日本国及びその国民に対する権利を消滅させる内容の財産権措置法を制定・施行した。このような措置は、請求権協定だけでは大韓民国国民個人の請求権が消滅していないことを前提とするとき、初めて理解できる。」

 実はこの点は、日本政府がこれまで国会答弁などで公式に繰り返し表明してきたことなのだ。よく引用されるのは、1991年8月27日参院予算委員会における、当時の柳井俊二外務省条約局長答弁
 大事なところだ。正確に引用しておこう。清水澄子委員の質問に対する、政府委員谷野作太郎アジア局長と柳井俊二外務省条約局長の各答弁。
 ○清水澄子 そこで、今おっしゃいましたように、政府間(日韓間)は円滑である、それでは民間の間でも円滑でなければならないと思いますが、これまで請求権は解決済みとされてまいりましたが、今後も民間の請求権は一切認めない方針を貫くおつもりでございますか
 ○政府委員(谷野作太郎君) 先ほど申し上げたことの繰り返しになりますが、政府と政府との間におきましてはこの問題は決着済みという立場でございます。
 ○政府委員(柳井俊二君) ただいまアジア局長から御答弁申し上げたことに尽きると思いますけれども、あえて私の方から若干補足させていただきますと、先生御承知のとおり、いわゆる日韓請求権協定におきまして両国間の請求権の問題は最終かつ完全に解決したわけでございます。
 その意味するところでございますが、日韓両国間において存在しておりましたそれぞれの国民の請求権を含めて解決したということでございますけれども、これは日韓両国が国家として持っております外交保護権を相互に放棄したということでございます。したがいまして、いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではございません。日韓両国間で政府としてこれを外交保護権の行使として取り上げることはできない、こういう意味でございます。
 極めて明瞭に、日韓請求権協定によって「最終かつ完全に解決し」「消滅した」のは、国家が有する外交保護権であって、個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではないことが述べられている。だから、個人が国内法に基づいて訴訟提起することは、当然に可能ということになる。
 1992年2月26日 衆議院外務委員会での柳井俊二外務省条約局長答弁は、さらに踏み込んでいる。質問者は土井たか子。さすがに切り込んだ質問をしている。
 ○柳井政府委員 … …
 しからばその個人のいわゆる請求権というものをどう処理したかということになりますが、この協定におきましてはいわゆる外交保護権を放棄したということでございまして、韓国の方々について申し上げれば、韓国の方々が我が国に対して個人としてそのような請求を提起するということまでは妨げていない。しかし、日韓両国間で外交的にこれを取り上げるということは、外交保護権を放棄しておりますからそれはできない、こういうことでございます。
 ○土井委員 (あなたは、)るるわかりにくい御説明をなさるのが得意なんですが、これは簡単に言えば、請求権放棄というのは、政府自身が持つ請求権を放棄する。政府が国民の持つ請求権のために発動できる外交保護権の行使を放棄する。このことであって、個人の持つ請求権について政府が勝手に処分することはできないということも片や言わなきやいけないでしょう、これは。今ここ(日韓請求権協定)で請求権として放棄しているのは、政府白身か持つ請求権、政府が国民の持つ請求権に取ってかわって外交保護権を発動するというその権利、これでしょう。だから、個々の個人が持つ請求権というのは生きている。個々の個人の持つ請求権というのはこの放棄の限りにあらず、これははっきり認められると思いますが、いかがですか。
 ○柳井政府委員 ただいま土井先生が言われましたこと、基本的に私、正確であると思います。この条約上は、国の請求権、国自身か持っている請求権を放棄した。そして個人については、その国民については国の権利として持っている外交保護権を放棄した。したかって、この条約上は個人の請求権を直接消滅させたものではないということでございます。
 ただ、先ほど若干長く答弁させていただきましたのは、もう緩り返しませんけれども、日韓の条約の場合には、それを受けて、国内法によって、国内法上の根拠のある請求権というものはそれは消滅させたということが若干ほかの条約の場合と違うということでございます。したがいまして、その国内法によって消滅させていない請求権はしからば何かということになりますが、これはその個人が請求を提起する権利と言ってもいいと思いますが、日本の国内裁判所に韓国の関係者の方々が訴えて出るというようなことまでは妨げていないということでございます。
 同様の問題は、ソ連との間でも、中国との間でも起きている。
 1991年3月26日参議院内閣委員会での、シベリア抑留者に対する質疑では、「条約上、国が放棄をしても個々人がソ連政府に対して請求する権利はある、こういうふうに考えられますが、本人または遺族の人が個々に賃金を請求する権利はある、こういうことでいいですか」という質問に対して、高島有終外務大臣官房審議官が、こう述べている。
 私ども繰り返し申し上げております点は、日ソ共同宣言第六項におきます請求権の放棄という点は、国家自身の請求権及び国家が自動的に持っておると考えられております外交保護権の放棄ということでございます。したがいまして、我が国国民個人からソ連またはその国民に対する請求権までも放棄したものではないというふうに考えております。

