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こどもの貧困

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  《奨学金の会 News №73(2013/12/6)》
 ● 「社会全体で子どもの学びを支える」はどこへいった!
   11月27日「高校無償化」廃止法案成立参院文教委はたった4時間の審議で強行採決


 ● 高校無償制がわずか3年で廃止に!
 2013年11月27日、「高校無償化(公立高校授業料不徴収、私立高校就学支援金)」に所得制限を導入する法案が参院本会議で自民・公明・維新・みんなの賛成多数(民主・共産・生活・社民は反対)で可決、成立しました。前日の委員会審議はわずか一日、4時間で強行採決しました。法案名は「一部改正」ですが、公立高校の授業料不徴収に関する条項が全て削除され、「原則無償」から「原則有償」に変更する「高校無償化廃止」です。
 2010年に文科省が「社会全体であなたの学びを支えます」というパンフレットを全高校生に配布し、政府のパブコメでも95%の国民から賛成と歓迎された高校無償化政策が、わずか3年で大きく後退しました。


 ● 加算財源300億円の1/6は所得把握事業費に
 来年4月に入学する高校一年生の親の世帯収入が910万円超えると就学支援金はなく、全額授業料を支払います。
 910万円以下の世帯は所得証明を提出することにより、「授業料相当額の就学支援金」が支給されます。約8割の家庭から証明書を取る煩雑さも問題ですが、国会審議の中で深刻な問題が次々に明らかになりました。当初政府は授業料徴収による300億円の財源で低所得者加算を行うと説明しましたが、その内の40〜50億円は所得把握の事業費に当てる予定です。将来、所得把握の厳格化が求められ、事業費が膨らむごとに加算の支援は削られていくことが予想されます。

 ● 教育無償化の国際公約違反だ!

 ● 世帯収入910万円以下でも授業料徴収が!?
 11月26日の参院質疑で共産党田村智子議員が「就学支援金を上回る授業料を定める都道府県があった場合は、その差額が授業料として発生することになるのではないか」と質問すると、前川喜平初等中等教育局長は「差額は生徒から徴収されることになる」と認めました。高校無償化前の公立授業料は全国平均11万8,800円ですが、東京は12万2,400円で大阪は14万4,000円でした。都道府県が何らかの対策を取らない限り、そうした自治体ではほとんどの生徒が授業料の一部又は全部を払うことになります。

 ● 現役高校生に届出義務
 法案は高校生に保護者等の収入を届け出ることを義務付け、届出がなければ就学支援金の支給を差し止めるとしています。社会的に孤立した家庭や、複雑な事情や困難を抱える家庭ほどハードルが高くなり、課税証明書の提出ができないために就学支援金を受けられないという事態も危惧されます。
 逆に、株で大儲けしていてもキャピタルゲイン(売却益)課税は給与所得と別にされるので無償になるという矛盾も起きます。

 ● 無償⇒有償なのに大臣は「無償化に前進」?
 中等・高等教育無償化の国際公約について答弁を求められた下村博文文科大臣は「同規約の趣旨をさらに前進させるもの」と発言しました。どう言い換えても、すべての高校生の学ぶ権利として「無償化」した授業料を再び徴収することは人権としての無償化に「後退」する、条約違反です。
 私たちは引き続き所得制限導入に反対するとともに、教育予算の拡充で、高校無償化を復活し、さらに前進させるために奮闘していきます。

『国民のための奨学金制度の拡充をめざし、無償教育をすすめる会』
〒162-0845 東京都新宿区市谷本村町10-7 学支労気付TEL&FAX 03-3269-6096
HP;
http://www1.ocn.ne.jp/~shogaku/ mail;shogakukin@spice.ocn.ne.jp
  《尾形修一の教員免許更新制反対日記》
 ◆ 高校授業料無償化の末路


 11月27日にある法律が成立した。「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律の一部を改正する法律」という。いわゆる「高校授業料無償化」が終わりになる「改正」である。衆議院選挙で自民党の公約だった。参議院本会議の投票で、自民、公明、維新、「みんな」が賛成(177票)。(民主、共産、社民、生活その他合計77票の反対があった。)

