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◆ 言ってはいけない!「日本人の3分の1は日本語が読めない」 (文春オンライン)
    橘 玲

 OECDによる国際調査で「先進国の成人の半分が簡単な文章を読めない」という衝撃の結果が明らかになった。人間社会のタブーを暴いた『もっと言ってはいけない』の著者が知能格差が経済格差に直結する知識社会が、いま直面しつつある危機に警鐘を鳴らす。

 ◆ 「国際成人力調査」の結果概要
  (1)日本人のおよそ3分の1は日本語が読めない
  (2)日本人の3分の1以上が小学校3〜4年生以下の数的思考力しかない
  (3)パソコンを使った基本的な仕事ができる日本人は1割以下しかいない。
  (4)65歳以下の日本の労働力人口のうち、3人に1人がそもそもパソコンを使えない
 ほとんどのひとは、これをなにかの冗談だと思うだろう。だが、これは事実(ファクト)だ。


 先進国の学習到達度調査PISA(ピサ)はその順位が大きく報じられることもあってよく知られているが、PIAAC(ピアック)はその大人版で、16歳から65歳の成人を対象として、仕事に必要な「読解力」「数的思考力」「ITを活用した問題解決能力(ITスキル)」を測定する国際調査だ。
 OECD(経済協力開発機構)加盟の先進国を中心に24カ国・地域の約15万7000人を対象に実施され、日本では「国際成人力調査」として2013年にその結果の概要がまとめられた。

 ◆ 失業の背景を調査

 ヨーロッパでは若者を中心に高い失業率が問題になっているが、その一方で経営者からは、「どれだけ募集しても必要なスキルをもつ人材が見つからない」との声が寄せられていた。プログラマーを募集したのに、初歩的なプログラミングの知識すらない志望者しかいなかったら採用のしようがない。そこで、失業の背景には仕事とスキルのミスマッチがあるのではないかということになり、実際に調べてみたのだ。

 読解力と数的思考力はレベル1からレベル5で評価され、ホワイトカラーの仕事(専門職)にはレベル4以上が必要とされている。

 実際の問題は公開されていないが、問題例が紹介されているので、どのようなものか具体的に見てみよう。

 ◆ 誤答率27.7% レベル3の読解力の問題

 レベル3の読解力の問題では、図書館のホームページにある本のリストから『エコ神話』の著者を答える(図1)。「子どもだましでバカバカしい」と思うだろうが、驚くべきことに、このレベルの問題に正答できない成人が27.7%いる。

 それぞれの本には150字程度の概要が書かれている。レベル4では、「遺伝子組み換え食品に賛成の主張と反対の主張のいずれも信頼できないと主張しているのはどの本ですか」と質問される。短文を読むだけの問題だが、8割ちかい(76.3%)成人がこのレベルの読解力を持っていない

 ◆ 簡単な問題文が読めない子供たち

 AI(人工知能)に東大の入学試験を受けさせる「東ロボくん」で知られる新井紀子氏は、全国2万5000人の中高生の基礎的読解力を調査し、3人に1人がかんたんな問題文が読めないことを示して日本社会に衝撃を与えた(『AIvs.教科書が読めない子どもたち』東洋経済新報社)。

 一般にはこの結果は「日本の教育が劣化した」と受け取られているが、PIAACのデータはそれが誤解であることをはっきり示している。

 日本の成人のおよそ3人に1人が、本のタイトルと著者名を一致させることができない。なぜこんなことになるかというと、なにを問われているかが理解できないからだろう。

 日本人の3割は、むかしから「教科書が読めない子どもたち」だった。そんな中高生が長じて「日本語が読めない大人」になるのは当然なのだ。

 ◆ 誤答率36.3% レベル3の数的思考力の問題

 レベル3の数的思考力の設問例は立体図形の展開だ(図2)。Aは明らかに形がちがうし、Bは面の数が足りない。残りはCとDで、回転させればどちらも同じだが、Dにだけ屋根に半円形の取っ手がついている(形はCの方が似ているように見える)。