 国家間で請求権の問題が解決されたとしても、個人の請求権を消滅させることにはならない。このことは、韓国・ソ連・中国との関係において、日本政府自身が繰り返し言明してきたことなのだ。

 徴用工訴訟・韓国大法院判決を法的に批判することは、少なくも日本政府のなし得るところではない
 22万人と言われる強制動員された徴用工。過去の日本がいかに大規模に、苛酷で非人道的な振る舞いを隣国の人々にしたのか。まず、その訴えに真摯に耳を傾けることを行わない限り、公正な解決はあり得ない。
 また、政府も企業も肝に銘じなければならない。戦争も植民地支配も、けっしてペイしないものであることを。ツケは必ず回ってくる。それは、けっして安いものではあり得ないのだ。
(2018年11月2日)

http://article9.jp/wordpress/?p=11376
 
 ▼ 焦点:日本の原発「静かな復活」、伊方再稼動に沸く期待と不安 (REUTERS)

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11月2日、四国電力は、再稼動した伊方原子力発電所3号機の発送電を10月30日に開始した。伊方町で10月撮影。(2018年 ロイター/Mari Saito)

 [伊方(愛媛県) 2日 ロイター] - 四国電力<9507.T>は、再稼動した伊方原子力発電所3号機の発送電を10月30日に開始した。
 東日本大震災から8年近くがたち、国内各地で原発が再稼動している。電力会社は専門知識を持つ弁護士を雇い、反対住民らによる訴訟で次々と勝訴している。

 ロイターは今年10月、伊方町とその周辺の町で、町長やミカン農家、原発とともに暮らす人々に取材を行った。
 伊方原発から15キロほど離れた八幡浜市で、シャッターが目立つ商店街にある寿司屋「すし光」は平日にもかかわらず、珍しく混んでいた。


 「ここはみんな原発賛成。そう書いてもいいよ」──。飲み物を乗せたお盆を運びながら、女将の尾崎佐智代さんは言う。

 「お客さんのほとんどは原発関係者。この人は、原発で働く人をミニバンで運んでる」と、配膳しながらカウンターの客の1人をゼスチャーで指し示した。
 ビールを飲んでいる別の客に対しては「この人は建設会社だから、こっちも忙しいの」と紹介した。
 伊方原発の再稼動を控え、近所のホテルや旅館は、再稼動に携わる人たちで満室だった。

 東日本大震災で東京電力<9501.T>福島第1原発がメルトダウンを起こしてから、いったん全ての原発を停止した電力会社は、静かに再稼動を進めている。伊方は、その代表的な存在だ。
 広島高裁は今年9月、伊方原発3号機の運転を差し止めた仮処分決定を取り消した。その結果、原発は約1年ぶりに再稼動されることになった。

 2011年以降、多くの原発関連訴訟が起こされ、電力会社は反原発派の弁護士との長い戦いに臨みながら、地元住民に対し理解を求め続けた。
 そうした戦略が功を奏し、現在国内で8基の原発が稼動されている。震災前の54基には遠く及ばないが、アナリストや電力会社が当初予想したよりは多い。