 高校授業料無償化問題については、民主党政権で成立した時に問題点も残り、当時4回にわたって記事を書いた。
  ①「高校無償化は人権問題である」(2011.8.9)
  ②「朝鮮高級学校の場合」(2011.8.20)
  ③「留年してはいけないのか?」(2011.8.22)
  ④「定通はかえって『損』なのか」(2013.10.13)

  国際人権規約との関係や朝鮮学校の問題は他の人も言っているが、「留年者からは取る」「定通高校ではかえって負担増なのではないか」という問題は、あまり論じられなかった。


 今回の「改正」は、高額所得家庭からは授業料を取るという変更だと思ってる人が多いと思うけど、実は少し違う。とても面倒な制度設計になっていて、家庭と学校事務の負担はとても大きくなるのではないか。
 「高額所得者に授業料がかかる」のではなく、「低所得家庭に就学支援金を支給する」のである。ただし、それは学校に集約して、学校に支払われる。「高等学校就学支援金について」という文科省の説明サイトを参照。

 その説明によると、就学支援金はすべての国公私立生徒に出るが、課税証明書と申請書を学校に提出しなくてはならない。逆に言えば、高校教員(あるいは高校事務職員)は、全生徒の家庭から課税証明書を集めなくてはならない。何という面倒な仕事をまた押し付けられるのか。学校はその支援金を授業料と相殺するというのである。

 ところで「市町村民税が30万4200円以上の世帯」では「授業料をご負担いただく」という。これは「両親のうちどちらか一方が働き、高校生1人、中学生1人の家庭であれば、市町村民税所得割額が30万4200円の場合、年収は910万円」なんだそうだ。しかし、いまどきそんなモデル家庭がどれだけいるのか。とにかく、新聞記事などでは「世帯収入910万」という説明がよく出てるけれど、そうではなくてあくまで住民税額の方で判断するということらしい。(ところで、東京23区には「市町村民税」を払っている人が誰もいないんだけど、なぜ特別区民税が書いてないのか。)

 さて、そうすると高校は、支援金の支給申請をまず行い、その結果課税証明で住民税額が判ったら、あらためてその家庭から授業料を取るという段階になる。一体何月から授業料を徴収できるのか。なんでこのような面倒な制度にするのか。全く判らない。これで判るのは、学校事務がものすごく大変になるということである。
 ところで、この制度改正で浮いたカネを何に使うのか「低所得層の私立生加算を手厚くする」という。これも全く判らない。何で公立に通わせる親のカネで私立に通わせる親を支援するんだろうか。自民党には私立学校関係者が多いということか。
 こんな面倒な制度を作ることなく、高額所得者の税率をアップし、公立高校はすべて授業料無償とすればいいと思うんだけど。様々な所得制限は事務負担が増すだけだから、所得税率をアップして高額所得者は税そのものを多く負担してもらえばいいのではないか。

 もし高校授業料を高額所得家庭からは徴収するというんだったら、それが大学、専門学校等への進学の奨学金になる場合だけではないか。「国際人権規約」に反する政策を堂々と進めるのも不可解だが、中等教育無償化に例外措置を作っても、高等教育への支援を強める必要は大きいと思う。とにかく、最初から訳の分からない部分もあった無償化措置は、こういう末路を迎えたということの報告。

『尾形修一の教員免許更新制反対日記』(2013年12月11日)
http://blog.goo.ne.jp/kurukuru2180/e/8df85f6e885f836f07faedc726b0b053
 
 
  教育分野においても、臨時国会中の自公政権の暴走を許してはならない。
 
 進級したばかりの4月の貴重な授業時間を削ってまで、文部科学省が強制をする学力テストは、一人ひとりの子どもたちのためのものではないことは明らかである。
 教育産業などのための巨額の金と時間と労力の無駄遣いは、学校のランク付けと個人情報収集まで行われるこどもの人権侵害行為である。
 