 小学校5年生程度の問題だが、これが解けない成人が36.3%いる

 ◆ 誤答率80%超え レベル4の数的思考力の問題

 レベル4では、1960年から2005年までのメキシコの男女の教育水準を示したグラフが示され、「1970年には、6年を超える学校教育を受けたメキシコ人男性は約何パーセントでしたか」と問われる(図3)。

 男女2つのグラフから男性を選び、5つの調査年から1970年を探し、「学校教育を受けていない」「6年以下の学校教育」「6年を超える学校教育」から該当するものを見つけるだけだが、この単純なグラフの読み取りができる成人は18.8%しかいない

 ◆ 誤答率90%超え レベル3のITスキルの問題

 「ITスキル」のレベル3では、会議室予約の申し込みメールを処理する。

 メールには予約に無関係なもの(たんなる感謝)もあれば、会議室の空き状況を確認するものもある。
 4件のメールのうち予約申込は3件で、午前、昼、昼から夕方にまたがるものだ。
 解答者は4つの会議室の空き状況を確認し、午前に1件、昼に1件入れて、残りの1件には利用可能な会議室がないことを返信する。

 これはパソコンを使う職場では最低限のスキルだと思うのだが、日本ではわずか8.3%しかクリアできていない
 それに加えて、対象となった成人のうち「コンピュータ経験なし」「コンピュータ導入試験不合格」「コンピュータ調査拒否」が合わせて36.8%もいる。

 これが、OECDが主催する大規模調査での「日本人の実力」だ。それを受け入れがたいと感じるとしたら、あなたが知能が高いひとたちの集団のなかで生活し、現実を錯覚しているからにすぎない。

 ◆ ほぼすべての分野で日本が24カ国中1位、他国の結果

 しかし、驚きはこれにとどまらない。こんな悲惨な成績なのに、日本はOECDに加盟する先進諸国のなかで、ほぼすべての分野で1位なのだ。だとすれば、他の国はいったいどうなっているのだろうか。

 OECDの平均をもとに、PIAACの結果を要約してみよう。
(1)先進国の成人の約半分(48.8%)はかんたんな文章が読めない
(2)先進国の成人の半分以上(52%)は小学校3〜4年生以下の数的思考力しかない
(3)先進国の成人のうち、パソコンを使った基本的な仕事ができるのは20人に1人5.8%)しかいない。
 ◆ レベル2の読解力の問題の問題

 レベル2の読解力の問題は、「市民マラソン・ウォーキング大会」のホームページから開催者の電話番号を調べるためのリンクをクリックするだけだ。

 これができない成人が、OECD平均で15.5%、およそ6人に1人いる(日本は4.9%)。イタリアは27.7%、スペインは27.5%とほぼ3人に1人だ。

 ◆ レベル2の数的思考力の問題

 レベル2の数的思考力は出張費の計算で、自動車の走行距離1キロあたりに35円を掛け、4000円の食費を加える。

 このレベルの計算ができない成人は、OECD平均で19%、およそ5人に1人だ(日本は8.2%)。イタリアの成人の31.7%、スペインでは30.6%が、掛け算と足し算を組み合わせた問題に対処できない。

 PIAACの説明では、レベル1の読解力は「基本的な語彙を含む短い文章が読める」、数的思考力は「基礎的な計算、50%のようなおおまかな割合、単純なグラフがわかる」とされている。レベル2の問題が解けないと、できる仕事はかなりかぎられるだろう

 ◆ 大卒者の得点が日本の高卒に及ばないイタリアとスペイン

 PIAACの得点分布には明らかな傾向があり、ヨーロッパではスウェーデンなど北欧諸国が高く、南に行くほど低くなる。とりわけイタリアとスペインが深刻で、大卒者の得点が日本の高卒に及ばない。

 イタリアでは2018年6月、北部を基盤とする「同盟」と南部の「五つ星運動」の2つのポピュリズム政党が連立してコンテ政権が成立した。
 それ以外でも、トランプ政権が誕生したアメリカ、国民投票でEUからの離脱を選択したイギリス、ジレジョーヌ(黄色ベスト)デモで揺れるフランスなどがOECDの平均を下回っている(図4)。

 ここで誰もが思い浮かべるのは、職業に必要な知的スキルが低い国は失業率が高く、ポピュリズムが台頭するのではないかという疑問だろう。国際政治学者は欧米の「右傾化」についてさまざまな解説をしているが、PIAACのデータに基づいたこの単純な説明を無視できるだろうか。