 <裁判闘争>

 日本は戦後、クリーンエネルギーとして、また化石燃料の輸入に依存しないため、原子力発電を推進してきた。
 しかし福島の事故によって、原子力産業と政府への不信感が強まり、国民は原発に批判的になった。近年、電力会社が裁判で勝訴し、原発が再稼動されていることで、原発の建設を支えてきた「電力会社、政府、地元」の強力なトロイカ体制の復活とみる向きもある。
 四国電力を相手取った裁判で市民側についた反原発派の河合弘之弁護士は、このまま原発反対派が負け続けると、20基から25基の原発が再稼動される、と危惧する。

 2011年以降、数百人の市民が河合氏のようなボランティアの弁護士とともに、全国25の地裁、高裁で政府を相手取り、50件もの訴訟を起こした。
 四国電力は、伊方原発再稼動の承認を得るのに何カ月も費やし、3基のうち、廃炉を決めた2基を除く1基を2016年に再稼動した

 しかし、2017年12月、広島高裁は運転を差し止める決定をした。これを受け、四国電力は法務部の人員を増強、他の原発訴訟を担当した弁護士と契約した。
 原発訴訟に詳しい弁護士は少ないため、電力会社からは引っ張りだことなる。山内喜明氏(76)もそうした弁護士の1人だ。
 1973年に伊方町の住民が原子炉設置許可の取り消しを求めて起こした裁判で、四国電力の代理人となったのが始まりだった。
 現在も四国電力の代理人を務め、ほかの電力会社の多数の訴訟案件に関しても、アドバイスをしている。
 山内氏は、最近の訴訟について、本質的な議論にならず、「表面的」な議論になっていると指摘する。
 また、電力会社が、廃炉にする原発と動かすものをはっきり分けて対応するようになったとし、すでに3基ある原子炉のうち2基の廃炉を決めている四国電力は「電力会社の中でも一番賢明だと思う」との見方を示した。

 四国電力は、これまでの訴訟にいくらかかったか明らかにしていないが、原子炉を止めるコストと比べると大きくはない
 四国電力では、1カ月原発を止めると、それを補う電力確保に35億円の費用がかかると説明している。
 さらに福島原発事故後、規制が強化されたことに伴う安全対策に、同社は1900億円を投じた。

 反原発派はいくつかの裁判で勝訴している。関西電力<9503.T>は、何度も裁判所の仮処分決定を受け、高浜原発などの原子炉を一時停止した。だがその後、決定は高裁で覆された。

 住民側で原発訴訟を戦っている海渡雄一弁護士は「以前は原発訴訟というのは、デフォルトで向こう(原発側)が勝てるような訴訟だった」と話す。
 四国電力は、現在もいくつかの裁判と差し止め訴訟を抱えている。
 広島高裁は、伊方原発3号機の再稼動が予定される日の前日(10月26日)に、住民が運転差し止めの期限延長を求めた仮処分の申し立てを却下した。

 <交付金に頼る町>

 原発産業の静かな復活は、伊方町のような地方の町で起こっている。ミカンの産地として知られる伊方町は、瀬戸内海と宇和海に囲まれた人口約9500人ののどかな農村だ。
 町の歳入予算が約100億円で、原発交付金等がその3割を占める。1974年以来、伊方町は総額1017億円もの交付金を受け取っている。道路、学校、病院、消防署、祭りに使う太鼓までもが交付金で賄われた。

 高門清彦町長はロイターのインタビューで、原発交付金に依存する町の現状について「原発以外にもう1本、もう2本柱を、地域として町として目指す柱を作り上げたい。それが一番の大きな課題だと思っている」と語った。

 伊方町と四国電力の相互依存関係の始まりは、半世紀ほど前にさかのぼる。
 中元清吉・元町長(90)は、当時、町議会議員として原発の誘致に尽力した。自宅の壁には、当時の総理大臣から送られた、日本のエネルギー政策への貢献に対する感謝状が掲げてある。
 「その当時は農業、漁業しかなかった。貧乏村で、財政再建団体とされ、町営事業もやれない状態。原発を誘致して財政の再建をしなければ、町の発展はできないような状態だった」と話す。