 日本政府は昨年9月、社会権規約批准から33年ぶりにやっと、社会権規約第13条の、b・c項の留保を撤回した。政府の責任において、高校の全額学費無償化と大学の無償化を推進すべきである。高校授業料無償化を後退させる法案を可決したが、自公政権の暴走を許してはならない。
 
ー・−・−・−・−−・−転載記事ー・−・−・−・−・−・−・−
 
毎日新聞 2013年11月30日 

社説:学力テスト成績 学校別の公表は無用だ

 
 学力向上のためのテストが、学校ランク付けの手段にすり替わりはしないか。文部科学省は、これまで学校が個別の自主判断で出す例以外は禁じてきた全国学力テストの学校別成績公表を、市区町村教育委員会の判断によってできると認めた。来年度のテストから実施される。
 一律ではなく、教委が学校と話し合ったうえでとされているが、最終決定権は教委にある。
 
 2007年度に始まった現行テストは小学6年生中学3年生を対象に国語、算数(数学)の2教科について行われる。民主党政権下で抽出方式も採用されたが、現政権は全員参加方式を続けるとしている
 
 文科省がテスト実施要領で学校別成績(正答率)の公表を認めなかったのは、1960年代に廃止された旧学力テストで学校や地域間の競争が過熱し、対策補習や不正行為などで混乱した苦い歴史があるからだ。
 学力の実態を探るはずのテストが、競争のために取り繕いやごまかしを誘う皮肉な構図になった。
 
 今回、文科省は首長らの要望や「説明責任」などを理由に“解禁”に踏み切ったが、かつての混乱を招かぬという確証はどこにもないそもそも、判断を教委にゆだねること自体、責任の丸投げではないか
 学校が板挟みになって苦悩する事態が今から懸念される。
 
 またテスト本来の目的に照らしても、学校別成績公表は無用だ子供たちの得手不得手の傾向や特徴をつかみ、個別の指導に生かすという趣旨からいえば、結果分析をどう指導に反映させ、先に向かって改善していくかが最も肝要だ。学校別数値の差異に一喜一憂することではない
 今回の改定でも文科省は、学校名と正答率だけの公表を認めず、結果の分析や改善策とともに示すよう求めている。正答率で学校を順位付けすることも禁じている。しかし、数値が出れば順位一覧表はできる。
 むしろ正答率などより、結果に見る学力傾向と今後の指導計画を保護者や地域に説いた方がずっと理にかなう。そこを主眼とすべきだ。
 また、傾向と課題を的確に掌握するには抽出調査で十分と専門家は指摘する。抽出なら学校間の成績競争はない。結果から子供たち全体の改善指導を工夫し、追跡調査で成果を検証していく。その方が、学校の成績順位よりはるかに重要だろう
 教委は、最終決定権者であることで実施を押し通すのではなく、学校や父母とも十分に話し合い、現場の意見をくみとってほしい。
 文科省が実施要領に明記するように、テストの結果は「学力の特定の一部分」に過ぎない。決して学校を格づけするものではない。
 
Séminaire Fichet-Heynlin
Quels sont les effets des changements numériques sur les métiers et l’organisation universitaire ?
Que sait-on des usages du numérique par les étudiants et enseignants selon les établissements et les pays ?
Séance n°2 : 13 nov 2013
Transformations du métier "recherche & enseignement" à l’ère numérique
 
En présence (Univ. Paris 1) ou à distance (webconf + liste + écritoire)
Accès ouvert mais inscription obligatoire, par formulaire en ligne : 
http://www.reseau-terra.eu/article1298.html
La séance n°2 du séminaire sera consacrée à la réception du dernier numéro de la revue Distances et Médiations des Savoirs (n°4, 2013, en ligne / accès ouvert ici : http://dms.revues.org/362).
Plusieurs auteurs de ce numéro participeront au séminaire, dans la salle ou à distance, notamment : Marie-José Gremmo et Luc Massou (co-responsables du numéro), Marie-José Barbot, Nathalie Lavielle-Gutnik, Nicole Poteaux, Jérôme Valluy... et peut-être d’autres (en attente de confirmations).