 ◆ 楽観できない若者のデータの詳細

 「日本人の3人に1人は日本語が読めない」が、それでも先進国のなかでもっとも優秀だ。しかし、データの詳細を見るとこれで喜んでいるわけにはいかない。

 読解力数的思考力で日本はたしかに1位だが、年齢別の得点を見ると、16〜24歳の数的思考力ではオランダとフィンランドに抜かれて3位に落ちる。
 より問題なのはITスキルで、パソコンを使えず紙で解答した者を加えた総合順位ではOECD平均をわずかに上回る10位16〜24歳では平均をはるかに下回る14位まで落ちてしまう

 対照的なのが韓国で、全体の順位はOECD平均以下で低迷しているが、これは中高年の得点が低いからで、16〜24歳では得点は大きく上がり、読解力で4位、数的思考力で5位ITスキルでは1位と日本の若者をはるかに上回る。

 わずか1世代で知能が劇的に向上するはずはないから、これは明らかに教育の成果だ。なぜ隣国とこれほど大きな差がついたのか、日本の教育業界は国民(納税者)に対して重い説明責任を負っている。

 だが、より深刻な問題はほかにある。

 ◆ アメリカの7割程度しかない日本の労働生産性

 知識社会では知的な職業スキルが高いほど生産性が高くなるはずだが、日本の労働生産性は主要先進7カ国でずっと最低で、アメリカの7割程度しかないばかりか、イタリアやスペインより低い。OECDの報告書では、その理由を高い能力が仕事で活かされていないからだとしている。

 男女の社会的な性差を示すジェンダーギャップ指数で日本は世界最底辺の110位だが、PIAACの分析でも、女性のスキルを活用できていないことが男女の収入の大きな差につながっていると示唆されている。

 ◆ 知的には優秀でも能力を無駄にしているという残念な現実

 ここからわかるのは、日本人はたしかに知的には優秀かもしれないが、その能力を無駄にしているという残念な現実だ。
 それは日本人の働き方が間違っているからであり、さらにいえば、日本社会の仕組みに大きな欠陥があるからだろう。――私はこれを、日本が先進国のふりをした身分制社会だからだと考えている。

 知識社会というのは、定義上、言語運用能力や数学・論理的能力に秀でた者が大きなアドバンテージを持つ社会のことだ。

 高度な知的作業ができるスキルをレベル5とするならば、その割合は読解力でOECDの0.7%(日本は1.2%)、数的思考力で1.1%(同1.5%)しかいない。
 「ウォール街を占拠せよ」の運動では、1%の富裕層に富が独占されているとして「We are 99%」と叫んだが、PIAACによれば、これは経済格差ではなく職業スキル≒知能の格差のことだ。

 その一方で、レベル3以下だと、オフィスワークに必要なスキルに達しないとされる。その割合は読解力でOECDの87%(日本は76.3%)、数的思考力では86.4%(同80%)にも達する。

 AI(人工知能)が象徴するように、テクノロジーは驚くべきスピードで進歩しており、労働市場で要求される知能のハードルが上がっている。だが人間は、それに応じて賢くなるようにはつくられていない。知識社会が高度化するにつれて、そこから脱落する者が増えるのは必然だ。

 ◆ 先進国の5割の成人が「問題文が読めない」という現実

 PIAACでは移民出身者のスコアも計測しており、言語的背景が異なる移民のスキルは顕著に低く、とりわけ北欧で(もともと得点の高い)主流派白人との差が大きく開いている。この「スキル格差」が移民出身者の失業率を高くし、生活保護に依存せざるを得なくさせ、その結果、世界でもっともリベラルな国で排外主義的な政党が台頭することになったのだろう。


  《19年版経営労働政策特別委員会報告》
 ◆ 企業自決で賃金抑制
   ベアを否定 手当一時金に固執
 (週刊新社会)