 福島原発事故を受け、四国電力は住民に安全性を訴えるキャンペーンを行った。青いユニフォーム姿の社員が、住民の家を1軒1軒回り、伊方原発の安全性を説明した。

 ミカン農家を営む須加成人氏(54)は「何らかの事故が起きて福島みたいなことになったら、125年間かけて作ってきた産地が一瞬にしてだめになる」と不安を訴える。
 住民の多くにとって、原発は生活の一部だ。大森裕志氏(43)は今年の夏、子どもをつれてよく四国電力の「伊方ビジターズハウス」に通った。この施設は原発のPRと同時に、無料の絵画教室など、住民への様々なサービスを提供している。
 最近、ビジターズハウスでは、来客にバーチャルリアリティ(VR)ヘッドセットを提供し始めた。ヘッドセットをかぶると、3D映像で映し出された伊方原発の上空をバーチャルに飛ぶことができる。しかし、ある週末に訪れてみるとビジターズハウスは閑散としていた。

 伊方町は、今後20年間に人口が5000人まで減少すると見込まれている。高門町長は、原発に替わる産業を探すべく葛藤している。
 今年になって全国原子力発電所所在市町村協議会(全原協)にも参加した。全原協は政府に対し、原発の新増設や建て替えに関する方針を明確にすることを求めている。
 「人口はどんどん減っている。人口減少のカーブを少しでも和らげるのが一番の課題」――そう高門町長は話した。
 (斎藤真理 翻訳:宮崎亜巳 編集:田巻一彦)

『REUTERS』(2018/11/02)
https://jp.reuters.com/article/focus-ikata-idJPKCN1N701L


 
  《エコノミスト 2018年10月26日》
 ◆ エコノミストは、INF条約とは何かを説明します。 (星の金貨 new)
   〜米国の1987中距離核兵器保有条約を撤回する計画は、冷戦時代の恐怖を引き戻す
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 1987年、中距離核戦力全廃条約(INF)が調印された日の朝、アメリカ大統領のロナルド・レーガンは当時ソ連を代表する立場にいたミハイル・ゴルバチョフに一対のカフスボタンを贈りました。
 2人はともに時代を画することになった記念碑的条約である中距離核戦力全廃条約(INF)に署名し、互いにその手にあった剣を鋤に持ち替え、善意に基づく大国関係を構築しました。

 しかしドナルド・トランプ大統領は再び剣に持ち替えることを決めました。
 10月20日に、トランプはロシアと中国が「正気を取り戻す」まで、アメリカを中距離核戦力全廃条約(INF)から離脱させ、再びミサイルの開発整備すると発表しました。


 この決定については、冷戦時代の遺物を捨てる賢明な選択だと解説する人もいます。
 再び核軍拡競争を始める気なのだと解釈する人もいます…
 そもそも中距離核戦力全廃条約(INF)とはどういうものなのでしょうか?

 INF条約は、1970年代後半から1980年代初頭、ヨーロッパで発生した危機的事態に起源を持っています。
 当時ソビエト連邦SS-20ミサイルを開発配備しました。
 このミサイルはロシアの奥地からヨーロッパの大部分を正確に攻撃できる高度な性能を持っており、ヨーロッパ各国は驚愕することになりました。

 当時アメリカが西ヨーロッパに配備していたのはソ連の領土にまでは到達不可能な短距離ミサイル、そして国内の発射装置と国外を航行できる潜水艦に搭載する長距離ミサイルを保有していましたが、中距離に分類されるミサイルは保有していませんでした
 もしソ連がSS-20でヨーロッパを攻撃した場合、アメリカは最終兵器ともいうべき長距離ミサイルを使わざるを得ませんでした。
 ヨーロッパの同盟国は直接攻撃されたのでなければ、アメリカがそこまで踏み切ることはないだろうという焦りがありました。

 こうした懸念を払拭し、ソ連に方針変更を迫るため、アメリカはパーシングII弾道ミサイルと新しい地上発射巡航ミサイルをヨーロッパに配備しました。
 今度はソ連側が懸念を深める番でした。
 これらは発射から10分以内にモスクワに到達する可能性があり、そうなればソ連指導部はパニックに陥ってしまう可能性がありました。