Comme pour la première séance, le séminaire pourra être suivi en salle ou distance par webconférence en direct ("Adobeconnect") associée à la liste de discussion [Fichet-Heynlin] ouverte dès maintenant et à un écritoire collectif ("Framapad") permettant aux participants inscrits de poser des questions ou de faire des commentaires, développés et argumentés, aux auteurs sur leurs articles. Les échanges avec les auteurs et entre participants pourront avoir lieu avant la séance, pendant la séance et après la séance.

 
Travaux en discussion :

TIC et fonction enseignante à l’université : questions pour la recherche

 Marie-José Gremmo et Luc Massou
Éditorial

Entretiens

Bibliographie

 Marie-José Gremmo et Luc Massou
TIC et fonction enseignante à l’université

Pour suivre cette séance de séminaire : http://www.reseau-terra.eu/article1298.html
Pour recevoir les actualités de ce domaine : http://liste.cines.fr/info/numeruniv-quotidien
 
不況で希望者殺到「新聞奨学生」の実態  ⅩⅡ格差社会
  <格差社会の中心で友愛を叫ぶ>【第11回】
 ■ 苦学生をうつに追い込む!?不況で希望者殺到「新聞奨学生」の実態
西川敦子 [フリーライター]

 昔から新聞配達といえば、究極のガテン系アルバイト。ところが今や、この仕事に人気が集中しているという。
 学費を新聞社に肩代わりしてもらうかわり、住み込みで働く「新聞奨学生」に、希望者が殺到しているのだ。
 労働時間帯ひとつとってもけっしてラクとはいえない仕事である。それでもほとんどの新聞奨学会で、2010年度の募集枠がすでに埋まっているほどの人気ぶりだ。
 ある新聞奨学会の担当者は「販売店の求人が減っていることもあるが、あっというまに枠がなくなってしまう。進路が決定していない5月頃から申し込み予約をする高校生も多い」と説明する。
 この不況時、親の経済的な事情から進学をあきらめざるをえない子どもも少なくない。学費の負担から解放され、寮費も無料という新聞奨学金制度は、彼らにとってまさに福音といえるだろう。


 各新聞奨学会のホームページをのぞいてみると、そこには学生たちの満面の笑顔が溢れている。生き生きと働き、学ぶ姿に勇気づけられる高校生も多いのではないか。
 だが現実には、ホームページやパンフレットからは想像もつかない実情もあるとか――体験者から現場の話を聞いてみることにした。

 ■ 「日給1000円」で働く学生
   寮を抜け出し“夜のアルバイト”も

 新聞奨学生、寺井ますみさん(仮名)は憤っていた。
 「上京前、説明会で聞いた話と違うことばかりなんです」

 まず面食らったのは、最初の月に手にした給与がたった3万円だったことだ。日給にして1000円。規定では手取り9万円だ。店主の説明は「見習い期間だから」というものだった。
 さいわい朝食・夕食は給与から天引きされ、提供されるものの、昼食代や交通費、学用品・生活用品代なども必要だ。とても3万円では足りない。

 「しかたなくアルバイトをしました。夕刊の業務が終わってからこっそり寮を抜け出し、12時近くまで夜の仕事をしていたんです」
 だが、出勤時間は午前2時15分。少しうとうとしたかと思うと、あっというまに目覚まし時計に叩き起こされる。これはかなりこたえた、と寺井さん。

 ちなみに現在は夜のアルバイトはしていない。毎朝2時の起床はさほどつらくなくなった。さっさと支度を終え、階下の作業所で折り込みちらしをはさみ始める。その後、バイクで配達に出かけ、仕事が終わるのは午前6時頃。朝食を食べて一息入れ、8時30分には寮を出る。

 と、ここまではいいのだが、問題は夕刊の作業開始時間だ。
 事前説明では「午後の授業にも出られる」という話だったが、午後2時から始まる夕刊の配達作業のため、遅くとも1時半には学校を出なければならない。入学早々、予定通り卒業するのは難しい現実が見えてきたという。