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 経団連は1月22日、毎年慣例にしている春闘の経営側の指針となる「19年版経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)を公表した。経労委報告は、冒頭から「自社自決」を掲げ、賃金引き上げを否定している。
 「収益が安定的に拡大している企業においてはベアの選択肢もある」など期待感を持たせるも、労働側の力量の弱さにつけ込み、数値も示さずベアを封印する。
 昨年経団連会長に就いた中西宏明会長(日立製作所)は、「企業労使は、自社に適した働き方や処遇のあり方について徹底的な議論をしたい」「自社の収益に見合った前向きな検討が望まれる」など、「企業自決」に持ち込むコメントを繰り返し、徹底して賃金抑制に重点を置いた。


 18年春闘では安倍晋三政権にすり寄った榊原定征前経団連会長は、「個入消費の活性化に向けて3%賃金引き上げ」を公言した官製春闘に呼応していた。

 ◆ 働き方改革と生産性向上

 【第1章、働きがいを高める働き方改革と労働生産性向上】
 「働き方改革」の名を使えば合理化も許されるのか。
 「働き方改革」と、イノベーション(モノ・しくみ・組織の改革)を羅列して、労働生産性向上(合理化)を迫っている。

 【雇用・労働分野における諸課題】
 雇用関係について突っ込んだ見解を示す。
 高度プロフェッショナル制度やフレックスタイムの活用で総額人件費削減を煽る。
 正社員と契約社員の格差是正に説明義務は整備されたとして、契約社員の拡大に比重を置く。
 労働側は、最低賃金を今すぐ1000円、めざせ1500円を主張している。しかし、経団連は最賃は急激な引上げが続いていると非難、特定最低賃金(産別最低賃金)は廃止すべきと毎年繰り返す。

 【2019年春季労使交渉・協議における経筥側の基本スタンス】
 経営側は、内部留保446兆円など企業の好調にな触れず「多様な方法」に導く。
 月例賃金を避け、一時金、手当を重視させる。月例賃金は、前向きな検討の流れに逆行すると労働側を非難する。
 「中小組合が目安にする総額1万500円以上」は労使交渉を阻害させると搾取の論理から非難する。
 「経営側の基本スタンス」の項では、資本の本音が見える。
 賃金決定を「自社の経営状況に見合った年収ベースが基本。賃金引上げ方法は多様な選択肢の中から検討する」と月例賃金にこだわるな、ベアを否定して、手当てや一時金でこと足れりと迫る。
 企業は、賃金型げは多様な方法があると強調する一方で、総額人件費の削減で、賃金引上げを相殺させる。春闘時に賃金引上げとバーターに合理化提案が常態化されている。しかし、経労委報告では、「自社の経営状況」で労働生産性向上の名の下に「合理化」を受け止めてほしいと迫っている。
 福利厚生が見直され、改悪され、人減らし合理化で、ますます総額人件費の削減が進んでいる。だからこそ「多様、柔軟」などの言葉を羅列して、生産性向上の名の下に搾取強化の狙いがある。

 ◆ 春闘が「労使友好」の場

 「19年版経労委報告」に、賃金引上げの経営側スタンスが見えない。
 「自社に適した働き方」を強調して、「賃金引上げは収益のある企業」と「企業自決」を繰り返す。
 毎月勤労統計不正の発覚は、18年の実質賃金を下方修正した。
 6月時のプラス3・3%は、2・8%に修正され、アベノミクスの偽装が確定した。それでも安倍首相は、藁をもつかむ思いでか連合の集計を持ち出し「今世紀最高の賃上げ」が続いていると、国会答弁を繰り返した。
 17、18春闘の回答は、連合集計1・98%、2・07%。経団連集計2・34%、2・53%で、要求額の半分にも届かない。安倍官製春闘の3%水準にも及ばない
 経労委報告は、春闘を「良好な労使」関係で企業の発展に寄与していると「褒め殺し」をする。
 企業の低賃金合理化政策で「健康で働き続けることも困難になっている」労働者の現状では「労使良好」はない。
 「労資交渉」を闘争などと呼ばず、個々の交渉が自然な流れ、労使が収益第一を共有した春季労使交渉にしたいと結論づける。
 労働組合の闘いの頂点である春闘が「労使友好」の舞台にされては、労働者の権利は失われてしまう。