 両陣営の軍部の思惑とは別に、事態の進展を憂慮するヨーロッパの人々は全域で核兵器反対闘争を全域で繰り広げました。

 INF条約はこの混乱しきった状況に活路を開くものでした。
 この条約は先制攻撃用のソ連とアメリカのミサイルだけでなく、射程範囲 480キロ〜5,300キロのすべての地上ミサイルの飛行実験、開発、配備を禁止しました。
 アメリカ側は既存の兵器約3,000基を廃棄、ソビエト連邦はその2倍の兵器を廃棄しました。

 ではなぜここに来て行き詰まりを見せているのでしょうか?

 理由のひとつはロシアの不正行為です。
 ロシアが9M729型と呼ばれる射程範囲がINFの範囲に入る巡航ミサイルの飛行実験を実施したことをアメリカが探知し、ヨーロッパ各国もその事実を確認しました。

 もう一つは中国の理由は中国です。
 2000年代プーチン大統領は台頭著しい中国を含めロシアと緊張関係にあった国家に対応するため軍事力の整備を熱心に行いましたが、その中に非核弾頭を搭載する中距離ミサイルの開発が含まれていたのです。
 その後ロシアと中国の関係は改善され、こうした懸念は薄れました。

 しかし多数の中距離ミサイルの整備を含めた中国の軍事力の強化は、今度はアメリカの懸念材料になりました。
 INF条約があるため、アメリカは多機能高性能ながら高価な船舶、潜水艦、航空機を整備する必要に迫られました。
 こうした現状を見て、トランプは離脱を宣言したものと見られています。

 もしアメリカがこのまま中距離核戦力全廃条約(INF)から離脱することになれば、その影響は多方面に及ぶことになります。

 まず第一に、ロシアはヨーロッパ各国を射程に収める中距離ミサイルの整備を急ぐことになる可能性があります。
 その中には開発済みの9M729だけでなく、INFの上限を超える射程の実験が行われた大陸間弾道ミサイルであるRS-26「Rubezh」も含まれる可能性があります。

 第二にアメリカがこれらの兵器に対抗できる兵器開発をスピードアップすることになるでしょう。
 アメリカの軍事当局はこうした研究がまだ「初期段階」にとどまっていると認めています。
 そして発射実験を何年も行っていません。

 第三にアメリカがこうしたミサイルをヨーロッパに配備する際には、多大な外交的努力が求められることになります。
 ヨーロッパ各国首脳は「プーチン大統領の脅威」によって自国が「報復攻撃の対象となる可能性」を恐れており、新たなミサイルの配備の受け入れについて尻込みする可能性があります。
 もしアメリカがNATOの頭越しに直接ポーランドのようにアメリカとの同盟に熱心な1、2カ国と直接取引をすれば、今度はNATOの同盟維持に問題が生じる可能性があります。

 アジアの同盟国の対応は一層微妙です。
 日本は米国の中距離核戦力全廃条約(INF)からの離脱撤退に反対する一方、韓国は中国との関係改善に取り組んでいます。
 どちらも米国の新しいミサイル配備はしたくないというのが本音です。

 グアムにミサイルを配備するのはアメリカの自由ですが、軍事専門家は高度な地上ミサイルシステムを小さな島に詰め込んだら、いざ戦争となれば格好な攻撃目標になると指摘しています。

 ゴルバチョフ、レーガンの合意から30年、事態は再び錯綜することになってしまいました。

https://www.economist.com/the-economist-explains/2018/10/26/what-is-the-inf-treaty

『星の金貨 new』
https://kobajun.biz/%e3%83%88%e3%83%a9%e3%83%b3%e3%83%97%e3%81%ae%e9%9b%a2%e8%84%b1%e5%ae%a3%e8%a8%80-%e4%b8%ad%e8%b7%9d%e9%9b%a2%e6%a0%b8%e6%88%a6%e5%8a%9b%e5%85%a8%e5%bb%83%e6%9d%a1%e7%b4%84%ef%bc%88inf%ef%bc%89/

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