 テスト前の勉強時間をとるのも至難の業だ。
 たとえば、人手が足りないときは夜の集金回りにも駆り出される。だが、そもそも集金は寺井さんの仕事ではない。奨学生には、集金作業のあるかわりに給与の高いAコースと、集金作業のないBコースとがあり、彼女はBコースを選んでいたからだ。「拡張」と呼ばれる営業に出たこともある。もちろん、これらの業務で給与がアップされることはなかった。

 「寮の自室は三畳間。他の人に比べたらそれでも恵まれている方ですね。小さな洗面台まで付いているし。でも、やっぱり狭くて勉強に集中するのは難しい。空き時間を見つけて、学校の図書館でやったりするのですが」

 ■ 「高層ビルから飛び降りようかと…」
   そこまで追い詰めた過酷過ぎる労働

 体力的な限界を感じることもある。今も忘れられないのは、嵐の朝のこと。この日寺井さんは病みあがりだった。泥と雨水に難儀しながらようやく新聞を配り終えたときは、すでに日は高く昇っていた。
 『何時だと思ってるんだ、この馬鹿野郎!』
 ぐしょぬれ姿で店に戻るとさっそく怒号が飛んだ。

 「延々と責められました。クレームの電話が鳴りっぱなしで、所長も頭に来ていたんだと思います。ほかにもいろんなことがありました……。一度、配達先の高層ビルで『もう、ここから飛び降りちゃおうか』と思ったことがあった」
 踏みとどまったのは、母親の顔を思い出したからだ。

 「うち、母子家庭だったんです。生活保護を受けながら奨学金で高校まで通いました
 高校は進学校だったため、周りはみんな塾に行ったり、家庭教師についたりしていた。そんな中、彼女はひとりで勉強を続けた。「苦労している母を見てきたから、自分はどうしても手に職をつけたかったんですよね」

 そんな彼女の夢は社会保険労務士の資格を取ること。働く人を守る仕事がしてみたい、という。ゆくゆくは民間の奨学金を立ち上げられたら、とも。自分と同じような学生に、もっと安全な場所で働き、学んでほしいからだ。
 「もっとおカネを稼げるようになりたい、えらくなりたいんです。そうして母に親孝行がしたい。ワタミの社長さんみたいに、苦労して成功した人だっているじゃないですか。だから自分だって負けない、と思って生きてきた。ここで負けたら、今まで信じてきたことがみんな嘘になってしまう」

 そのためには環境を変えなくては、と唇を引き結んだ。

 「学費を稼ぎつつ勉強するには、夜の仕事しかないのかもしれない。この頃そんなことも考えたりするんです」

 ■ 「世界一高い」日本の高等教育費
   新聞奨学生はやむを得ない選択?

 勉強したくてもおカネがない。そんな「スチューデントプア」が急増中だ。寺井さんのような母子家庭出身のみならず、多くの学生が学費という壁につきあたっている。

 日本政策金融公庫によると、高校入学から大学卒業にかかる子ども1人分の学費は1023.6万円。世帯年収に占める在学費用の割合は、平均で約3分の1、年収200〜400万円の世帯では2分の1に及んだ。

 だが、GDPに占める国や自治体の高等教育予算の割合はたった0.5%OECD加盟28国で最低だ。日本の高等教育が「世界一高い」といわれるゆえんである。

 奨学金にすがろうにも、日本学生支援機構(旧育英会)の奨学金は、貸与制度だ。卒業後、すぐ安定した仕事に就ければよいが、そうでない場合はさっそく返済に苦しむことになる。逡巡した揚句、新聞奨学生の道を選ぶ人が増えているのかもしれない。

 だが一度、新聞奨学生になれば、どんなにつらくとも最低1年間は辞めることができない。退職すれば、奨学金分を即日返済しなくてはならないからだ。
 その結果、学生にとっては救いのはずの新聞奨学金制度が、逆に彼らを追い詰める結果になることも――。90年には、作業中に奨学生が倒れ、急死した「読売新聞奨学生過労死事件」も起きている。