 2月1日、経済三団体の一つ経済同友会が記者会見をした。
 労働側のべースアップにこだわる姿勢を非難した。「予測不能な時代に、いつまでも右肩上がりのべースアップって、アホじゃねえのか」と。
 毎年さんざんに収益を伸ばしていることを棚に上げ、労働者の「生活できる賃金要求」を「アホじゃねえのか」と切り捨てるところに経営側の本音が聞こえる。
 経営側のスタンスはハッキリした。
 「ベア否定」「年収ベース」「自社自決」の三点で春闘に挑んでくる。

『週刊新社会』(2019年2月19日)



 東京都練馬区立図書館の民託化問題で昨年末12月19日と26日に構えられた2時間の時限ストライキに大きな注目と支援が寄せられた。NHKなど多数のメディアが相次いでストを好意的に報じたのは、ストを構えたのが全員女性の「練馬区立図書館専門員労組」(自治労加盟、57人)という非常勤の労働者であり、自らの雇用問題と同時に何よりも本を愛し公立直営図書館を守ろうとする訴えだったから−。

 ◆ 練馬区の非正規司書がストを構え
   公立図書館が大好きだから
 (労働情報)
水谷研次(東京都労働委員会元労働者委員)

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 練馬区で区が直接運営している3館の図書館の内、練馬と石神井の2館を他館と同様に指定管理者へ民間委託しようとする提案があったのは2018年7月18日のことだった。


 話をうかがったのは岩村陽恵(あきえ)さん(勤続7年)とオニール原田芽(めぐみ)さん(同5年)。また組合の特別執行委員でもある元・練馬区職労(自治労加盟=約4600人)役員の三澤昌樹さんにも同席してもらった。

 ◆ 全員参加で闘争態勢

 図書館専門員労組は区から提案を受けて闘争委員会を立ち上げた。組合員全員が組織、渉外、教宣、理論、記録の5つの班のどれかに所属しているという。
 決めるのも、何をするのも全員参加で運営しているし、専門員として採用されればほぼ全員が組合に加盟するという。
 組合結成は1998年3月4日で約21年前。80年代後半から非常勤職員の雇い止めが相次ぎ、さらには当局が5年雇い止めをちらつかせてきた故の結成だという。

 結成当時は練馬の区立図書館職員の半数以上は正規の区職員だったが、退職不補充などにより次々に図書館専門員(当初は協力員と呼ばれた)に置き換えられ、さらに2006年、新設館を皮切りに指定管理者制度が導入され、民間委託が進められてきた。

 二人が所属する直営の練馬図書館は現在、職員全35人のうち、司書資格を持つ非常勤職員32人が蔵書管理や窓口対応などの専門業務を担っている。
 区内最初の図書館で、世田谷区と並ぶトップの貸出数がある練馬区で区内第二の貸出数があると同時に、図書館利用者が情報・資料などを求めた際に、図書館員が必要とされる資料を提供するレファレンス担当館の機能を有している。
 さらに同じく直営の光が丘図書館では、通常の選書のほか、指定管理者が運営する他の区内9館の選書や蔵書チェック、運営状況のモニタリングも担当している。
 「本が大好きだからできる仕事ですし、誇りをもっています」と二人は自信をもって言い切った。

 ◆ 直営館が全図書館を支える

 練馬の直営図書館3館は、常勤職員主体の「石神井」と図書館専門員32名がすべての専門業務を担当する「練馬」、そしてカウンター業務こそ民間委託しているが他の委託館9館の管理業務も行っている専門員25名の「光が丘」であり、それらが連携し、長期的な視点をもって練馬区全体の図書館の質の維持・向上や現場のノウハウに、行政が責任をもって運営する「3館体制」をつくり上げてきた。
 その成果もあって練馬区の図書館を通じての本貸し出し数は全国のトップテンにも入っている。したがってこれまでの経過及び大きな実績と成果をすべて壊そうという今回の提案を組合は決して認めるわけにはいかなかった。

