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スルガ銀役員らの不正関与を認定 会長・社長は退任
朝日新聞2018年9月7日16時26分
スルガ銀行の融資不正問題に関する調査結果を説明する、第三者委員会の中村直人委員長(中央)ら=2018年9月7日午後、静岡県沼津市
地方銀行のスルガ銀行(静岡県沼津市)のシェアハウス投資向け融資で多数の不正があった問題で、同行の第三者委員会(委員長=中村直人弁護士)は7日、調査報告書を提出した。報告書ではシェアハウスだけでなく、中古1棟マンションなど不動産投資向け融資で幅広く書類改ざんなどの不正が横行し、不動産業者に加えて多数の行員や一部の支店長、営業担当役員1人も不正に関与したと認定。融資で厳しい営業ノルマが課され、営業現場にプレッシャーがかかり、「極端なコンプライアンス(法令順守)意識の欠如」「統制環境(企業風土)の著しい劣化があった」とした。
スルガ銀新社長に有国三知男取締役が昇格
ノルマ未達で罵倒、不正は当たり前 スルガ銀の責任重い
スルガ銀は一連の問題の責任を取り、創業家出身の岡野光喜会長兼CEO(最高経営責任者、73)、米山明広社長(52)ら役員5人が7日付で退任し、有国三知男取締役(52)が社長に昇格する人事を発表した。
◆スルガ銀行の「ザルぶり」、不動産業界では周知の事実だった
小野悠史:不動産ニュースライター
「提携企業、物件担保評価、投資家の与信。スルガ銀行は、どれもザルだった。『三ザル』ですよ。スルガの乱脈融資で不動産投資のマーケットは荒れてしまいました」。上場している投資用不動産販売会社の役員は語る。
スマートデイズの販売したシェアハウス「かぼちゃの馬車」投資を巡る騒動が、主にその投資資金を融資していたスルガ銀行に飛び火した。
通帳改ざんによる不適切融資が横行し、さらに不正に行員が関与していた疑惑など、スルガ銀行の異常な状態が徐々に明らかになりつつある。経営幹部の辞任や金融庁の厳しい処分が避けられない情勢だ。
「地方銀行の優良行だったスルガがなぜ転落したのか」。こうした声はあちこちで聞こえる。しかし、不動産業界からは、革新的でアグレッシブな経営とは名ばかり、乱脈融資ともいえるスルガ銀行の実態は周知の事実だった。
「三ザル」融資で急増した
「三為」不動産販売業者
「三ザル」と語られるスルガ銀行の不動産融資の実態は――。
「とにかくスルガ銀行はどこの不動産会社とも提携していた。提携先の選定がろくにされていない。知識も実績もなく、スルガ銀行がいなければ独立できなかったような三為(さんため)業者は多い」と、この役員は語る。
三為業者とは、第三者のためにする契約を行う不動産販売業者の略称だ。
売主から買主に不動産を売却する時に、利益を乗せて転売することで、定められた仲介手数料以上の利益を手にすることができる。
投資用不動産販売会社が設立直後に苦労するのは、物件を購入する投資家を探す集客よりも、提携する金融機関の開拓と物件情報の仕入れだという。つてをたどりながら金融機関を開拓していき、物件情報をもたらす不動産会社との接点は交流会に頻繁に出席するなど、地道にやるのが王道だった。
しかし、融資先の開拓に必死なスルガ銀行であれば、実績も知識もないままでも提携が可能だったという。はなから会社を大きくする気もなく、手っ取り早く稼げる手段として不動産会社を作り、高値で投資家に押し込みながら、潮時が来たら消えるわけだ。こうした不動産業者が増加した。
1〜3週間のスピード審査で
「9割以上の案件が通った」
すでに、こうした業者はスルガ問題の発覚による融資の厳格化以降に、一目散に逃げ出している。
「閉店ガラガラ、もう店じまいですよ」とうそぶくのは、渋谷区に本社を構える投資不動産販売会社の社長だ。
少し前までは10人の社員を抱えていたが、昨年ごろから金融機関が融資を厳しくするようになり、売り上げが激減した。頼みの綱だったスルガ銀行も一連の問題発覚以降は、なしのつぶてとなった。
「買いたいお客さんはいて、物件があっても、融資が下りないのではどうしようもない」と、家賃収入などの物件管理担当のスタッフ1〜2名を残して、年内にも会社は休眠状態にする予定だ。
自身は海外に移住を検討しているという。まだ30代の若さだが、ここ数年で10億円以上の不動産を購入しており、現預金も十分にあるからだという。
同社は投資用不動産を仕入れて、利益を上乗せして転売する典型的な三為業者だった。
投資家も与信の「甘さ」を利用
「スルガの毒抜き」は業界の常識
もちろん無理に購入しても、将来的に値上がりして売り抜けることができれば良い。しかし、手元資金に乏しい人が、キャッシュフローが少ない不動産を持てば、設備の故障など急な出費に対処できない可能性が高い。
そういった適性のない客にまで、不動産を販売しようとする中で、不動産業者による預金通帳の改ざんなどが横行するようになる。与信のザルにつけ込まれたのだ。
バブルの失敗に学ばず
銀行が持つべき規範を失なう
そうして数年前から増えたのが、「自己資金なしでの不動産投資」などを標榜する不動産会社やコンサルタントだ。
彼らの多くは二重売買契約を使って不動産を売っていたと噂される。
先述の溝口氏のように、個人が不動産投資をする上でほとんどは、自己資金という頭金を用意する必要がある。スルガ銀行の場合は10%が必要となる。しかし、頭金を工面できない一部の客には、実際の価格よりも高い偽の契約書を作成し、銀行に提出する。
例えば1億円の物件を購入するために、1億2000万円で購入すると「偽の契約書」を書いてスルガ銀行に提出し、90%に当たる1億800万円を借り入れるのだ。実際の不動産価格1億円に対して、800万円分の余裕が生まれ、そこから諸経費などを引いても、自らの腹は傷めないで購入ができる。
当然だが、こうした取引についてはスルガ銀行が被害者である。すでに報じられているように預金通帳の残高を改ざんする行為も同様だ。行員自らが不正に関与していたのなら言語道断だが、現時点でははっきりしたことは言えない。
好意的にみるならば、与信がザルというより、脇が甘かっただけともいえるかもしれない。
しかし、スルガ銀行のザルぶりを餌にした不正がノウハウとして共有されて、有象無象が群がる状況を作ってしまった責任は免れまい。
「少なくとも7〜8年前までは、不正が横行するような状況ではなかった」と、千代田区内に本社をおく不動産コンサルタント会社の代表は語る。「通帳改ざんが発覚した不動産会社がスルガ銀行を出禁になった、といったうわさもあった。不動産向け融資でリスクを取りながらも、銀行として守るものは守っていたはずだが」。
それでは、スルガ銀行は銀行が持つべき規範をどこで失ったのか。「地銀の優等生」として褒めそやされるうちに、たがが外れていった可能性もあるだろう。
アベノミクスの超金融緩和、超低利の状況下で、アグレッシブな経営が転じて安易な不動産融資や投資の拡大に走った側面があるのではないだろうか。スルガ銀行だけでなく、問題を見落とした金融庁やメディアも一体、バブルから何を学んだのだろうか。 (不動産ニュースライター 小野悠史)
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