 ■ 若者いじめは「伝統」?
   うつになり、夢をあきらめた若者も

 うつを患って就職の道を断たれる新聞奨学生もいる。
 現在、失職中の村澤潤平さん(31歳)もそのひとりだ。放送作家になる夢を胸に上京し、専門学校に入学。97年と2000年に新聞奨学生をしていたが、所長や、専業販売員と呼ばれる従業員から精神的ないやがらせを受け続けていた。

 『おいこら、起きろ。廊下が汚れてるぞ。掃除しろ』
 真夜中にいきなり怒鳴りつけられ、叩き起こされたかと思えば、食事中や作業中にずっとまとわりつかれ
 『おまえが放送作家になれるわけがないだろ。ムリだ、ムリ、ムリ』
などと言われ続けた。

 「ひと癖もふた癖もある人が多いんです。寮は階上にあるので、学校にいる時間以外はずっと彼らから離れられない。心のやすまる時がありませんでした」
 いやがらせがヒートアップしたのは、村澤さんが「反抗分子」と見られてからだ。業務と関係のない仕事をやらされたり、有休をなくされたりして、仲間と不満を言い合っていたのを聞きとがめられた。
 専業販売員にはもと新聞奨学生が多く、いじめが伝統的に受け継がれていた、ということもある。

 ■ 社会に出る前に背負った
   「うつの負債」

 「若いヤツらは苦労して当然」
 こうした意識はそうとう色濃かったようだ。

 「傷んだ賄いの食事を食べた同僚がおなかをこわしたときも、主任の専業販売員は『俺たちも腐ったメシを喰って頑張った』と言いはなつ始末でしたからね」と村澤さん。
 すさんだ労働環境からは、購読者数の減少による販売店の経営苦も透けて見える。
 また、実際の配達部数以上の新聞を発行本社から販売店が引き受ける、いわゆる「押し紙」も、彼らの経営を圧迫しているという指摘がある。
 もろもろのストレスがふくれあがり、ピラミッドの底辺にいる学生へと集中していったのだろう。

 いずれにせよ、絶えずいやがらせをされていたおかげで、村澤さんは抑うつ状態に陥ってしまった。
 「とにかく何もする気が起きなくて、ずっと寝てました。配達にはどうにかこうにか行っていたんですけど。10日間くらいお風呂にも入らなかったです」
 学校の実習で引き受けていた、脚本のゴーストライターの仕事もすっぽかしてしまった。携帯電話の電源を切っていて、担当者からの電話にも出られなかった。

 「結局、学校もやめ、放送作家の夢もあきらめました。就職しようとしましたが、就職氷河期の中、うつを抱えた状態で正社員になるのは難しかった。その後、日雇いの仕事を転々とし、今に至っています。結婚願望ですか?持たないようにしています。子どもを持つなんてとんでもない。同じような苦労を子どもに背負わせちゃいけない、と思う

 苦学しても頑張って卒業すれば、就職し幸せをつかめた時代もあった。だが今は、彼のようにその先に未来を見いだせない若者が増えているのかもしれない。

 ■ それでも新聞奨学金に
   頼らざるを得ない学生たち

 社会に出る前に、貧困やうつという負債を背負ってしまった自分。でも、ほかの学生たちには同じ道を歩んでほしくない。
 そんな思いから村澤さんが立ち上げたのが「新聞奨学生SOSネットワーク」だ。奨学生の相談に乗り、制度の改善を社会に求めていく。

 仕事中にバイク事故に遭い、「バイクの修理代を弁償しろ」と労災保険給付金を所長にだまし取られた学生。辞めようとしたところ、部屋に監禁された学生。相談内容はさまざまだ。
 制度自体はすばらしいが、新聞奨学生の職場環境はやはり問題が多い。それでも、やはりこの奨学金に頼らざるを得ない学生たちがいる。

 「その現実を知ってほしい」
 新聞販売所という、目立たない場所から上がる声。彼らの思いは実を結ぶのだろうか。

新聞奨学生SOSネットワーク 活動ブログ
http://syogakusei110.blog32.fc2.com/

『ダイヤモンド・オンライン』(2010年2月12日)
http://diamond.jp/articles/-/5723
 
パワー・トゥ・ザ・ピープル!! パート2

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