 当局は「民間に任されるものは民間へ」と繰り返すだけで、専門員の処遇も学校図書館への「任用替え」という提案であった。
 「私たちは公共図書館で働くために今の仕事に就いています。学校図書館は専門性はあるがまったく違う仕事になります。公共図書館で働けなくなら辞めるという仲間は多いはずで、その提案自体が雇い止めに等しく絶対に認められません」とキッパリ否定する。
 とにかく組合員は練馬区の区民図書館が大好きで仕事をしているのだ。
 したがってこの提案に対しては最初から厳しい闘いになるだろうと予測し、ストライキをもってでも絶対にはね返していくと決意した。
 もちろんストライキに至る前にできるかぎりの反対の意思表示を行うこととした。

 多くの自治体の組合は区議会に対しては労使自治の立場から表面上コンタクトを避ける傾向にある。しかし組合は区議会「指定管理者制度導入の撤回を求める陳情書名」を集め積極的に訴えた。
 この署名には、区職労や区内の労組に加え、図書館利用者や区内の市民団体、全国の図書館関係者など1万6421筆が短期間で集められた。
 「重視したのは区議会各会派へのお願い行動で、何度も足を運び、電話でも訴えました」と苦笑したが、この事実上のロビー活動も効果的だったかもしれない。

 様々な区内の市民団体も熱い支援を寄せてくれた。
 「よりよい練馬区の図書館をつくる会」とは共同で学習会「図書館はだれのもの〜練馬区の図書館の現状から考える〜」を開催したし、古い歴史をもつ「ねりま地域文庫読書サークル連絡会」は独自に「経験や知識の豊富な区職員によるカウンター業務の存続」を求める陳情書を提出してくれた。
 「私たち組合員は、他の区や指定管理者の元で仕事をしていたメンバーが多くいます。したがって指定管理館の弱点など練馬の直営館との違いはよく理解できるし、これを守りたいと切実に感じています」

 もっとも図書館専門員の給与は、直営にしても実に低い何年勤続(練馬には勤続20年のベテランが多数いる)していようが月額19万8千円で、岩村さんのように主任になればプラス2万8千円が加えられるが「一人暮らしでギリギリの生活です。他区でしたが同じ頃に新卒で入局した正規の方がいて、はじめは同じぐらいの給与でも、1〜2年でどんどん差がつき、今は半分以下かもしれません」と苦笑する。
 もちろん図書館司書として常勤職員と仕事の内容はほぼ同一である

 「主任制度も組合の先輩たちががんばって獲得した成果で、これが賃上げの代わりかもしれません。ただ練馬には勤続制限はありません(主任は5年毎に試験)。1年毎の契約ですが何年でも働くことができます。他区や民間では雇い止め制度がまだまだ多く、試験制度もあって合格しなければ落とされてしまうことも。私が前にいた区では求人サイトをいつも見る生活でした。練馬では安心して働き続けることができます。これも組合の成果です」と岩村さん。

 ◆ SNSで拡がった支援

 7月の提案以来交渉を重ねたが当局の対応はほとんど変化が無く、いよいよストライキも視野に入れて闘争態勢が組まれ始めた。
 当然ながら誰もストライキの経験者はいない。闘争委員会理論班の出番として、三澤さんも協力し全労協全国一般東京労組のNTT関連労組の方にレクチャーしてもらうなど対策を重ねた。
 提案では誰も反対しなかったが、やはり不安を感じた仲間もいた。
 バックアップしたのは練馬区職労で、三澤さんと共に委員長も専門員労組の特別執行委員となり団交にも出席する。都内の多くの区職労は大きく組織人員を減少させているが、練馬は正規職員のほとんどは自治労に加盟している組合員だ。
 もちろん他の区役所同様、現業職をターゲットとする退職不補充・採用停止、民間委託などの攻撃はあり、そこでの労働組合づくりや共闘、未だ実現できていない公契約条例制定なども大きな課題となっている。
 「今も頑張っている学校現業の直営化と同時にこの図書館専門員の課題は、練馬に2千人いるとされる非常勤職員に労働運動の影響力が発揮できるかどうかの試金石かもしれません」と三澤さん。

 そして、ストライキ戦術を成功させた力は何よりも57名の団結力だった。勤続が長い諸先輩がいることもあるが、全員が持ち回りで執行委員など役員を務め、機関紙も定期的に発行している。ランチミーティングや諸会議で報告し合い、できる限り情報は共有していくことになっている。
 さらには組合活動にSNSが活用されている。
 ある組合員のツイッターには「ペーパーを作ったり、電話取材にこたえたり、手分けしています。手元に資料が無かったりして迷うと、『全員ライン』『全員メール』に載せるのです。たちどころに欲しい答えが返ってきます。これはすごいことだ、と感動します」とあった。

 このSNS活用は闘いでも大きな威力を発揮した。組合員有志の個人ツイッターをはじめ、組合を支援してくれる区議会議員や組合の活動に共鳴し図書館を守ろうとの声がSNSでどんどん拡がっていった。
 組合がストライキにむけて作った斬新なビラ「図書館司書のストライキ The Librarians STRIKE」はそのまま多くのツイッターに添付された。それが多くのメディアも動かし、取り上げられ、さらにSNSによる支援が大きく拡がり、組合員を励まし、うねりとなっていった。

 スト前日の12月18日、ギリギリの交渉の中で「図書館専門員を解雇する考えはない」など4項目の区側回答を引き出した。組合は一定の前進があったとしてストを回避し、19日の練馬図書館前でのスト集会は「スト延期報告集会」になった。
 報告集会には区内や北部地域の全労協などの労働組合、自治労都本部東京清掃労組に加え、支援する市民も多数参加し、200名も結集した。
 練馬図書館OBで「東京の図書館をもっとよくする会」の大澤正雄さんは「区は金がほしいから民営化を進めようとしているが、教育はお金じゃない。人を育てることを民間に預けてはならない!」と訴えた。

 ◆ 本を愛しているからこそ

 組合は「当局の回答は指定管理の撤回ではありません。とりあえずのストライキの延期であり、引き続き交渉をしていくとの態度ですので闘いはまだまだ続きます」「ストをやめたのは私たちの優しさだと思って欲しい」と言う。
 「光が丘図書館のカウンター業務は重要だと思うとの発言があり、私たちの仕事をやっと認めてくれた感触がもてました。これで同じテーブルで交渉できるという段階であり、これからが本番です」と意思統一をしている。

 ストを構えて嬉しいことも多々あった。組合員からは「家族から思いもかけず“頑張れよ”と褒められ驚きました」「知らなかったけど自分の親も労働組合で活動した時期があったそうです」との声もあった。

 「練馬区のことだけではなく、いま図書館で何が起きているのか、指定管理者制度とは何なのか、私たちのストライキをきっかけとして報道され、知ってもらったことも大きな成果だと思います」
 「今回このように闘えたのは労働組合があったからだと言われます。しかし、指定管理館で働く仲間と分断されていては、いつまで経っても状況は変わりません。みんなで良くならなければ図書館は維持できないと思います。これは正規・非正規の問題でも同じでしょう」
 「日常の組合活動だと、内側に眼が向きがちですが、ストライキとなると外に発信していく大きな力が発揮されることを知りました。初めての経験をいっぱいしましたが、今後は支援してくれた皆さん以上に多くの方に図書館とそこで働く労働者の存在を訴えていきたい。そして子どもたちが、もっともっと本を読む図書館をつくっていきたいですね。そうすれば本を買う大人にもなり、出版業界も活性化し、さらにいい本が増えていく。目先の3年とか5年とか、指定管理とかいうよりも、100年先の人々に伝えられる図書館をつくっていきたいですね」
 と、今後の決意を語る眼がキラキラと輝いていた。

『労働情報 No978』(2019.2)


 ◆ 労契法20条裁判 初審を上回る全員勝訴
   均等待遇へ重要な前進
 (労働情報)
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 12月13日、郵政産業労働者ユニオンに加入する郵政の非正規労働者が日本郵便を訴えた労契法20条(東日本)裁判の東京高裁判決が出された。
 初審での手当等の格差を違法とした画期的な判断がどうなるのか注目される中、白石史子裁判長は初審から更に踏み込み、病気休暇中の損害賠償を認め、住居手当と年末年始勤務手当10割支給を含む全員勝訴の判決を言い渡した。損害賠償額は167万円となった。

 判決公判には41名の傍聴席を求めて100名以上が並び裁判所前は活気に溢れた。
 14時に判決が出され傍聴者が地裁を出てくると拳を握りしめてガッツする姿が遠目に判り、勝訴を確信した。原告らが掲げた旗には「全員勝訴」「前判決より前進」の文字。裁判所前を埋めた支援者からは大きな歓声が挙がった。


 原告の一人浅川喜義さんは判決後の裁判所前で「休暇を取った際の賠償にも踏み込んだ大阪判決を超える内容だ。全国でこの闘いを支えてくれた仲間にお礼を言いたい。全国の非正規で働く仲間に伝えていきたい。内容的には西日本判決や6月のハマキョウレックスの判決もあったので当然だと思う。しかし業績配分の基本的考え方で支払われる賞与については触れられておらず残念だ。ここは最高裁で判断を求めることになると思う」と語った。

 郵政ユニオンの日巻直映委員長は「非正規差別をなくしていく闘いを確かなものにしていく為にも、労契法20条裁判の闘いを大きく前進させて行きたい。9年明けの1月24日には西日本の大阪高裁の判決も出る(13時15分。82号法廷)。引き続きご支援を」と力強く語った。
 組合によれば、日本郵便は当該原告に対し賠償額を支払いたいとの意向があるようである。(編集部)

『労働情報 No.977』(2019年1月)


 ◆ 現場から問う公務職場の身分制 (労働情報)
卜部昌則(ユニオンらくだ・非常勤嘱託職員部会)

 2017年5月の地方公務員法の改定で、公務の最前線で働いている地方自治体の特別職非常勤嘱託職員(全国で22万人以上)が、2020年4月から、一般職会計年度任用職員に任用変更になります。
 これについて、政府・マスメディアは、制度が整備され、公務非正規にも期末手当や退職手当の支給が可能になり労働条件が改善される、としています。しかし、決してそうではありません。
 何故かといいますと、その目的が、労働基本権を武器にして闘っている私たちのような単独労組や混合労組、地域合同労組を、公務職場から一掃することにあると考えるからです。

 特別職非常勤は、正規の常勤職員なら当然のように保持している身分保障や人事委員会(公平委員会)への不服申立ての制度から排除されています。


 ゆえに、労働基本権の保持を確認した上で、団体交渉を行い、労働委員会に申立てを行い、ストライキも行いながら、雇用を守り、長い時間を費やして、漸進的に労働条件の改善を勝ち取ってきました。
 しかし、特別職非常勤から一般職会計年度任用職員に任用変更されることによって、労働基本権がはく奪され、公務員としての身分保障も不充分なものになってしまいます。
 そして、結果として、法改定は、無権利状態のドレイのような職員を公務職場に生みだすことにつながります。このようなことが21世紀の今の時代にあってはなりません。

 これに対しては、多種多様な行動が行われています。
 たとえば一例として、「連帯労働者組合・杉並」、「連帯労働者組合・板橋区パート」、「あぱけん神戸」と私たちの4団体は、労働基本権はく奪に対して、国際機関からの政府への勧告に希望を見出して、ILO提訴に踏み切っています。
 このような、全国各地の取り組みや職場での闘いを通じて、公務で労働基本権を駆使した労働組合運動を、カまず、あせらず、あきらめず、継続していくことが重要だと考えます。

 さて公務は、本来、基幹的で恒常的で本格的なものであり、正規の常勤職員が担うべきものです。
 しかし、1980年の臨調・行革以降に顕著な傾向ですが、政府が人員の削減を求める一方、業務量が増加し、市民の様々な二ーズに応えるために職種が多様化し、専門的な知識が要求されることから、常勤職員のみでは業務を担いきれなくなりました
 この問題の解決策として、劣悪な労働条件の特別職非常勤を脱法的に代替させ、あるいは外部化・民間委託化を進めました。これが、「官製ワーキングプア」の激増と社会問題化の原因です。

 さらに危惧することは、2020年4月以降、公務職場に、〈正規の常勤職員−非正規の会計年度任用職員…非正規の臨時的任用職員−民間委託・派遣労働者〉という差別と身分制が、なおいっそう固定化されてしまうことです。
 ぜひ今後とも、公務非正規の運動にご注目をいただくようお願いします。

『労働情報 No.977』(2019年1月)


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